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序章
0.ある女神の溜息
しおりを挟む「…どうしてこうなるのかしら」
繰り返される過ちに、彼女は何もかもを投げ出したくなった。
始まりは女神や男神である者達(以下神々)にとっては、とても些細な事だった。
神々の頂点である創造神は、人間が無意識に息をするのと同じ様に無尽蔵に世界を生み出す。
そこに創造神の意志はなく、そもそも創造神に意思もない。
彼(性別はないが便宜上彼とする)は全てに平等であるが為、志しも思いも不必要としたのである。
故に世界を生み出したら生み出したまま、その先の事を管理する能力が創造神にはなかった。これっぽっちも、欠片も塵芥さえも。
世界が作られ、何もせずに滅び、また世界が作られる。
それを繰り返していく内に、いつの間にかに生まれたのが今回冒頭で溜息ばかりを零している彼女や他の神々である。
それは創造神は勿論、生み出された神達の永遠の謎であるが、創造神とは違い、神々には課せられた仕事と意志があった。
課せられた仕事とは、創造神によって作り出された世界を管理し、維持する事。
それにより、世界が簡単に滅びる事は少なくなった。
しかし少なくなっただけであり、全くなくなった訳ではない。
創造神が次々と世界を生み出している間、神々の数は中々増えなかったのである。
神と言えど、一神で管理できる世界の数は限られてくる。一つ二つならまだしも、十や二十の世界など一人で面倒見れる筈もなかった。
そこで、神々は創造神に願い出た。
神々が出来るのは自分が担当する世界の管理のみ。
そこに新たな生物を誕生させるには創造神に願い出るしかなく、今までもそうして様々な世界に生き物を送り込んできた。それは当たり前の事だ。
それならば、自分達の様な神も願い出れば創造神が創りだせるのではないのか。
神を増やせれば各々の負担も減るに違いない!と。
要は、神々の仕事場は社畜ならぬ神畜だったのである。
喜ばしい事に願い出た通り、創造神から新たな神々が生み出され、元いた神々は歓喜に沸いてすぐに担当世界を割り振った。
ただ、元いた神々と違って創造神から生み出された新米達は、使命を持って生まれなかった。なので暫くは神々が新米を補佐として自分の側に就かせ、仕事を教えたのである。
そして一神前(一人前)となった新米達は、とりあえず一神二つずつの世界を担当する事になった。
問題が起きたのは、すぐだったのか何百年、何千年経ったのかわからない。神々に時間を気にするという概念がないからだ。
頻繁に連絡を取り合っていた神との繋がりが急に途絶えてしまい、それを不思議に思った冒頭の溜息女神が他の神に連絡した。
すると、連絡の途絶えた神が他にも存在する事が判明したのだ。それもどれもが新米として巣立っていった者達ばかり。
彼等が管理していた担当世界の管理部屋を手が空いた者が見に行ったが、気配はあるがもぬけの殻。
しかし担当世界は特に混乱もなく正常に機能している様に見えるという。
このままでは元の神畜時代に逆戻り、休みも無ければリラックスする時間すら取れない!と慌てた神々は、原因を探る為にひとまず居なくなった彼等が担当していた世界を覗く事にした。
自分達の目の代わりとなる「人間」を通して。
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