森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

公爵に絡まれるエウロペ

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 ノルデュラス公爵は向かいに座る、真ん中分けの明るい栗毛の男を見つめた。
頬骨が出ていて、男らしい顔立ち。

けれど爽やかさがあって、誰が見ても頼もしくて好感度がめちゃくちゃ高い。
明るい緑色の瞳が印象的で、つい視線が惹き付けられた。

「で、お話とはエルデリオン王子の事ですか?」

尋ねられ、公爵ははっ!として我に返った。
「王子の初物を奪ったのは、貴方だとか」

エウロペは顔を下げた。
「…奪ってない。
押しつけられたんだ」

公爵は思わず身を乗り出す。
「どういう経緯で」
「レジィが紅蜥蜴ラ・ベッタにさらわれ、囚われていた間、性的な調教を受け、それを聞いてしまってエルデリオンは責任を感じ…。
元から、感じやすい性格なんだろう。
自責の念で眠れなくなったようで…。
罰して欲しいと、私に申し出た」

公爵は眉間を思いっきり寄せる。
「罰するってつまり…蹴る、殴るでなく…。
調教を受けたいと言う事で、間違ってない?」
「ええ」
「で、断らなかった?」
「本心は断りたかったが…ラステルが、もし私が断れば。
貴方みたいにエルデリオンに惚れ込んでる変態に、エルデリオンは依頼しかねないと脅すので、仕方無く」

公爵は思いっきり、眉間を寄せた。
「つまり私が追放されず、貴方が断っていたら。
デルデロッテでは無く、私の手に落ちていたのか…」
「(完全に、決めつけてるな…)」
「どうしてデルデロッテは、貴方に敵愾心てきがいしんを燃やさないんです?
彼からしたら、貴方はかたき

「レジィは強い媚薬を使われ、対処が必要でそれをデルデに依頼していて…私は彼に借りがあったし、彼は…どちらかと言うと、私に依頼したエルデリオンに腹を立てていて」

公爵は俯いてため息を吐く。
「…そりゃそうですよね。
私でも、腹が立ちましたから」

「…が、その…私のサイズは初心者向きじゃ無い。
エルデリオンに“広げなければ挿入出来ない”
と言ったのに、彼は諦めなくって…」

公爵は、顔を上げる。
「…では自ら…彼は広げたんですか?」

エウロペはため息交じりに、顔を下げて頷く。
「張り型を渡し、続けて欲しかったらそれを挿入れて置けと命じたら、彼は律儀に…入れ続けた」

公爵は、がっかりしたように顔を下げる。
「…なんだ…張り型か…」

エウロペは呆れた。
「彼が自分の指で…挿入して広げたところを想像してた?」
公爵は頷く。
「さぞかし、色っぽかったでしょうねぇ…」
「(…これだから、ラステルもデルデも警戒するんだな…)
私が抱いた時、彼に色香は欠片も無かった。
私が行き詰まって、デルデに頼んだ時からですよ」

公爵は、きっっっ!と顔を上げる。
「デルデを参加させた?!
あいつが絡めば、エロエロになったでしょう?!」
エウロペは鋭く突っ込んだ。
「貴方がした程では無い。
今のエルデリオンは…誰が見ても色香に包まれてる。
そうしたのは、貴方でしょう?
デルデロッテが、睨みまくるはずだ」

公爵は、すまし顔に戻ると腕組みする。
「…だが、まだ初々しいエルデリオンが徐々に…色香に包まれていく様を、あいつは見たんですね?」

エウロペは訂正した。
「いや?
短時間で感じまくるようになりました。
思うに…」

公爵は、耳を傾ける。

「昔から良く知ってる彼に、性的な事をされて感度が数十倍になってた感じですね。
私の時なんて…三晩かかってもほぼ変化無し」

公爵が、爽やかなエウロペをジロリ…と見た。
「それは貴方がエルデリオンに、欲情してなかったせいでしょう?」
「普通はしません」
「…まあ確かに私はエルデリオンに夢中。
彼に“エッチな事して下さい”なんてお願いされたら…自制がきかない自信はあります」
「そんな自信持たれてもね。
だからラステルは私に依頼したんです。
断らないように。と。
エルデリオンをエロエロにしないから」

公爵は俯いたまま沈黙し、その後尋ねた。
「で、どういう経緯で、デルデロッテがエルデリオンの夫に…と言う話になったんです?」
「デルデロッテがエルデリオンに惚れてる事が、ラステルに知られたから。
国王夫妻はレジィを花嫁にする事は、レジィが不憫で反対でしたので。
デルデロッテが夫。
の方がまだ、容認出来たようです」

公爵は、沈黙した。
「…でも夫はデルデロッテで無くとも…」
エウロペはきっぱり言った。
「デルデロッテはずっと王子の守り刀として、信認あつい。
信頼出来る男だからこそ、エルデリオンを任せられると、王も王妃も納得したんです。
貴方にその信認、ありますか?
…無いでしょう?
デルデロッテで無ければ、誰が自分の息子に夫を持たせたい?
デルデだからこそ、許可が下りたんです」

公爵はまた、ため息吐いた。
「…それとラステルが、デルデの味方に付いた」
エウロペは、こっくりと頷く。
そして立ち上がると、きっぱり言い捨てた。
「いい加減貴方も不毛な恋など忘れて。
別の誰かと恋なさい」

公爵が、去って行こうとするエウロペの背に怒鳴った。
「誰だろうが手にはいる、この私が!
恋に落ちてエルデリオンに囚われたんです!」

エウロペは振り向くと言った。
「よりによって、唯一手に入らない相手にね。
プライドが許さないんじゃ無いですか?
想いよりプライドを優先させたら、その恋は終わってますよ」

エウロペは行こうとしたが、思い立って振り向き、きっぱり言い切った。

「私から見ても…エルデリオンは無自覚に、デルデに惚れてる」

公爵は目を見開き固まるので。
エウロペはさっさと背を向け、その場を去った。

公爵はずっと
「…嘘だ。
デルデが垂らし込んだに決まってる…。
エルデリオンが年上の男に惚れるなんて…あり得ない…」
と放心したまま呟き続け、エウロペはそれを聞き、肩を竦めながら
「(往生際が悪すぎ…)」
と内心呟きながら、王子らの専用宿舎に続く、階段を上った。
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