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しおりを挟む「……はぁ、領主様のご子息……ねぇ……」
とりあえず、実家の自室で正座しながら現実逃避中。
たしかに品があるなぁと思ってたけど、まさか本物のお坊ちゃまだったとは……!
でも、特に何か怒られたわけでもないし、変なこともしてないよね、私。おやつ売って、手が荒れてる人にクリーム売って……うん、普通。セーフ。
それに、変なものを出してたら、もっと早くなにか言われてたかもしれないし……。多分。
「気を取り直して、屋台の準備でもしよう!」
新しく使えるようになった「屋台機能」──ワクワクしながら、屋台メニューを脳内で開いてみる。
〈屋台を開設しますか?〉
YES / NO
YES!
すると、異世界店舗の端っこにあった何もなかったスペースに、屋台っぽい木製のカウンターがニョキニョキと生えてきた!
おお~、ラノベ演出ありがたい!しっかり和風テイストで、提灯までついてる!
「おばさんにもらったお着物、ここで着るっきゃない!」
実家のクローゼットから和柄の浴衣風着物を取り出して、鏡の前で着付けに悪戦苦闘しながらも、なんとかそれっぽく着られた。髪もまとめて、髪飾りもちょこんと添えて。
「うん、……旅館の仲居さんって感じだけど、まあいっか」
商品も料理系にしようか迷ったけど、調理設備もないし、最初は安全なところから。
そこで選んだのが——
「ラムネ!」
そう、日本の縁日屋台の定番、ビー玉入りの瓶ラムネ!
瓶がきれいだし、飲み終わっても容器として使える。炭酸は異世界にほぼ無いだろうし、衝撃はあるはず!
近所の業務スーパーと通販でまとめ買いして、瓶ごと屋台に並べると……
「……ちょっとした夏祭りみたい!」
さらに、瓶の中に光る魔石風のLEDライト(ただのインテリア用品)を忍ばせて、夜には瓶が光る仕掛けに。
「うん!異世界っぽくなってきた!」
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翌日──。
お母さんが出勤したのを見送って、さっそく異世界店舗へ。
すると……
「こんにちは~!」
「きゃー!お姉ちゃん可愛い~!」
「おぉ、今日の服すごい!キレイ!」
やってきたのはアランくん、デュランくん、そしてイグラムくん!
今日はさらにもう一人──
「こ、こんにちは……ミーニャです……」
ちょこん、と私の後ろに隠れるようにしてる小さなケモミミの女の子。
黒髪に猫のような耳がぴこぴこ動いていて、目がくりくりしてる……あ、かわいい……。
「いらっしゃい!今日は屋台を出してみたんだよ。冷たい飲み物、飲んでいかない?」
「これ、飲み物なんだ!瓶がキラキラしてる~!」
「このビー玉って取れるの?」
「飲み終わったらチャレンジしてみて!でもお口に入れないでね、絶対に!」
そうして、一本ずつ渡してみると──
「シュワシュワしてる……!」「ん~っ、甘い!」「すごく冷たい……!」
「お姉ちゃん、これ、いくらなの?」
「今日は試し出店だから、一本50Gでいいよ。お友達価格!」
「買うー!」「もう一本飲みたい!」「お兄ちゃん、私も……」
この調子なら、ラムネ屋台は当たりかも……!
と思っていたら──
「……失礼、こちらの方が“異界の商人”でいらっしゃいますか?」
屋台の奥、通路の先から、背の高い銀髪の騎士風の青年が、こちらを見ていた。
「え、えぇと……はい。そうですけど……」
「私はイグラム様の護衛を務めております。領主様より、お話がございます。後日、屋敷へご招待したいとのことです」
──ま、まさか、来ちゃった!?
異世界のお偉いさんから、正式なご招待!?
こ、心の準備が……っ!
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