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第十四話:七夕フェスと、やさしい夜店の灯り
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「望月さん……突然なんですが、七夕フェスで屋台を出していただけませんか?」
そう切り出したのは、美咲の会社の庶務課にいる女性、柳さん。
町内会にも関わっているらしく、百貨店イベントを見た近隣商店街のメンバーからの“ラブコール”を携えてきた。
「子どもたちも来るイベントでして。派手じゃなくていいので、“優しい味”のお店を出してほしいって声が多くて……」
「……それは、光栄なお話ですね」
「ご無理でなければ、ぜひ……!」
陽翔は静かに頷いた。
「ええ、もちろん。“誰かの心に残るごはん”が作れるのなら」
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【異世界ネットスーパー】では、ちょうどぴったりなカテゴリが解放されていた。
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🛒【新カテゴリ:縁日メニュー】
・星空ソース焼きそば(麺に星屑が練り込まれた、光る一品)
・ほしもち(もっちもち、ほんのり甘くて、七夕限定販売)
・願いドリンク(飲んだあと、胸がすっと軽くなるジュレ系ドリンク)
・月灯チキン(こんがり焼いた串チキン、光るたれが特徴)
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「今回は、お子さまにも喜んでいただけるような屋台風にしましょう」
「屋台風……! わーっ、たのしみっ!」
美咲もすでにノリノリである。
「ちなみに、美咲さんは浴衣、お召しになりますか?」
「……え、ちょ、ちょっと待って、そういうの言われると……照れる……!」
「ふふ、では私も和装で行くとしましょう」
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七夕フェス当日――。
涼やかな夜風の吹く夏の夕暮れ。
小さな商店街の一角に、ほんのり光る異世界屋台がひとつ。
木のカウンターに手書きのお品書き。
灯籠のような魔道具風ランタンが揺れて、行列には家族連れが並んでいた。
「“星空やきそば”って書いてある! なにそれー!?」
「キラキラしてる~!!」
「これ、食べたら願い叶うってお兄ちゃん言ってた!」
子どもたちのはしゃぐ声が、会場に響く。
「お待たせいたしました。“星空ソースやきそば”、どうぞ」
「わああ……ほんとに光ってる! お父さん見て、これ光ってるよー!!」
陽翔はひとりひとりに、丁寧にトングを動かしながら、笑顔で接客していた。
美咲は隣のサポートテーブルでドリンクを配りながら、ふと見上げた空に――無数の短冊が揺れているのを見た。
(“家族が元気でありますように”
“明日も笑えますように”
“あの人に会えますように”)
ひとつひとつの願いが、ささやかで、あたたかい。
そんな空の下で、陽翔の料理が、人の心にそっと寄り添っていることが――嬉しくてたまらなかった。
⸻
イベント終盤。
小さな女の子が、もじもじしながら陽翔に話しかけた。
「おにいさん……このやきそば、また食べたい……また来てくれる?」
陽翔はしゃがんで目線を合わせ、やわらかく微笑んだ。
「はい。いつかまた、きっと。――それまで、お元気でいてくださいね」
女の子は照れながら、短冊に何かを書き込んだ。
「なに書いたの?」と周りが聞くと、
彼女は小さな声でこう言った。
「“またおにいさんに、あのやきそば作ってもらえますように”」
その瞬間、美咲はぐっと胸が熱くなった。
陽翔の料理は、ちゃんと、**“誰かの願い”**にもなっている。
⸻
帰宅後。
「……楽しかったですね」
「うん。陽翔くん、またすごい魔法みたいな料理しちゃって……人気者だったよ」
「いえ、私はただ“おいしいね”って笑ってもらいたくて」
「……好き」
「それは何度でも聞きたい言葉です」
ふたりはそのまま、縁日帰りの浴衣のまま、ソファに身を預けた。
外ではまだ、風鈴の音がかすかに揺れていた。
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