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第一関門.歳を取ると準備に余念が無いモノ
1.ありきたりで荒唐無稽(1)
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まだ歯も揃い終わらない程の年齢の頃、大人になれば大空を自由に飛べると思っていた。
漫画やアニメで見たヒーローに、頑張れば自分もなれると思っていたのは小学校低学年まで。
呪いや幽霊を信じなくなったのは、小学校高学年でコックリさんをやった大嫌いなクラスメイトが、何の影響もなく普通に学校を卒業したから、だったと思う。
中学では厨二病に陥ったけど、それは若かりし頃の過ちとして、寄り付かなくなった実家の屋根裏に住んでたドブネズミが齧って葬り去ってくれた筈だ。きっと。絶対。
…今頃になって姉家族の誰かが黒歴史ノートを見つけたら、海外逃亡でもしてスマホも契約変更するわ。
その黒歴史満載のノートが誰かにバレたとか、それを苦にして自殺とか、そんな事があった訳じゃない。
社畜歴25年と言っても、元々丈夫すぎるこの身体。
毎年の健康診断でも「この歳にしては病気一つないですね…怖いぐらい」と余計な一言まで言われる程だった。過労死でもなさそうだ。
しかし私は今、目の前の綺麗な若いお嬢さんの…明らかに日本人ではないのに日本語を喋っている推定年齢10代の見目麗しいお嬢さんから。
「伊月綾さん、貴女は死にました」
なんて全く可愛らしくない内容を聴かされていた。
*****
繁忙期による一ヶ月間の残業地獄を終えて、さあ明日から有休消化旅行だ!と眠りについた筈だった。
長く続いた残業日でも、その中で時間を見つけてはちまちまと旅行の為の準備を進め、旅行の前々日には荷物を全てガラガラ(スーツケース)に詰め終わっていた。
二泊三日分の着替えと、旅行用の圧縮袋や化粧品。そして気に入っている姉お手製の化粧水。
なおシャンプー等に拘りは無いので、ホテルのアメニティ頼りだ。荷物も嵩張らなくなるし、何よりアメニティは金がかからない。(宿泊料に入ってるのだろうけど)
着替えだって暑すぎもなく寒すぎもしない今の季節、汗を掻く事も無いだろうと考え、下着は兎も角下に履くズボンはジーンズ一本のみ。もしもの時は現地調達すれば良いだけあって、気軽なものだ。
(ズボンじゃなくてせめてパンツって言え?別に通じればどうでも良いんじゃない?そういう世代なのよ)
行き先は関東圏内。
そりゃあ遠出はしたい。暑いのは好きじゃないから、北海道や東北に行きたい。けれどもそちら方面に行くには二泊三日では到底足りない。
私がしたいのは「ゆったりのんびりひとり旅」であって、あくせくとスケジュールぎっちりに組んだ旅など御免である。
繁忙期を終えたとは言え、旅行が終わったら旅行中に溜まった案件の処理が待ち受けているのだ。
旅行で心を癒しても、身体が疲れきって帰ったら地獄を見るのはこちらなのだ。歳も歳だし。
50でも60でも元気な人がいるのはわかっている。別に馬鹿にしてる訳じゃない。ただね、若いかって言ったら違う。半世紀生きてるのよ?
テレビCMで肌を改善させる薬の宣伝とかで、50歳に見えない肌の持ち主を「お若いですね!」と賞賛してるのを時々見かけるこど、それは見た目であって本当に若い訳じゃない。羨ましいなとは思うけど。
話が逸れてしまったけど、私の旅行は身体と精神、両方共癒される為の物になる筈だった。
それなのに、まさか旅行前日に寝ただけで死ぬことになるとか思う訳ないじゃない。
*****
「どういう事か説明して頂いても?お嬢さん」
「ごめんなさい本当に申し訳御座いませんでした!!!こちらの不手際です!!」
ツルツルなる床でも無いのに、見事な滑るようなスライディング土下座をかました見た目年齢推定10代の自称女神は、あっさりと私の死を宣告した後謝り倒してきた。…なんか手慣れている感がする。
「いや、謝る前に状況を教えて欲しいのだけれど」
貴女は死にました。こちらの不手際です本当すいません、だけじゃ何もわかる訳がない。
それに小学生くらいの子が土下座してるとか、見たくない!それがこの自称女神の、何かを許してもらう為の作戦だったとしてもだ!
「ええ…そうね、ごめんなさい。こちらもまさか、こんな事になるなんて思ってなくて混乱してしまって…」
ようやく地面に擦り付けていた顔を離し、こちらを見上げてくれた自称女神の琥珀色の瞳は、はっきりと困惑を示していた。
自称女神が立ち上がりながら、片手を軽く振るうと、光だけの何もなかった空間に白く丸いテーブルと、地面から浮いた白い椅子と思わしき物が現れた。
浮いているだけでなく、それは綿菓子のようにふわふわしているかに見える。
「どうぞ、お掛けになってください…」
自称女神が向かい合わせになっている、もう一脚の綿菓子椅子に腰を下ろしたのを見て、私も恐る恐る座る事にした。もしこの椅子から私の身体が擦り抜けたとしたら、腰と精神に大ダメージを受けそうだ。清らかじゃないし。
結果、無事に腰を下ろす事が出来た。
見た目だけでなく、座った感触もふわふわして落ち着かない。
ほっと息をついて、白いテーブルに目を向けるといつのまにか紅茶(らしき飲み物)と、様々な形のクッキーが皿に盛られておかれていた。
「ええと、女神サマ?でしたよね」
流石にこんな不思議現象を見せつけられては、目の前の自称女神が人間じゃないんだろうな、とは思った。
私の厨二病が再発して夢を侵食しているのか!?とも考えたが、こんなイタイ夢を見てる50歳独身の女って厨二病どころか最早一種の精神病なのではと、胃に痛みが走った。痛覚があるならきっと夢じゃない。
「はい。わたしは女神の一柱、イリアニィルと申します…その、10代でも幼女でも合法ロリでもございませんわ」「いや、あの合法ロリとまでは思って無いわよ!?というか何処からそんな言葉知った、お知りに成られたのです!??」
幼女は兎も角、合法ロリ、ロリコンって言葉は神様内でもあるって事なのだろうか?
目の前の彼女が本当に女神なら、見た目通りの年齢じゃない可能性が高いし、それならば実年齢は置いといて、見た目『合法』というのは強ち間違いじゃない。と思う。
世の中の変態が歓喜してもおかしくない美少女だし、ロリコンじゃなくても、成長したら有望そうだ。決して、決っっして変態を擁護してる訳じゃないけど!
「あの、話しやすい喋り方で構いません…わたし、日本人の方と喋るのは始めてではないのです…その時に、何回か『合法』だと…」
ごめんなさい!こちらが変態共に代わって謝ります!!だからそんな悲しそうな目でこちらを見つめないで!!?
漫画やアニメで見たヒーローに、頑張れば自分もなれると思っていたのは小学校低学年まで。
呪いや幽霊を信じなくなったのは、小学校高学年でコックリさんをやった大嫌いなクラスメイトが、何の影響もなく普通に学校を卒業したから、だったと思う。
中学では厨二病に陥ったけど、それは若かりし頃の過ちとして、寄り付かなくなった実家の屋根裏に住んでたドブネズミが齧って葬り去ってくれた筈だ。きっと。絶対。
…今頃になって姉家族の誰かが黒歴史ノートを見つけたら、海外逃亡でもしてスマホも契約変更するわ。
その黒歴史満載のノートが誰かにバレたとか、それを苦にして自殺とか、そんな事があった訳じゃない。
社畜歴25年と言っても、元々丈夫すぎるこの身体。
毎年の健康診断でも「この歳にしては病気一つないですね…怖いぐらい」と余計な一言まで言われる程だった。過労死でもなさそうだ。
しかし私は今、目の前の綺麗な若いお嬢さんの…明らかに日本人ではないのに日本語を喋っている推定年齢10代の見目麗しいお嬢さんから。
「伊月綾さん、貴女は死にました」
なんて全く可愛らしくない内容を聴かされていた。
*****
繁忙期による一ヶ月間の残業地獄を終えて、さあ明日から有休消化旅行だ!と眠りについた筈だった。
長く続いた残業日でも、その中で時間を見つけてはちまちまと旅行の為の準備を進め、旅行の前々日には荷物を全てガラガラ(スーツケース)に詰め終わっていた。
二泊三日分の着替えと、旅行用の圧縮袋や化粧品。そして気に入っている姉お手製の化粧水。
なおシャンプー等に拘りは無いので、ホテルのアメニティ頼りだ。荷物も嵩張らなくなるし、何よりアメニティは金がかからない。(宿泊料に入ってるのだろうけど)
着替えだって暑すぎもなく寒すぎもしない今の季節、汗を掻く事も無いだろうと考え、下着は兎も角下に履くズボンはジーンズ一本のみ。もしもの時は現地調達すれば良いだけあって、気軽なものだ。
(ズボンじゃなくてせめてパンツって言え?別に通じればどうでも良いんじゃない?そういう世代なのよ)
行き先は関東圏内。
そりゃあ遠出はしたい。暑いのは好きじゃないから、北海道や東北に行きたい。けれどもそちら方面に行くには二泊三日では到底足りない。
私がしたいのは「ゆったりのんびりひとり旅」であって、あくせくとスケジュールぎっちりに組んだ旅など御免である。
繁忙期を終えたとは言え、旅行が終わったら旅行中に溜まった案件の処理が待ち受けているのだ。
旅行で心を癒しても、身体が疲れきって帰ったら地獄を見るのはこちらなのだ。歳も歳だし。
50でも60でも元気な人がいるのはわかっている。別に馬鹿にしてる訳じゃない。ただね、若いかって言ったら違う。半世紀生きてるのよ?
テレビCMで肌を改善させる薬の宣伝とかで、50歳に見えない肌の持ち主を「お若いですね!」と賞賛してるのを時々見かけるこど、それは見た目であって本当に若い訳じゃない。羨ましいなとは思うけど。
話が逸れてしまったけど、私の旅行は身体と精神、両方共癒される為の物になる筈だった。
それなのに、まさか旅行前日に寝ただけで死ぬことになるとか思う訳ないじゃない。
*****
「どういう事か説明して頂いても?お嬢さん」
「ごめんなさい本当に申し訳御座いませんでした!!!こちらの不手際です!!」
ツルツルなる床でも無いのに、見事な滑るようなスライディング土下座をかました見た目年齢推定10代の自称女神は、あっさりと私の死を宣告した後謝り倒してきた。…なんか手慣れている感がする。
「いや、謝る前に状況を教えて欲しいのだけれど」
貴女は死にました。こちらの不手際です本当すいません、だけじゃ何もわかる訳がない。
それに小学生くらいの子が土下座してるとか、見たくない!それがこの自称女神の、何かを許してもらう為の作戦だったとしてもだ!
「ええ…そうね、ごめんなさい。こちらもまさか、こんな事になるなんて思ってなくて混乱してしまって…」
ようやく地面に擦り付けていた顔を離し、こちらを見上げてくれた自称女神の琥珀色の瞳は、はっきりと困惑を示していた。
自称女神が立ち上がりながら、片手を軽く振るうと、光だけの何もなかった空間に白く丸いテーブルと、地面から浮いた白い椅子と思わしき物が現れた。
浮いているだけでなく、それは綿菓子のようにふわふわしているかに見える。
「どうぞ、お掛けになってください…」
自称女神が向かい合わせになっている、もう一脚の綿菓子椅子に腰を下ろしたのを見て、私も恐る恐る座る事にした。もしこの椅子から私の身体が擦り抜けたとしたら、腰と精神に大ダメージを受けそうだ。清らかじゃないし。
結果、無事に腰を下ろす事が出来た。
見た目だけでなく、座った感触もふわふわして落ち着かない。
ほっと息をついて、白いテーブルに目を向けるといつのまにか紅茶(らしき飲み物)と、様々な形のクッキーが皿に盛られておかれていた。
「ええと、女神サマ?でしたよね」
流石にこんな不思議現象を見せつけられては、目の前の自称女神が人間じゃないんだろうな、とは思った。
私の厨二病が再発して夢を侵食しているのか!?とも考えたが、こんなイタイ夢を見てる50歳独身の女って厨二病どころか最早一種の精神病なのではと、胃に痛みが走った。痛覚があるならきっと夢じゃない。
「はい。わたしは女神の一柱、イリアニィルと申します…その、10代でも幼女でも合法ロリでもございませんわ」「いや、あの合法ロリとまでは思って無いわよ!?というか何処からそんな言葉知った、お知りに成られたのです!??」
幼女は兎も角、合法ロリ、ロリコンって言葉は神様内でもあるって事なのだろうか?
目の前の彼女が本当に女神なら、見た目通りの年齢じゃない可能性が高いし、それならば実年齢は置いといて、見た目『合法』というのは強ち間違いじゃない。と思う。
世の中の変態が歓喜してもおかしくない美少女だし、ロリコンじゃなくても、成長したら有望そうだ。決して、決っっして変態を擁護してる訳じゃないけど!
「あの、話しやすい喋り方で構いません…わたし、日本人の方と喋るのは始めてではないのです…その時に、何回か『合法』だと…」
ごめんなさい!こちらが変態共に代わって謝ります!!だからそんな悲しそうな目でこちらを見つめないで!!?
応援ありがとうございます!
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