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103話、簡単な朝食と旅の再開
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家で数日ほどゆっくりした後、そろそろ旅を再開しようと私は決め、早起きして軽く準備を始めていた。
準備と言っても、バッグに野外調理用の器具を入れたり箒を突っ込んだりした程度だけど。あと、数日分の食料も入れてある。
私のバッグは魔術がかけられているので、見た目とは裏腹にかなりの量が入る。ただ重さだけはどうしようもないので、あれもこれもと詰め込むことはできない。
今回、バッグにはちょっとした細工を施してみた。私の愛用バッグは手さげタイプなのだが、これにやや平べったい紐を取りつけ、肩がけできるようにしたのだ。ちなみにこの細工をしたのはエメラルダ。食事会の後に頼んでおいた。
肩がけ用の紐は取り外し可能なので、手で持つ時でも邪魔にならない。色々と利便性が増したはずだ。
旅への準備が終わった頃には、ちょうど朝食時になっていた。寝ぼけまなこのライラがふわふわと私の元へと飛んでくる。
「おはようライラ」
「おはよう~」
間延びした挨拶をしながら、ぐしぐしと目を擦るライラ。ここ数日家でゆっくりしていたせいか、ライラも中々気が抜けているようだ。
「簡単に朝食を作るから、それ食べたら旅を再開しようか」
「おっけー。じゃあ私ソファーで少しゆっくりするわ」
ライラはソファーにぽすんと座ると、こてんと横になった。二度寝するつもりだろうか。
まあ朝食ができたらすぐ目を覚ますだろうと、気にせず台所へと向かう。
今日の朝食で全部使い切れるように、買いだめしていた食料も計算して消費していた。なので作るのはもう決まっている。
まず残り少ないレタス。これは昨日の内にちぎって保管していたので、皿に乗せるだけでいい。更にちぎったハムを乗せてドレッシングをかければ、簡単なサラダの完成だ。
お次はフライパンを熱し、溶き卵を入れて軽く塩コショウ、そのままかき混ぜながら焼いていく。
ほんの数十秒ほどでスクランブルエッグが出来上がり、器に入れてケチャップをかければ完成。
後は輪切りタイプのパンが入ったバスケットを腕にかけ、サラダとスクランブルエッグが入った皿を両手に持って居間へと向かった。
「ライラできたよ」
「……あ、良い匂いね。食べる食べる」
やっぱり二度寝してたらしいライラは、湯気が立つ熱々のスクランブルエッグの匂いで飛び起きた。
今日の朝食は、サラダとスクランブルエッグとパン。家での朝食なんてこれくらい素朴な物で良い。これが結構おいしいんだから。
まずはサラダから頂くことにする。
ハムとレタスのサラダには、酸味が効いたドレッシングがかけられている。一口食べると酸っぱさで目が覚める感じだ。
シャキっとしたレタスの水分と、ハムの簡素ながらに主張する肉の味が、酸味あるドレッシングを若干薄めていい塩梅にしてくれる。
レタスのシャキシャキとした食感が口内で響き、ドレッシングの酸っぱさで食欲が増していくようだ。
サラダをある程度食べたところで、パンを手にしてスクランブルエッグを乗っけていく。
ほどほどの量をパンに乗せた後、サンドイッチのように半分に折り畳んでかじりつく。
まろやかなスクランブルエッグは塩が少々効いていて、これ単体でもおいしく食べられる。そこに酸味と甘みが際立つケチャップをかけると、パンへの相性がぐっと高まるのだ。
スクランブルエッグをパンに乗せて食べるの、何か好きなんだよな。意外とボリュームあって食べごたえもあるし。
肉や魚もいいが、卵も十分メイン食材として食べられるポテンシャルがある。料理の幅も広いしね。
もぐもぐ食べつつ、時に口の端についたケチャップを拭っていく。私も家で気が抜けているのか、やや食べ方が雑になっているようだ。
「ごちそう様、おいしかったわ」
私もライラもすぐに食べ終えてしまい、もうごちそう様。簡単ながらも食べごたえのある朝食だった。
朝食が済んだ後は、ゆっくり紅茶を飲むことにした。なにも食べてすぐ家を出ることはない。気ままな旅なのだから、家を出るのは寛ぎながら紅茶を飲んだ後でもいいじゃないか。
そうして紅茶をゆっくり飲んでいると、ライラがそういえば、と喋りかけてくる。
「今日からいったいどこを目指すの?」
「ん? うん……あー……何も決めてなかった」
「ええー……」
呆れるライラの視線が痛い。
そうなんだよな、旅をするならちょこちょこ目指す場所は決めておいた方が良い。
当てもなくさ迷うのは旅と言うより放浪だろう。やっぱり目的地があるとモチベーションが違う。
バッグからこの周辺の地図を取り出し、広げてみる。
「この近くは結構行ったことあるからなぁ……ちょっと遠くの方目指した方がいいのかも」
考えつつ地図を眺めていると、なんだか旅を始めた頃を思い出してきた。
確か最初はケルンの町に寄って、そこからフェリクスの町に行ったんだよな。
そして湿地帯へ向かって、リネットのお店へ行って……ヘレンの町に行ったんだっけ?
ヘレンの町にはあのオリーブオイルを食べようの会があったんだった……そこから出発してすぐライラに出会ったんだっけ。
……そうか、ライラは湿地帯方面をまだ見た事ないのか。
あの辺は途中でリネットのお店の出店祝いをするために切り上げたから、私もまだ見てないものがあるかもしれない。
ここは一度、改めて湿地帯へ向かうのもいいかも。
「よし、まずは湿地帯を目指すことにする」
「湿地帯?」
「常に雨が振ってる地域とその周辺だよ。なかなか異文化って感じで面白かったし、改めてあの方面探索するのもいいかなって」
「ならそこに決定ね」
話は決まり、当面の目的地は湿地帯周辺という事になった。
あの辺りのおかげでお米も食べ慣れたんだよなぁ。お米を使ったおいしい料理がまだまだいっぱいあるのかも。
そうと決まれば早速出発……する前に、茶器や食器を洗っておかないと。さすがに使用済みの食器を長期間放置する度胸は無いのだ。
そう、なにも急ぐことはない。昼前に出れればいいや。
まだ飲みかけの紅茶を、私はことさらゆっくり飲み進めるのだった。
準備と言っても、バッグに野外調理用の器具を入れたり箒を突っ込んだりした程度だけど。あと、数日分の食料も入れてある。
私のバッグは魔術がかけられているので、見た目とは裏腹にかなりの量が入る。ただ重さだけはどうしようもないので、あれもこれもと詰め込むことはできない。
今回、バッグにはちょっとした細工を施してみた。私の愛用バッグは手さげタイプなのだが、これにやや平べったい紐を取りつけ、肩がけできるようにしたのだ。ちなみにこの細工をしたのはエメラルダ。食事会の後に頼んでおいた。
肩がけ用の紐は取り外し可能なので、手で持つ時でも邪魔にならない。色々と利便性が増したはずだ。
旅への準備が終わった頃には、ちょうど朝食時になっていた。寝ぼけまなこのライラがふわふわと私の元へと飛んでくる。
「おはようライラ」
「おはよう~」
間延びした挨拶をしながら、ぐしぐしと目を擦るライラ。ここ数日家でゆっくりしていたせいか、ライラも中々気が抜けているようだ。
「簡単に朝食を作るから、それ食べたら旅を再開しようか」
「おっけー。じゃあ私ソファーで少しゆっくりするわ」
ライラはソファーにぽすんと座ると、こてんと横になった。二度寝するつもりだろうか。
まあ朝食ができたらすぐ目を覚ますだろうと、気にせず台所へと向かう。
今日の朝食で全部使い切れるように、買いだめしていた食料も計算して消費していた。なので作るのはもう決まっている。
まず残り少ないレタス。これは昨日の内にちぎって保管していたので、皿に乗せるだけでいい。更にちぎったハムを乗せてドレッシングをかければ、簡単なサラダの完成だ。
お次はフライパンを熱し、溶き卵を入れて軽く塩コショウ、そのままかき混ぜながら焼いていく。
ほんの数十秒ほどでスクランブルエッグが出来上がり、器に入れてケチャップをかければ完成。
後は輪切りタイプのパンが入ったバスケットを腕にかけ、サラダとスクランブルエッグが入った皿を両手に持って居間へと向かった。
「ライラできたよ」
「……あ、良い匂いね。食べる食べる」
やっぱり二度寝してたらしいライラは、湯気が立つ熱々のスクランブルエッグの匂いで飛び起きた。
今日の朝食は、サラダとスクランブルエッグとパン。家での朝食なんてこれくらい素朴な物で良い。これが結構おいしいんだから。
まずはサラダから頂くことにする。
ハムとレタスのサラダには、酸味が効いたドレッシングがかけられている。一口食べると酸っぱさで目が覚める感じだ。
シャキっとしたレタスの水分と、ハムの簡素ながらに主張する肉の味が、酸味あるドレッシングを若干薄めていい塩梅にしてくれる。
レタスのシャキシャキとした食感が口内で響き、ドレッシングの酸っぱさで食欲が増していくようだ。
サラダをある程度食べたところで、パンを手にしてスクランブルエッグを乗っけていく。
ほどほどの量をパンに乗せた後、サンドイッチのように半分に折り畳んでかじりつく。
まろやかなスクランブルエッグは塩が少々効いていて、これ単体でもおいしく食べられる。そこに酸味と甘みが際立つケチャップをかけると、パンへの相性がぐっと高まるのだ。
スクランブルエッグをパンに乗せて食べるの、何か好きなんだよな。意外とボリュームあって食べごたえもあるし。
肉や魚もいいが、卵も十分メイン食材として食べられるポテンシャルがある。料理の幅も広いしね。
もぐもぐ食べつつ、時に口の端についたケチャップを拭っていく。私も家で気が抜けているのか、やや食べ方が雑になっているようだ。
「ごちそう様、おいしかったわ」
私もライラもすぐに食べ終えてしまい、もうごちそう様。簡単ながらも食べごたえのある朝食だった。
朝食が済んだ後は、ゆっくり紅茶を飲むことにした。なにも食べてすぐ家を出ることはない。気ままな旅なのだから、家を出るのは寛ぎながら紅茶を飲んだ後でもいいじゃないか。
そうして紅茶をゆっくり飲んでいると、ライラがそういえば、と喋りかけてくる。
「今日からいったいどこを目指すの?」
「ん? うん……あー……何も決めてなかった」
「ええー……」
呆れるライラの視線が痛い。
そうなんだよな、旅をするならちょこちょこ目指す場所は決めておいた方が良い。
当てもなくさ迷うのは旅と言うより放浪だろう。やっぱり目的地があるとモチベーションが違う。
バッグからこの周辺の地図を取り出し、広げてみる。
「この近くは結構行ったことあるからなぁ……ちょっと遠くの方目指した方がいいのかも」
考えつつ地図を眺めていると、なんだか旅を始めた頃を思い出してきた。
確か最初はケルンの町に寄って、そこからフェリクスの町に行ったんだよな。
そして湿地帯へ向かって、リネットのお店へ行って……ヘレンの町に行ったんだっけ?
ヘレンの町にはあのオリーブオイルを食べようの会があったんだった……そこから出発してすぐライラに出会ったんだっけ。
……そうか、ライラは湿地帯方面をまだ見た事ないのか。
あの辺は途中でリネットのお店の出店祝いをするために切り上げたから、私もまだ見てないものがあるかもしれない。
ここは一度、改めて湿地帯へ向かうのもいいかも。
「よし、まずは湿地帯を目指すことにする」
「湿地帯?」
「常に雨が振ってる地域とその周辺だよ。なかなか異文化って感じで面白かったし、改めてあの方面探索するのもいいかなって」
「ならそこに決定ね」
話は決まり、当面の目的地は湿地帯周辺という事になった。
あの辺りのおかげでお米も食べ慣れたんだよなぁ。お米を使ったおいしい料理がまだまだいっぱいあるのかも。
そうと決まれば早速出発……する前に、茶器や食器を洗っておかないと。さすがに使用済みの食器を長期間放置する度胸は無いのだ。
そう、なにも急ぐことはない。昼前に出れればいいや。
まだ飲みかけの紅茶を、私はことさらゆっくり飲み進めるのだった。
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