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大国オーデ・フォール
ラステルの提案 その2
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その時、ちょうどラステルが背後にエウロペを伴って、宮廷側の茂みから姿を現す。
「おや。
剣は下げたまま?
練習をされるんじゃ無かったんですか?」
と明るい声を発し、やって来る。
キャスリン嬢は、礼を取って軽く頭を下げ、近寄って小声で囁く。
「ラステル様。
あの…シュテフザインの王子様って…」
ラステルは笑顔で頷く。
「レジィリアンス殿ですか?
ええ、王妃様が王子の母君と懇意で。
客人として滞在して頂いてます」
ラステルの背後から、姿を現すエウロペに。
レジィリアンスの肩を抱くエルデリオンは、きつい鷹のような緑の瞳で睨み付けられ、瞬間手から力が、抜けかけた。
けれど離せず、レジィリアンスに振り向く。
レジィリアンスはエウロペの姿を見、とても嬉しそうに微笑むと
「エルデリオン様に、庇って頂きました」
と報告する。
エウロペの瞳からきつさが消え、エルデリオンは心から、ほっとした。
その時、ラステルの明るい声が響く。
「ナスタ夫人の舞踏会ですか?」
いつの間にか、貴公子らもラステルの前に集まっていた。
ラステルは残念そうに囁く。
「…でも今夜、小広間で王妃様が親しい者を集めて、舞踏会を開かれます。
もし、よろしければ…」
それを聞いた途端、少年少女らの瞳が、一斉に輝く。
「王妃様の内輪の舞踏会に、ご招待頂けるんですの?!」
「我々もですか?!」
美少女達と貴公子らは一気に盛り上がり、ラステルはにっこり微笑んで
「ナスタ夫人には悪いですが…。
ここに居る皆さんをご招待致します」
と告げた。
きゃーーーっ!!!
美少女らは叫び、デルデロッテの側に居た二人の少女も、ラステルの前に駆け寄る。
「…私達も?!」
ラステルがにっこり微笑むと、少女らは二人揃って、ぴよんぴょん飛び跳ねた。
少女達は皆、はしゃぎながら、ラステルに背を向ける。
「早速、今夜の支度に入らないと!」
「王妃様の内輪の舞踏会だなんて!」
「着ていくドレスを、選ばなくちゃ!」
貴公子らはその大騒ぎに肩を竦めつつも、ラステルに尋ねる。
「エルデリオン様とシュテフザインの王子様も…おいでになるんですか?」
ラステルはにっこり微笑むと、顔を貴公子らに向けたまま、レジィリアンスの前に立つエウロペの横に歩み寄る。
「丁度それを、お聞きしようとしたところです」
そしてエルデリオンに、にっこり微笑んで尋ねた。
「エルデリオン様。
ご招待頂いておりますが…」
エルデリオンはまだ華奢なレジィリアンスの肩を抱いたまま、背の低いレジィリアンスに振り向く。
「あの…いらっしゃいますか?」
レジィはエウロペから、横のラステルに視線を移し、尋ねる。
「私も、ご招待頂いてるんですか?」
頷くラステルを見、けれど俯く。
「でも…舞踏会なんて、殆ど出た事が無くて…。
ロクに作法を、知りません」
ラステルは笑いながら請け負った。
「作法に詳しいロットバルトは、現在騎兵らの指示で飛び回ってますが。
午後にはオレシニォンに戻るはず。
彼に簡単に、教授して貰いなさい。
舞踏会では、エルデリオン様の側に居れば。
どれだけ不敬な事をしても、誰も貴方に文句を言いません」
レジィリアンスは、エルデリオンとずっと一緒にいなければならないのか。
と、そっ…と横のエルデリオンを見上げた。
その時のエルデリオンは、クリーム色の銀刺繍の美しい上着を着け、いい香りのするコロンに包まれた、とても洗練され、上品な貴公子に見えた。
エルデリオンはラステルの気遣いに、内心喜びながら囁く。
「私に、エスコートさせて頂けましたら。
御不自由無く、舞踏会を楽しめると、お約束致します」
その言い方が、とても優しく、柔らかく。
そして丁寧だったので、レジィリアンスは不安がいっぺんに吹き飛んで、思わず思いっきり、首を縦に振った。
エウロペが呆れたように、横のラステルを見つめる。
それでもラステルは、エウロペににこにこ、微笑み返した。
今だテリュスの横に立つ少女、だけが。
「どうしてお髭を、剃らないの?」
と尋ね、テリュスを困らせていた。
「おや。
剣は下げたまま?
練習をされるんじゃ無かったんですか?」
と明るい声を発し、やって来る。
キャスリン嬢は、礼を取って軽く頭を下げ、近寄って小声で囁く。
「ラステル様。
あの…シュテフザインの王子様って…」
ラステルは笑顔で頷く。
「レジィリアンス殿ですか?
ええ、王妃様が王子の母君と懇意で。
客人として滞在して頂いてます」
ラステルの背後から、姿を現すエウロペに。
レジィリアンスの肩を抱くエルデリオンは、きつい鷹のような緑の瞳で睨み付けられ、瞬間手から力が、抜けかけた。
けれど離せず、レジィリアンスに振り向く。
レジィリアンスはエウロペの姿を見、とても嬉しそうに微笑むと
「エルデリオン様に、庇って頂きました」
と報告する。
エウロペの瞳からきつさが消え、エルデリオンは心から、ほっとした。
その時、ラステルの明るい声が響く。
「ナスタ夫人の舞踏会ですか?」
いつの間にか、貴公子らもラステルの前に集まっていた。
ラステルは残念そうに囁く。
「…でも今夜、小広間で王妃様が親しい者を集めて、舞踏会を開かれます。
もし、よろしければ…」
それを聞いた途端、少年少女らの瞳が、一斉に輝く。
「王妃様の内輪の舞踏会に、ご招待頂けるんですの?!」
「我々もですか?!」
美少女達と貴公子らは一気に盛り上がり、ラステルはにっこり微笑んで
「ナスタ夫人には悪いですが…。
ここに居る皆さんをご招待致します」
と告げた。
きゃーーーっ!!!
美少女らは叫び、デルデロッテの側に居た二人の少女も、ラステルの前に駆け寄る。
「…私達も?!」
ラステルがにっこり微笑むと、少女らは二人揃って、ぴよんぴょん飛び跳ねた。
少女達は皆、はしゃぎながら、ラステルに背を向ける。
「早速、今夜の支度に入らないと!」
「王妃様の内輪の舞踏会だなんて!」
「着ていくドレスを、選ばなくちゃ!」
貴公子らはその大騒ぎに肩を竦めつつも、ラステルに尋ねる。
「エルデリオン様とシュテフザインの王子様も…おいでになるんですか?」
ラステルはにっこり微笑むと、顔を貴公子らに向けたまま、レジィリアンスの前に立つエウロペの横に歩み寄る。
「丁度それを、お聞きしようとしたところです」
そしてエルデリオンに、にっこり微笑んで尋ねた。
「エルデリオン様。
ご招待頂いておりますが…」
エルデリオンはまだ華奢なレジィリアンスの肩を抱いたまま、背の低いレジィリアンスに振り向く。
「あの…いらっしゃいますか?」
レジィはエウロペから、横のラステルに視線を移し、尋ねる。
「私も、ご招待頂いてるんですか?」
頷くラステルを見、けれど俯く。
「でも…舞踏会なんて、殆ど出た事が無くて…。
ロクに作法を、知りません」
ラステルは笑いながら請け負った。
「作法に詳しいロットバルトは、現在騎兵らの指示で飛び回ってますが。
午後にはオレシニォンに戻るはず。
彼に簡単に、教授して貰いなさい。
舞踏会では、エルデリオン様の側に居れば。
どれだけ不敬な事をしても、誰も貴方に文句を言いません」
レジィリアンスは、エルデリオンとずっと一緒にいなければならないのか。
と、そっ…と横のエルデリオンを見上げた。
その時のエルデリオンは、クリーム色の銀刺繍の美しい上着を着け、いい香りのするコロンに包まれた、とても洗練され、上品な貴公子に見えた。
エルデリオンはラステルの気遣いに、内心喜びながら囁く。
「私に、エスコートさせて頂けましたら。
御不自由無く、舞踏会を楽しめると、お約束致します」
その言い方が、とても優しく、柔らかく。
そして丁寧だったので、レジィリアンスは不安がいっぺんに吹き飛んで、思わず思いっきり、首を縦に振った。
エウロペが呆れたように、横のラステルを見つめる。
それでもラステルは、エウロペににこにこ、微笑み返した。
今だテリュスの横に立つ少女、だけが。
「どうしてお髭を、剃らないの?」
と尋ね、テリュスを困らせていた。
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