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Primrose

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冷酷な未来

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「は? 何を言ってるんだ? 君はすでに香崎君に捕まっている。その内部隊も戻ってくる。君の負けだ」
 彼女は自分が勝ったと思っているらしく、見下しながら俺に勝利宣言し直した。
 だが、この勝負は俺の勝ちだ。なぜなら・・・
「本当に君は変装が得意だ。腕を上げたね、トカゲ」
「カメレオンって呼んでください。そっちも変わりありませんね」
 香崎さんがそう言うと、姿がみるみる変わっていく。
 彼女は俺が捕まっていた時、よく話した内の一人だ。
「君が裏切らなきゃ、今頃幸せだったかもしれないのにな」
「すいませんね。私は生き残りたかっただけですから、恨まないでください」
「まあ、別に裏ミハス無いけどさ、さっきも言ったけど、勝つのは俺だよ」
「お得意の予知ですか? 残念ですが今回ばかりは外れたようですね」
「そう? ならに伝えておいてよ。と」
「は? 何を言って・・・」
 彼女が言い終わる前に、頭上で爆音が響いた。
 赤く輝きながら、ヘリが暴走していたのだ。
『こちらCH42‼ エンジンが故障しました‼ このままでは墜落します‼』
「・・・分かった。総員退避して・・・っ‼」
「じゃあ、ここでお別れだ‼」
 ヘリに気が向いた隙にカメレオンの腕を振り払い、俺は全速力で走る。
「待て‼」
 二人も俺を追うが、気にせず走り続ける。
 その数秒後、背後で轟音と熱風が背後から襲った。
 それに一瞬足が止まってしまうが、すぐに立ち上がって走り続ける。
 それから更に走ると、公道が目の前に現れてきた。それが見えると、俺は道路の直前で止まる。
 だがカメレオンはそれに対応できず、道路に飛び出してしまった。
「ッ‼ マズ・・・」
 カメレオンが戻る前に車が近づき、そしてカメレオンは後ろへ吹き飛んだ。
「・・・」
「昔の仲間を見殺しにするだなんて、結構変わったんだね」
「まあ、おかげさまで」
 彼女に捕まってから、正直性格がねじ曲がったとは思っているが、それから更にねじ曲がったとは思っていない。というか正直、カメレオンの事は前からあまり好きではなかった。
 自分の変装能力を使ってちょっかいを出す事もよくあったし、自己中なところもあったから、周りからも嫌われていたと思う。
 だがそんな奴でも、死んでしまったら何となく寂しく感じる。
「まさか、カメレオンまで失うとはね。やはり君を狙うのは無理だったかな」
 彼女は頭を掻きむしりながら呟く。
 前からそうだが、彼女には女性らしさが無いんだよな。まあ、こんな薄汚れた世界にいればこうもなるのかもしれない。
「これだけやっておいてあれだけど、今回は帰ることにするよ」
「・・・一つ聞いていいですか?」
 帰ろうとする彼女に、俺は一つ引っかかっている事を聞く。
「なんでカメレオンは、香崎さんに変装したんですか?」
 その質問を聞くと、彼女は面倒くさそうな顔をしながら言った。
「まあ、何となくじゃないかな。彼女が今日転校してきたなら、君も彼女の性格をあまり知らないだろうし」
 確かに、あれだけ性格が変わってて気が付かなかったし、彼女の判断は適格だっだと言っても差し支えないだろう。
 だが。
「本当にそれだけですか?」
「・・・」
 俺の問いには答えず、彼女は去っていった。

 翌日、香崎さんは昨日と同じように登校していた。
 性格も内気なままだし、彼女は本物なのだろう。
 そして彼女に変装していたカメレオンは、やはりニュースで死亡したと報道されていた。
 予知ですでに知っていたので驚きはしなかった。
 だが、俺は彼女を間接的に殺した。そんな事実に直面しても、俺は何とも思わなかった。
「・・・冷たくなったなあ」
「? まだ春だけど」
「ああ、何でもない」
 やはり俺は、優しさや温情を置いていってしまったのだろうか。
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