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Primrose

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変わらない過去、変えられる未来①

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 俺が能力者だと分かったのは、小学校1年生の時だった。
 家で勉強をしていた時、突然目眩の様な感覚に陥った。
 その時に見えたのは、100点の答案と、それを掲げる俺の姿だった。
 それから数日後、あの時と全く同じ問題が出題され、答えを知る俺は難なく満点を取れた。
 その後も何度か予知が見えたが、正直嬉しさよりも混乱の方が大きく出た。何故こんな事が起きているのか、そして予知の条件は何なのか。
 それが分かったのは、小学校3年生のお盆の時だった。
 友人の家に行こうと家を出て、信号を待っていた時だった。
 予知の前兆がして、俺が少し後ろに下がる。そして予知の内容は、今俺がいる場所に、暴走車が突っ込むという内容だった。
 それにゾッとして、俺は急いで辺りを見渡す。
 すると左側から、猛スピードで移動する軽トラが見えた。
 それが予知のものだと気づくと、俺は全力で後ろに飛んだ。
 それから一瞬すると、今まで俺がいた場所を、軽トラが轟音と共に襲った。
「危な・・・まさか・・・」
 自分の予知が危機回避の類のものだと分かったのは、それからすぐだった。
 料理中の火傷から鉄骨の落下まで規模は様々だったが、いずれも自分が危険に巻き込まれる未来が映し出されていたのだ。
 それ以来は、予知に現れた物には人一倍気を張っていた。
 だからかも知れない。俺が能力者だとバレてしまったのも。
 ある日突然予知が映ったのだが、それに対応する前に背後から襲われ、催眠ガスで眠らされた。
 そして気が付いた頃には、病院の服に着替えさせられて狭い部屋に入れさせられていた。
「やあ、気が付いたかい?」
 突然扉が開いて、そこから女性が現れた。
 女性は白衣を着崩して、髪を掻きむしりながら俺に近づいた。
「私はクスノキ。よろしく」
 そう言って彼女は手を差し出した。
 俺はこの意味が分からなかった。というより、何故俺の事を攫ったのか気になって仕方がなかった。
「なんで俺を攫ったんですか?」
 俺が率直に聞くと、クスノキは一瞬きょとんとした後、腹を抱えて笑い出した。
「ハハハ、未来予知があるのに、なんでそれも分からないんだい?」
「生憎、自分に危険が及ばないと見えないんですよ」
「・・・本当にそうなのかい?」
「? そうですけど。というか、何で知ってるんですか?」
 俺の疑問に、クスノキは面倒くさそうな顔をしながら答えた。
「我々は、能力者の事を監視、及び管理する施設の者だ。それで色々調査をしていたところ、君の事が少々噂になってるらしくてね。それで数日調査していたんだ」
 なるほど。もしかしたら軽トラの時も見ていたのかもしれない。
 それからは、彼女に連れていかれた実験室で能力の測定をする毎日だった。
 そんなある日、同じ施設にいる少女に話しかけられた。
「君、未来が見えるんだってね」
 少女は俺に話しかけながら、俺の体をジロジロ見まわしていた。
「なあ、ちょっとジロジロ見ないでくれる?」
「ああ、ごめんごめん。でもこれでよ」
 少女がそう言うと、少女の体がみるみる変わっていく。
 長く黒かった髪は短く茶髪に染まり、体格も大きくなっていく。
「な・・・?」
「これが私の能力。私は見た人間の姿や声を模倣できるんだ」
 俺の声、そして俺の姿で、少女は自分の能力を話した。
「・・・さっさと戻ってくれるか?」
 正直目の前に同じ人間がいるのは君が悪すぎるので、元に戻る様要求する。
「もう、つれないなあ」
 少女が落胆すると、今度は逆にどんどん姿が元に戻っていく。
「んじゃ、これからよろしく」
「これっきりになる事を祈ってるよ」
 それから少女と出会うまで、2時間もかからなかった。
「まさか、他対象実験のペアになるだなんてね」
 他対象実験とは、他人へ能力がどう干渉するのか、そして能力が発動するのか、といった類を調べるための実験だ。
 そしてこの場合、少女の変装が俺にも影響するのか、そして彼女の未来が見えるのか、この2つに焦点があてられる。
「じゃあ、始めて」
 クスノキの指示で、まずは少女が俺に触れる。
「へえ、肌綺麗なんだね」
 少女が俺の頬に触れると、そんなことを言い出した。
 それに俺は、隠すことも無く正直に睨んで返す。
「気持ち悪いから、早く始めろ」
「はいはい、分かりましたよ」
 少女は目を閉じて集中を始める。
 するとまずは少女の姿が変わり、クスノキに変わっていった。
 変化少女の手から俺に伝染すると、頬にゾワゾワと嫌悪感が広がり、そして収まっていった。
「やはり、彼女の能力は自己限定か。それじゃあ、次は透くんだね」
 クスノキがそう言うと、扉の先から銃を持った大人が大勢出てきた。
 彼らは俺たちの周囲を囲み、銃を向ける。
 すると予知の前兆が現れ、未来の光景が映し出された。
 そこには、銃弾の雨を浴びる少女と、流れ弾に当たる俺の姿だった。
「流れ弾で、俺も巻き込まれた。多分、予知はそれに反応した」
 俺が端的に報告すると、クスノキは1人を残して下がらせる。
「じゃあ、これならどうだい?」
 クスノキは残った一人に、少女のこめかみを狙わせる。
 少女はそれに動じることも無く、無表情で立ったままだ。
「怖くないのか?」
「別に。ここで生き残っても、いつかは死ぬから。何日後、何か月後、はたまた何年後かも分からないけど、それはいつか必ず来る。でも、そんないつ来るかも分からないものに怯えるのはもうこりごりだよ」
 少女の姿は、見た目にそぐわない長命さと、そして冷酷さを感じさえた。
 この子は、何度もこんなことに巻き込まれたのかもしれない。そして、何度も仲間の死を見てきたのかもしれない。
 だからこそ、死が身近で、何でもないものになってしまったのかも知れない。
「で? 何か見える?」
「・・・いいえ」
 やはり、未来は自分に危機が訪れないと見えないのだろう。
「そっか、なら、実験はこれで終わりにしよう」
 クスノキはポケットに手を入れ、そしてライターとタバコを取り出した。
 俺がそれに気が付いたのと、目がくらんで未来が見えたのは同時だった。
「・・・っ‼ 待って‼」
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