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第31話 『博士へのプレゼント』

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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?



著者:ピラフドリア



第31話
『博士へのプレゼント』





「レイさん、今日の夜ご飯は何にしますか?」



「そうね~、何食べたい?」



「ん~、カレーがいいなぁ」



「カレーね」



 私とリエは夕飯の買い物に行くために駅前に出かける。





 駅前にあるスーパーで買い物を終えて、事務所に帰るため商店街を通っていく。
 すると、商店街の本屋の前でソワソワして居る赤髪の青年を発見した。



「あれ、あの人って……」



 青年に見覚えがある私は近づいて後ろから声をかける。すると、青年は飛び上がって驚いた。



「わっ!? …………って、先輩の妹さんじゃないですか」



「やっぱりそうよね、あなたお兄様と一緒にいた」



 見覚えがあったのはあっていたらしい。



 前にお兄様が事務所に来た時に一緒にいた赤髪の後輩だ。



「何探してるんですか? …………まさか、大人な本を……」



「違います!! ……博士……いえ、父親への誕生日プレゼントを探してるんです」



「お父さんへのプレゼントですか」



 青年は本屋の前に並べられた本を眺めながら悩む。



「でも、何が良いか分からないんですよ」



 そう言いながら見ている本は新刊の漫画だ。



「お父さんは漫画好きなの?」



「いえ、全然読みません」



「じゃあ、そんなところで考えてても意味ないじゃない!!」



 私に言われて青年はやっと気づいたようでハッと冷静になった。



「それもそうでした。僕が好きなものをあげちゃ意味ないですよね」



「そりゃ~そうよ……」



 私達がそんな会話をしていると、本屋から黒髪の少女が出てきた。



「にーちゃん、何にするか決まった?」



 少女は青年に聞く。青年は首を振って答える。



「いや、まだだ。そっちにはあったか?」



「とーさんが好きそうなのはなかったー」



 青年と会話をしていた少女は、私の存在に気づくと興味を持つ。



「にーちゃん、それ誰?」



 少女は指で私のことを指して青年に聞く。



「ん、ああ、この人は先輩のいもう……」



「まさか!? にーちゃんの彼女」



「なんでお前はいつもそういう方向に持っていくんだ!! いや、先輩のことを彼氏って言われた時よりはマシだけど…………」



 先輩のことを彼氏。つまりお兄様を彼氏としたのか。
 話を聞いていた私は口元を押さえて静かに笑う。



 しかし、吹き出したとを聞かれて青年に睨まれた。



「笑わないでください……」



「ごめんなさいね……」



 青年はため息を吐くと、こちらの方に向き直し、私の顔を見た。



「寒霧さんにお願いすることでもないんですが……。僕達だけじゃ時間だけが経つだけで、一時間だけで良いのでお願いできますか?」



 青年が助けを求めてきた。確かにさっきの青年の様子を見ていると、かなり時間がかかりそうだ。



 私は顔を動かさず、後ろで浮いているリエに目線を送る。



「やってあげても良いんじゃないですか。どうせ事務所に帰ってもまだ時間ありますし」



 リエの意見を聞いた私は、青年の目を見て答えた。



「買ってきたのはルーとかだから急ぐ必要ないし。どうせ商店街回ってお肉買う予定だったから構わないよ」



「ありがとうございます。…………流石は先輩の妹さんですね、頼まれると断れない」






 こうして青年の父親のプレゼント探しをすることになった。



「それであなたのお父さんってどんな人なの?」



 商店街を歩きながら私は青年とその妹に聞く。



「とーさんは博士でね。いろんなの作ってるのー!」



「博士? 大学の教授とか?」



「きょーじゅー?」



 妹が首を傾げている中、青年が答えた。



「いえ、独自でラボを作ってそこでロボットや機械を作ってるんです」



「へぇ~、どんなの作ってる?」



「そうですね。この前は橋本七号という大根を自動で切ってくれる機械を作ってました」



「ネーミングセンスもイマイチだし、作ってるものも実用性なさそうね……」



「……ハハハ、そこには同意します……」



 そんな会話をしながら辿り着いたのはプラモ屋さん。何も言わずに入ろうとする青年と妹を私は止めた。



「ストーーーップ!!!!」



「どうしたんですか?」



「どうしたんですか。じゃないよ、あなたのお父さん、プラモやるの?」



 兄妹は同じように顔の角度を傾けた後。



「「……やらない」」



「なぜ入ろうとした!!」



 青年は頭を抱える。



「あぁっ!! ダメだ、あの人いつもあれ作ったぞ、これ作ったぞって自慢しかしないから、あの人の好きなものって自作のものしか思いつかない!!」



 青年が悩む中、ちゃっかり妹さんはプラモ屋さんに入って気づいたら何か買って出てきた。



「博士へのプレゼントあった?」



「なかった。でも、私が欲しかったのあったー」



 自分が欲しかったパーツを買ってきただけだったようだ。



 このままだと進まない。私がなんとかしないと。
 私は商店街のベンチに座り、三人と幽霊一人で話し合うことにした。



「それでさっきの話を聞いた限りお父さんは機械いじりが好きみたいだけど。それ用の部品を買ってあげるんじゃダメなの?」



 私が聞くと青年は首を振る。



「ダメです。必要なものは全て揃ってます。なんなら魔石とかいう謎の石までありますし……」



「何そのファンタジー要素!? ……じゃあ、その路線はダメね」



「そうね~、他に何か良いもの……」



 考えていると妹さんがどこで拾ってきたのか木の棒で地面に絵を描き始める。
 それは八本の足を持った虫。



「何これ?」



「これはねー、とーさんが好きなものー」



 私は青年の顔を見て説明を求める。



「それは博士が好きな映画です。蜘蛛の怪物が世界中で暴れ回って、人々を苦しめるんですがヒーローが現れて蜘蛛を倒すって話です」



「その映画のDVDを買うっていうのは?」



「DVDですか。確か1、2、後もう一作の全作を揃えてたような…………」



「じゃあ、それもダメじゃない」



 というか、思いつくもの全て持っている。この流れだと、ずっと続いていきそうな予感だ。



「何かあげるっていうものから離れるのはどう? ほら、心がこもってれば良いって言うじゃない」



 私がそう提案すると、青年とその妹は閃く。



「そうですね! その手がありました!!」



「にーちゃん、どうする?」



 そう言って二人は商店街のある店に直行する。私とリエが二人を追いかけると、辿り着いたのは自転車屋さん。



「自転車って……心こもってるの? てか、高くなってない!?」



「いえ、これは僕たちの願いでもあるんです。家に引きこもってないで運動しろって」



「…………良いなら、良いけど」



 そしてその後無事に自転車を買った兄妹は帰って行った。





「私達もお肉買って帰りましょうか」



「そうですね」







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