Dark Angel

Primrose

文字の大きさ
4 / 4

命と鎖

しおりを挟む
 放課後ウリエル達は、還日に疑問をぶつける事にした。
 誰も居ない教室にて、夜刀が単刀直入に尋ねる。
「還日先生、あなたがかの有名なシャーロックホームズというのは本当なんですか?」
 夜刀の問いに、還日は面倒くさそうにしながらも答えた。
「ああ、本当だ。1200年前、ロンドンで探偵をやってた時、コナン・ドイルに小説の題材にさせろと言われてな」
 ロンドン、シャーロックホームズの舞台とも合致する。
 あそこには経度の起点となっている天文台があり、世界有数の観光名所として知られている。
 そしてシャーロックホームズの舞台も、ロンドンである。
「じゃあ、本当に?」
「ああ、わざわざ大昔の架空とさせた男を名乗って何の意味がある?」
 還日が呆れる中、夜刀はまだまだ腑に落ちないらしく、怪しみながら質問を続けた。
「じゃあ、なんであなたはそんな子供みたいなんですか?」
 小説にあるホームズの容姿は、少し長身でスーツを着た英国紳士とされている。
 しかし還日は、ぶかぶかのパーカーを着て髪をかき乱す子供だ。とても同一人物とは思えない。
「あの頃は若かったからな。まだ思いやりってもんもあったさ」
「いや、ホームズはオジ様だし、あんた子供だし」
 先生にタメ語はどうなんだ、という目で睨む還日にも動じず、それどころか逆に見下している始末。
 文字通りの睨み合いに負けたのは、還日の方だった。
「はあ、分かったよ、言えば良いんだろ?」
 根負けした還日は、自分が少年の容姿をしている理由を話し始めた。
「俺は、輪廻から抜け出す能力を持っているんだ。生まれ変わるたびに、前世の記憶を残したまま生まれ変われる」
 その言葉に、二人は納得したように顔を見合わせた。
 還日は少なくとも、シャーロックホームズだった頃から1200年、記憶を継承して生き続けた。それも恐らく、様々な種族を通して。
 近くから見て気が付いたが、彼の耳は少し尖っていた。だがエルフにしては短いので、ハーフエルフの類なのだろう。
 輪廻とは、死者の魂を冥界に送り、魂に刻まれた記憶を埋めて再利用する事を指す。
 そうすることで、生命の循環を効率的かつ確実に行うことが出来る。
 それに魂の記憶を消さなければ、魂の負担が激しくなり、その内生きたまま魂が破裂してしまう。そんな事が起きれば、全身の神経が崩壊して激痛に苛まれた後に死ぬ。
 恐らく還日は、輪廻から離れられる上に、魂の負担を抑えるという能力なのだろう。
「よく今まで、生きてこれましたね」
 だが輪廻から抜けられず、記憶も継承されるという事はつまり、死ぬ事が出来ないという事を意味する。
 1200年間、何度も何度も、死んでも死んでも、生から逃れられない。
「ああ、辛かったよ。友が死んでも会いに逝けない、愛する人が出来ても、1000年と生きられる種族は居ない」
 始めは面倒臭そうな顔をしていた還日は、話し終わる頃には、とても辛く、そして悲しそうな顔をしていた。
 それを見たウリエルは思わず還日の手を握って言った。
「大丈夫ですよ。先生には私達がいます。それに私達は、2000年だって生きられるんです。そんなに寂しがること無いですよ」
 それを聞いた還日は微笑んで、小さく呟いた。
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
 そして、還日の流した涙も、夜刀の暗い表情にも、誰も気づかなかった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽
ファンタジー
「……うちに来るかい?」 森で拾われた赤ん坊は、ルカと名付けられ、家族に愛されて育った。 だが8歳のある日、重傷の兄を救うため、ルカから緑の光が―― 「ルカは精霊の愛し子。お前は守護者だ」 それは、偶然の出会い、のはずだった。 だけど、結ばれていた"運命"。 精霊の愛し子である愛くるしい弟と、守護者であり弟を溺愛する兄の、温かな家族の物語。 他の投稿サイト様でも公開しています。

処理中です...