9 / 32
9
しおりを挟む
「――というわけで、招待状、いただきました……」
私はその夜、実家のリビングでふかふかの座椅子にもたれながら、ラムネの空き瓶を眺めていた。
目の前には、異世界の領主様直筆(たぶん)の招待状が、きらびやかな封蝋付きで鎮座している。
母はまだ仕事中、家には私ひとり。
「いや、貴族のお屋敷って……私、Tシャツにスウェット上下で暮らしてるんだけど……!?」
行くのは数日後って書いてあったけど、準備って何すればいいの!?
和服で行くの?ドレス?髪?靴?靴なんて草履しか履いてないよ!?(屋台のとき)
うぅ~、とりあえず一度寝て現実逃避……。
***
そして翌日。
私がまず向かったのは、異世界――ではなく、近所のショッピングモールだった。
「現代側で準備できるものは、全部そろえとこ……!」
異世界の文化はよくわかんないけど、見た目がきちんとしてる人に悪い印象は与えないはず。
ということで、選んだのは、
・落ち着いた色味のワンピース風和装(着付け不要・旅行用)
・まとめ髪用のシニヨンウィッグとかんざし風アクセサリー
・歩きやすいけどきれいめな靴(草履無理)
あと、何気に重要そうだと思って買ったのが――
「ギフト用のお菓子とハンドクリームの特別パッケージ!」
ちょっと高めの和風箱入り菓子と、金箔入りのハンドクリーム。
異世界にとってはたぶん「超高級品」になるはず!
「……こういうとき、実家暮らしってありがたいよね」
冷蔵庫から飲み物もらって、お風呂入って、荷物置けて、すぐ出発できるっていう安心感。
ありがとう、母。私、ちょっと貴族に会ってくるね。
***
数日後。
「ようこそ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
迎えに来てくれたのは、例の銀髪騎士さん。
異世界の店舗を起動すると、今回は直接、屋敷の前庭へつながっていた。
庭、広っっっ……!
なんか噴水あるし、芝も完璧に刈られてるし、鳥が飛んでて蝶が舞ってるし。
ラノベだったらここでイケメンがバラの花束持って出てくるやつだよね。
そして――
「先日は、我が息子がたいへんお世話になりました」
姿を現したのは、優しげな笑みをたたえた中年の男性。
渋い金髪、深いグリーンのローブ、そして柔らかい声。
間違いなく、領主様だった。
「お会いできて光栄です……わたくし、商人……えっと、ええと、み、美咲と申します……」
かみかみ。
「ああ、かまいませんよ。美咲殿、とお呼びしてよろしいでしょうか。イグラムもミーニャも、あなたの店を気に入りましてな。ミーニャなど、毎日“あのキラキラのラムネ”が飲みたいとうるさくて」
そ、そんなに!?
……うれしい!けど、毎日飲ませていいの!?あれ糖分すごいけど!
「本日は、もしよろしければ、異界の商品について少しお話を伺えればと思いまして」
おおぉぉ……これはつまり、正式に商談のお誘いということ……?
やばい。なんか急に“ただの飴とラムネ売ってた人”から、“異世界ビジネスウーマン”になった気がする。
「もちろんです! わたしにできる範囲であれば、何でもお話しします!」
深々と頭を下げながら、私は心の中で小さくガッツポーズを決めた。
いよいよ、異世界ビジネスが本格始動する……!
---
私はその夜、実家のリビングでふかふかの座椅子にもたれながら、ラムネの空き瓶を眺めていた。
目の前には、異世界の領主様直筆(たぶん)の招待状が、きらびやかな封蝋付きで鎮座している。
母はまだ仕事中、家には私ひとり。
「いや、貴族のお屋敷って……私、Tシャツにスウェット上下で暮らしてるんだけど……!?」
行くのは数日後って書いてあったけど、準備って何すればいいの!?
和服で行くの?ドレス?髪?靴?靴なんて草履しか履いてないよ!?(屋台のとき)
うぅ~、とりあえず一度寝て現実逃避……。
***
そして翌日。
私がまず向かったのは、異世界――ではなく、近所のショッピングモールだった。
「現代側で準備できるものは、全部そろえとこ……!」
異世界の文化はよくわかんないけど、見た目がきちんとしてる人に悪い印象は与えないはず。
ということで、選んだのは、
・落ち着いた色味のワンピース風和装(着付け不要・旅行用)
・まとめ髪用のシニヨンウィッグとかんざし風アクセサリー
・歩きやすいけどきれいめな靴(草履無理)
あと、何気に重要そうだと思って買ったのが――
「ギフト用のお菓子とハンドクリームの特別パッケージ!」
ちょっと高めの和風箱入り菓子と、金箔入りのハンドクリーム。
異世界にとってはたぶん「超高級品」になるはず!
「……こういうとき、実家暮らしってありがたいよね」
冷蔵庫から飲み物もらって、お風呂入って、荷物置けて、すぐ出発できるっていう安心感。
ありがとう、母。私、ちょっと貴族に会ってくるね。
***
数日後。
「ようこそ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
迎えに来てくれたのは、例の銀髪騎士さん。
異世界の店舗を起動すると、今回は直接、屋敷の前庭へつながっていた。
庭、広っっっ……!
なんか噴水あるし、芝も完璧に刈られてるし、鳥が飛んでて蝶が舞ってるし。
ラノベだったらここでイケメンがバラの花束持って出てくるやつだよね。
そして――
「先日は、我が息子がたいへんお世話になりました」
姿を現したのは、優しげな笑みをたたえた中年の男性。
渋い金髪、深いグリーンのローブ、そして柔らかい声。
間違いなく、領主様だった。
「お会いできて光栄です……わたくし、商人……えっと、ええと、み、美咲と申します……」
かみかみ。
「ああ、かまいませんよ。美咲殿、とお呼びしてよろしいでしょうか。イグラムもミーニャも、あなたの店を気に入りましてな。ミーニャなど、毎日“あのキラキラのラムネ”が飲みたいとうるさくて」
そ、そんなに!?
……うれしい!けど、毎日飲ませていいの!?あれ糖分すごいけど!
「本日は、もしよろしければ、異界の商品について少しお話を伺えればと思いまして」
おおぉぉ……これはつまり、正式に商談のお誘いということ……?
やばい。なんか急に“ただの飴とラムネ売ってた人”から、“異世界ビジネスウーマン”になった気がする。
「もちろんです! わたしにできる範囲であれば、何でもお話しします!」
深々と頭を下げながら、私は心の中で小さくガッツポーズを決めた。
いよいよ、異世界ビジネスが本格始動する……!
---
212
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる