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第1章:愉快でトリッキーな仲間たちと
ギルドを創りたい、え、無理?
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王都<ラーディッシュ>
<宵闇の竜>や<黄金の虎>を初めとする数々の冒険者ギルドを統括する王国最大の都市だ。
ギルドを創設する機関もここにある。
各々の居場所から追放された2人組、ルークとイブリースは、その高い城壁を見上げていた。
「おー、ここが王都ですか。思っていたより大きいですね」
「まぁ、お前らと比べればどこも大きいだろうよ」
ルークは知っていた。
魔族たちの生活は巨大な建造物1つで完結しており、最大の魔王城ですら、王都の100分の1にも満たないと。
「いやいや、それは魔王軍の技術力が優れている証拠だと思いますよ?」
「ほほぉ、流石に聞き捨てならないぞ」
「ふふん、負け惜しみですか? ザマぁないとはこの事ですね」
「おーい、そこの憲兵さーん。この子はちょっと頭がおかしいだけだから心配いりませーん!」
魔王軍という単語に反応した憲兵が訝しんでいたが、その説明で納得したらしい。
やれやれといった様子で立ち去って行く。
「あ、頭がおかしいってどういう事ですか!? 説明を求めます!」
「どの角度から見てもそうだろう!? 自分の立場を忘れたのか!? バレたら極刑なんだぞ!?」
「うっ!? そ、そういえばそうでしたね。しかし、それはルークが挑発したからではありませんか!」
「勝手に自爆したくせによく言えるな!」
口論しつつ、2人は王都のギルドへ入る。
ここはどこのギルドにも属さない、フリーの冒険者たちが集まる場所だ。
中では100人以上の冒険者たちが、各々で飲食しつつ談笑していた。
「ねぇ、ルーク。どうしてここに?」
「ここでギルドの創設ができるんだよ。ついでに、必要な人材の確保や仕事の受注なんかもな」
「ほぉほぉ、駆け出しギルド御用達って訳ですね」
「そういう事だ。ほら、さっそく受け付けに行くぞ」
ギルドの創設なんて滅多に無いのだろう。
専用カウンターでは、1人の女性が暇そうに天井を見上げていた。
「すみません、ギルドの創設をしたいんですけど」
ルークが声をかけると、女性はパァッと顔を明るくする。
「ご用件を伺おう!」
「いや、だからギルドの創設をお願いしたいんです」
「なるほど、ドンと任せて欲しい!」
「そんな大袈裟な話じゃないと思う――」
「――久々の仕事だ、気合を入れずにいられるか!」
「あ……あぁ、そういう事ですか」
ギルドを創設する者はそう多くないようだ。
女性は意気揚々とカウンター奥の引き出しを探り出す。
一時は不安を覚えたルークだったが、真摯に対応してくれそうだと、逆に安堵したのも束の間。
「ではまずこの書類……書類……えっと、えーと……」
「どうしましたか?」
「待ってくれ、お客人。えーと、これは説明書で、これはゴミ出しの日程表で、これも違うし……」
黙って見ていたイブリースは、ルークの服の裾を引っ張る。
「あの、私は人間界の事には疎いのですが――」
「――安心しろ、その感覚はたぶん当たっている」
「そうですか。いやぁ、こんなにも正解して嬉しくないクイズは初めてです」
「誠に遺憾ながら同感だ。あらゆる意味でな」
この受け付けはギルド創設の申請限定のはず。
それにも関わらず、女性は棚という棚をひっくり返して一生懸命に書類を探している。
待つこと約30分。
女性は、床が凹むほど強く頭を叩き付けて土下座した。
「誠に……誠に申し訳ない! 書類がどうしても見つからないのだ!」
「あ、あの、注目を集める上に痛い事はやめて下さい!」
「明日までには何とかする! 約束だ!」
「わかりました、わかりましたから!」
女性の奇行は止まったが、結局、ギルド創設はできなかった。
2人は途方に暮れて、とりあえず空いている席に着いた。
「すみませーん、ブドウジュースひとつ! ルークは?」
「お前、ナチュラルに頼んだな。水でいいよ」
「じゃあ、お水ひとつ!」
2人は運ばれた飲み物をすする。
方や幸せそうに、方や疲れ果てた様子で。
「出鼻を挫かれたな。あの調子だと明日も不安だし……どうしたものか」
「まぁ、なるようにしかなりませんて。今はまず、束の間の幸せを味わいましょう」
「俺のは水なんだが?」
「それは自業自得ですよ。お水って言ったの、ルークじゃないですか」
「それもそうなんだが……ん?」
何気なくさっきの受け付けを見ると、女性はこっぴどく怒られていた。
――あれは流石に擁護できないな
ルークがそう思ったときだった。
「――あいつ、やっとクビになるんだって」
「ようやく? お堅いからね、国ってさ」
そんな話し声が聞こえて来た。
どうやら暇なウェイトレスたちが雑談しているらしい。
「あいつ、クソ真面目でへこたれないじゃない? 閑職に追いやっても粘ったから、噂じゃ、必要な書類を隠したんだって」
「うわ、それ酷いねー。いじめってやつじゃん」
その瞬間、ルークは立ち上がった。
いや、イブリースも立ち上がった。
お互いに顔を見合わせると、
「私、超ムカつきました」
「奇遇だな。俺もだ」
意思を確認し合い、ギルド創設の受け付けへと向かった。
<宵闇の竜>や<黄金の虎>を初めとする数々の冒険者ギルドを統括する王国最大の都市だ。
ギルドを創設する機関もここにある。
各々の居場所から追放された2人組、ルークとイブリースは、その高い城壁を見上げていた。
「おー、ここが王都ですか。思っていたより大きいですね」
「まぁ、お前らと比べればどこも大きいだろうよ」
ルークは知っていた。
魔族たちの生活は巨大な建造物1つで完結しており、最大の魔王城ですら、王都の100分の1にも満たないと。
「いやいや、それは魔王軍の技術力が優れている証拠だと思いますよ?」
「ほほぉ、流石に聞き捨てならないぞ」
「ふふん、負け惜しみですか? ザマぁないとはこの事ですね」
「おーい、そこの憲兵さーん。この子はちょっと頭がおかしいだけだから心配いりませーん!」
魔王軍という単語に反応した憲兵が訝しんでいたが、その説明で納得したらしい。
やれやれといった様子で立ち去って行く。
「あ、頭がおかしいってどういう事ですか!? 説明を求めます!」
「どの角度から見てもそうだろう!? 自分の立場を忘れたのか!? バレたら極刑なんだぞ!?」
「うっ!? そ、そういえばそうでしたね。しかし、それはルークが挑発したからではありませんか!」
「勝手に自爆したくせによく言えるな!」
口論しつつ、2人は王都のギルドへ入る。
ここはどこのギルドにも属さない、フリーの冒険者たちが集まる場所だ。
中では100人以上の冒険者たちが、各々で飲食しつつ談笑していた。
「ねぇ、ルーク。どうしてここに?」
「ここでギルドの創設ができるんだよ。ついでに、必要な人材の確保や仕事の受注なんかもな」
「ほぉほぉ、駆け出しギルド御用達って訳ですね」
「そういう事だ。ほら、さっそく受け付けに行くぞ」
ギルドの創設なんて滅多に無いのだろう。
専用カウンターでは、1人の女性が暇そうに天井を見上げていた。
「すみません、ギルドの創設をしたいんですけど」
ルークが声をかけると、女性はパァッと顔を明るくする。
「ご用件を伺おう!」
「いや、だからギルドの創設をお願いしたいんです」
「なるほど、ドンと任せて欲しい!」
「そんな大袈裟な話じゃないと思う――」
「――久々の仕事だ、気合を入れずにいられるか!」
「あ……あぁ、そういう事ですか」
ギルドを創設する者はそう多くないようだ。
女性は意気揚々とカウンター奥の引き出しを探り出す。
一時は不安を覚えたルークだったが、真摯に対応してくれそうだと、逆に安堵したのも束の間。
「ではまずこの書類……書類……えっと、えーと……」
「どうしましたか?」
「待ってくれ、お客人。えーと、これは説明書で、これはゴミ出しの日程表で、これも違うし……」
黙って見ていたイブリースは、ルークの服の裾を引っ張る。
「あの、私は人間界の事には疎いのですが――」
「――安心しろ、その感覚はたぶん当たっている」
「そうですか。いやぁ、こんなにも正解して嬉しくないクイズは初めてです」
「誠に遺憾ながら同感だ。あらゆる意味でな」
この受け付けはギルド創設の申請限定のはず。
それにも関わらず、女性は棚という棚をひっくり返して一生懸命に書類を探している。
待つこと約30分。
女性は、床が凹むほど強く頭を叩き付けて土下座した。
「誠に……誠に申し訳ない! 書類がどうしても見つからないのだ!」
「あ、あの、注目を集める上に痛い事はやめて下さい!」
「明日までには何とかする! 約束だ!」
「わかりました、わかりましたから!」
女性の奇行は止まったが、結局、ギルド創設はできなかった。
2人は途方に暮れて、とりあえず空いている席に着いた。
「すみませーん、ブドウジュースひとつ! ルークは?」
「お前、ナチュラルに頼んだな。水でいいよ」
「じゃあ、お水ひとつ!」
2人は運ばれた飲み物をすする。
方や幸せそうに、方や疲れ果てた様子で。
「出鼻を挫かれたな。あの調子だと明日も不安だし……どうしたものか」
「まぁ、なるようにしかなりませんて。今はまず、束の間の幸せを味わいましょう」
「俺のは水なんだが?」
「それは自業自得ですよ。お水って言ったの、ルークじゃないですか」
「それもそうなんだが……ん?」
何気なくさっきの受け付けを見ると、女性はこっぴどく怒られていた。
――あれは流石に擁護できないな
ルークがそう思ったときだった。
「――あいつ、やっとクビになるんだって」
「ようやく? お堅いからね、国ってさ」
そんな話し声が聞こえて来た。
どうやら暇なウェイトレスたちが雑談しているらしい。
「あいつ、クソ真面目でへこたれないじゃない? 閑職に追いやっても粘ったから、噂じゃ、必要な書類を隠したんだって」
「うわ、それ酷いねー。いじめってやつじゃん」
その瞬間、ルークは立ち上がった。
いや、イブリースも立ち上がった。
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※※※
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表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
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