魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第16話 会議をします 5

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 思い出して欲しい。ロアたちは聖戦と言っていた。読んで字のごとくの意味ならば、彼らは世界のために戦っているという自負を持っていたのだろう。無理もない。あんな怪現象すら生き抜いた者たちの暮らす村なんだぞ。その首謀者がいると考えるのが普通ではないか。

「そうなると……アデルはやっぱり怪しい、ということになるのか。実際に調査した身として、カルマはどう思う?」
「そうじゃのう……限りなく黒に違いグレーといったところじゃろうか。ただ、大規模一斉調査をしたのは確かじゃが、どこか穴倉か地下空間にでも逃げ延びた人間がいないとも限らぬ。更に調査を進めてから改めて結論を出させて頂きたいのじゃ」

 そういう秘密の場所もファントム・シーカーは全て見付けてしまうものなんだが、カルマとしてはまだ調べ足りない気がしているのだろう。だったらそこは任せてしまっていいだろう。そんな大量のファントム・シーカーを更に細かく操れるのなんてカルマだけだ。それに何より、絶対に無駄足にはならない。もし生き残りを見付けられたら万々歳。丁重に保護して、一体何があったのか聞かせて貰える。誰も何も見付けられなければ、俺の推測が当たっていることの証明になるのだから。

「じゃあ、カルマには引き続き調査をお願いするとして……問題はルーチェだな」

 アデルはグレーだ。今回の会議でわかったことを全て抜きにしても、まるで人格が変わってしまったかのような話し方をしていたのも気になる。加えて、あのルーチェに対する執着心は異常だった。
 こんな状況で、いくら約束とはいえ、アデルと会わせて良いのだろうか。ますますルーチェの方が心配になってくる。

「魔王様、僕からひとつ提案が。ルーチェに聞いてみるのもひとつの手かもしれません。彼女は四大将軍です。もしもこのイース・ディードで過去に何かあったとすれば、何かしら耳に入っているかもしれませんよ」
「そうだな……じゃあ、こうしよう。ルーチェが目を覚まし次第、2人には面会して貰う。ただしルーチェを向かわせるのではなく、アデルを迎えに行ってくれ。その間、少し世間話でもする感じで聞いてみるから」

 これは万全を期す上でも良い選択のはず。これまで、俺たちは敵のフィールドで戦わされていた。でも今回に限っては違う。もしもアデルが敵だったとしても、ルーチェと話すのはここ、オラクル・ラビリンス。俺たちのフィールドだ。戦闘になっても地の利はこちらにある。
 問題はアデルに拒否される場合だが、そんな可能性があるか一瞬考えて、無いなとすぐに切り捨てる。これは絶対に拒否されない妙手だ。もしもアデルが敵だったら嫌がるだろう。だが、ルーチェは病み上がりで行かせる訳にはいかないという、もっともな言い分がこちらにはある。そしてあれだけ会いたがっていたのだから、後日改めて、とは言わせない。ルーチェ自身もそれを許さないだろう。つまり、どう足掻いてもアデルにはここへ来て貰えるのだ。

「アデルを迎えに行く役は、念のためカルマに依頼する。わかっているな、カルマ? お前自身が行くんじゃないぞ?」
「わかっておる。眷属を遣わそう」

 カルマには苦労をかけてばかりだが、何かあるかもしれない相手と会うのなら、彼女以上の適任はいない。自分自身の分身を出すというのはそのくらい難しい。俺だって本気を出せばやれなくもないが、それでも1体が限界だ。しかも会話はできない。完全に戦闘用である。その点、カルマの方は何でもできる。というのも正確には分身ではなくドッペルゲンガーで、それを洗脳して使役しているためなのだが。

「アザレアは念のため、俺に代わってオラクル・ラビリンスの玉座の間へ行ってくれ。いざという時は防衛システムを起動させて、好きなように使っていい」
「おぉ……僕に任せて頂けるとは。光栄です。必ずや、ご期待に沿って御覧に入れましょう」

 本来、その役目は俺かウロボロスが担うものだ。しかし、今回ばかりはそうも言っていられない。考えてもみて欲しい。オラクル・ラビリンスに招待しておいて俺が顔を出さないというのはあり得ない。そして俺がいるのなら、当然その横にはウロボロスがいるべきだろう。まぁ、ウロボロスはいなくてもいいんだろうが、余りにも俺とセットでいる印象が強く、バラバラだと不審がられるかもしれない。要らないところに気を遣うくらいならアザレアに任せた方が楽というものだ。

「ムラクモは念のため、村の警護へ。普段通りを装ってくれよ?」
「御意」

 ムラクモはアデルと出会ってからというもの、ずっとあの村に常駐させて、騎士たちの襲撃に備えさせていた。結局一度も活躍する機会は無かったものの、アデルたちからすれば、いて当り前の存在にはなっているはず。今は緊急事態ということで呼び戻したのだから、戻しておいた方が無難だ。

「さて、ウロボロスは言うまでもないな?」
「はい、この身に代えても御身をお守り致します」

 守るというより、取って食われちゃいそうな気もしなくもないが、ウロボロス以上に頼りになる前衛もそうそういない。盾という一点のみを見ればゼルエルをも上回る可能性すらある。
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