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命と鎖
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放課後ウリエル達は、還日に疑問をぶつける事にした。
誰も居ない教室にて、夜刀が単刀直入に尋ねる。
「還日先生、あなたがかの有名なシャーロックホームズというのは本当なんですか?」
夜刀の問いに、還日は面倒くさそうにしながらも答えた。
「ああ、本当だ。1200年前、ロンドンで探偵をやってた時、コナン・ドイルに小説の題材にさせろと言われてな」
ロンドン、シャーロックホームズの舞台とも合致する。
あそこには経度の起点となっている天文台があり、世界有数の観光名所として知られている。
そしてシャーロックホームズの舞台も、ロンドンである。
「じゃあ、本当に?」
「ああ、わざわざ大昔の架空とさせた男を名乗って何の意味がある?」
還日が呆れる中、夜刀はまだまだ腑に落ちないらしく、怪しみながら質問を続けた。
「じゃあ、なんであなたはそんな子供みたいなんですか?」
小説にあるホームズの容姿は、少し長身でスーツを着た英国紳士とされている。
しかし還日は、ぶかぶかのパーカーを着て髪をかき乱す子供だ。とても同一人物とは思えない。
「あの頃は若かったからな。まだ思いやりってもんもあったさ」
「いや、ホームズはオジ様だし、あんた子供だし」
先生にタメ語はどうなんだ、という目で睨む還日にも動じず、それどころか逆に見下している始末。
文字通りの睨み合いに負けたのは、還日の方だった。
「はあ、分かったよ、言えば良いんだろ?」
根負けした還日は、自分が少年の容姿をしている理由を話し始めた。
「俺は、輪廻から抜け出す能力を持っているんだ。生まれ変わるたびに、前世の記憶を残したまま生まれ変われる」
その言葉に、二人は納得したように顔を見合わせた。
還日は少なくとも、シャーロックホームズだった頃から1200年、記憶を継承して生き続けた。それも恐らく、様々な種族を通して。
近くから見て気が付いたが、彼の耳は少し尖っていた。だがエルフにしては短いので、ハーフエルフの類なのだろう。
輪廻とは、死者の魂を冥界に送り、魂に刻まれた記憶を埋めて再利用する事を指す。
そうすることで、生命の循環を効率的かつ確実に行うことが出来る。
それに魂の記憶を消さなければ、魂の負担が激しくなり、その内生きたまま魂が破裂してしまう。そんな事が起きれば、全身の神経が崩壊して激痛に苛まれた後に死ぬ。
恐らく還日は、輪廻から離れられる上に、魂の負担を抑えるという能力なのだろう。
「よく今まで、生きてこれましたね」
だが輪廻から抜けられず、記憶も継承されるという事はつまり、死ぬ事が出来ないという事を意味する。
1200年間、何度も何度も、死んでも死んでも、生から逃れられない。
「ああ、辛かったよ。友が死んでも会いに逝けない、愛する人が出来ても、1000年と生きられる種族は居ない」
始めは面倒臭そうな顔をしていた還日は、話し終わる頃には、とても辛く、そして悲しそうな顔をしていた。
それを見たウリエルは思わず還日の手を握って言った。
「大丈夫ですよ。先生には私達がいます。それに私達は、2000年だって生きられるんです。そんなに寂しがること無いですよ」
それを聞いた還日は微笑んで、小さく呟いた。
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
そして、還日の流した涙も、夜刀の暗い表情にも、誰も気づかなかった。
誰も居ない教室にて、夜刀が単刀直入に尋ねる。
「還日先生、あなたがかの有名なシャーロックホームズというのは本当なんですか?」
夜刀の問いに、還日は面倒くさそうにしながらも答えた。
「ああ、本当だ。1200年前、ロンドンで探偵をやってた時、コナン・ドイルに小説の題材にさせろと言われてな」
ロンドン、シャーロックホームズの舞台とも合致する。
あそこには経度の起点となっている天文台があり、世界有数の観光名所として知られている。
そしてシャーロックホームズの舞台も、ロンドンである。
「じゃあ、本当に?」
「ああ、わざわざ大昔の架空とさせた男を名乗って何の意味がある?」
還日が呆れる中、夜刀はまだまだ腑に落ちないらしく、怪しみながら質問を続けた。
「じゃあ、なんであなたはそんな子供みたいなんですか?」
小説にあるホームズの容姿は、少し長身でスーツを着た英国紳士とされている。
しかし還日は、ぶかぶかのパーカーを着て髪をかき乱す子供だ。とても同一人物とは思えない。
「あの頃は若かったからな。まだ思いやりってもんもあったさ」
「いや、ホームズはオジ様だし、あんた子供だし」
先生にタメ語はどうなんだ、という目で睨む還日にも動じず、それどころか逆に見下している始末。
文字通りの睨み合いに負けたのは、還日の方だった。
「はあ、分かったよ、言えば良いんだろ?」
根負けした還日は、自分が少年の容姿をしている理由を話し始めた。
「俺は、輪廻から抜け出す能力を持っているんだ。生まれ変わるたびに、前世の記憶を残したまま生まれ変われる」
その言葉に、二人は納得したように顔を見合わせた。
還日は少なくとも、シャーロックホームズだった頃から1200年、記憶を継承して生き続けた。それも恐らく、様々な種族を通して。
近くから見て気が付いたが、彼の耳は少し尖っていた。だがエルフにしては短いので、ハーフエルフの類なのだろう。
輪廻とは、死者の魂を冥界に送り、魂に刻まれた記憶を埋めて再利用する事を指す。
そうすることで、生命の循環を効率的かつ確実に行うことが出来る。
それに魂の記憶を消さなければ、魂の負担が激しくなり、その内生きたまま魂が破裂してしまう。そんな事が起きれば、全身の神経が崩壊して激痛に苛まれた後に死ぬ。
恐らく還日は、輪廻から離れられる上に、魂の負担を抑えるという能力なのだろう。
「よく今まで、生きてこれましたね」
だが輪廻から抜けられず、記憶も継承されるという事はつまり、死ぬ事が出来ないという事を意味する。
1200年間、何度も何度も、死んでも死んでも、生から逃れられない。
「ああ、辛かったよ。友が死んでも会いに逝けない、愛する人が出来ても、1000年と生きられる種族は居ない」
始めは面倒臭そうな顔をしていた還日は、話し終わる頃には、とても辛く、そして悲しそうな顔をしていた。
それを見たウリエルは思わず還日の手を握って言った。
「大丈夫ですよ。先生には私達がいます。それに私達は、2000年だって生きられるんです。そんなに寂しがること無いですよ」
それを聞いた還日は微笑んで、小さく呟いた。
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
そして、還日の流した涙も、夜刀の暗い表情にも、誰も気づかなかった。
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