女軍人ローランド/姫騎士セラフィーナは一国を担う気高き女戦士

小鳥遊凛音

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はじまりの章

第三節 女軍人完全敗北す

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「そこだっ!放てっ!」

ローランドの張りのある大きな声で放たれた攻撃。
戦場は、瞬く間に焼け野原へと変貌を遂げてゆく・・・

「勝機!最後だ!」

その一声で敵は全滅したのだ。

「よし、全員無事だな?これより帰還する」

そして、ローランドは指揮を執り帰還する。
全員が無事に帰還するとリーヴァンシュタルツ国の現、国王より感謝の意が
告げられた。

「よくぞ、帰還してくれました。全員揃ってこの場へ立ってくれた事、心より感謝します」

ちょっとした式典を終えるとローランドは、先に協定を結んでいたレイトーニを呼び自室にてひと時の休息に入っていた。

「おめでとう。ローランド」

「あぁ。貴殿のアドバイス、実に有力なものであった。心より感謝する」

今回の勝利の要となった攻撃方法でローランド側に軍配が上がった。
その攻撃方法を伝授したのがレイトーニだったのだ。

「いいや。それは貴女が要領のいい点、敏腕である証拠さ」

紅茶を嗜みながらレイトーニはローランドが勝利を掴み取った理由について考えていた。

「戦場と言う一時の油断が命を落とす事に繋がる。
その様な状況でも貴女は動じる事なく凛として敵と向かい合う。
まだ若いし、ましてや女性と言う事も更に凄みに長けている」

決して褒めちぎるつもりでは無かったがレイトーニの見解ではこれらの理由は事実として捉えられる事であった。

「ありがとう・・・その様に言ってもらえて私も自信がみなぎって来る」

ローランドは、少し照れながら紅茶を嗜む。

「それはそうと、あの・・・拷問の時の話なんだけれど」

レイトーニは、改めて固唾を飲むと先日ローランドから拷問を受けた際に告げて来た事について尋ねた。

「あぁ、それは・・・」

ローランドは、天井を見上げながら今目の前にいる男子を信頼出来る者として考えようとしていた。
そして、自分が遭遇して来た事について語った。

「なるほど。それじゃぁ、貴女は本当のローランドでは無い・・・と言うのは先の拷問の時にも少し触れたけれど確かにその話の流れからだと理解出来る」

腕を組み納得するレイトーニ。
信じてもらえない様な話を辛うじて語ってみせたローランドには、ある企みがあった。

(レイトーニ・・・本当に貴方は黒人では無いの?
もし、本当は黒人だとすればこれ程嬉しい事は無いのに・・・)

レイトーニは、ローランドから自らの遡上を聞く事が出来て少し信頼関係が築けたのだろうと安堵していた。

「その、貴女がここへ来る前の世界での話・・・なのですが、幼馴染の男の子がいたと言う事ですが、ひょっとしてその男子を?」

ローランドは、話の意図を読み取るとレイトーニを少し泳がせつつ面白い企みが過った。

「えぇ。黒人と言う男子なのですが、これがなよなよしくて頼りにならないと言った・・・まさに今の貴方とは真逆の存在と言った所で」

ローランドは、レイトーニの表情を伺う。

「そ、そうなんですね。そんなに頼りにならない男子なのに拷問の時、貴女は甘い声を出されて私をその黒人だと誤解されていた。それは何故?」

レイトーニの鋭いツッコミに対してローランドは・・・

「もしも、貴殿が黒人だったと仮定した場合、黒人は私の事が大好きだったもので、きっと喜んで化けの皮を自ら剥がしてくれるだろうと・・・」

ローランドは、レイトーニの隣に座るとじっとレイトーニの瞳を見つめ続けた。

「ちっ、近いです!貴女は、ご自分の魅力にお気付きなのかお気付きでは無いのか分からない」

頬を染め顔を反らずレイトーニ。

「あら?レイトーニ大佐。お顔が赤いご様子。熱でもあるのでは?」

そして、更に距離を詰めるローランド。

「い、いや。少し暑いだけで私は何もありませんのでお気になさらず!」

必死に抵抗を続けるレイトーニ。

「それで、私はその腐れ縁だった黒人と言う軟弱な男とある日、私の自宅で宿題を済ませようと一緒に勉強していたのですが・・・私が少し黒人を誘惑すると黒人はムラムラとしてしまったのか、私をベッドに押し倒し、鼻息を荒げながら私のヴァージンを奪ってしまいました」

「そっ、そんな事していないし誰がなよなよしているって!?・・・はっ、しまっ!!・・・た」

遂に化けの皮を剥がす事に成功したローランド・・・

「くっくっく・・・あぁ~、面白い。黒人は、やっぱりここにいた💛」

顔を両手で隠し自分の失態を悔いた黒人。

「でも、どうやってここに来たの?」

そして、黒人はどうして沙夜の元へ訪れる事が出来たのかを語った。

「沙夜、君はあの日現実世界で亡くなってしまった。
俺は、その事実を受け入れる事が出来なくてずっと君の手を握り続けていたんだ。
こうしているといつか目を覚まして、はにかんだ笑顔を俺に向けて・・・待たせちゃったねって。そんな風に言ってくれるんじゃないかって思ってた。

でも、そんな事あり得る訳が無い。
一度死んだ人間が生き返るはずが無いんだ。

それでも俺は諦める事が出来なかった。
そして夜になって、足音が聞こえて来たから看護師さんから誰かに出て行って欲しいって言われるんじゃないかと思っていたんだ。

足音が扉の前で止まった瞬間だった。部屋一面が光に包まれて気が付くとここの世界に立っていて、ひょっとするとこの世界に沙夜がいるんじゃないかって思っていたら案の定、直ぐに君を見付け出す事が出来た」

黒人が事情を話し終えると、ローランドの姿をした沙夜は今にもあらゆる感情が溢れ出すかの如く思いっきり黒人を抱きしめた。

「ちょっ、力強っ!沙夜。待ってくれ流石に息が・・・出来な・・・い」

ガクンッ

黒人は、あまりにも嬉し過ぎたせいか無意識の内にレイトーニの全身をしっかりと抱きしめ過ぎた為、黒人自体が気絶してしまった。

「黒人?黒人ぉぉぉ~っ!ごめんね・・・黒人」

「ローランド様どうされましたかっ!?」

声を大きく上げた為飛んで来たリリア。

「リリア!?あ、あぁ、大丈夫だ。少し驚いてしまっただけだ!心配には及ばん」

「そうですか。それならば良かったです。何かありましたらご遠慮無くお呼び下さい」

「あ、ありがとう」

リリアが心配して慌てて声を掛けてくれ、一気に赤面させるが何とか誤魔化す。

「さ、沙夜ぁ~・・・」

うなされるレイトーニこと黒人。

「あっ!黒人。大丈夫?」

「あぁ・・・何とかな。それより・・・」

黒人が目を覚ますと、沙夜の現状やこの先の事について話を進めた。

「じゃぁ、私はあの時に間違い無く死んじゃったって事?」

黒人は、酷だと承知の上で沙夜の現状を伝えた。

「でも、どうしても俺は納得出来ないんだ」

黒人は、直接沙夜の死に直面していた。
だが、不可解な事が頭を過っており、その事について伝える事にした。

「今、間違い無く俺はここにいる。
そして、沙夜も・・・もし、沙夜が実際に死んでしまったなら何故俺と沙夜がここで再会を果たしているのか?」

死んでしまったら意志も何も全てが消えてしまうだろう。
けれど、沙夜の意志と魂は今ローランドとして実在していた。
そして、同じ時間軸の同じ世界で二人は再会を果たしている。

そうなって来ると、沙夜は現実世界で本当に死んでしまったのかと言う大きな疑問が生じて来るのだ。

「それって、よくイラストの多い小説なんかで出て来る・・・異世界転生?みたいな話じゃないの?」

「あぁ・・・よくアニメ化とかしているあの・・・でも、あの話って主人公が死んだり異世界へ転移したりするから話が始まるんじゃないのか?
俺達みたいに片方が死んで転生・・・そしてもう片方は転移って事あるのか?」

フィクションの世界の話を二人は真剣に考え始めた。
片方が転生した先の地、もう片方が転移して来た地が共通であり元々いた世界でも幼馴染として慣れ親しんでいる二人が今回、何故同じ所へ転生または転移して来たのか・・・

「まぁ、ここでどうこう言っていたとしても何も話は進まないだろうし、私は引き続きこの国を守る為に戦う事にするわ。そして平和になった段階で色々と探りを入れて元の世界へ戻れるかどうかって所かしら?」

「そうか・・・それもそうだよな。とりあえず落ち着かなきゃどうする事も出来ないし、俺も協力するから一緒に頑張ろうな!」

こうして、協定以上の二人の強い絆は結ばれた。

「でも・・・一つ気になっている事があるんだけど?」

沙夜は、何か企んだ瞳を浮かべると黒人に迫ろうとした。

「な、何だよ?気になる事って・・・」

沙夜は頬を上気させ、黒人に密着する。

「この間のご💛う💛も💛ん・・・の時に、黒人大きくなってたよね?
どうして?それってローランドが私だって分かっていたから?それとも・・・あんな感じのシチュエーションに憧れていた・・・とか?」

沙夜は、流し目で黒人を見つめながら下半身を摩り始めた。

「お、おぃっ!何を突然!?も、もういいだろ?あの時の話は・・・恥ずかしいだろ」

黒人も頬を染めもじもじする。

「現実世界に戻ったとして、私がもしも本当に死んでしまっていたら・・・」

そう沙夜は不安げに呟いた。

「だから、死んでしまっていたら沙夜自身の意志も記憶も全て消えるはずだろ?」

「本当にそう思う?もしも現実世界に戻った瞬間、黒人は元気で何事も無かったかの様な状態だったとして、私はそのまま息を引き取った状態になったら?・・・」

「沙夜は、死んでなんかいない!」

「そう言い切れる根拠は?」

「それは・・・今説明した事だよ」

「でも、確証は無いよね?」

黒人が考えていた事は明らかに証明する事が出来ない事案であり、沙夜が言っている事が現実のものになってしまう可能性だって考えられるのだ。

「それは・・・そう・・・だな」

「ほらね?だったら、この後戦争している間に私もこの世界で死んでしまうかもしれない。
そうなっちゃうともう黒人とは永遠に会う事が出来なくなっちゃうかもしれないでしょう?」

「沙夜、そんな事・・・言うなよ!」

悲しそうな表情で訴え掛ける黒人。

「はっきりと言い切れる事とすれば私達は今、実際に元いた世界とは別世界に来ていて、どちらも別の人物に乗り移った様な状態になっているって事」

改めて、沙夜は自分達が置かれている立場を見つめ直した。

「あぁ、そうだな。でも、俺達は別世界からこうしてここへ来てしまった。
だからこそ、早くこの状況を何とかして一刻も早く元の世界へ戻らなきゃいけない!」

「そして・・・黒人はどうしたい?」

「えっ!?」

沙夜は、瞳を潤ませながら黒人に尋ねた。
元の世界へ戻ったとして、先に述べた自分が死んでしまうのかどうか分からない状況に陥ってしまう。
それでも黒人は元の世界へ早く戻りたいと言うのだろうか?

「あ、あぁ・・・そうだったな。俺・・・沙夜が死んだって聞かされた時、病院の先生の胸ぐらを掴んで思いっきり叫んだんだ。沙夜は・・・本当に、本当に沙夜は死んでしまったのかって・・・もし、沙夜が言っていた事が真実になってしまったとすれば俺は・・・」

その先の言葉を沙夜は直接聞きたかった。

「俺は?・・・何?」

「俺は・・・いや、俺も・・・死ぬ。沙夜がいない世界なんて考えられないから」

沙夜は、その一言を聞くと軍服を1枚ずつ脱ぎ始めた。

「お、おい、何してるんだ!?」

黒人は、脱ぎ始めた沙夜を止めに入った。

「ねぇ、黒人。もしも・・・もしもだよ?元の世界へ戻った時に私が死んでいなかったとしたら?どうしたい?」

そして、手を止めず全てを脱ぎ去った沙夜は、ローランドの鍛え抜かれた美しい全身を黒人であるレイトーニへ見せた。

「そ、それは・・・その時に実行する・・・」

黒人は、気まずそうにそっぽを向いて答えた。

「そっか。そうやって先延ばしにして来たんだね。私達・・・」

「えっ!?」

沙夜は、気付いていた。
黒人が自分に向けた熱い想いがある事に・・・

「ごめんね、黒人。これは私にも非があると思うの。
でも、これ以上先延ばしにして、実際に元の世界へ戻った時に本当に私が死んでしまっていたら・・・今言った黒人のしたい事って・・・出来ないよ?」

黒人はこの時、胸に何かが突き刺さる様な強い衝撃を受けた。

「・・・・・・・・・・・沙夜」

沙夜は、再び黒人に歩み寄ると手を取り自分の胸に触れさせた。

「ほら、私の心臓の音・・・感じる?」

ずっと、幼馴染で一定の距離以上に近付く事が無かった二人が急接近した時だった。

「沙夜・・・ごめん。俺が間違ってた。
俺、ずっと・・・沙夜の事、沙夜の事が好き・・・だった。
でも、幼馴染でいつも一緒にいたからそう言う気持ちに気付けなかった」

すると、沙夜のもう片方の手は黒人の厚い胸板に届いた。

「黒人も高鳴ってるね。今のこの体は本物の私達とは違うけれど、感覚自体はちゃんとあって痛い事も・・・気持ちいい事も感じる事が出来る」

「お、おぃ、本当に・・・いいのか?」

「現実世界に戻って私が生きていたとすれば、その時は思いっきり愛し合おうね?
それで、いっぱい黒人がして欲しい事してあげる💛
私の初めても勿論・・・黒人が独占していいよ💛」

ローランドの自室にてこの日、沙夜と黒人の身体は一つに繋がったのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沙夜と黒人の絆が深まったあの日からひと月程度が経過した時の事だった。

「何だと!?敵が攻め入って来た・・・だと。情報部隊はどうなっているんだ!?」

ローランドの元へ通知が入った時には既に敵軍の襲撃が開始されていた。

「はい。どうやら敵の策に依れば情報部隊を最優先で壊滅させその隙を狙って進軍し、今の様な状況を作ろうと言う魂胆だった様です」

流石のローランドも襲撃中に策を練る事は困難であった。
ましてや中身は沙夜と言うごく普通の女子高生なのだ。
それでもこうして今日までやって来られた事だけでも栄誉として称えなければいけないだろう。

「レイトーニ殿は!?」

「はい、先に通信しましたが、彼らの母国の方も突如攻撃が入ったとの事で全隊員達で防衛、攻撃もままならないとの事です」

(そんな・・・黒人が!?)

現状を頭に浮かべ、今の段階では両者共に不利な状況にあると考えたローランドは、致し方なく自国の為に策を早急に立てる事にした。

「よし、私が応戦する」

そして、ローランドも自ら敵軍へ攻撃を加える事にした。

「キャッ!!」

敵軍の目に留まったローランドは、右腕に負傷を負わされた。

(このままだと勝ち目が無い!せめてこれが剣なら私も・・・)

想像していた事とは180度違い、これまでの戦い方では圧倒的に不利になってしまうと身に染みえて感じたローランド。

「ローランド様ぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!」

ローランドが一瞬考え込んだ隙の事だった。
敵の放った銃弾がローランドの心臓を目掛けて飛んだ。

リリアの大声が戦場に響き渡った。
そして、ローランドが再び正面を見た瞬間・・・

ドーーーーーーーーーーーーン!!!

(嘘っ・・・でしょう?私、また・・・死んじゃうの?)

バタンッ!!!

「ローランド様ぁぁぁ~!!!ローランド様ぁぁぁ~!!!!!」

リリアが駆け寄りローランドを抱える。

「ローランド様、どうして?どうして貴女様とあろうお方が・・・この様なお姿に・・・」

リリアは、ローランドが死なない様に必死に声を掛け続けた。
だが・・・

「リリア・・・すまない。私はまた・・・いや、今度こそ・・・」

「ローランド様は死にません。絶対に・・・だって、僕はローランド様にずっと憧れていたんです!幼少の頃からずっと・・・貴女は僕の女神様なんです!だから・・・絶対に貴女は・・・貴女は・・・死にません。また、あの日みたいにベッドの上で目を覚ましてくれますから」

リリアの大粒の涙がローランドの頬を伝う・・・
ローランドは、最後の精一杯の力でリリアの頬に指を這わせ、涙を拭い取った。

「あり・・・がとう。きっと・・・ローランドさんも、貴方の事が・・・好き・・・だったと思う・・・ごめんね?私はローランドさん・・・じゃないの・・・」

沙夜として、ローランドを演じて来た事を伝えようとしたのだが・・・

「はい。知っていました。貴女はローランド様じゃないって事・・・でも、それでも僕はローランド様をお慕い申し上げていました。ありがとう・・・本当にありがとうございました。
ローランド様を・・・演じて下さり・・・僕、少しの間でしたらとっても幸せでした。
僕も・・・ローランド様の下へ・・・」

「ダメ・・・よ・・・貴方が死んじゃったら・・・ローランドさんが戻って来た時に・・・」

沙夜はこの時、ローランドとリリアを自分と黒人の状況に重ねて考えていた。

「でも、ローランド様はもう・・・」

「死んで・・・いないはずよ。ローランドさん、きっと何処かで生きているはず。
だから・・・貴方は・・・ローランドさんが戻って来た時に真っ先に・・・彼女を・・・出迎えてあげて・・・欲しい・・・な・・・」

その言葉を告げた瞬間ローランドは息を引き取った。

「ローランド様?ローランド様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!」





第三節 終
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