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第1章 光るバッハ
第10話 さぁ、鳴きなさい!
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校長先生を驚かすはずが、
なぜか感動の世界へ誘うという異次元の脱線を起こしてから15分後。
遂にその時がやって来た。
校長先生が3年生のクラス棟にやって来たのである。
「その節穴をよく見開いて、何を競っていたのか思い出しなさい」
「Hahaha! 私は常に美を見据えているよ!」
「刈られろ! じゃなくて、私の番よ。何でもいいから黙って見ていなさい」
ユーコは教室の入り口付近で待機する。
死神への指示も既に出し終えていた。
「もはや手伝うこと前提なんですね……」
そんな死神の嘆きは置いておくとして、
来るぞ。
校長先生が。
光って動くバッハの目を見落として、
誰もいないピアノが鳴ったのを故障と言って、
挙句、ショパンの曲で涙を流した、ある意味で大物が。
「ここが噂の3-Aか。ふむ……」
事前情報のせいだろう。
校長先生は、パッと見で何も見付けられなかったものの、
懐中電灯で中を照らして念入りに確認する。
「何も無いか。やはり噂なんてそんなもの――」
その時だ。
「――ぬぉっ!?」
プーン、と校長先生の耳元で蚊の鳴く音がする。
必死に頭を振り、
手で払い、
蚊を追い払おうとする校長先生。
「くくく……まだまだ!」
「ぐぅっ!?」
更にもう1回。
校長先生は反対の耳元でも蚊を鳴らされて、
まるで壊れたダンスを踊るような状態になった。
「ほーれ、これは避けられないでしょ?」
教室入り口で待機していたユーコが、
遂に、背後から迫る。
その手には釣り竿が握られていた。
「大漁じゃあーーっ!」
そんな大声を張り上げながら、
校長先生の頭に針を引っかけて、
ヒョイッと取ってしまう。
「う、うぉおぉぉぉっ!?」
失ってしまった最重要装備を探して、
校長先生は周囲へ光を当てる。
どうやら激しく動き過ぎて落としたと勘違いしたらしい。
重点的に床を照らして探す。
「死神!」
「は、はいっ!」
死神は校長先生が入って来た方の扉に足をかけていた。
そしていつぞやユーコがやったように、
思い切り蹴ってドアを閉める。
「そこにいたか!? この悪戯坊主がっ!!」
校長先生は烈火の如く怒り、
机や椅子を押し退けながらそっちを目指す。
そうやって前傾姿勢になった瞬間、
ユーコは背中に氷を放り込んだ。
「ぬぐっ……!?」
悪戯坊主は背後にもいる。
そう勘違いした校長先生は振り返る。
するとそこには、
「……え、私?」
光るバッハの絵画があった。
その上にカツラが、おっと、最重要装備が乗せられている。
「くそ、調子に乗りおってからに……!」
校長先生も人の子だ。
最重要装備を目の前にすると、
取り戻したいという欲が先行してしまうらしい。
近付く。
取り上げる。
その瞬間だ。
「……な、に?」
光るバッハと目が合った。
それはもう、バッチリと。
今、校長先生は懐中電灯を持っていない。
それにも関わらず、
光っているからしっかりと、
動いた瞳と目が合ってしまった。
「……あれ?」
校長先生は目を擦る。
何度も擦って、何度も確認する。
その度に、
光るバッハは最高のスマイルを向けていた。
真っ白な歯から零れる光が何とも眩しい。
「ゆ……ゆ、ゆ、ゆ、幽霊――!?」
どれだけ耄碌していても、この距離だ。
流石に認識し、
常識では考えられない物だと、ようやく理解してくれたらしい。
「いや、そういう玩具か?」
それは一瞬だったけども。
そして校長先生は悪戯坊主を探そうと教室から飛び出そうとして、
「あぁ……んっ!?」
最後にひとつ、
ユーコに耳へ息を吹きかけられるという、
非情に古典的な悪戯をされて肩を跳ね上げてから、
「おのれ、クソガキがっ!!」
いもしない誰かを探して走り去って行った。
「あー……なんて良い顔! 反応! 最っ高ね、校長先生ってば!」
ユーコは耳まで赤くしながら、
勝敗や作戦の云々よりも、
まずはそのことを心から喜んだのだった。
なぜか感動の世界へ誘うという異次元の脱線を起こしてから15分後。
遂にその時がやって来た。
校長先生が3年生のクラス棟にやって来たのである。
「その節穴をよく見開いて、何を競っていたのか思い出しなさい」
「Hahaha! 私は常に美を見据えているよ!」
「刈られろ! じゃなくて、私の番よ。何でもいいから黙って見ていなさい」
ユーコは教室の入り口付近で待機する。
死神への指示も既に出し終えていた。
「もはや手伝うこと前提なんですね……」
そんな死神の嘆きは置いておくとして、
来るぞ。
校長先生が。
光って動くバッハの目を見落として、
誰もいないピアノが鳴ったのを故障と言って、
挙句、ショパンの曲で涙を流した、ある意味で大物が。
「ここが噂の3-Aか。ふむ……」
事前情報のせいだろう。
校長先生は、パッと見で何も見付けられなかったものの、
懐中電灯で中を照らして念入りに確認する。
「何も無いか。やはり噂なんてそんなもの――」
その時だ。
「――ぬぉっ!?」
プーン、と校長先生の耳元で蚊の鳴く音がする。
必死に頭を振り、
手で払い、
蚊を追い払おうとする校長先生。
「くくく……まだまだ!」
「ぐぅっ!?」
更にもう1回。
校長先生は反対の耳元でも蚊を鳴らされて、
まるで壊れたダンスを踊るような状態になった。
「ほーれ、これは避けられないでしょ?」
教室入り口で待機していたユーコが、
遂に、背後から迫る。
その手には釣り竿が握られていた。
「大漁じゃあーーっ!」
そんな大声を張り上げながら、
校長先生の頭に針を引っかけて、
ヒョイッと取ってしまう。
「う、うぉおぉぉぉっ!?」
失ってしまった最重要装備を探して、
校長先生は周囲へ光を当てる。
どうやら激しく動き過ぎて落としたと勘違いしたらしい。
重点的に床を照らして探す。
「死神!」
「は、はいっ!」
死神は校長先生が入って来た方の扉に足をかけていた。
そしていつぞやユーコがやったように、
思い切り蹴ってドアを閉める。
「そこにいたか!? この悪戯坊主がっ!!」
校長先生は烈火の如く怒り、
机や椅子を押し退けながらそっちを目指す。
そうやって前傾姿勢になった瞬間、
ユーコは背中に氷を放り込んだ。
「ぬぐっ……!?」
悪戯坊主は背後にもいる。
そう勘違いした校長先生は振り返る。
するとそこには、
「……え、私?」
光るバッハの絵画があった。
その上にカツラが、おっと、最重要装備が乗せられている。
「くそ、調子に乗りおってからに……!」
校長先生も人の子だ。
最重要装備を目の前にすると、
取り戻したいという欲が先行してしまうらしい。
近付く。
取り上げる。
その瞬間だ。
「……な、に?」
光るバッハと目が合った。
それはもう、バッチリと。
今、校長先生は懐中電灯を持っていない。
それにも関わらず、
光っているからしっかりと、
動いた瞳と目が合ってしまった。
「……あれ?」
校長先生は目を擦る。
何度も擦って、何度も確認する。
その度に、
光るバッハは最高のスマイルを向けていた。
真っ白な歯から零れる光が何とも眩しい。
「ゆ……ゆ、ゆ、ゆ、幽霊――!?」
どれだけ耄碌していても、この距離だ。
流石に認識し、
常識では考えられない物だと、ようやく理解してくれたらしい。
「いや、そういう玩具か?」
それは一瞬だったけども。
そして校長先生は悪戯坊主を探そうと教室から飛び出そうとして、
「あぁ……んっ!?」
最後にひとつ、
ユーコに耳へ息を吹きかけられるという、
非情に古典的な悪戯をされて肩を跳ね上げてから、
「おのれ、クソガキがっ!!」
いもしない誰かを探して走り去って行った。
「あー……なんて良い顔! 反応! 最っ高ね、校長先生ってば!」
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