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破れた覆面
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怪物の存在が科学的に証明されたのは、中世の魔女狩りが流行した時代だった。
というよりも、怪物―――魔物が実証されたからこそ、その疑いがある魔女を処刑していった。
怪物は人の姿を取り、条件を満たすと信の姿を表す。
《人狼》、《吸血鬼》、《腐人》、《魚人》、そして《大蜥蜴》と、怪物は世界各地にいる。
だがある日、かの有名なアーサー王は言った。
『彼らといがみ合わずに、手を取って助け合おう。後世にこの様な恥ずべき歴史を残してはならない』
各国、そして人と怪物は手を取り、一つの『人類』として結束した。
それから四百年。未だに差別思想は消えていないが、彼らと我々は手を取り合い、平和に暮らしていた。
いや、平和に暮らしているはずだった。
皮肉な事に、この自動掃除機は、戦争に使われた地雷探知機が元となっているらしい。
戦争で使われた物が再利用され、俺たちの平和な暮らしに使われている。どうやら、争いで国が栄えるのは本当の事らしい。
だが今は、魔物との争いが終わり、国々は平和を形成しつつある。
最近は魔物からも著名人が現れつつあり、学校でも吸血鬼のタレントが話題になっている。
そんな中、俺―――関崎王牙は、一人でずっと本を読む毎日を送っていた。
友達は作ろうとしたが、コミュ障である俺に話しかけられても、周りにとって俺は巨大なゴキブリ扱いされているらしく、軽蔑の眼差しで見られていた。
それが何年も続けば、慣れて一人っきりのなろうと考えるのは当たり前なのだろう。
周りで恋人が出来ても我関せずを貫き、羨ましいという感情を押し殺す毎日にも慣れてしまっている。それに虚しさを感じるのは当たり前なのだろうか。
まあ、俺は人とは違うから、仕方がないと言われれば仕方がないのかもしれない。
体育の授業中も、一人でやるか先生と組むかの二択に絞られていた。
そこまでは普通だったが、この日は他とは違った。
正門から少女が侵入して、特殊警察のものらしきヘリから逃亡していた。
『逃げても無駄だ。お前はすでに包囲されている』
ヘリから高圧的な声が届くと、少女は足を止めてあたりを見渡す。
すると少女が止まった隙を付いて、あちこちから装備を身に着けた大人が侵入する。
情況を見るに彼女は魔物で、何か不詳事をやらかして、対魔物のエキスパートである特殊警察に追われているのだろう。
「私が何をしたって言うんですか」
そう思っていたが、少女の言動にどこか違和感がある。
もしや少女は、何も法を犯してはいないのではないのか。軍は理由も無く、ただ魔物であるから少女を追っているのではないか。
「お前を捕らえるのに理由がいるのか?」
隊長らしき男の発言で、その疑いは決定的になった。
「面倒ごとは嫌いなんだけどな」
俺は仕方なく、隊長らしき男に近づいていった。
男もそれに気づいて俺に話しかける。
「なんだお前、お前もコイツの仲間か?」
「いいや、初めて会った。でも一つ聞きたいんだが、彼女を追う理由は?」
「理由がいるのか?」
さも当然の様に答える男に、俺はため息をついた。
こいつらは相当腐っているらしい。
俺は頭を掻きむしると、片手で男を吹き飛ばす。
その行動に特殊警察は俺に銃を向ける。
「あんたらは本当に腐ってるな。本当に」
俺の言葉が終わると、風が吹き荒れ、嵐が起き、俺にも異変が起こった。
皮膚から体毛が現れ、体の形が変わっていく。
それはまるで《大蜥蜴》の姿の様で、その内完全に《大蜥蜴》に変わっていった。
『死にたくなければ逃げろ』
俺は咆哮と共に、特殊警察に警告する。
それだけで特殊警察は全員逃げていったが、少女はそのまま残っていた。
『ここから離れたいなら、背中に乗って』
少女はそれに応じ、ゆっくりと背中に乗った。
俺はそれを確認すると、翼を大きく広げて飛翔した。
それから少し飛んで、山中の開けた場所に降りた。
少女が下りたのを確認すると、今度は《大蜥蜴》の体が霧に変わって消滅した。
「あ、あなたは一体・・・」
少女が恐る恐るといった表情で聞く。
それい俺は、正面を向いて真剣に答えた。
「俺は《覆面》、その一人だよ」
というよりも、怪物―――魔物が実証されたからこそ、その疑いがある魔女を処刑していった。
怪物は人の姿を取り、条件を満たすと信の姿を表す。
《人狼》、《吸血鬼》、《腐人》、《魚人》、そして《大蜥蜴》と、怪物は世界各地にいる。
だがある日、かの有名なアーサー王は言った。
『彼らといがみ合わずに、手を取って助け合おう。後世にこの様な恥ずべき歴史を残してはならない』
各国、そして人と怪物は手を取り、一つの『人類』として結束した。
それから四百年。未だに差別思想は消えていないが、彼らと我々は手を取り合い、平和に暮らしていた。
いや、平和に暮らしているはずだった。
皮肉な事に、この自動掃除機は、戦争に使われた地雷探知機が元となっているらしい。
戦争で使われた物が再利用され、俺たちの平和な暮らしに使われている。どうやら、争いで国が栄えるのは本当の事らしい。
だが今は、魔物との争いが終わり、国々は平和を形成しつつある。
最近は魔物からも著名人が現れつつあり、学校でも吸血鬼のタレントが話題になっている。
そんな中、俺―――関崎王牙は、一人でずっと本を読む毎日を送っていた。
友達は作ろうとしたが、コミュ障である俺に話しかけられても、周りにとって俺は巨大なゴキブリ扱いされているらしく、軽蔑の眼差しで見られていた。
それが何年も続けば、慣れて一人っきりのなろうと考えるのは当たり前なのだろう。
周りで恋人が出来ても我関せずを貫き、羨ましいという感情を押し殺す毎日にも慣れてしまっている。それに虚しさを感じるのは当たり前なのだろうか。
まあ、俺は人とは違うから、仕方がないと言われれば仕方がないのかもしれない。
体育の授業中も、一人でやるか先生と組むかの二択に絞られていた。
そこまでは普通だったが、この日は他とは違った。
正門から少女が侵入して、特殊警察のものらしきヘリから逃亡していた。
『逃げても無駄だ。お前はすでに包囲されている』
ヘリから高圧的な声が届くと、少女は足を止めてあたりを見渡す。
すると少女が止まった隙を付いて、あちこちから装備を身に着けた大人が侵入する。
情況を見るに彼女は魔物で、何か不詳事をやらかして、対魔物のエキスパートである特殊警察に追われているのだろう。
「私が何をしたって言うんですか」
そう思っていたが、少女の言動にどこか違和感がある。
もしや少女は、何も法を犯してはいないのではないのか。軍は理由も無く、ただ魔物であるから少女を追っているのではないか。
「お前を捕らえるのに理由がいるのか?」
隊長らしき男の発言で、その疑いは決定的になった。
「面倒ごとは嫌いなんだけどな」
俺は仕方なく、隊長らしき男に近づいていった。
男もそれに気づいて俺に話しかける。
「なんだお前、お前もコイツの仲間か?」
「いいや、初めて会った。でも一つ聞きたいんだが、彼女を追う理由は?」
「理由がいるのか?」
さも当然の様に答える男に、俺はため息をついた。
こいつらは相当腐っているらしい。
俺は頭を掻きむしると、片手で男を吹き飛ばす。
その行動に特殊警察は俺に銃を向ける。
「あんたらは本当に腐ってるな。本当に」
俺の言葉が終わると、風が吹き荒れ、嵐が起き、俺にも異変が起こった。
皮膚から体毛が現れ、体の形が変わっていく。
それはまるで《大蜥蜴》の姿の様で、その内完全に《大蜥蜴》に変わっていった。
『死にたくなければ逃げろ』
俺は咆哮と共に、特殊警察に警告する。
それだけで特殊警察は全員逃げていったが、少女はそのまま残っていた。
『ここから離れたいなら、背中に乗って』
少女はそれに応じ、ゆっくりと背中に乗った。
俺はそれを確認すると、翼を大きく広げて飛翔した。
それから少し飛んで、山中の開けた場所に降りた。
少女が下りたのを確認すると、今度は《大蜥蜴》の体が霧に変わって消滅した。
「あ、あなたは一体・・・」
少女が恐る恐るといった表情で聞く。
それい俺は、正面を向いて真剣に答えた。
「俺は《覆面》、その一人だよ」
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