霊能力者のレイちゃんは、黒猫と依頼に行く。

ピラフドリア

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第3話 『修学旅行』

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霊能力者のレイちゃんは、黒猫と依頼に行く。



第3話
『修学旅行』




「ではこれから自由時間とする。なるべく班のメンバーと行動するように……。以上!!」



 生徒の前で教員が説明を終えると、生徒達はバラバラと動き始める。班ごとに並んではいたが、班から外れるものや別の班と合流するもので広場はごった返す。



 楓は背伸びをして両腕を上に伸ばすと、後ろにいる友人に話しかけた。



「新田君、萩村君。これからどうする?」



 後ろでは早速イヤホンを耳につけて野球の中継を聴く新田と、ブツブツと独り言を呟く萩村の姿があった。
 話しかけられて最初に気づいたのは萩村だ。萩村はハッと我に帰り、独り言を喋っていたのが恥ずかしかったのか、口を隠して頬を赤くする。



「あ、今のは。新しい構築を………。いや、そうじゃなくて、そうだね。どうしよっか」



 楓は顎に手を当てて考える。そして閃いたのか指を鳴らした。



「僕、海見に行きたいよ!」



「え、昨日も見たじゃん」



「あれはクラス行動だったじゃん。自由がないっていうかさ」



「あー、それはそうだね。新田は?」



 萩村はイヤホンをつけてニヤニヤしている新田の方を向く。しかし、聞こえていないのか、新田の返事はない。
 その様子を見て二人はため息を吐く。そして楓はやれやれと



「新田君はどうせ、ついてくるよ」



「そうだね、俺達が事故に遭わないように見ててあげれば良いか」



 三人は行く場所を決めて、早速行動を始める。そうな三人の後ろを会話には参加しないが、ワクワクしながらついてくる一人の幽霊。



「楓さんには感謝ですね。昨日海に行きたいって言ったの覚えててくれたんですね!」



 彼らが駅に向かうのを、幽霊とは違いもう一人、監視している人物がいた。赤いバンダナを頭に巻き、カメラを手にした学生。



「ふふふ、今日こそ大スクープを手に入れてみせる。そのためにも……坂本君、君を尾行だ!!」







 三人と一人は電車を乗り換えながら、海の見える海岸へと移動した。シーズンを過ぎているとはいえ、海には多くの観光客がいる。



「楓さん、楓さん」



「どうしたの? リエちゃん」



「それがですね。あそこ、見てください」



 リエがそう言って浜辺の奥にある岩場を指差す。そこには小さな男の子が体育座りで座り込んでいた。
 しかも、その少年は普通の少年ではない。



「幽霊……。リエちゃん、少し時間もらって良い?」



 楓はリエにニコリと笑い確認を取る。



「そういうと思ってました。私も手伝います」



 楓は萩村と新田に一言伝えてから、リエと共に一旦離れる。そして岩場にいる幽霊の元へ向かった。



 楓とリエは少年の前に立つと、視線を合わせるため膝を曲げて座り込む。リエは俯く少年の顔を覗き込み、



「どうしたの?」



 っと尋ねた。少年は突然現れたリエにびっくりするが、すぐに冷静さを取り戻す。



「海の向こうで待つ、彼女を見てるんです」



 少年の回答に二人は首を傾げた。



「海の向こう?」



 っと首を傾げていたリエだが、少年の姿の違和感に気づく。



「……あなた、存在が消えかけてますね」



 少年の姿はリエよりも薄く、今にも消えてしまいそうだ。そのことに気づいたリエに少年はははと乾いた笑いをする。



「当然です。僕はすでに力の大半を悪霊に持っていかれているのですから」



「悪霊がいるんですか!?」



 リエと楓は顔を合わせる。そして頷きあうと、



「悪霊はどこに?」



「分かりません。でも、あれは僕のせいで生まれたんです。僕がなんとかしないと。だから、僕はまだ彼女に会えない」



 楓は少年の肩を掴み、持ち上げる。そして座ったままの少年を立ち上がらせた。



「な、僕たちに事情を話してくれないかな? 力になれるかもしれないよ?」



「でも、危険ですよ?」



 楓とリエは胸を張ると、



「問題ないよ。僕は力には自信があるし、リエちゃんも幽霊歴が長いから色々教えてくれるよ!」



「はい。お任せくださいです!」








 山に火を纏った妖怪が現れる。火を操って、人や動物を襲い、魂魄を喰らう。その姿から人々は恐れ、その妖怪が現れる山には入らなくなった。



 少年を連れ、浜辺から離れた楓とリエ。三人は公園にあるベンチに座り作戦会議をしていた。



「リエちゃん、悪霊を探す方法ってないの?」



「悪霊を探す方法ですか。私も悪霊に関しては詳しいわけじゃないですけど、力の強いものを襲うっという習性はありますね」



「力の強いもの?」



「簡単には霊力です。強い霊力を持つものを取り込み、さらに上位の存在へと成長していくんです。それが悪霊の性質です」



「じゃあ、強い霊力で釣ることができるってこと?」



「そうなりますね」



 楓は少し考え込み、リエに相談する。



「ねぇ、僕の力だったら悪霊を引き付けることできる?」



「楓さんなら可能ですよ。でも、向こうが気づけるほど近くにいないと効果がありません」



「向こうが気づくか。佐々木君、最後に悪霊を見たのはいつ?」



 楓は隣に座る少年に尋ねる。



「港です。でも、かなり前のことですし、同じところに留まっているのは思えません」



「そうか~」



 楓とリエはどうしようかと頭を悩ませる。そんな中、少年は手を挙げると、



「その、まだ伝えてないことがあって……。それも良いですか?」



 少年は下を向く。リエと楓が頷くと、少年は語り始める。



「例の悪霊は僕なんです。僕は心の半分で彼女に会うことを諦めて、その時生まれたのが悪霊なんです。どうにか飲み込まれる前に追い出すことができましたが、それによって悪霊が暴れるようになってしまいました」



 少年の説明では悪霊は少年の半身らしい。そんな説明を聞き、楓は首を傾げる。



「リエちゃん。半分悪霊になるってことあるの?」



「う~ん。聞いたことはないですけど、可能だとは思います。悪霊になるのは、現世に残りたい気持ちと、それを否定する理性が原因でしょうし、心の持ち方によっては起こると思います」



「そうか~」



 リエの説明を聞き、納得した楓。そんな楓に少年はもう一つ情報を伝えた。



「悪霊を呼び寄せることが、僕ならできるかもしれません」



 それを聞き、リエは顎に手を当てて考え込む。



「悪霊と君は元は同じ存在。だから引き寄せ合うってこと?」



「はい」



 リエは楓の方を向く。楓は少し考え込むと、決断した。



「分かった。それは君に任せる。その後のことは僕達に任せてくれ!!」






 楓とリエ、少年は三人揃って人気の少ない林の中へ入る。
 その林は前に悪霊が出たという騒ぎがあった場所で、ここなら悪霊を呼び寄せやすいと考えたからだ。



 林の中を進みながら、リエは心配そうに楓の手を握る。



「楓さん、私達だけで本当に大丈夫でしょうか?」



「怖くないなんて言えないよ。でもね、リエちゃん、僕は放っておくことはできない。リエちゃんもあの子も、僕が絶対守ってあげるから、安心して」



 隣で手を握って歩くリエに楓は安心させようと微笑む。しかし、そんな笑顔を見て、リエは首を横に振る。



「私達だけじゃないです。楓さんも絶対に無理しないでください」



「リエちゃんは優しいな。うん、僕も無理しないよ」



 林の中を進み、井戸が見えたところで、三人は足を止めた。



「きました……」



「だね」



 三人が同時に気づけるほど、強大な力が接近してきている。猛スピードで林を駆け抜けて、それは現れた。



「これが悪霊……」



 それは2メートルほどの大きさの炎の玉。炎の模様が顔のようになっており、不気味に微笑んでいる。



「楓さん」



「任せてリエちゃん。ここは僕が相手するよ!」



 楓は二人を守るように前に出る。両拳を握りしめ、炎の玉と向かい合った。




「行くよ!! っとぉ!!」



 楓は悪霊をキックで蹴り飛ばす。見た目は炎だが、本体は霊力の塊。霊力を纏った蹴りであれば、しっかりダメージを与えられる。



 悪霊を楓の蹴りを喰らって、林の中をぶつかりながら振り跳ぶ。そして一撃で地面に倒れ込んだ。



「え、よ、弱い!?」



 楓が驚く中、リエは首を傾げる。



「弱いっていうか。弱ってますね」



「でも、これなら倒せるんじゃない?」



「倒しちゃダメですよ。佐々木さんが吸収するんです。今の佐々木さんなら弱った悪霊を負けずに、取り込むことができます」



「そうか、そうだった」



 楓は倒れた悪霊を抱き上げる。さっきまでめらめら燃えていたが、大きさも小さくなり、炎も弱まっている。
 少し熱いが我慢して、楓は少年の元に悪霊を運んだ。



「それじゃあ、取り込んでみます」



 少年が悪霊に触れると、少年の身体が光始める。そして、少年の姿が変化した。
 成長して青年と呼べる姿へと変貌した少年だったものは、渋い声で楓達に礼を述べた。



「ありがとう。君達のおかげで半身を取り戻すことができた」



「良いってことです」



 リエは胸を張る。しかし、活躍したのは楓だ。頭を下げ終えた青年は



「これで会いに行くことができます。リエさん、楓さん、それでは」



 幽霊はそう言って、林の中を駆けていった。








「よぉ、戻ったか、坂本! もう自由時間終わっちゃうぞ」



 楓達が戻ると、萩村と新田は待っていた。萩村は泳いでいたのだろう、身体はまだ湿っている。新田にはそのような形跡はなく、ずっと野球の放送を聞いていたようだ。



「ごめんごめん、じゃあ、残りの時間は何しよっか?」



「飯食わないといけないんだよ。お前がいないから俺達まで抜きになるところだったんだぞ」



「あー! そうだった!」



「そうだったじゃねーよ。このやろー!」










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