持ち込み商品で異世界交流!

きっこ

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「――というわけで、招待状、いただきました……」

私はその夜、実家のリビングでふかふかの座椅子にもたれながら、ラムネの空き瓶を眺めていた。
目の前には、異世界の領主様直筆(たぶん)の招待状が、きらびやかな封蝋付きで鎮座している。

母はまだ仕事中、家には私ひとり。

「いや、貴族のお屋敷って……私、Tシャツにスウェット上下で暮らしてるんだけど……!?」

行くのは数日後って書いてあったけど、準備って何すればいいの!?
和服で行くの?ドレス?髪?靴?靴なんて草履しか履いてないよ!?(屋台のとき)

うぅ~、とりあえず一度寝て現実逃避……。

 

***

そして翌日。

私がまず向かったのは、異世界――ではなく、近所のショッピングモールだった。

「現代側で準備できるものは、全部そろえとこ……!」

異世界の文化はよくわかんないけど、見た目がきちんとしてる人に悪い印象は与えないはず。

ということで、選んだのは、

・落ち着いた色味のワンピース風和装(着付け不要・旅行用)
・まとめ髪用のシニヨンウィッグとかんざし風アクセサリー
・歩きやすいけどきれいめな靴(草履無理)

あと、何気に重要そうだと思って買ったのが――

「ギフト用のお菓子とハンドクリームの特別パッケージ!」

ちょっと高めの和風箱入り菓子と、金箔入りのハンドクリーム。
異世界にとってはたぶん「超高級品」になるはず!

「……こういうとき、実家暮らしってありがたいよね」

冷蔵庫から飲み物もらって、お風呂入って、荷物置けて、すぐ出発できるっていう安心感。
ありがとう、母。私、ちょっと貴族に会ってくるね。

 

***

数日後。

「ようこそ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

迎えに来てくれたのは、例の銀髪騎士さん。
異世界の店舗を起動すると、今回は直接、屋敷の前庭へつながっていた。

庭、広っっっ……!
なんか噴水あるし、芝も完璧に刈られてるし、鳥が飛んでて蝶が舞ってるし。
ラノベだったらここでイケメンがバラの花束持って出てくるやつだよね。

そして――

「先日は、我が息子がたいへんお世話になりました」

姿を現したのは、優しげな笑みをたたえた中年の男性。
渋い金髪、深いグリーンのローブ、そして柔らかい声。

間違いなく、領主様だった。

「お会いできて光栄です……わたくし、商人……えっと、ええと、み、美咲と申します……」

かみかみ。

「ああ、かまいませんよ。美咲殿、とお呼びしてよろしいでしょうか。イグラムもミーニャも、あなたの店を気に入りましてな。ミーニャなど、毎日“あのキラキラのラムネ”が飲みたいとうるさくて」

そ、そんなに!?
……うれしい!けど、毎日飲ませていいの!?あれ糖分すごいけど!

「本日は、もしよろしければ、異界の商品について少しお話を伺えればと思いまして」

おおぉぉ……これはつまり、正式に商談のお誘いということ……?

やばい。なんか急に“ただの飴とラムネ売ってた人”から、“異世界ビジネスウーマン”になった気がする。

「もちろんです! わたしにできる範囲であれば、何でもお話しします!」

深々と頭を下げながら、私は心の中で小さくガッツポーズを決めた。

いよいよ、異世界ビジネスが本格始動する……!


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