異世界で過ごす悪役ロールプレイ ~努力をしないチート能力者と転生者は無慈悲に駆逐する~【コミカライズ連載決定】

む~ん

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第三章 復讐編

第123話 織田さん家の信長さん?

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「思いの外、評判が悪いな」

 ちょっとした遊び心で作った魔法をエリーナ以外にも公開したが、理解を得る事が出来ないばかりか、ボン爺に至っては「長としてしっかりと」と苦言を呈された。

「自重するか……少しだけ」

 クロが製作を頼んだ物の中には、実戦でも有用な物も含まれていた。
 振動する剣、爪が出る小手、刃が飛び出るブーツ、透明なブーメラン等は一定の評価を得ていた。

「ファルマルの部屋の転移魔法陣はこれか」

 懺蛇の拠点にある一室には、転移用の魔法陣が集められた部屋が存在する。その中にあるファルマルの隠し部屋へ通じる魔法陣へ足を踏み入れ起動させると、光の収束と共にクロの身体が消える。

「ん?」

【主ぃ~】

「ヴィト! お前ついて来たのか」

【ヴィト一緒に行く~】

 いつの間にかヴィトがついて来ており、このまま引き返すのも面倒なので連れていく事にした。

「まあいっか?」

 薄暗い部屋に光が入り、向こう側にはファルマルが膝をつき待っていた。

「我が主、ようこそお越し頂きました」

「あーファルマル、ちょっと特別ゲストがいるが構わないか?」

「ゲスト? なっ!? 」

「ヴィトだ」

【主ぃ~これ食べて良い?】

 基本的にヴィトは食べて良いかどうか、敵か味方かを判断しているようだ。

「ファルマルは俺達のファミリー、食うのはダメだ」

【食わない、ファルマル覚えた~】

 ファルマルから冷や汗が流れる。

「こいつは俺と従魔契約をしているフェンリルだ」

「じゅ、従魔契約! フ、フェンリルは白銀の毛並みだと聞いていたのですが……」

 ヴィトの毛並みは斑に黒が混ざり、禍々しい見た目になっている。

「格好良いだろ?」

「はっ!」

 ファルマルは自分の考えが及ばぬ状況であるが、主と仰ぐクロが白いものを黒と言えばそれは黒なのだという理論で平静を装う。

「このまま行くか?」

「いえ、まもなく宰相のベンゲルという者がこの部屋へ事前打ち合わせとしてやって来ます。父との会談はその後になります」

「そうか、じゃあ待つか」

【主ぃ~」

「なんだ?」

【そこの隅にいる人間は食っていい?】

「いいぞ」

【わーい】

 ヴィトは幼体とは思えないスピードで、部屋の隅に気配を消して隠れていた男を部屋の中央まで引き摺り出し、怯える男を頭から咀嚼する。

「なっ!? まさかスパイが……」

「お前に影の護衛が付いてないのなら、十中八九スパイだろうな」

 ヴィトは尻尾を振りながら、ボリボリと骨を砕き腹を満たしていく。

「お前も大変だな」

「こ、今後気をつけます……」

 ベンゲルが来るまで近況報告を兼ねた話し合いをする。

「そうか皇女はお咎め無しか」

「……はい」

「いずれにしても、動きやすくなったんじゃないか?」

「監視の目がある事に気づかされたので良し悪しですね」

 折角しがらみがなくなったのに、今までなかった可能性が高い監視が付いたことに驚いた。

「信頼できる腕利きの陰を側に置く事にしよう」

「重ね重ねご迷惑をおかけします」

 懺蛇にとって皇族にファミリーがいるというメリットは大きい。これはファルマルに対するクロの最大限の配慮とも言える。

 コンコンコン!

「宰相様がいらっしゃいました」

「通せ」

「やあやあ! お待たせしたか……い?」

 陽気に入って来たベンゲルだったが、クロの雰囲気とその側に佇むヴィトを見て固まる。

「ベンゲル、紹介しようこちらがスラム街を支配している懺蛇の首領であるクロ殿だ」

【(主ぃ~)】

(食べちゃダメだ)

【(え~)】

(明日のおやつを抜きにするぞ)

 クロとヴィトは念話を使いコミュニケーションを取る。ベンゲルからしてみれば無言で凝視しされ、見定められていると感じてしまう程の緊張感だが、交わされている内容はほのぼのとした二人の日常会話だ。

「クロ殿、彼はこの国の宰相ベンゲルです」

「べ、ベンゲルだ、以後お見知り置きを」

 クロは片手を上げ返事とする。

「で、では、陛下との会談の前に話を……」

 黒のスーツに白いシャツ、そして異様な仮面を着け、横には幼体ではあるが禍々しい雰囲気をもつ獣魔をお供としている無言の男に、ベンゲルは戸惑いながらも話を進め、その雰囲気にファルマルも冷や汗をかく。

(う~ん、話を聞く限りこの国の皇帝って……織田信長か? 本能寺の変では遺体が見つかっていないし、性格も行動も織田信長だよな? え~本人だったらちょっと昂るな!)

「……という事でよろしいだろうか?」

「承知した」(やべっ! 話を殆ど聞いてなかったよ)

 初めて声が聞けてベンゲルはホッとした。

「では、案内する」

 ベンゲルはファルマルとクロを引き連れ、長い廊下を歩くと皇帝との会談の間の前で立ち止まる。

「くれぐれも失礼のない様に」

 その言葉にクロは少しイラッとした。

 コンコンコン

「はいれっ!」

 豪快な合図で入室の許諾が下りる。
 部屋にはドンッと大股を開き、腕組みをする男が満面の笑みで待ち構えていた。

「座れ!」

 ベンゲルはクロへ正面に座る様に仕向けると、自分は男の斜め後ろに控えた。
 ファルマルも同様にクロの斜め後ろに控え、クロは促されるまま正面へ座る。

「ノブナガ・アースハイドである!」

 目の前に座るのは当然、アースハイド帝国の皇帝だった。

(思い切り欧米人の顔じゃねえかよっ!)

 クロはノブナガという名前を聞いた時から、織田信長が転移したのではないかとワクワクしていた。だがしかし、目の前に座るのは日本人ではなく完全に欧米人だった。

(転生して中身は信長? いや、それならノブナガなんて名前付けられないか……鑑定スキル欲しいと心から願ったのは初めてだな! くそっ! こんな事ならこの国の成り立ちとか調べておけば良かった)

「何だ貴様! 言葉を発する事もできんのか! 本来ならば貴様のような無礼を働けばハラキリだぞ!」

(ハラキリ? あ……そういう事か)

「ちょっと黙ってろ贋作」

「何だと?」

(謎は解けた、こいつは異世界召喚者か異世界転移者の織田信長ファンの外国人だ。日本人、もしくは本人が切腹をハラキリなんて言わないよな。はぁ……なんだこの焦燥感は)

 織田信長ではない。そう確信したクロの取る行動は一つしかない。

(それと……)

【(主ぃ~敵がいっぱい居る~)】

(そうだな)

【(殺して良いよね?)】

(合図するまで待ってろ)

 パリンッ!

 鑑定スキルを弾く音がなる。

 シュッ!

 クロは亜空間から素早くナイフを取り出しカーテンの奥へ投げる。

「ギャア!」

 カーテンの中から脳天にナイフが突き刺さった女が現れ絶命する。

「ヴィト」

【ウォォォォォン!!】

 クロの合図でヴィトの身体から黒い体毛部分が伸び、何本も天井を突き刺した。

「なっ!?」

 ノブナガは一瞬の出来事に驚きの声をあげる。

 天井からは血が滴り落ち、その雫が床を濡らす。

「鑑定スキルに暗殺部隊? 殺気がダダ漏れだ。これは私的な密会だと聞いてたんだが……ベンゲル殿、これはどういった了見なのか説明してくれるか?」

 ベンゲルの預かり知らぬ出来事であった。ノブナガにはくれぐれも余計な争い事を起こさぬよう念を押し、それを了承したので渋々この会談を許可した。

(なんて事をしてくれたんだっ!)

 ベンゲルは後ろに控えながらノブナガの頭を殴りたい衝動に駆られる。

「い、いや……あの、私も何がなんやら分からず……」

 ベンゲルはクロの威圧に狼狽する。

「はっはっはっ! 見事っ! さすがスラム街を治める者だなっ! はっはっはっ……」

 全員が白い目で見る。児戯の範疇を超え殺気を放つ暗部を放っていた件は有耶無耶には出来ないばかりか、完全に敵に回す所業だった。

「おい」

「はん?」

「F○CK OFF!」

 クロはテーブルの上に上がり、ノブナガに向け剣を突きつける。

「Why!?」

「陛下!」

 ドンっ!

 庇おうと前へと歩み出たベンゲルを、ヴィトが前足で静止倒す。

【主の邪魔しないでね? 動いたら食べるよ】

「はっ!」

 ベンゲルはクロにも劣らない威圧感を放つ獣魔に怯え硬直する。

「お前がどういうつもりで織田信長を模倣し名乗っているのかは知らんが、この上なく不快だ」

「我はっ! ガハッ!」

 ノブナガの肩口に剣を突き刺す。

「誰が言葉を発する許可をした?」

「ぶ、無礼であるぞ! グアァ!」

 続いて右足に剣を突き立て、胸ぐら掴む。

「何度も言わせるな、口を慎め」

「ぐぬぬぬぬっ……」

「いいか? 織田信長を名乗るならせめて……」

 剣をノブナガの頭上で振り抜く。

「剃髪して髷を結え! この戯けが!」

 ハラハラとノブナガの髪の毛が散り、落武者の様になった。

「ひぃっ!」

「それと……」

 ぐっと顔を耳に近づけ囁く。

「俺の事を詮索はするな、次は首を切り落とすぞ? それともお前の大好きなハラキリがしたいか?」

 ノブナガはブンブンと首を横に張る。

 クロはそれを確認すると、どかっと椅子に座り直し、大股を開き腕を組む。

「俺が懺蛇のクロだ、頭が高ぇぞ!」

 怒りに満ちたオーラが部屋全体に漂った。
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