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テティーシェリ視点②
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「でもわたし、王位になんて全く興味ありませんし…。 だから、早くお兄様とお姉様にご結婚していただきたいのですけれど」
現在、この国の王はテティーシェリの兄であるウェシル。
王位継承権第一位を所持しているのは、テティーシェリの姉であるアセトだ。
兄と姉の間に子どもが生まれれば、順次テティーシェリの王位継承権は繰り下がっていく。
だから、テティーシェリは兄と姉が早く婚姻してくれることを望んでいるのだ。 兄と姉が婚姻することは決定事項だが、明確な時期は決定していない。
お二人とももういい年なのに、何をずるずると先延ばしにしているのだろう。 …というのは、テティーシェリの意見だ。
「…そうですね」
ジェドが相槌めいた言葉を発するまでに、妙な間があった。
テティーシェリが自分のためだけに、兄と姉の婚姻を望んでいることを見透かしたのだろうか。
「今の間は何かしら?」
テティーシェリが問うと、ジェドはまた、妙な間を置いた後で答える。
「…王とアセト様は婚姻されるかもしれませんが、それと御子がお生まれになるかどうかは別かと存じます」
にこりともせず、かといって難しい顔をするわけでもなく、ジェドが真顔で淡々と告げた言葉の意味がわからずに、テティーシェリは首を傾げた。
ジェドが言わんとしていることが、全くわからない。
「どういうこと?」
「王とアセト様は、テティ様が思っていらっしゃるほど良好な関係とは言い難いと、私は思っておりますので」
あくまで、私の個人的な見解ですが、とジェドは付け足し、強調した。
ジェドが、テティーシェリの兄と姉を、どのような目で見ているかについては理解したが、ジェドの見解については納得できずに、テティーシェリは問いを重ねる。
「お兄様とお姉様の仲が悪い、とジェドは言いたいの?」
「そのように表現すると語弊がありますね。 お二人の関係は、危ういひとつの【点】で繋がっているに過ぎないと思っています。 ですので、その【点】次第では、どちらにも転びうるかと」
控えめな言い方で、明言を避けてはいるものの、ジェドはテティーシェリの兄と姉が簡単に良くも悪くもなると言っているのではないだろうか。
そのように、テティーシェリは捉えた。
というか、兄と姉を繋いでいる、危ういひとつの【点】とは一体何だろう。
そう考えて、テティーシェリは閃いた。
その【点】、とは、もしかすると王位継承権のことだろうか。
思いつくや否や、その考えはテティーシェリの唇から飛び出していく。
「お兄様は王だけれど、お姉様も王になりたいと思っているということ?」
まさか、テティーシェリの口からその言葉が出るとは思わなかった。
切れ長の目を軽く見開いたジェドの表情から、テティーシェリはそのようにジェドの心情を読み取る。
つまりは、テティーシェリが今口にしたことは、全くの見当違いということだろう。
少なくとも、ジェドが意図したことにかすりもしなかったに違いない。
挙句、ジェドが短く溜息をつくものだから、テティーシェリは思わず反応してしまった。
「あ、ひどい。 今、馬鹿にしたでしょう?」
「いいえ。 神の一族である貴女を、私如きが…なんて、恐ろしい」
目をそっと伏せて、ジェドは首を横に振る。
馬鹿にするなんてありえない、と言っているが、さっきの溜息からは、馬鹿にはしていなくても呆れていることが容易に読み取れる。
そして、ジェドはそれ以上その話題を続けるのは無益と考えたのか、強引な話題転換を図ったらしい。
「王とアセト様の件は別にしても、テティ様はセルト様とご結婚なさらないのですか?」
現在、この国の王はテティーシェリの兄であるウェシル。
王位継承権第一位を所持しているのは、テティーシェリの姉であるアセトだ。
兄と姉の間に子どもが生まれれば、順次テティーシェリの王位継承権は繰り下がっていく。
だから、テティーシェリは兄と姉が早く婚姻してくれることを望んでいるのだ。 兄と姉が婚姻することは決定事項だが、明確な時期は決定していない。
お二人とももういい年なのに、何をずるずると先延ばしにしているのだろう。 …というのは、テティーシェリの意見だ。
「…そうですね」
ジェドが相槌めいた言葉を発するまでに、妙な間があった。
テティーシェリが自分のためだけに、兄と姉の婚姻を望んでいることを見透かしたのだろうか。
「今の間は何かしら?」
テティーシェリが問うと、ジェドはまた、妙な間を置いた後で答える。
「…王とアセト様は婚姻されるかもしれませんが、それと御子がお生まれになるかどうかは別かと存じます」
にこりともせず、かといって難しい顔をするわけでもなく、ジェドが真顔で淡々と告げた言葉の意味がわからずに、テティーシェリは首を傾げた。
ジェドが言わんとしていることが、全くわからない。
「どういうこと?」
「王とアセト様は、テティ様が思っていらっしゃるほど良好な関係とは言い難いと、私は思っておりますので」
あくまで、私の個人的な見解ですが、とジェドは付け足し、強調した。
ジェドが、テティーシェリの兄と姉を、どのような目で見ているかについては理解したが、ジェドの見解については納得できずに、テティーシェリは問いを重ねる。
「お兄様とお姉様の仲が悪い、とジェドは言いたいの?」
「そのように表現すると語弊がありますね。 お二人の関係は、危ういひとつの【点】で繋がっているに過ぎないと思っています。 ですので、その【点】次第では、どちらにも転びうるかと」
控えめな言い方で、明言を避けてはいるものの、ジェドはテティーシェリの兄と姉が簡単に良くも悪くもなると言っているのではないだろうか。
そのように、テティーシェリは捉えた。
というか、兄と姉を繋いでいる、危ういひとつの【点】とは一体何だろう。
そう考えて、テティーシェリは閃いた。
その【点】、とは、もしかすると王位継承権のことだろうか。
思いつくや否や、その考えはテティーシェリの唇から飛び出していく。
「お兄様は王だけれど、お姉様も王になりたいと思っているということ?」
まさか、テティーシェリの口からその言葉が出るとは思わなかった。
切れ長の目を軽く見開いたジェドの表情から、テティーシェリはそのようにジェドの心情を読み取る。
つまりは、テティーシェリが今口にしたことは、全くの見当違いということだろう。
少なくとも、ジェドが意図したことにかすりもしなかったに違いない。
挙句、ジェドが短く溜息をつくものだから、テティーシェリは思わず反応してしまった。
「あ、ひどい。 今、馬鹿にしたでしょう?」
「いいえ。 神の一族である貴女を、私如きが…なんて、恐ろしい」
目をそっと伏せて、ジェドは首を横に振る。
馬鹿にするなんてありえない、と言っているが、さっきの溜息からは、馬鹿にはしていなくても呆れていることが容易に読み取れる。
そして、ジェドはそれ以上その話題を続けるのは無益と考えたのか、強引な話題転換を図ったらしい。
「王とアセト様の件は別にしても、テティ様はセルト様とご結婚なさらないのですか?」
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