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表の店と裏の店
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魔女の通りにはいくつかオブジェが設置されている。黒猫像、鴉像、梟像といった使い魔の像が多い。
少年少女たちにとっては待ち合わせ場所に便利だ。
通りはほぼ一本道の街路だが、裏道に、店と店の影の中で看板を灯す商いもある。店の外観は様々だ。壁に蔦が這うぼろ同然の薬屋、教会のように神聖な香油屋、傾いた看板をちっともなおさない菓子屋もある。
少年少女がひやかしどころか覗きすらはばかられる、魔法に精通した店主。彼らを頼りにする商人や依頼人は現代でも多い。
オブジェはそういった店の道しるべにもなっている。
瑠衣の使い魔は鴉で、名はシュロ。今はほうきに乗った魔女たちよりも高く空を悠々と飛んでいる。
二人きりだとすり寄ってくるのだが、外に出るとあまり傍にいてくれない。主の魔女といつでも一緒にいるのが恥ずかしいらしい、格好つけなのだ。
とはいえ呼べばすぐにやってきて瑠衣の肩にとまるので、別段困ってはいない。
瑠衣は黒猫像の前で降りた。空では彼女と出くわさなかった。先に待っているのかと辺りを見渡すが、いない。約束の時間にはちょっと早かった。
「瑠衣ちゃん」
空からほうきにまたがった少女が急降下してきた。
地上付近で水平にほうきを停止させると、少女の着ている膝丈ワンピースがふわりとふくらんだ。
少女は裾を乱さずひらりと降り立った。
新雪が陽光に反射したような銀の髪に細長い手足、ほうきに乗っていようが、降りようが、まったく崩れない、しゃんとのびた背筋。
「飛ばすと危ないよ、美花」
「ごめんね、瑠衣を待たせちゃったかと思って」
「全然、今来たばっかりだよ」
美花は空を見上げた。魔女たちが雲をおしのけて占領している。「歩こっか」「うん」二人で並んでのんびり進むのは、空でなくてもかまわない。
白沢美花も魔女である。
瑠衣とは同じ幼稚園で仲良くなり、美花が私立の中学校、瑠衣は公立と別れてしまった今も、たびたび会っている。
美花は幼稚園の頃からバレエ教室に通っている。
バレエの発表会には瑠衣を必ず招待し、瑠衣は一度も断ったことがない。
群舞の一人や、出番がほんのちょっとだった新人の頃から、美花は必ず瑠衣を呼び、瑠衣は必ず観劇した。
瑠衣はバレエについて詳しくない。舞台のあらすじくらいは調べて覚えるくらいだ。バレエの踊る役も主役のプリンシバルしか知らず、美花に教えてもらった。
彼女が初めてプリンシバルに選ばれた時は、誰よりも大喜びした。
少年少女たちにとっては待ち合わせ場所に便利だ。
通りはほぼ一本道の街路だが、裏道に、店と店の影の中で看板を灯す商いもある。店の外観は様々だ。壁に蔦が這うぼろ同然の薬屋、教会のように神聖な香油屋、傾いた看板をちっともなおさない菓子屋もある。
少年少女がひやかしどころか覗きすらはばかられる、魔法に精通した店主。彼らを頼りにする商人や依頼人は現代でも多い。
オブジェはそういった店の道しるべにもなっている。
瑠衣の使い魔は鴉で、名はシュロ。今はほうきに乗った魔女たちよりも高く空を悠々と飛んでいる。
二人きりだとすり寄ってくるのだが、外に出るとあまり傍にいてくれない。主の魔女といつでも一緒にいるのが恥ずかしいらしい、格好つけなのだ。
とはいえ呼べばすぐにやってきて瑠衣の肩にとまるので、別段困ってはいない。
瑠衣は黒猫像の前で降りた。空では彼女と出くわさなかった。先に待っているのかと辺りを見渡すが、いない。約束の時間にはちょっと早かった。
「瑠衣ちゃん」
空からほうきにまたがった少女が急降下してきた。
地上付近で水平にほうきを停止させると、少女の着ている膝丈ワンピースがふわりとふくらんだ。
少女は裾を乱さずひらりと降り立った。
新雪が陽光に反射したような銀の髪に細長い手足、ほうきに乗っていようが、降りようが、まったく崩れない、しゃんとのびた背筋。
「飛ばすと危ないよ、美花」
「ごめんね、瑠衣を待たせちゃったかと思って」
「全然、今来たばっかりだよ」
美花は空を見上げた。魔女たちが雲をおしのけて占領している。「歩こっか」「うん」二人で並んでのんびり進むのは、空でなくてもかまわない。
白沢美花も魔女である。
瑠衣とは同じ幼稚園で仲良くなり、美花が私立の中学校、瑠衣は公立と別れてしまった今も、たびたび会っている。
美花は幼稚園の頃からバレエ教室に通っている。
バレエの発表会には瑠衣を必ず招待し、瑠衣は一度も断ったことがない。
群舞の一人や、出番がほんのちょっとだった新人の頃から、美花は必ず瑠衣を呼び、瑠衣は必ず観劇した。
瑠衣はバレエについて詳しくない。舞台のあらすじくらいは調べて覚えるくらいだ。バレエの踊る役も主役のプリンシバルしか知らず、美花に教えてもらった。
彼女が初めてプリンシバルに選ばれた時は、誰よりも大喜びした。
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