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一章『出会い』
1-8
しおりを挟む何と、3人に名前を付けて頂いた。
その名も『アシュリー』だ。
今日からこれが、この世界での私の名前だ。
まさか名前を付けてもらえるなんて思ってもみなかったので非常に嬉しい事だっ。
それからはニコニコとしながら足取り軽く森を歩き、遂に森を抜ける事が出来た!
長い道のりだった……。
そして森を出ると、入り口の直ぐ傍に荷馬車が置いてあり、そこに二人の男性が居た。
どうやら荷馬車の近くでお留守番をしていた様だ。
しかし、二人共全く同じ作りの鎧と兜に剣を持っている所を見るに、冒険者と言うよりは兵士と言った風貌だ。
森を出て来た私達に気付いた二人は、腰かけて休んでいた所から直ぐに立ち上がり、胸に手を当てて敬礼の様な物をしていた。その仕草に、余計に兵士っぽさが際立つ。
その敬礼に対し、軽く手を挙げて答える三人のお姉さん達。
そのやり取りを見ると、こちらの三人の方が立場が上なのかもしれない。
ひょっとして、アリス達は高名な冒険者だったりするんだろうか。もしそうなら、かっこいいな。
そしてゆっくりとした足取りで兵士の男性の近くまで歩き、何やらアリスと兵士が話をし始めたので私は大人しく待っている事にする。
それから暫く待機する事数分。
どうやら話が終わった様で、アリスが荷馬車の近くに移動して私達三人を手招きしながら呼んでいるのが目に入った。
それに従って近くへ行くと、先にエルとローレルの二人が荷馬車へと乗り込み、残るアリスが私の体をヒョイッと持ち上げて乗せてくれた後、アリスもその後から乗り込んだ。
取り敢えず誘われるままについてきたのは良いものの、三人の間で私の事がどういった話になっているのか全く解っていなかったので、ホントに荷馬車に一緒に乗せてくれるのが今ようやっと解り、内心ホッとする。
荷馬車の中は少しの荷物が乗っているだけで結構広い感じだった。
ローレルとエルが並んで右側に座り、対面にアリスが一人座ったのでその隣にイソイソと座る事にする。
隣に座ってチラリとアリスを見ると、ニコリと微笑んだ後、頭を撫でられた。
隣に座った事を嫌がってはいない様で良かった。
それから暫くガタガタと荷馬車に揺られて小一時間程経った頃だろうか。
その辺りから私には、記憶がございませんっ。
どうやら不覚にも眠ってしまった様だ。
ハッと目が覚めた時には、荷馬車には夕日が差し込んできていた。
察するに、恐らく二時間以上は寝ていたと思われる。
まぁそれは百歩譲っていいとして、気が付くとアリスに膝枕をしてもらっていたという状況。
そして更に余程気持ちよく爆睡していた様で、アリスの膝が私の涎でとんでもない事になっていた。
必死に、それはもう必死に平謝りするしかない。
そしてそんな状況に陥った事により、『ごめんなさい』という言葉を教わった。
この状況で教えられたという事は謝罪の言葉だろう。
早速『ごめんなさい』して頭を下げたら、アリスは笑いながら頭を撫でて許してくれたのだった……。
それから更に一時間程荷馬車に揺られ、日が完全に落ちて夜になった頃、ようやっと目的地とされる場所についた様で荷馬車がゆっくりと止まった後もう一度動き出してまた止まる。
チラリと見えた感じだと、何処かの門の様な物を通った様だ。
荷馬車から少し顔を出してみると、どうやら砦の様な場所では無いかと思われる。
御者台の人や、森の近くで見た男性の装備と同じ装備を身に纏った人が数人チラホラと見えた。
やはり彼等は兵士で間違いない様だ。
荷馬車の中のアリス達の様子を見ると、話をしながら荷馬車を降りる準備を進めている様だった。
何か持つ物があるなら手伝おうかと周りをチョロチョロしていたが、ポンポンと頭を優しく叩くぐらいでお声は掛からない。お呼びでは無い様だ……。
仕方なく大人しく待つ……。
『はぁ~、ようやくついたなぁ。もうお尻が痛いぜ……』
『少し疲れましたね。取り敢えず今日はここで一泊して、明日の朝一番に発つ予定ですよね?』
『うむ、そうだな。取り敢えず荷物を降ろして明日の準備をしておこう。朝一で発つならその方が楽だろう』
『そうですね』
『んで、やっぱりアイツに挨拶はしないとダメなのか?』
『ん?あぁ、トーレ殿か……そうだな、一応この砦を預かっている人だからな。一応挨拶ぐらいはして置かないと……』
『気が進まねぇなぁ……。目付きが気持ち悪いんだよなぁ、ジロジロ見てくるしさぁ』
『奇遇ですね。私もです』
『まぁ、私も同意見だが、仕方ない事だ。諦めろ……。あれでも貴族だ。目を付けられたら面倒だろう』
『けっ……貴族ったってこんな辺鄙な砦に飛ばされてる様な木っ端貴族だろ?面倒なんてあるのか?』
『木っ端貴族だろうと貴族は貴族。腐っても貴族だ。もういいから手を動かせ、エル』
『はいはい、わかりましたよー』
それから暫く内容は解らないが、三人の会話に耳を傾けつつ大人しく待ち、行きと同様にアリスに荷馬車から降ろしてもらった後、下ろした荷物を別の荷馬車にもう一度詰め込んでようやく用事は終了した様だ。
その後はアリスに手を引かれて砦の中に入り、何処かへと向かっている。
さて何処に行くのかは解らないが、もう夜なので多分今日泊まる部屋にでも行くんだろうなぁと当たりを付けている。
しかし、私の胸中には少し不安な事があった。
ひょっとするとひょっとして……、三人の中で私の届け先はここなのでは?という事だ……。
この砦でひょっとしたら私の身柄は誰かに預けられたりするんじゃないだろうか。
そんな不安を抱きながら、アリスに手を引かれるままに砦内を進んでいく私なのだった……。
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