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第1章 サンドリヨンが王子様に捕まるまで
18.サンドリヨンは秘密を暴露します。
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王子様は目を白黒させるモンスター家族を置き去りにし、半ば無理矢理にアシュリーをお城に連れ去った。 モンスター家族はもちろんアシュリーも王子様相手に大っぴらに罵倒したり暴れたりするほど、無謀ではなかったと言える。
そうしてアシュリーはお城で、あのお世辞にも清潔とは言えない衣類を身につけたままで、国王ご夫妻と再びの対面をすることになったのである。
王子様がアシュリーのことを国王ご夫妻に色々と紹介しているが、ほとんど耳に入ってこなかった。
アシュリーの容姿が、昨夜と異なるのは、どうしても舞踏会に行きたかったアシュリーが、継母たちを恐れて目くらましの魔法をかけてもらっていたという説明がされていた。
クレイディオの狡いところは、真実の中に嘘を織り交ぜてそれらしく語るところにあると思う。 クレイディオの言を100%信じたとも思えないが、国王ご夫妻はそれ以上の追究はしなかった。
今なら、クレイディオが【闇属性】の王子様と表される理由がよぅくわかる。
優美な容姿と優雅な立ち居振る舞いの下にきれいに隠しているが、とんでもなく利己的な生き物だ、この男は。
アシュリーが内心で溜息をついていると、王妃様にぎゅっと手を握られた。
「お嬢さん、ご苦労されたのねぇ」
明るいグリーンの瞳は少し潤んでいて、王妃様が本当にアシュリーの今までを案じてくれているのはわかる。
けれど、王妃様。
例えば本当に、アシュリーがこの男の――もう、王子様なんて呼んでやらない――婚約者になり、妃になるとすれば、これから先の方が苦労する。 断言してもいい。
「灰かぶり、なんて名前は、君には似合わないね。 雲英雪の妖精。 君の名前を教えてくれる?」
王子様然とした、バックに黒薔薇咲き乱れる微笑みを浮かべながら、クレイディオはアシュリーに強要してくる。 ああもう本当に、強要、という言葉以外にどう表現したらいいのかわからない。
クレイディオと国王ご夫妻からの圧がすごくて、言い逃れができないことだけはアシュリーにもわかった。 適当な名前を口にして誤魔化したい気もするが、身バレもしているところだし、虚偽の証言をした疑いで罰せられることの方が怖い。
「…アシュリー、です」
「あら、素敵なお名前ね」
にこにこと微笑んでいる王妃様に、クレイディオが苦笑している。
「…母上、私の台詞を取らないでいただけますか」
国王陛下も「いい名前だ」と微笑んでいて、名前だけでどうしてこんなに盛り上がれるのかと疑問でしかない。
国王ご夫妻とクレイディオで「式はいつにしましょうねぇ」と始まったので、いよいよアシュリーは困った。
困った、というか、このまま婚約し、結婚することが怖くなったのである。
それは、届出の上でアシュリーの性別は【女】ということにはなっているが、真実は【男】なのである。
このまま何も言わずに婚約し、結婚などしたら、詐欺罪で捕まり、死刑に処されおそれもある。
その累が父にも及び、爵位など剥奪されてしまっては大変だ。
それならば、アシュリーひとりが社会的に死ぬほうがまだ、ダメージが少ないような気がする。
クリスタルヴァン伯爵家には、男なのに女の格好をしているおかしな人間がいる、という噂は立つだろう。
けれど、アシュリーが趣味でこの格好をしていることにすれば、伯爵家の顔に泥を塗っても、爵位が剥奪されることはない。 被害は少ないはずだ。
アシュリーにとっても、男と結婚する必要もなく、今ならばまだ、何かと理由をつけてなかったことにできると思うのだ。 アシュリーは、女性が怖いが、だからといって男性が好きというわけでもないのだから。
そう、アシュリーの脳は働いた。
深呼吸を、ひとつ。 もうひとつ。
意を決して、口を開く。
「あの、」
呼びかければ、三対の目が、アシュリーに向く。
あ、やばい。
決心が鈍りそうだ。
「なんだろう、私の雲英雪の妖精」
ぐっと言葉に詰まったが、クレイディオが微笑んで先を促してくれる。
だからアシュリーはもう一度、なけなしの勇気を振り絞った。
「お城まで連れて来られて、こんなことを申し上げるのもどうかと思うのですけれど」
「他に想う男がいるとでも? そんな戯れ言は聞かないよ」
アシュリーの緊張が伝わったのだろうか。
クレイディオも、国王ご夫妻も笑顔を消して、空気全体が張り詰めているような感じがする。
アシュリーは、ごくりとひとつ生唾を飲み込んで、切り出した。
「あの、私、乙女ではないんです」
瞬間、ぴしり、と、張り詰めていた空気に亀裂が走ったような気がしたのは、気のせいか。
「…アシュリー…」
赤鉄鉱の瞳が全く笑っていないクレイディオが、低くアシュリーの名を呼んだ。
「…同意で合意ならば、許しがたいが、許そう。 だが、もしも君が無理矢理に…蹂躙されたというのなら、私はその男を見つけ出して八つ裂きにしてやる」
あ、なんか、とんでもない方向に話が展開していっている。
このままでは、ありもしない嫌疑のために魔女裁判にかけられる誰かが生まれそうで、アシュリーは即座にそれを否定した。
「あの、そういう意味ではなくて」
「では、どういう意味だろう?」
距離を縮められたわけでもないのに、迫られたように錯覚する。
アシュリーはふかふかのソファのアシュリーの隣に座っているクレイディオから、無意識のうちに身を引きながら、暴露した。
「あの! 私! 男なんです!!」
そうしてアシュリーはお城で、あのお世辞にも清潔とは言えない衣類を身につけたままで、国王ご夫妻と再びの対面をすることになったのである。
王子様がアシュリーのことを国王ご夫妻に色々と紹介しているが、ほとんど耳に入ってこなかった。
アシュリーの容姿が、昨夜と異なるのは、どうしても舞踏会に行きたかったアシュリーが、継母たちを恐れて目くらましの魔法をかけてもらっていたという説明がされていた。
クレイディオの狡いところは、真実の中に嘘を織り交ぜてそれらしく語るところにあると思う。 クレイディオの言を100%信じたとも思えないが、国王ご夫妻はそれ以上の追究はしなかった。
今なら、クレイディオが【闇属性】の王子様と表される理由がよぅくわかる。
優美な容姿と優雅な立ち居振る舞いの下にきれいに隠しているが、とんでもなく利己的な生き物だ、この男は。
アシュリーが内心で溜息をついていると、王妃様にぎゅっと手を握られた。
「お嬢さん、ご苦労されたのねぇ」
明るいグリーンの瞳は少し潤んでいて、王妃様が本当にアシュリーの今までを案じてくれているのはわかる。
けれど、王妃様。
例えば本当に、アシュリーがこの男の――もう、王子様なんて呼んでやらない――婚約者になり、妃になるとすれば、これから先の方が苦労する。 断言してもいい。
「灰かぶり、なんて名前は、君には似合わないね。 雲英雪の妖精。 君の名前を教えてくれる?」
王子様然とした、バックに黒薔薇咲き乱れる微笑みを浮かべながら、クレイディオはアシュリーに強要してくる。 ああもう本当に、強要、という言葉以外にどう表現したらいいのかわからない。
クレイディオと国王ご夫妻からの圧がすごくて、言い逃れができないことだけはアシュリーにもわかった。 適当な名前を口にして誤魔化したい気もするが、身バレもしているところだし、虚偽の証言をした疑いで罰せられることの方が怖い。
「…アシュリー、です」
「あら、素敵なお名前ね」
にこにこと微笑んでいる王妃様に、クレイディオが苦笑している。
「…母上、私の台詞を取らないでいただけますか」
国王陛下も「いい名前だ」と微笑んでいて、名前だけでどうしてこんなに盛り上がれるのかと疑問でしかない。
国王ご夫妻とクレイディオで「式はいつにしましょうねぇ」と始まったので、いよいよアシュリーは困った。
困った、というか、このまま婚約し、結婚することが怖くなったのである。
それは、届出の上でアシュリーの性別は【女】ということにはなっているが、真実は【男】なのである。
このまま何も言わずに婚約し、結婚などしたら、詐欺罪で捕まり、死刑に処されおそれもある。
その累が父にも及び、爵位など剥奪されてしまっては大変だ。
それならば、アシュリーひとりが社会的に死ぬほうがまだ、ダメージが少ないような気がする。
クリスタルヴァン伯爵家には、男なのに女の格好をしているおかしな人間がいる、という噂は立つだろう。
けれど、アシュリーが趣味でこの格好をしていることにすれば、伯爵家の顔に泥を塗っても、爵位が剥奪されることはない。 被害は少ないはずだ。
アシュリーにとっても、男と結婚する必要もなく、今ならばまだ、何かと理由をつけてなかったことにできると思うのだ。 アシュリーは、女性が怖いが、だからといって男性が好きというわけでもないのだから。
そう、アシュリーの脳は働いた。
深呼吸を、ひとつ。 もうひとつ。
意を決して、口を開く。
「あの、」
呼びかければ、三対の目が、アシュリーに向く。
あ、やばい。
決心が鈍りそうだ。
「なんだろう、私の雲英雪の妖精」
ぐっと言葉に詰まったが、クレイディオが微笑んで先を促してくれる。
だからアシュリーはもう一度、なけなしの勇気を振り絞った。
「お城まで連れて来られて、こんなことを申し上げるのもどうかと思うのですけれど」
「他に想う男がいるとでも? そんな戯れ言は聞かないよ」
アシュリーの緊張が伝わったのだろうか。
クレイディオも、国王ご夫妻も笑顔を消して、空気全体が張り詰めているような感じがする。
アシュリーは、ごくりとひとつ生唾を飲み込んで、切り出した。
「あの、私、乙女ではないんです」
瞬間、ぴしり、と、張り詰めていた空気に亀裂が走ったような気がしたのは、気のせいか。
「…アシュリー…」
赤鉄鉱の瞳が全く笑っていないクレイディオが、低くアシュリーの名を呼んだ。
「…同意で合意ならば、許しがたいが、許そう。 だが、もしも君が無理矢理に…蹂躙されたというのなら、私はその男を見つけ出して八つ裂きにしてやる」
あ、なんか、とんでもない方向に話が展開していっている。
このままでは、ありもしない嫌疑のために魔女裁判にかけられる誰かが生まれそうで、アシュリーは即座にそれを否定した。
「あの、そういう意味ではなくて」
「では、どういう意味だろう?」
距離を縮められたわけでもないのに、迫られたように錯覚する。
アシュリーはふかふかのソファのアシュリーの隣に座っているクレイディオから、無意識のうちに身を引きながら、暴露した。
「あの! 私! 男なんです!!」
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