282 / 418
ゾーデドーロ(東の最果て)
森の中の遭遇
しおりを挟む
エルデリオンは狼を睨み付け、周囲を素早く見回す。
その時、斜め後ろに見えた、太く捻れた大木に見覚えがあるのに気づく。
短剣を幾度か月明かりでキラリと光らせ、狼を威嚇した後。
エルデリオンはレジィの手首を掴み、斜め後ろに向かって駆け出した。
レジィはエルデリオンに突然腕を引かれ、足をもつれさせたけれど、必死に一緒に駆け出す。
大木を走り抜け、その後ろには小道…!
エルデリオンは記憶を辿って、その小道を走る。
小道の先は、開けた草地…!
その奥に…!
レジィはエルデリオンが、草地の向こうに見える小屋に向かって走るのを見、安堵した。
けれど背後、がさっ!と音がし、はっ!と気づく。
振り向いた時、狼が飛んで襲い来るのが視界に入る。
エルデリオンは一瞬で気づくと、レジィの腕を思い切り引いて左腕で抱き止め、一歩踏み出し短剣を振りきった。
ざっっっ!!!
ギャウン!!!
狼は呻いて着地し、左肩から血を滴らせ、鋭い眼光でこちらに振り向く。
レジィはエルデリオンの背に庇われ、目を見開いた。
飛びかかって来る狼に、恐れもせず踏み込んで短剣を振りきるなんて…!
「(よほど勇気が無いと、出来ない…!)」
レジィは背後に振り向く。
小屋まで、あと七歩!
けれど…。
血を滴らせた狼は、じっ…と再び襲いかかる隙を狙い、背後。
がさっ!
と音がした途端、茂みからもう一匹の狼が姿を見せた。
レジィは自分が武器を何も身に付けてなくて、エルデリオンを助ける事も出来ず、泣きそうに眉を寄せた。
けれどはっ!と気づき、親指と人差し指を口に当て、思いっきり吹いた。
ピィィィィィィィィィィィ!!!
エルデリオンは狼が、一瞬音に怯んで気を散らすのを見る。
「続けて!」
レジィに叫ぶと、レジィは続けざまに指笛を吹いた。
ピィィィィィ!
ピィィィィィィィィィィィィ!!!
その時、森にいた他の者だろうか。
右奥からガサ!!!と…狼よりも大きな、人らしき者の立てる音がし。
続いて左かなり手前からも、ガサガサガサ!!!と、草を掻き分ける音がした。
途端、狼達は振り向き、一気に茂みの中に駆け去って行く。
エルデリオンはほっ…として、構えた短剣を下げた。
ざっっっっ!!!
先に左から姿を現した男は、エルデリオンとレジィリアンスを見るなり、目を見開く。
エルデリオンはその男の態度に、一気に警戒を強めた。
レジィはエルデリオンの左腕に肩を抱かれていたけれど。
人を見てほっとしたのも束の間。
エルデリオンにぎゅっ!と肩を強く握られ、改めて現れた人物を見た。
黒い帽子を被り、月影ながらも黒づくめの衣服。
顔は帽子でほぼ隠れていたけれど。
伺うようにこちらを見据えてる。
直ぐ、右の方からもガサガサ…!と草を掻き分ける音がし
「ノートル!」
と吠える様な叫び声が、木々の合間に響き渡る。
エルデリオンは即座に
「ダビッチ!」
と空に向かって叫び返した。
そして短剣を再び持ち上げ、構えると。
目前に現れた男を睨めつけた。
「…ラステル配下が直、来ます!」
エルデリオンのひそめた声に、レジィは右奥からこちらに走って来る、頼もしい足音を待った。
けれど突然、エルデリオンが、がくっ!と上体を傾ける。
「?!」
一瞬、肩に針のような物が突き刺さる、小さく鋭い痛みを感じたかと思うと。
レジィも突然、がくっ!と身を倒す。
視界が歪み、ふらついて立っていられない。
直ぐ、駆け寄る誰かの腕に胴をさらわれ、足が宙に浮いて運ばれ始める。
ぐらつく視界で、意識を無くしそうになったけれど。
必死にエルデリオンの姿を探す。
前に走る男。
エルデリオンはその男の肩に、担がれ運ばれていた。
茂みの中に連れ込まれ、間もなくさっき居た場所から再び
「ノートル!」
と必死な叫び声が聞こえ、レジィは顔を上げる。
エルデリオンは、担ぐ男の背から顔を上げる。
間もなく、絞り出すような
「ラ・ベッタ!!!」
と叫ぶエルデリオンの声が聞こえ、背後、駆け来る足音が聞こえた。
けれど次の瞬間、担いだ男達は、大岩の影に走り込む。
次に洞窟のような暗い場所に突入し、周囲が真っ暗になった時。
レジィリアンスはとうとう、気を失った。
エルデリオンは何とか気力を振り絞り、男の腕を掴んで身もがこうとした。
が、途端針の刺さった右腕に、つきっ!
と鋭い痛みが走った途端。
ぐら…!
と周囲が大きく揺れて、意識が保てず顔を下げる。
何とか顔を上げると、レジィを脇に抱えてる、黒い帽子で顔の隠れた男の姿が見えた。
その途端、視界がぶれて…意識が保てず、気絶した。
その時、斜め後ろに見えた、太く捻れた大木に見覚えがあるのに気づく。
短剣を幾度か月明かりでキラリと光らせ、狼を威嚇した後。
エルデリオンはレジィの手首を掴み、斜め後ろに向かって駆け出した。
レジィはエルデリオンに突然腕を引かれ、足をもつれさせたけれど、必死に一緒に駆け出す。
大木を走り抜け、その後ろには小道…!
エルデリオンは記憶を辿って、その小道を走る。
小道の先は、開けた草地…!
その奥に…!
レジィはエルデリオンが、草地の向こうに見える小屋に向かって走るのを見、安堵した。
けれど背後、がさっ!と音がし、はっ!と気づく。
振り向いた時、狼が飛んで襲い来るのが視界に入る。
エルデリオンは一瞬で気づくと、レジィの腕を思い切り引いて左腕で抱き止め、一歩踏み出し短剣を振りきった。
ざっっっ!!!
ギャウン!!!
狼は呻いて着地し、左肩から血を滴らせ、鋭い眼光でこちらに振り向く。
レジィはエルデリオンの背に庇われ、目を見開いた。
飛びかかって来る狼に、恐れもせず踏み込んで短剣を振りきるなんて…!
「(よほど勇気が無いと、出来ない…!)」
レジィは背後に振り向く。
小屋まで、あと七歩!
けれど…。
血を滴らせた狼は、じっ…と再び襲いかかる隙を狙い、背後。
がさっ!
と音がした途端、茂みからもう一匹の狼が姿を見せた。
レジィは自分が武器を何も身に付けてなくて、エルデリオンを助ける事も出来ず、泣きそうに眉を寄せた。
けれどはっ!と気づき、親指と人差し指を口に当て、思いっきり吹いた。
ピィィィィィィィィィィィ!!!
エルデリオンは狼が、一瞬音に怯んで気を散らすのを見る。
「続けて!」
レジィに叫ぶと、レジィは続けざまに指笛を吹いた。
ピィィィィィ!
ピィィィィィィィィィィィィ!!!
その時、森にいた他の者だろうか。
右奥からガサ!!!と…狼よりも大きな、人らしき者の立てる音がし。
続いて左かなり手前からも、ガサガサガサ!!!と、草を掻き分ける音がした。
途端、狼達は振り向き、一気に茂みの中に駆け去って行く。
エルデリオンはほっ…として、構えた短剣を下げた。
ざっっっっ!!!
先に左から姿を現した男は、エルデリオンとレジィリアンスを見るなり、目を見開く。
エルデリオンはその男の態度に、一気に警戒を強めた。
レジィはエルデリオンの左腕に肩を抱かれていたけれど。
人を見てほっとしたのも束の間。
エルデリオンにぎゅっ!と肩を強く握られ、改めて現れた人物を見た。
黒い帽子を被り、月影ながらも黒づくめの衣服。
顔は帽子でほぼ隠れていたけれど。
伺うようにこちらを見据えてる。
直ぐ、右の方からもガサガサ…!と草を掻き分ける音がし
「ノートル!」
と吠える様な叫び声が、木々の合間に響き渡る。
エルデリオンは即座に
「ダビッチ!」
と空に向かって叫び返した。
そして短剣を再び持ち上げ、構えると。
目前に現れた男を睨めつけた。
「…ラステル配下が直、来ます!」
エルデリオンのひそめた声に、レジィは右奥からこちらに走って来る、頼もしい足音を待った。
けれど突然、エルデリオンが、がくっ!と上体を傾ける。
「?!」
一瞬、肩に針のような物が突き刺さる、小さく鋭い痛みを感じたかと思うと。
レジィも突然、がくっ!と身を倒す。
視界が歪み、ふらついて立っていられない。
直ぐ、駆け寄る誰かの腕に胴をさらわれ、足が宙に浮いて運ばれ始める。
ぐらつく視界で、意識を無くしそうになったけれど。
必死にエルデリオンの姿を探す。
前に走る男。
エルデリオンはその男の肩に、担がれ運ばれていた。
茂みの中に連れ込まれ、間もなくさっき居た場所から再び
「ノートル!」
と必死な叫び声が聞こえ、レジィは顔を上げる。
エルデリオンは、担ぐ男の背から顔を上げる。
間もなく、絞り出すような
「ラ・ベッタ!!!」
と叫ぶエルデリオンの声が聞こえ、背後、駆け来る足音が聞こえた。
けれど次の瞬間、担いだ男達は、大岩の影に走り込む。
次に洞窟のような暗い場所に突入し、周囲が真っ暗になった時。
レジィリアンスはとうとう、気を失った。
エルデリオンは何とか気力を振り絞り、男の腕を掴んで身もがこうとした。
が、途端針の刺さった右腕に、つきっ!
と鋭い痛みが走った途端。
ぐら…!
と周囲が大きく揺れて、意識が保てず顔を下げる。
何とか顔を上げると、レジィを脇に抱えてる、黒い帽子で顔の隠れた男の姿が見えた。
その途端、視界がぶれて…意識が保てず、気絶した。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる