森と花の国の王子

あーす。

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決戦

とっても危ない

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 バルバロッサ王邸宅では、佳境を迎えていた。
二階で皆に、守護の光の結界張っていたシャーレが。
じょじょに意識を薄れさす。

オーレが必死にシャーレに呼びかける…ものの、もはやシャーレは気絶寸前。

スフォルツァは向かって来る死体が、白い光の結界に触れた時、チリ…!
と音鳴らし、以前のようにドタンと倒れず。
結界の直前で、それでも進んで来ようとしてるのを見、目を見開く。

ラウールはスフォルツァの背後に隠れ、動く死体を極力見まい、と試みたけど。
スフォルツァが背を、もぞ…と動かすので、思わず顔を上げた。

スフォルツァと死体の間の、白い光が。
明らかに薄くなって来てる。

オーレは血相変えて叫ぶ。
“マズい!
二階で結界張ってるシャーレが、気絶する!!!
結界が消え、もしテリュスとエディエルゼが死体に触れ、乗っ取られたら!
他の全員が二人に殺され、死体となって…”

ノルデュラス公爵もロットバルトもが。
オーレの言わんとすることが想像出来、死体となったレジィやミラーシェン、エリューンらが階段降りて来て…。
襲いかかって来る図を思い浮かべ、ぞっ…と背筋を氷らせた。

オーガスタスが、赤い髪振って吠える。
「何が何でも、何とかしろ!!!」

“くっそ!!!”

シュテフが唸ると、シャーレから回路を奪い、強引に引き継ぎ、守護の光を送り始める。
が、途端どたっ!!!
と音立て、シュアンがソファに、ぶっ倒れた。

“ヤバい、エドウィンもふらふらだ!!!”

オーレが叫び、シュアンが消えた負担を引き継ぐ、ラフィーレとレンフも苦渋の表情を見せ始める。

オーガスタスの元に、危機を感じた光竜ワーキュラスがディアヴォロスを通じ、黄金の光送り始め…。
それが結界張ってる自分オーレとシュテフ、ミラーレスの元に届き始めるのを感じ、ほっ…と吐息を吐き出した。

けれどオーガスタスは、異変を察知する。

“ディアス…?
そっち…大丈夫なのか?!”

けれど言葉を返したのは、神聖騎士ムアール。

“彼の回路は使用中で…容量一杯。
それで私が支えてる。
後…少しで、“隙間”は閉ざす…”

けれどその声も…微かで…。
気配が消えて行くような感じで。
オーガスタスは滅多に無い事だけど、不安に心がざわめき渡るのを感じた。


洞窟で二人の神聖騎士は、最後の力を振り絞り、隙間を閉じにかかっていた。
が、回路を繋ぐアイリスと、光竜ワーキュラスの幻体を出現させるため回路全てを使い切ったディアヴォロスとを、光で包み護り続けていたから。
十分な力が、発揮できない。

しかも体に帯びている、手持ちの光も使い切り、アイリスが気絶寸前で、回路からの補充の光も得られない。

ムアールの光が、薄れてきてるのを感じ、ドロレスは手持ちの光を全部集め、手から放射する。
“止めろドロレス!!!
無茶だ!!!”
直ぐ気づいた、ムアールが叫ぶ。
が、ドロレスは聞かず、即答する。
“俺が無茶なのは、いつもの事!!!
これで決着付けてやる!!!”
“それで済むか!!!
頼む止めろ…”

高速で僅かしか聞き取れない心話。
けれどローランデもディンダーデンも、ディングレーもが彼らの危機を、痛いほど感じ取った。
シェイルは胸が痛くなるほど悲しく感じ、叫ぶ。

“ワーキュラス!!!”

ドロレスが手持ちの濃厚な白い光を全て、“隙間”に向けて放つ。

隙間は凄まじい光の放射で、幾重にもガラスのように張り巡らされた複雑な歪みを、強引に繋ぎ合わせ始める。

バルバロッサ王邸宅、二階では。
幽霊のような赤黒い衣服の、透けた女が出現し、叫んだ。
“閉じる!!!
閉じてしまう!!!
戻らなければ!!!”

傀儡くぐつの凶王は、悔しげに呻く。
“ぐぅぬぬぬぬぬぬ…。
あと少しで、こ奴らの守護の光が尽きるという、その時に!!!”

その不気味な声が聞こえた途端、進んで来ていた死体の動きが、ピタリ…!
と止まる。

テリュスは白い光の結界を、幾度も突き破ろうとしつっこく向かい来てる、死体が目前で止まり。
それ以上不気味な、顔色が真っ青で死んだ目をした、動く死体を目の前で見なくて済んで、心からほっとした。

“ええい引くな!!!”

不気味なしゃがれ声が大音量が聞こえ、その後、傀儡くぐつの凶王は再び黒い靄の顔を現し、黒い靄の両手で、死体を操るように動かす。

折角止まってた死体が。
再び触れんばかりに近づいて来て、テリュスは
「(もう絶対、悪夢にうなされること確定!!!)」
と内心叫んで、目を閉じた。


ディングレーは放射された光が、途切れた後、消えて行き…。
二人の神聖騎士が、気絶するように後ろに、倒れ行くのを見た。

ディンダーデンは拳握りしめ、それを見つめる。
が、二人の姿が一瞬で消え、新たに二人の神聖騎士が、白くまばゆい光まとって姿を現す。

シェイルが、歓喜に溢れて叫ぶ。
「ホールーン!!!
アーチェラス!!!」

銀に近い金の長い直毛、クールなホールーンは厳しい表情を見せ。
いつもにこやかな金のくねる髪のアーチェラスですら、表情を引き締めていた。

二人は両腕後ろに引くと、隙間目がけ、思いっきり光をブツけ始める。

“おのれおのれおのれ!!!
またお前らか!!!
せっかく広げた穴を、むざむざ閉じさせると思うか!!!”

『闇の第二』が遠くで吠える声が聞こえ、その後別の声。

“この穴は、我のものとなる筈だったのに!!!”

近くで大声で叫ぶその声は、間違いなく『闇の第三』。

けれどホールーンもアーチェラスも少しも怯まず、両手突き出し光放射したまま、微動だにしない。

その時、ディングレーもディンダーデンも、ローランデ、シェイルもが。
二人の神聖騎士の上空に、バルバロッサ王邸宅二階の映像が、浮かび上がるのを見た。
傀儡くぐつの凶王の操る死体が、光の結界に包まれた、数名に迫ってる。

透けて階下が見え、そこにはローフィスやオーガスタスの姿。
やはり…光の結界に迫る、傀儡くぐつの凶王操る死体に、襲われていた。

二階の光の結界は、特に薄く…。
シュテフが苦痛に顔を歪ませ、必死に結界を維持していた。

“決めるぞ!!!”
ホールーンが叫び、アーチェラスは
“もとより!!!”
と叫び返す。

隙間は、放射された白い光で溢れ始める。
幾重にも歪みを作り、簡単に閉じないよう細工されていたけれど、次第に一枚ガラスとなって、その間を縮めて行く。

シェイルは上空の映像で、義兄ローフィスが…くたびれきってソファに腰掛けてる姿を見つけ、思わず心配げに拳握る。

ディンダーデンは横のローランデに振り向き、尋ねた。
「ヤバいのか?
ヤツら」

ローランデは返答せず映像を見つめ、代わってディングレーが、振り向いて頷いた。
傀儡くぐつの凶王に操られた者らは、やたら襲いかかって来る。
が、怖いのは死体になった後。
迂闊に触れると、乗っ取られる。
今の様子じゃ、結界は保たない」

ディンダーデンは尋ねた。
「あっちに神聖騎士は、飛べないのか?」

ローランデが、やっと口開く。
「ゼイブンが、いない…。
ローフィスが疲れ切ってるから、召喚出来ない…」

それを聞くなり、ディンダーデンが唸った。
「…じゃ、めちゃめちゃヤバいじゃないか!!!」

ローランデとディングレーが、同時にディンダーデンへと振り向き、冷たい視線を送り。
シェイルが銀の巻き毛振って振り向き、悲鳴のように叫んだ。
「だから!!!
さっきから、そう言ってる!!!」
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