ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。

ピラフドリア

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第15話 『ドミニクとチンヨウ』

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ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。



著者:ピラフドリア



第15話
『ドミニクとチンヨウ』




 チンヨウの攻撃で吹っ飛ばされたドミニクは鎧の凹んだ部分で擦る。



「覚えているとも……。しかし、前よりも威力を上げたか」



 チンヨウは構えた状態のまま、ニヤリと笑うと、



「当然。修行は怠らんさ。前回よりも私の武術は更なる高みへと進んだ。君を倒すためにね」



「私を倒す……。やれるものならやってみな!」



 ドミニクは剣を振り上げてチンヨウへと駆け寄った。今回は二人で踏み込むのではなく、ドミニクが近づき、チンヨウはその場で迎え撃つ。
 距離を詰めたドミニクは剣を振り下ろす。しかし、その剣を避けるためチンヨウはわざと前に出た。



 恐れれば、距離をとって避けようとする状況。だが、そこで前に出ることで刃の手前に入り込む。
 ドミニクの武器は剣、チンヨウの武器は拳。そのためここで下がれば、リーチの差でチンヨウは厳しい状況になった。だが、ここで前に出たことで、チンヨウはドミニクの懐に入り込むことに成功した。



 そしてドミニクの剣が振り終わる前に、チンヨウはドミニクの顎を目掛けて、拳を突き上げる。しかし、拳を握り込むのではなく、手を開き手のひらのつけてを顎に押し付ける形で押し上げた。



 ドミニクの身体は宙に浮き、顎を攻撃されたことでドミニクの身体は動きを失う。……はずだった。



 次の瞬間、チンヨウの足がバランスを失う。ドミニクはチンヨウが前に出て懐に入り込むのを予知していたのだろう。
 剣を振ると同時に、剣が振った反対側の足でチンヨウが来る場所に蹴りを用意していた。
 どんな攻撃を受けたとしても、蹴りの勢いは止まらない。



 二人はほぼ同時に攻撃を受け合い、ドミニクは後ろへのけぞり、チンヨウはその場で尻餅をついた。



 後ろへ身体を逸らしたドミニクだが、一歩後ろに下がったが、持ち堪えた。
 仰け反っていたドミニクはどうにか体制を立て直す。そして尻餅をついて座り込んでいるチンヨウに剣を振り下ろした。しかし、



「くっ!!」



 剣を振り下ろしたドミニクの方がダメージを喰らい、後ろへ下がった。チンヨウは座った状態のまま、拳を握りしめている。



「修行により以前よりも威力を上げた。どうかな?」



 ダメージでドミニクが後ろに下がる中、チンヨウはゆっくりと立ち上がる。そしてふらついているドミニクの前に立つと、



「君に捧げよう。私の新たな技を……ッ!!」



 チンヨウは下から上からあらゆる方向から攻撃を仕掛ける。寝転んでいるような低い姿勢や、飛び上がった高い位置など、上下から繰り出される連打にドミニクは反撃することもできず、ただ打撃を喰らい続ける。



 そして締めの一撃というふうに、手のひらを広げてドミニクのへその辺りに両手を当てると、殆ど身体を動かしていないのに押し付けるような打撃でドミニクを手のひらで吹っ飛ばした。



 ドミニクは白目を剥きながら地面を転がる。何メートルも後ろへ転がっていき、その距離からどれだけの威力かが分かる。
 ドミニクを吹っ飛ばし、チンヨウは両手をポケットにしまい、ニヤリと笑った。



「低い姿勢からの攻撃を得意とする地極拳。上空からの攻撃を得意とする天極拳。そして君に負け、私はさらに一つの技術を体得した」



 チンヨウの身体から白い湯気のようなものが溢れ出す。まるで漫画やアニメの世界に存在するオーラのようなもの。



「それが魔法。体内の魔力を自在に操り、身体能力を向上させる。これら三つの力を組み回せ、私の武術は完成した。君に負けなければ、到達し得なかった高みへと私は到達したのだ」



 自慢げに身体から湯気を放出させる。あの湯気が魔力なのだろう。
 チンヨウから出る魔力はヤカンのようにモクモクと増えていき、やがてチンヨウの身体を覆う。



 それだけチンヨウの持つ魔力が大きいということなのだろう。



 しかし、あれだけの打撃を与えて、ドミニクを倒したはずなのに、チンヨウはずっとドミニクから目を離さない。それどころか、話し始めている状況。



 俺とエイコイから見たら、もうドミニクは立ち上がれないほどのダメージを受けているように見えていた。だが、



「魔法……か。それでここまでの力をつけたのか」



 ドミニクは剣を地面に突き刺して、自身の身体を支えながら立ち上がった。立ち上がったドミニクは剣を地面から抜くと、鞘にしまい、殴られていた時に崩れてしまった髪型を整える。



「ここまで力をつけるんなら、早めに倒しておくべきだったか」



「そうしなかったのは君だろう。……私としてはあの時決着をつけたかったんだよ」



 二人は睨み合った後、俺には見えない速度で剣と拳を抜いて攻撃をぶつけ合った。










「ドミニク師匠、おはようございます!!」



 一人の青年がドミニクに元気よく挨拶をする。



「ああ、おはよう。ルーク」



 青年の挨拶に反応し、ドミニクは笑顔で返す。



「今日はどんな稽古をするんですか?」



 目を輝かせて聞くルークにドミニクは腰につけた剣を抜くと、



「今日も私との実践訓練だ。これが一番、特訓になるからな」



「はい!!」



 ルークは剣を抜くと、ドミニクに剣を振りかざした。






 大陸の南西にあるジェダイト王国。数年前まで戦争の絶えない国であったが、一人の騎士によって終戦を迎えた。
 ジェダイト王国に対抗するため、周辺の国が連合軍を作り、大軍勢で奇襲をかけた。しかし、その奇襲を退けたのが一人の騎士。
 彼女は襲いくる軍勢を全て薙ぎ倒し、連合軍を壊滅させた。






「どうかな、ルークの調子は? ドミニク君」



 稽古を終え、一休みしていると赤い衣装に身を包んだ老人が二人の元へのっそりとやってきた。



「ええ、良い腕を持ってますよ。流石は陛下のご令孫です」



「そうかそうか、それは良かった」



 老人は嬉しそうに微笑むと、顎から股まで伸びた長い髭を触りながら、汗だくで息を切らしているルークの後ろに立つ。
 そして力いっぱいにルークの背中を叩いた。



「ほれ、ルーク。シャキッとせい。なに疲れとるんだ!!」



「痛っ!? 痛いよ、爺様!!」



「ワシの孫ならこれくらいでへこたれるでない。ドミニク君はああ言ってくれるが、ワシにとってはまだまだじゃ!!」



「だからって叩くなよ!!」



 ルークの背中には手の跡がついている。それだけ強い力で背中を叩いたということだ。
 その痛みにルークは涙目になる。



「お前は将来、この国を背負うんじゃ。せっかくドミニク君が稽古をつけているというのに、お前がこの程度じゃ、ドミニク君に申し訳ないわ!」



「なにぉぉ、ドミニク師匠はなかなかの腕を持ってるって言ってくれてるんですよ!!」



「そんなのお世辞に決まってろうが、調子に乗るな、若造が!!」



 老人はルークに掴み掛かり、頬っぺたを伸ばしたり縮めたりしている。ルークも反撃しようとするが、老人の方が上手であり、掴もうとする手を顔を逸らすだけで簡単に避けられてしまう。



「やめ、やめでぇ、爺様ぁぁあ~」








 ルークに剣の稽古をつけることになったのは、国王からの使命があったからだ。ドミニクが戦争で活躍をしたからということもあったが、国王としてはそれ以上に息子に勝った唯一の人物であるドミニクに大きな信頼を寄せていたということが大きい。
 ジェダイト王国の王族は戦う王族と呼ばれ、王族が国内で最も剣術が優れていた。



 国内の闘技大会でも王族は必ず優勝し、その実力の高さを証明し続けていた。しかし、ある時、それを超える人物が現れた。



 それがドミニク・ワンデインだ。彼女はジェダイト王国の次期国王候補であった王子に決闘で勝ち、優勝した。この優勝が初の王族以外の優勝であった。
 現国王であった王はドミニクを気に入り、ある秘策と共にドミニクと王子を戦場へ送り、戦争に勝利した。





 訓練を終え、ルークと別れたドミニクは国王と共に王のまで向かい合う。



「アイツのことは本当に残念だと思っている。だからこそ、ドミニク君、君の剣術をルークを教えてやってほしい」



「ええ、陛下の命令ですから」



「いや、王としての命令じゃない。家族として頼みたいんだ。お前にもアイツにも……。ワシは悪いことをした、もっと早く気づいていれば……戦場はなんて…………」



「いえ、ワタシも彼との関係を言い出すことができず…………」



「……とにかく頼んだぞ」








 そして月日は流れた。
 ルークの剣が徐々にドミニクに届きつつあった頃。王城に一つの連絡が届いた。



「山賊が暴れていると……?」



 国王に手紙を持って報告に来た使者は頭を下げたまま、報告を続ける。



「はい。名をコウ・チンヨウ。かなりの実力者のようで討伐に向かった討伐隊は全滅、他にも多くの被害が出ています」



「そうか、コウ・チンヨウ……か」



 国王は椅子に座ったまま、隣に立っているドミニクに目線を向ける。



「任せられるか? ドミニク」



「はい。お任せください」



 こうしてドミニクは山賊の討伐へ向かうことになった。






 本来なら負けるはずのない戦いだっただろう。ドミニクが単騎で山賊のアジトへ乗り込み、山賊達を蹴散らした。
 山賊の頭であるチンヨウも姿を見せ、互角の戦いを繰り広げたが、実力はほんの少しだがドミニクの方が上だった。



「……はぁはぁ、私がここまで追い詰められるとは……。やるようだね、ドミニク君……」



 チンヨウは自身の実力に自信があったのだろう。しかし、ドミニクに敗れたことで初の敗北を味あった。それが精神的にもチンヨウを追い詰めていた。



 ドミニクは剣をチンヨウへ向ける。



「観念して捕まるんだな」



 二人の間合いは数メートル。お互いが射程外にいた。
 緊張感が漂う中、一人脳天気に二人へ近づく青年がいた。



「確か山賊のアジトはこの辺りのはずだけど…………。あ、ドミニクし……」







 山賊の討伐を一人でいくことを志願したのはドミニクだった。敵の実力は未知数、しかし、彼女の勘はチンヨウという男が自身と同等の実力を持っていることを察していた。
 だから、ルークを連れてこなかった。



 国王にはそのことを告げたが、ルークには伝えなかった。それがいけなかったのだろう。



 彼はチンヨウの姿に気づくと、腰につけていた剣を抜いた。



「コウ・チンヨウゥ!!」



 チンヨウの顔は王国中に知れ渡っていた。王国の周辺で暴れ回る山賊として、すでに指名手配されていたからだ。今回、国王の元まで報告が来たのは、チンヨウの起こした事件が日に日に多くなっていたから。



 指名手配犯を知っていたルークは剣を抜き、チンヨウへ斬りかかった。
 チンヨウにとってこれはチャンスであった。



 ドミニクとは互角か、少し負けている。そういう状況に現れた乱入者。人数的には不利な状況に感じるが、実力差がある相手にとっては人数は重りに過ぎない。



 剣を抜き向かってくるルークに、ドミニクと向かい合っていたはずのチンヨウは報告を変え、走り出した。
 その駆ける速さは風のように、ルークへと近づく。一瞬遅れてドミニクもチンヨウを追った。



 遅れた理由は単純だ。ルークの登場に思考が遅れていた。



 遅れて動いたドミニクだったが、そのスピードはチンヨウに徐々に距離を積める。まだ一秒も経過していないが、走り出しからの距離の縮まりから、チンヨウには焦りが現れた。
 そして身体に力が入る。



「う、うぉぁぁぁっ!! チンヨウゥゥゥ!!!!」



 通常の人間には反応できないスピードで接近してくるチンヨウに、ルークは反応して剣を振り下ろした。
 本来なら接近にすら気づけないスピードだが、ドミニクとの訓練の結果だろう。ルークの身体は無意識に反応した。



 だが、その反応がより事態を悪化させた。



 チンヨウにとってはルークは人質として確保すべき存在。しかし、ドミニクに追われ、接近にも反応されたチンヨウの身体は力が入る。
 極限状態により、チンヨウの肉体は成長し、更なる力を発揮する。スピードもパワーも上がり、ドミニクとの距離を一気に離した。



 だが、そのことにチンヨウは気づけていなかった。そして力んだ身体は手加減ができず、振り上げた拳はルークの剣と鎧を貫通した。



 後ろからチンヨウを追っていたドミニクは足を止めて、その場で瞬きを忘れて目の前の光景を見つめる。




「ルゥゥゥゥゥゥクゥ!!!!」













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