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第1話 【王国の外れ 其の1】
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せかへい 外伝20
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第1話
【王国の外れ 其の1】
満月が暗い街を照らす。王国を囲む結界が月の光に反射して、半円を描く半透明な線を映し出し、それは不気味に青い光を発している。網のような見た目になっている結界の見た目は、結界と結界のつなぎ目である。
オーボエ王国には笛のように細長い建物が多い存在しており、中央には王族の住む城もある。
城はプリンのような崖になっている円状の丘の上にあり、道は一本しかなく、その丘をぐるっと一周する坂道がある。
その上には横並びになった笛のような建物が五個並んでおり、くっついている。
それぞれで高さも違っていて、一番高いものは右から二番目の建物だ。
そんなオーボエ王国であるが、王国にはそんな建物がない地域も存在する。
オーボエ王国の特徴的な建物があるのは中心だけであり、少し離れた場所になると通常の一階建ての建物の並ぶ地域に行き着く。
そこからは中央の高い建物も見える。
そんな王国の外れ、そこにある街で一人の人間がいた。
そいつは屋根の上に登り、夜空を見上げる。
奥に見える高い建物と月が並んで、まるで王国から月の国に行けてしまえそうなそんな錯覚に陥る。
「…………いつか、行けると良いなぁ」
独り言を言う。誰かが近くにいるわけではない。だが、月と王国が近づいて、ふとそんな言葉が出た。
姿は黒いフードを深く被った人物だ。
しばらく夜風に吹かれたあと、立ち上がる。
思い出すのは懐かしい日々だ。あの時は何もかもが新しかった。
どんなことにも興味を持ち、多くのことを彼らと共に楽しんだ。
だが、今はもういないんだ。それでも、時は動き続ける。
フードを被った人物は屋根から降りた。
そして夜の街を歩き出す。
夜の街は人一人いない。静かな街だ。
昼は多くの人が行き交い。歩けば人とぶつかる。それほど多くの人がいた。
夜は自由だ。こうして道の真ん中を歩いても誰にもぶつかることはない。でも、少し寂しくも感じる。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
しばらく進むと、王国の中でもかなり家の少ない地域にたどり着いた。
森や畑がある王国の中でも珍しい場所だ。そんな場所に三階建ての宿がポツンとある。
宿の前では顔見知りが待っていた。老人と少女だ。彼らは事情を理解してくれている。そして協力してくれた。
あと少し、あと少しであの場所に辿り着ける。
だが、もうあそこには帰れない。だから進む。次の時代のために。
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
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【王国の外れ 其の1】
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オーボエ王国には笛のように細長い建物が多い存在しており、中央には王族の住む城もある。
城はプリンのような崖になっている円状の丘の上にあり、道は一本しかなく、その丘をぐるっと一周する坂道がある。
その上には横並びになった笛のような建物が五個並んでおり、くっついている。
それぞれで高さも違っていて、一番高いものは右から二番目の建物だ。
そんなオーボエ王国であるが、王国にはそんな建物がない地域も存在する。
オーボエ王国の特徴的な建物があるのは中心だけであり、少し離れた場所になると通常の一階建ての建物の並ぶ地域に行き着く。
そこからは中央の高い建物も見える。
そんな王国の外れ、そこにある街で一人の人間がいた。
そいつは屋根の上に登り、夜空を見上げる。
奥に見える高い建物と月が並んで、まるで王国から月の国に行けてしまえそうなそんな錯覚に陥る。
「…………いつか、行けると良いなぁ」
独り言を言う。誰かが近くにいるわけではない。だが、月と王国が近づいて、ふとそんな言葉が出た。
姿は黒いフードを深く被った人物だ。
しばらく夜風に吹かれたあと、立ち上がる。
思い出すのは懐かしい日々だ。あの時は何もかもが新しかった。
どんなことにも興味を持ち、多くのことを彼らと共に楽しんだ。
だが、今はもういないんだ。それでも、時は動き続ける。
フードを被った人物は屋根から降りた。
そして夜の街を歩き出す。
夜の街は人一人いない。静かな街だ。
昼は多くの人が行き交い。歩けば人とぶつかる。それほど多くの人がいた。
夜は自由だ。こうして道の真ん中を歩いても誰にもぶつかることはない。でも、少し寂しくも感じる。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
しばらく進むと、王国の中でもかなり家の少ない地域にたどり着いた。
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宿の前では顔見知りが待っていた。老人と少女だ。彼らは事情を理解してくれている。そして協力してくれた。
あと少し、あと少しであの場所に辿り着ける。
だが、もうあそこには帰れない。だから進む。次の時代のために。
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