霊能力者のレイちゃんは、黒猫と依頼に行く。

ピラフドリア

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第4話 『ヒーロー』

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霊能力者のレイちゃんは、黒猫と依頼に行く。



第4話
『ヒーロー』




 沖縄へ向かうロボットの中。レッドから佐々木 勇という人物についての情報を聞いていた。



「彼は戦前にいたヒーローらしい。まだヒーローが少なかった頃、上京してヒーロー学について学び、島に戻ってきた。それからは島のヒーローを育て上げたらしい」



 黒猫が目を輝かせているが、私はふ~んと聞き流す。レッドは操縦席の助手席に置いてあった資料を、私達のいる後ろへ投げる。
 テーブルの上に資料が散らばり、その中には顔の写った写真も混じっていた。
 その写真を見て、静子ちゃんはドキッと身体を震わせた。



「勇……さん」



 どうやら彼で合っているらしい。そんな言葉は聞こえていないが、レッドは説明を続ける。



「ヒーローとしての仕事が忙しく、なかなか島を出ることができなかったらしい。有名になったら再開するという約束をした人がいたらしいが、その人と会う前に……。というのが正式な記録だ」



「正式な記録?」



 私が首を傾げると、レッドは資料の中にある極秘という文字の書かれた資料を見るように指示する。



「死者が悪霊となる。霊宮寺君ならそれは知っているね」



「まぁ……」



 幽霊となったものの中でも、未練を果たせず、諦めたものが悪霊になる。リエから前に聞いた話だ。



「佐々木 勇は現在、悪霊となっている。夜な夜な人を襲う火の悪霊となってな」



「え!?」



 私と黒猫が声をあげて驚く。しかし、この話を聞いて一番ショックだったのは、静子ちゃんだ。
 口元を両手で覆い、目を丸くしている。



「元ヒーローの者が悪霊となった。そんな情報はヒーロー組織として世間に出せない代物だ。上層部はそれを隠蔽していた。まさか、霊宮寺君の仕事の手助けをしているだけのつもりが、ヒーロー組織の闇に触れることになるなんてな」



「レッドさん、そんなことまでして調べてくれたの!? 大丈夫なの!?」



「問題ないさ。ヒーローは正しくあるものだ。上層部とはいずれ蹴りをつける。その前に君達の依頼を成功させよう」



 レッドは操縦しながら片手を上げて、親指を立てる。



「そこにいる幽霊君。俺は佐々木君には会ったことはない。だが、ヒーローとして熱い男だったと聞いたよ、悪霊になろうと、彼のヒーロー魂は燃え尽きることはない。必ず戻ってくるさ!」







 しばらく経ち、ロボットが海を越える。早速到着した私たちは、その悪霊がいるという森にやってきていた。



「この森は現在沖縄のヒーローリュウキュウによって封鎖されている。悪霊の住処はここだ」



 ロボットから降りて、私達は森の中を進んで探索をする。
 すると、早速遭遇した。



「…………えぇぇえぇぇっ!?」



 それは巨大な火の玉。大きさは50メートルほどだろう。見上げると首が痛くなりそうな大きさだ。




 頭の上で黒猫が猫パンチで頭を叩く。



「こんなの勝てるわけねーだろ! 逃げるぞ!」



「そ、そうよね、逃げましょ!! 静子ちゃん、逃げるよ!」



 私と黒猫は逃げることにして、ロボットに戻ろうとする。しかし、静子ちゃんはその場で立ち止まり、



「勇さん……私が、私のせいで…………」



 そう呟いた後、静子ちゃんは悪霊に向かって走り出す。



「ちょ、ちょっと!?」



 悪霊に駆け寄っていく姿を見て、私も追いかける。だが、そんな私を頭の上にいる黒い物体は止めようと暴れる。



「おいレイ、やめろ!! こんなの危険すぎる!!」



「でも、静子ちゃんが!!」



「…………あいつには悪いが見捨てろ! 俺はミーちゃんと……お前を危険な目に遭わせたくねーんだよ!!」



 そう言ってどうにかこうにか止めようと頭の上で暴れているが、黒猫ができることは少ない。



 静子ちゃんは悪霊の前に立つと足を止める。私も静子ちゃんに追いついて後ろで止まった。
 炎の近くだからだろうか、熱気で汗が出る。もう服はベトベトだ。



 こんな暑さだというのに、静子ちゃんは悪霊を見上げて叫ぶ。



「勇さん、ごめんなさい!! 私があなたについていく決断をしていれば、あなたはこんなことにならずに済んだんです!!」



 静子ちゃんは悪霊の前に身を乗り出す。



「あなたの気が済むなら、私は消滅したって構わない!! 私を恨んでいるのなら、私を消し去って!!」



 静子ちゃんの叫び声に反応してか、悪霊がこちらに少しずつ近づいてくる。静子ちゃんはその場で止まり、目を瞑って覚悟を決めた。




「おい……」



 私がその場で固まっていると、黒猫が頭からジャンプして降りる。そしてノソノソと静子ちゃんの前に移動した。



「お前なぁ、勘違いしてるんじゃねーよ。こいつはお前を恨んじゃいない」



「ネコ、さん?」



「コイツはずっとお前に会いたがってた。だが、それが叶わなくってこうなっちまったんだ。お前はコイツに食われることが仕事じゃない」



 黒猫は身体の向きを悪霊の方は向ける。



「なぁおい。お前はどうなんだよ。本当にそれで良いのか? 俺は人を好いたことはねぇ、俺の猫以外は愛せないし、なんなら人間は嫌いだ」



 黒猫は熱で毛がチリチリになりながらも、悪霊に叫んだ。



「ずっと会いたがってたやつが前にいるんだ。お前は悪霊に飲まれたままでそれで良いのか!!」



 黒猫の叫びで悪霊の動きが止まった。



「え、止まった?」



 私はホッとしたが、黒猫はノソノソと歩いて、静子ちゃんの肩に飛び移る。



「おい女、逃げろ。俺は死にたくない」



「え?」



 次の瞬間、悪霊の左右から火柱が出る。そしてその火柱は私達に向かって動き始めた。



「ええぇっ!?」



「ほら逃げろ!!」



「は、はいっ!?」



 黒猫の勢いと、炎が向かってくることで静子ちゃんは思考が止まり、後方へ走って逃げる。



「レイ。お前もだ、早く来い!!」



 展開が分からず止まっていた私を黒猫が呼び、私も静子ちゃんを追いかけて悪霊から逃げ始めた。
 炎の柱からは逃げられたが、悪霊は追ってきている。動きは遅いため、追いつかれないが、全力で走る。
 走りながら、私は静子ちゃんの肩で後ろの様子を警戒する黒猫に尋ねる。



「た、タカヒロさん、どういうことなの!? アンタの話で止まったんじゃなかったの!?」



「そんなことになるわけねーだろー。相手は悪霊だ。自我なんてないんだ」




「じゃあ、さっきの話はなんだったのよォォォ!!!!」




 来た方向へと戻っていくと、ロボットとレッドを発見する。どうやら雑巾でロボットを掃除しているようだ。



「やぁ、霊宮寺君。悪霊退治はできたのかな?」



 事態を知らないレッドだが、そんなレッドに黒猫が叫ぶ。



「おい、ヒーロー!! ロボットを動かせ!! 悪霊が来るぞ!!」



「猫が喋って……。ああ、分かった。早く乗るんだ!」



 判断が早い。レッドはロボットに乗り込み、私達を素早くのせる。どうにか悪霊に追いつかれる前に、ロボットは発進して、空中に逃げることができた。



「はぁ、逃げ切れたぁぁ」



 ロボットの中で私は座り込み、呼吸を整える。静子ちゃんも疲れたようで、両手を壁につけていた。



「どうにか逃げ切れたな」



 黒猫はそう言いながら、静子ちゃんから移動して私の頭に戻ってくる。せめて息が整ってから戻ってきてほしい。というか、



「珍しいね、アンタが私達以外の人に乗ったりするの」



「……」



 人に抱かれたり、誰かと接するときはミーちゃんに任せるタカヒロさん。そんなタカヒロさんが珍しく自分から他人の肩に乗っていた。
 顔をそっぽに向けて知らんぷりしているが、静子ちゃんにも少し心を許したってことだろう。



 というか、あの場で動いたのは静子ちゃんを助けるためだったのだろう。



 黒猫は頭の上でレッドに叫ぶ。



「ヒーロー! このジェット機で悪霊と戦えないのか!?」



「うむ、可能だ。ならば、見せよう!! 変形だ!!」



 レッドは操縦席でレバーを下げる。すると、ロボットが変形して、人型のロボットになった。
 サイズ的にも悪霊と互角。これなら対等に戦える。



「行くゾォ!! うぉぁぁぁぁっ!!」



 レッドがロボットを操縦して悪霊を殴り飛ばす。悪霊も黙ってやられるはずはなく、反撃で火の玉を吐き出した。
 お互いダメージを受けながらも、交互に攻撃を続けていき、やがて決着が付いた。



「悪霊があんなに小さくなった!?」



 ロボットの中から窓を覗くと、悪霊の姿が小さく変化していた。サイズは2メートルほどになり、ロボットで踏み潰せそうなサイズだ。



「あ、逃げていくぞ!!」



 流石に力の差を感じ取ったのか。悪霊は私たちから逃げるように空を飛んでいった。








 悪霊に逃げられてしまったが、ロボットで追う必要もなくなったため、ロボットから降りる。そして私たちは歩いて悪霊を追うことにした。
 そしてしばらく進むと、



「静子さん」



 前方に男性の幽霊が現れた。その姿を見つけ、静子ちゃんは足を止めた。



「勇さん……」



 どうやら前に現れた幽霊が目的の人物らしい。



「え!? 悪霊になってたんじゃないの!?」



 私が驚くと、勇が答えてくれる。



「はい。悪霊になっていました。ですが、悪霊になったのは半身なんです。悪霊になった部分も取り戻し、こうして元の姿で再会することができました。あなた方が弱らせてくれたおかげです」



「そんなことってあるの!?」



 私だけでなく、黒猫も頭の上で驚いている様子だ。そんな中、再会した二人は抱き合った。



「勇さん、会いたかった」



「ああ、静子。俺もだ」



 そして再会したことで二人の身体は薄くなっていく。



「霊宮寺さん、そしてタカヒロさんとミーちゃんさん、ありがとうございました」



 自分たちが消えることを察したのだろう。静子ちゃんは私達に礼を述べた。



「良いのよ。あの世に行っても元気でね」




「はい」



 二人の姿は天に登っていき、チリとなって消えていった。
 私はホッと息を吐く。そして頭に乗る黒猫を軽く撫でた。



「アンタちょっと寂しいんじゃない。せっかく仲良くなったのに」



「誰が寂しがるかよ!!」



「さてと、私達はこれからどうしよっか?」



「どうせだ。ちょろっと観光して帰ろうぜ。レッドに言えば、いつでも帰れるだろ」



「それもそうね」














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