100 / 156
第三章 復讐編
第100話 ケンタ・イイヅカ②
しおりを挟む
「ゲイルさん、記憶の方はどうですか?」
帝都内にある屋敷の一室。元勇者パーティーのメンバーだった剣聖ゲイルは失っていた四肢を取り戻したが、衰弱していた体力はすぐに戻らず静養を余儀なくされていた。
「いや……全く」
「そうですか……」
後ろから落ち込む健太の頭に白く長い手が伸びる。
「ルシル!?」
ルシルと呼ばれた人物は深く被られたフードを脱ぐと、現れたのは青い髪に尖った耳に、お世辞にも豊満とは言えない胸元を持つスレンダーなエルフの少女だ。
「ケンタ、あなたの作ったポーションで身体は完全に治っても心までは治せないわ。彼ほどの人物があんなところで売られていた経緯を想像してみて? 簡単なことではないのよ」
健太とゲイルが出会えたのは、この世界に召喚され森の中で彷徨ってた際に出会ったエルフの少女ルシルの存在が大きかった。ルシルと出会えなければ健太と桜子はこの世界の常識や深い闇を知る事機会は遅くなっただろう。
健太の作るポーションや精製できる量が規格外である事、鑑定のスキルは秘匿する必要がある事、桜子の浄化スキルは毒や病気を治す事ができ、奴隷紋をも解呪できてしまう事もルシルから教えてもらった。
ルシルの目的は奴隷となった同胞の解放であった。そのような理由から桜子の持つ浄化スキルは都合が良かったのもあるが、どこか平和ボケしている二人が危なっかしく、どうしても放っておくことができず行動を共にするようになった。
「そう……だね」
「そうだニャ! ケンタはすごい事をしたのニャ! だから元気だすニャ」
「あははっ! ミューにはいつも元気づけられてばっかりだね」
「ケンタァァァ! 私が最初に慰めたのに!」
「嫉妬は見苦しいのニャ!」
「ミュー! いいかげんその悪い口を二度と開かないようにしてあげようかしらぁぁぁ!?」
「はぁ……二人とも仲良くしようよ?
もちろんルシルにも感謝してるよ」
「ふんっ! 分かればいいのよ///」
「ツンデレエルフ!」
「だまれ下品ドロボウ猫!」
森を抜け街道に出た時に、帝都に向かう商人を護衛している猫の獣人ミューと出会った。事情を説明し好意で馬車に乗せてもらえたお礼にポーションを渡すと、帝都に到着した後、その品質に興味を示した商人に商業ギルドを紹介してもらえた。
帝都までの旅の間、冒険者としてのいろはや戦闘技術をミューは二人に叩き込んだ。短い時間ではあったものの、健太と桜子の人となりを気に入り帝都に着いてからも面倒をみてくれている。
「ここは賑やかだな」
「うるさくしてごめんなさい」
ゲイルは小さく首を振る。
「不思議だな、懐かしい気分になるよ」
「きっと記憶をなくす前のゲイルさんもこういう環境に居たんですよ」
「ふっ、そうかもな」
奴隷市場で出会った時のゲイルは見るも無残な状態で、四肢は切断され目は虚ろで生きているのが奇跡だった。鑑定スキルで剣聖の称号を持つ戦士だと分かり交渉の末、高額だったが即金で買い取った。周りを見渡すとこの区画は部位欠損の奴隷達しかおらず、ゲイル以外は安価で売買されていた。後でルシルに理由を聞いた時は人道に反する扱いに憤慨した。
奴隷市場に行った理由はルシルの同胞を探す為だったが、残念ながらここにはエルフはいなかった。
「そういえばサクラコはどこに行ったのニャ?」
「サクラコさんは買い出しに行ってます」
メイド姿の女性が人数分の飲み物を運び部屋へ入ってきた。
「一人で行ったのニャ?」
「いえ、バニラさんが付き添いで一緒に」
「あの筋肉女が一緒なら安心だニャ」
モルモット奴隷の話を聞いた翌日、手持ちのポーションを大量に売りさばき潤沢な資金源を元に手当たり次第買い取った。その大半は奴隷紋を解除したあとに故郷へ送り届けたのだが、このメイド姿の女性ニーナと筋肉女と呼ばれたドラゴニュートのバニラは留まり行動を共にしたいと願い出た。
ニーナは戦闘メイドとして貴族の屋敷で働いていたが、ケガをした事で用済みとなり奴隷として売られてしまった。バニラは傭兵出身で戦闘により腕を失い、拷問の末売られていた。再び力を取り戻した二人は健太に恩を返すまでは奴隷として働きたいと言っているが、離れる気はさらさらない。
「ケンタさん、この後お約束があると言ってませんでたか?」
「うん、旅の商人で名前は……クロウさんって人なんだけど、僕のポーションをもっと流通させたいから相談させてほしいって頼まれてね」
「ケンタ! あなたの作るポーションの効果は市場に出てる一般的なポーションと違って桁違いの効能なのよ! もし強欲な貴族がケンタに目を付けたら……」
「ありがとうルシル。でも、僕が作ったポーションで多くの人が助かるならそうしたい。それに、僕には頼りになる仲間がいるからね!」
「ケンタ……」
「安心するニャ! ケンタとサクラコは私が護るニャ」
「ミューさん、あなたに任せるのは心配でしかないのですが?」
「ニャにおー!! 破廉恥メイドは黙るニャ!」
「ミューさん、一週間ご飯抜きです」
「ニャッ! それはあんまりだニャぁぁぁ」
ニーナからドス黒いオーラが放たれるとミューはニーナの足に縋りつき崩れ落ちる。
「行くのケンタ?」
「うん」
「誰か一緒に……」
「大丈夫だよ、ただの商談だし」
大袈裟なとケンタは笑う。
「そう、でも今日は!」
「わかってる、遅れたらさくちゃんに殺されちゃうからね! 陽が落ちる前には帰るよ」
「気をつけてねケンタ」
「待ってるニャ! ケンタ」
「いってらっしゃいまさせケンタさん」
三人がケンタを見る最後の姿は、未来を夢見る希望溢れた後ろ姿だった。
~~~~~~
「あっ! クロウさん! お待たせしました!」
「いえいえ、私も今来たところですよケンタさん。まあ立ち話もなんですからかけて下さい」
順風満帆なハーレムチート召喚者に悪役を拗らせた狂気の支配者が牙を剥く。
帝都内にある屋敷の一室。元勇者パーティーのメンバーだった剣聖ゲイルは失っていた四肢を取り戻したが、衰弱していた体力はすぐに戻らず静養を余儀なくされていた。
「いや……全く」
「そうですか……」
後ろから落ち込む健太の頭に白く長い手が伸びる。
「ルシル!?」
ルシルと呼ばれた人物は深く被られたフードを脱ぐと、現れたのは青い髪に尖った耳に、お世辞にも豊満とは言えない胸元を持つスレンダーなエルフの少女だ。
「ケンタ、あなたの作ったポーションで身体は完全に治っても心までは治せないわ。彼ほどの人物があんなところで売られていた経緯を想像してみて? 簡単なことではないのよ」
健太とゲイルが出会えたのは、この世界に召喚され森の中で彷徨ってた際に出会ったエルフの少女ルシルの存在が大きかった。ルシルと出会えなければ健太と桜子はこの世界の常識や深い闇を知る事機会は遅くなっただろう。
健太の作るポーションや精製できる量が規格外である事、鑑定のスキルは秘匿する必要がある事、桜子の浄化スキルは毒や病気を治す事ができ、奴隷紋をも解呪できてしまう事もルシルから教えてもらった。
ルシルの目的は奴隷となった同胞の解放であった。そのような理由から桜子の持つ浄化スキルは都合が良かったのもあるが、どこか平和ボケしている二人が危なっかしく、どうしても放っておくことができず行動を共にするようになった。
「そう……だね」
「そうだニャ! ケンタはすごい事をしたのニャ! だから元気だすニャ」
「あははっ! ミューにはいつも元気づけられてばっかりだね」
「ケンタァァァ! 私が最初に慰めたのに!」
「嫉妬は見苦しいのニャ!」
「ミュー! いいかげんその悪い口を二度と開かないようにしてあげようかしらぁぁぁ!?」
「はぁ……二人とも仲良くしようよ?
もちろんルシルにも感謝してるよ」
「ふんっ! 分かればいいのよ///」
「ツンデレエルフ!」
「だまれ下品ドロボウ猫!」
森を抜け街道に出た時に、帝都に向かう商人を護衛している猫の獣人ミューと出会った。事情を説明し好意で馬車に乗せてもらえたお礼にポーションを渡すと、帝都に到着した後、その品質に興味を示した商人に商業ギルドを紹介してもらえた。
帝都までの旅の間、冒険者としてのいろはや戦闘技術をミューは二人に叩き込んだ。短い時間ではあったものの、健太と桜子の人となりを気に入り帝都に着いてからも面倒をみてくれている。
「ここは賑やかだな」
「うるさくしてごめんなさい」
ゲイルは小さく首を振る。
「不思議だな、懐かしい気分になるよ」
「きっと記憶をなくす前のゲイルさんもこういう環境に居たんですよ」
「ふっ、そうかもな」
奴隷市場で出会った時のゲイルは見るも無残な状態で、四肢は切断され目は虚ろで生きているのが奇跡だった。鑑定スキルで剣聖の称号を持つ戦士だと分かり交渉の末、高額だったが即金で買い取った。周りを見渡すとこの区画は部位欠損の奴隷達しかおらず、ゲイル以外は安価で売買されていた。後でルシルに理由を聞いた時は人道に反する扱いに憤慨した。
奴隷市場に行った理由はルシルの同胞を探す為だったが、残念ながらここにはエルフはいなかった。
「そういえばサクラコはどこに行ったのニャ?」
「サクラコさんは買い出しに行ってます」
メイド姿の女性が人数分の飲み物を運び部屋へ入ってきた。
「一人で行ったのニャ?」
「いえ、バニラさんが付き添いで一緒に」
「あの筋肉女が一緒なら安心だニャ」
モルモット奴隷の話を聞いた翌日、手持ちのポーションを大量に売りさばき潤沢な資金源を元に手当たり次第買い取った。その大半は奴隷紋を解除したあとに故郷へ送り届けたのだが、このメイド姿の女性ニーナと筋肉女と呼ばれたドラゴニュートのバニラは留まり行動を共にしたいと願い出た。
ニーナは戦闘メイドとして貴族の屋敷で働いていたが、ケガをした事で用済みとなり奴隷として売られてしまった。バニラは傭兵出身で戦闘により腕を失い、拷問の末売られていた。再び力を取り戻した二人は健太に恩を返すまでは奴隷として働きたいと言っているが、離れる気はさらさらない。
「ケンタさん、この後お約束があると言ってませんでたか?」
「うん、旅の商人で名前は……クロウさんって人なんだけど、僕のポーションをもっと流通させたいから相談させてほしいって頼まれてね」
「ケンタ! あなたの作るポーションの効果は市場に出てる一般的なポーションと違って桁違いの効能なのよ! もし強欲な貴族がケンタに目を付けたら……」
「ありがとうルシル。でも、僕が作ったポーションで多くの人が助かるならそうしたい。それに、僕には頼りになる仲間がいるからね!」
「ケンタ……」
「安心するニャ! ケンタとサクラコは私が護るニャ」
「ミューさん、あなたに任せるのは心配でしかないのですが?」
「ニャにおー!! 破廉恥メイドは黙るニャ!」
「ミューさん、一週間ご飯抜きです」
「ニャッ! それはあんまりだニャぁぁぁ」
ニーナからドス黒いオーラが放たれるとミューはニーナの足に縋りつき崩れ落ちる。
「行くのケンタ?」
「うん」
「誰か一緒に……」
「大丈夫だよ、ただの商談だし」
大袈裟なとケンタは笑う。
「そう、でも今日は!」
「わかってる、遅れたらさくちゃんに殺されちゃうからね! 陽が落ちる前には帰るよ」
「気をつけてねケンタ」
「待ってるニャ! ケンタ」
「いってらっしゃいまさせケンタさん」
三人がケンタを見る最後の姿は、未来を夢見る希望溢れた後ろ姿だった。
~~~~~~
「あっ! クロウさん! お待たせしました!」
「いえいえ、私も今来たところですよケンタさん。まあ立ち話もなんですからかけて下さい」
順風満帆なハーレムチート召喚者に悪役を拗らせた狂気の支配者が牙を剥く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる