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第三章 復讐編
第99話 ケンタ・イイヅカ①
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「おお、ケンタ! 食ってけよ!?」
「ありがとう!」
「おやケンタ、今から商業ギルドかい?」
「そうだよ~! おばちゃん、腰の調子はどう?」
「ケンタ兄ちゃんあそぼー!!」
「はは、後でね?」
「あっ! ケンタさん! 昨日はありがとうございました!」
「困ったときはお互い様だよ~」
ケンタ・イイヅカ(日本名は飯塚健太)は帝都の暮らしに馴染んでいた。
数ヶ月前、通学途中に幼馴染の緑川桜子と共に事故に遭い、目を覚ますと目の前には女神様が優しい笑顔で佇んでいた。
【飯塚健太さん。そして、緑川桜子さん。あなた方二人はこちらの手違いで死んでしまいました……】
申し訳なさそうな顔をした女神様は深く頭を下げ続ける。
【元の世界に生き返らせる事は叶いませんが、どうでしょう? 異世界に行ってみませんか?】
「い、異世界ですか!?」
「お父さんとお母さんには二度と会えないんですか? そちらの手違いなんですよね!? ひどい……帰して……お父さんとお母さんの元に帰して!!」
「さくちゃん……。女神様!! せめてさくちゃんだけでも帰せまんか? 僕はどうなっても良いのでお願いします!」
「だめよけんちゃん! 一緒に帰ろ! こんな理不尽な事はいくら神様でもあんまりよ!」
「ごめんなさい……それは無理なの……だからせめてもの罪滅ぼしと言いますか、新しい世界でも不自由をしないで生きていけるように女神の加護と有用なスキルを授けたいと思います。言語で困らないように自動翻訳できるようサービスも……いかがです……か?」
健太は泣きじゃくる桜子を宥めながら考える。
(あまりにも向こうに都合が良すぎる……けど選択肢はこのまま死ぬか異世界に行くかしかない。行くべきなのか……)
【こちらの手違いというのは嘘ではありません……確かに都合良いと思われても仕方ありません。事実、一つだけお願いしたい事があります】
「こ、心が読めるんですね……」
【一応、神という言葉が付く存在ですので……ごめんなさい】
女神の悲痛な顔を見て決心した。例え神であろうと女の人にそんな顔をさせては男が廃る。健太は唐突な男気を発揮してしまう。
「じ、事情を聞かせて下さい!」
【ありがとうございます……実は、あなた方がこれから行く世界は剣と魔法の世界で魔物が跋扈する危険な場所です。人族の他に、エルフ、獣人、魔族がいがみ合いながらも共存しています」
(まるっきりファンタジーの世界じゃないか!)
【今代の魔王は比較的には穏やかなので相対する事はほぼないでしょう】
「ま、魔王! 本当に大丈夫なんですか!? そ、そうだ! 勇者! 勇者は居ないんですか!? まさか僕が勇者に……」
【いえいえ! 勇者はすでに存在しています……ちょっとアレな勇者ですが……】
「アレ? なにか残念な勇者なのかな……ははは」
【そうですね……極力関わらないことをお勧めします】
勇者イリアの評価は天界でもすこぶる悪かった。混沌とした時代ならばまさに救世主と呼ばれ伝説の存在になれただろう。
「それでお願いとは?」
【邪神が復活を企んでいるようなのです】
「邪神! それって魔王と何が違うんですか!?」
【魔王は魔人族を束ねる王の呼び名にすぎません。現に今代の魔王は人族との融和を求めていまして、人族にとって危険な存在ではないのです】
「勇者……勇者にお願いするじゃだめなんですか!?」
【難しいでしょう……なんせアレな勇者なもので……】
「どんだけ信用の無い勇者なんですか……」
その信用の無い勇者イリアはとある転生者の逆鱗に触れこの世を去ることになる。
【邪神の名はデニス】
「デニス……その邪神は一体何をしようとしてるんですか?」
【それが良くわからないのです……そして我々天界に住む神々は直接地上に干渉することが出来ないので、人の手によって防いでほしいのです】
「ちょっと話が大きくて手に負えない感じが否めないんですけど」
【どうか世界を守るためにお力をお貸しください】
「やろう、さくちゃん!」
「けんちゃん……」
「だってさ? 女神様困ってんじゃん?」
「はぁ……けんちゃんならそう言うだろうって思ってた」
「ごめんねさくちゃん」
「私はまだ納得してないけど、けんちゃんと一緒なら……」
「女神様! そういう事で僕達に世界が救えるか分からないけど精一杯頑張ります!」
【感謝いたします。それではスキルと加護を付与させていただきます】
女神が祈りを捧げると健太と桜子が眩い光に包まれる。
【健太さんにはポーション精製と鑑定のスキル。桜子さんには浄化のスキルを付与致しました】
「おぉぉぉぉ! なんか凄そう!」
【女神の加護により身体能力が向上しているので低級の魔物なら素手で倒せる程度には強化されてます。スキルの効果については実際に使用して確かめてください】
「ありがとうございます!」
「が、頑張ります!」
【それではお別れのようですね……】
健太と桜子の体が徐々に透明化し、その姿を女神は慈愛に満ちた顔で見送る。
【二人ともどうか……死なないで】
~~~~~~~~
二人が降り立ったのは森の中だった。
「けんちゃん……」
「本当に異世界に来ちゃったのかな? ここに居ても埒があかないし、森を出て街道をさがそう」
「うんっ!」
健太は桜子に不安を与えないために精一杯に虚勢を張り笑顔を作り、そんな健太の心情を理解した桜子も笑顔で返した。
こうして手違いで死んでしまった日本人の学生二人は、女神の願いを叶えるべく異世界に召喚されたのだった。
「ありがとう!」
「おやケンタ、今から商業ギルドかい?」
「そうだよ~! おばちゃん、腰の調子はどう?」
「ケンタ兄ちゃんあそぼー!!」
「はは、後でね?」
「あっ! ケンタさん! 昨日はありがとうございました!」
「困ったときはお互い様だよ~」
ケンタ・イイヅカ(日本名は飯塚健太)は帝都の暮らしに馴染んでいた。
数ヶ月前、通学途中に幼馴染の緑川桜子と共に事故に遭い、目を覚ますと目の前には女神様が優しい笑顔で佇んでいた。
【飯塚健太さん。そして、緑川桜子さん。あなた方二人はこちらの手違いで死んでしまいました……】
申し訳なさそうな顔をした女神様は深く頭を下げ続ける。
【元の世界に生き返らせる事は叶いませんが、どうでしょう? 異世界に行ってみませんか?】
「い、異世界ですか!?」
「お父さんとお母さんには二度と会えないんですか? そちらの手違いなんですよね!? ひどい……帰して……お父さんとお母さんの元に帰して!!」
「さくちゃん……。女神様!! せめてさくちゃんだけでも帰せまんか? 僕はどうなっても良いのでお願いします!」
「だめよけんちゃん! 一緒に帰ろ! こんな理不尽な事はいくら神様でもあんまりよ!」
「ごめんなさい……それは無理なの……だからせめてもの罪滅ぼしと言いますか、新しい世界でも不自由をしないで生きていけるように女神の加護と有用なスキルを授けたいと思います。言語で困らないように自動翻訳できるようサービスも……いかがです……か?」
健太は泣きじゃくる桜子を宥めながら考える。
(あまりにも向こうに都合が良すぎる……けど選択肢はこのまま死ぬか異世界に行くかしかない。行くべきなのか……)
【こちらの手違いというのは嘘ではありません……確かに都合良いと思われても仕方ありません。事実、一つだけお願いしたい事があります】
「こ、心が読めるんですね……」
【一応、神という言葉が付く存在ですので……ごめんなさい】
女神の悲痛な顔を見て決心した。例え神であろうと女の人にそんな顔をさせては男が廃る。健太は唐突な男気を発揮してしまう。
「じ、事情を聞かせて下さい!」
【ありがとうございます……実は、あなた方がこれから行く世界は剣と魔法の世界で魔物が跋扈する危険な場所です。人族の他に、エルフ、獣人、魔族がいがみ合いながらも共存しています」
(まるっきりファンタジーの世界じゃないか!)
【今代の魔王は比較的には穏やかなので相対する事はほぼないでしょう】
「ま、魔王! 本当に大丈夫なんですか!? そ、そうだ! 勇者! 勇者は居ないんですか!? まさか僕が勇者に……」
【いえいえ! 勇者はすでに存在しています……ちょっとアレな勇者ですが……】
「アレ? なにか残念な勇者なのかな……ははは」
【そうですね……極力関わらないことをお勧めします】
勇者イリアの評価は天界でもすこぶる悪かった。混沌とした時代ならばまさに救世主と呼ばれ伝説の存在になれただろう。
「それでお願いとは?」
【邪神が復活を企んでいるようなのです】
「邪神! それって魔王と何が違うんですか!?」
【魔王は魔人族を束ねる王の呼び名にすぎません。現に今代の魔王は人族との融和を求めていまして、人族にとって危険な存在ではないのです】
「勇者……勇者にお願いするじゃだめなんですか!?」
【難しいでしょう……なんせアレな勇者なもので……】
「どんだけ信用の無い勇者なんですか……」
その信用の無い勇者イリアはとある転生者の逆鱗に触れこの世を去ることになる。
【邪神の名はデニス】
「デニス……その邪神は一体何をしようとしてるんですか?」
【それが良くわからないのです……そして我々天界に住む神々は直接地上に干渉することが出来ないので、人の手によって防いでほしいのです】
「ちょっと話が大きくて手に負えない感じが否めないんですけど」
【どうか世界を守るためにお力をお貸しください】
「やろう、さくちゃん!」
「けんちゃん……」
「だってさ? 女神様困ってんじゃん?」
「はぁ……けんちゃんならそう言うだろうって思ってた」
「ごめんねさくちゃん」
「私はまだ納得してないけど、けんちゃんと一緒なら……」
「女神様! そういう事で僕達に世界が救えるか分からないけど精一杯頑張ります!」
【感謝いたします。それではスキルと加護を付与させていただきます】
女神が祈りを捧げると健太と桜子が眩い光に包まれる。
【健太さんにはポーション精製と鑑定のスキル。桜子さんには浄化のスキルを付与致しました】
「おぉぉぉぉ! なんか凄そう!」
【女神の加護により身体能力が向上しているので低級の魔物なら素手で倒せる程度には強化されてます。スキルの効果については実際に使用して確かめてください】
「ありがとうございます!」
「が、頑張ります!」
【それではお別れのようですね……】
健太と桜子の体が徐々に透明化し、その姿を女神は慈愛に満ちた顔で見送る。
【二人ともどうか……死なないで】
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二人が降り立ったのは森の中だった。
「けんちゃん……」
「本当に異世界に来ちゃったのかな? ここに居ても埒があかないし、森を出て街道をさがそう」
「うんっ!」
健太は桜子に不安を与えないために精一杯に虚勢を張り笑顔を作り、そんな健太の心情を理解した桜子も笑顔で返した。
こうして手違いで死んでしまった日本人の学生二人は、女神の願いを叶えるべく異世界に召喚されたのだった。
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