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ギデオンのその後
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枝道を出て、看板のあった本道まで出ると。
ファントレイユはいななく馬を静めながらも、向きを変え。
道からやって来る、人影をじっと見守る。
ファントレイユがあんまり真剣に店の方角を見つめるので、ソルジェニーまでもがギデオンの事がとても心配になって。
そちらを一緒に見つめ、息を飲んで見守った。
幾度か馬が進もうと歩を踏むのを、手綱を引いて静めながら。
ファントレイユが来た道を戻ろうか。と、じりじりしている様子が解って、ソルジェニーも、いても立ってもいられなくなる。
いつも一緒にいるソルジェニーに、必ず余裕を見せて微笑みかけるファントレイユだったが、その時は。
店の方角を見据えたまま、全く視線を外さない。
それからもう、暫くだった。
ギデオンの豪奢な金髪が、馬の激しい駒音と共に月明かりの中、浮かび上がって見えたのは。
ソルジェニーは途端、安堵する。
ギデオンは突進する早さで駆けて来て、二人の姿を確認するなり叫んだ。
「…行くぞ!」
ファントレイユは馬に拍車をかけると、疾風のように彼らの横を通り過ぎるギデオンの、後に続いた。
暫く、無言で併走した。
が、ごろつきが追いかけて来る様子が、無い。
ギデオンはファントレイユに目で合図し、ファントレイユはちらりと視線を向けてそれを受け止め、手綱を引き、速度を落とす。
そして彼らに振り向くギデオンの、それは快活な。
いかにもさっぱりしたと言う全開の笑顔を見、ファントレイユは途端不安げに、こそっ、と尋ねた。
「……まさか、わざと間違えて、無いよな?
君の言った店は、あの二股の、左側の道だろう…?」
その言葉に、ギデオンの眉が一気に寄る。
「…知っていたんなら、なぜその時、そう言わない?
わざわざ私がソルジェニーを危険な目に、あわせる訳無いだろう…?!」
ファントレイユは、肩をすくめた。
「君を、信用したんだ」
ギデオンはその言い用に、きっちりむくれた。
「…私が信頼を、裏切ったと?」
ソルジェニーが振り向くと、ファントレイユは素知らぬ素振りをし、取り澄ました顔を作ってバックレる。
ギデオンはそのファントレイユの様子を見、仕方なしに言葉を続けた。
「…つまり私に、謝罪しろと言いたいんだな?」
ファントレイユはギデオンに振り向くと、急いで言葉を返す。
「そうは、言ってない!
…だが君は、暫く殴る相手がいなくて!
ストレスが、溜まってたんじゃないのか?」
ギデオンの眉が、更に寄った。
「…ストレス発散で私があの店に、わざと足を向けた。
と。
そう言いたいのか?!」
ソルジェニーは怒鳴り返すギデオンを見つめた後。
思わず振り返り、ファントレイユを見上げた。
ファントレイユは取りすました表情を崩し、心底心配げに、小声で尋ねる。
「……違うのか……?」
ギデオンは激昂し、即答した。
「もちろん、違うに決まってる!」
きっぱり言い切るギデオンだったが、ごろつき共を殴ってよぼど楽しかったのか。
直ぐに思い返し、つぶやく。
「…だが、いい場所を見つけたのは確かだ。
今度からストレスが溜まったら、あそこに行けばいいからな…!」
あれだけの数のごろつき相手に。
たった一人だったにも関わらず、掠り傷すら負っていないギデオンのその晴れやかな笑顔に。
ファントレイユは一つ大きなため息を吐いて、心の底からあのごろつき共の方に、同情し。
そして囁く。
「…君の訪問の何度目かで、全員夜逃げしてるさ…」
それは小声だった。
が、ギデオンは振り向いた。
「何か、言ったか?」
ファントレイユは慌てて笑顔を作り、ギデオンに向ける。
「いや…!
君の為にもあの店が、潰れないといいなと、言っただけだ」
ソルジェニーが見守るファントレイユは、少し青冷め、俯き加減だった。
が、ギデオンはその言葉を真に受け、意気揚々と笑った。
金のさざ波のような美しい金髪は、月明かりの中青味を帯びて輝き。
小顔の色白な顔立ちは、そのくっきりとした碧緑の瞳と、華奢に見える細く形の良い鼻筋と。
少し下唇が肉厚な、小さく見える唇が、たった今の戦闘で赤く染まり。
美女顔が更に際立ち、素晴らしく美しく見えた。
ギデオンは嬉しそうに叫ぶ。
「そう思うか?
せいぜい店が永遠に潰れないよう、祈っててくれ…!」
心底楽しそうなギデオンの様子を見。
ファントレイユは容姿との凄まじいギャップに、顔を思い切り下げ。
内心
『…どれだけ綺麗に見えようが…。
気を許したが最後…。
あいつらのようになるのを…今まで何度も見てきたはずだ。
やっぱりこいつは、正真正銘の、猛獣だ』
と、心の中で唸りまくり、再確認し。
自分にしっかり、言い聞かせた。
ファントレイユはいななく馬を静めながらも、向きを変え。
道からやって来る、人影をじっと見守る。
ファントレイユがあんまり真剣に店の方角を見つめるので、ソルジェニーまでもがギデオンの事がとても心配になって。
そちらを一緒に見つめ、息を飲んで見守った。
幾度か馬が進もうと歩を踏むのを、手綱を引いて静めながら。
ファントレイユが来た道を戻ろうか。と、じりじりしている様子が解って、ソルジェニーも、いても立ってもいられなくなる。
いつも一緒にいるソルジェニーに、必ず余裕を見せて微笑みかけるファントレイユだったが、その時は。
店の方角を見据えたまま、全く視線を外さない。
それからもう、暫くだった。
ギデオンの豪奢な金髪が、馬の激しい駒音と共に月明かりの中、浮かび上がって見えたのは。
ソルジェニーは途端、安堵する。
ギデオンは突進する早さで駆けて来て、二人の姿を確認するなり叫んだ。
「…行くぞ!」
ファントレイユは馬に拍車をかけると、疾風のように彼らの横を通り過ぎるギデオンの、後に続いた。
暫く、無言で併走した。
が、ごろつきが追いかけて来る様子が、無い。
ギデオンはファントレイユに目で合図し、ファントレイユはちらりと視線を向けてそれを受け止め、手綱を引き、速度を落とす。
そして彼らに振り向くギデオンの、それは快活な。
いかにもさっぱりしたと言う全開の笑顔を見、ファントレイユは途端不安げに、こそっ、と尋ねた。
「……まさか、わざと間違えて、無いよな?
君の言った店は、あの二股の、左側の道だろう…?」
その言葉に、ギデオンの眉が一気に寄る。
「…知っていたんなら、なぜその時、そう言わない?
わざわざ私がソルジェニーを危険な目に、あわせる訳無いだろう…?!」
ファントレイユは、肩をすくめた。
「君を、信用したんだ」
ギデオンはその言い用に、きっちりむくれた。
「…私が信頼を、裏切ったと?」
ソルジェニーが振り向くと、ファントレイユは素知らぬ素振りをし、取り澄ました顔を作ってバックレる。
ギデオンはそのファントレイユの様子を見、仕方なしに言葉を続けた。
「…つまり私に、謝罪しろと言いたいんだな?」
ファントレイユはギデオンに振り向くと、急いで言葉を返す。
「そうは、言ってない!
…だが君は、暫く殴る相手がいなくて!
ストレスが、溜まってたんじゃないのか?」
ギデオンの眉が、更に寄った。
「…ストレス発散で私があの店に、わざと足を向けた。
と。
そう言いたいのか?!」
ソルジェニーは怒鳴り返すギデオンを見つめた後。
思わず振り返り、ファントレイユを見上げた。
ファントレイユは取りすました表情を崩し、心底心配げに、小声で尋ねる。
「……違うのか……?」
ギデオンは激昂し、即答した。
「もちろん、違うに決まってる!」
きっぱり言い切るギデオンだったが、ごろつき共を殴ってよぼど楽しかったのか。
直ぐに思い返し、つぶやく。
「…だが、いい場所を見つけたのは確かだ。
今度からストレスが溜まったら、あそこに行けばいいからな…!」
あれだけの数のごろつき相手に。
たった一人だったにも関わらず、掠り傷すら負っていないギデオンのその晴れやかな笑顔に。
ファントレイユは一つ大きなため息を吐いて、心の底からあのごろつき共の方に、同情し。
そして囁く。
「…君の訪問の何度目かで、全員夜逃げしてるさ…」
それは小声だった。
が、ギデオンは振り向いた。
「何か、言ったか?」
ファントレイユは慌てて笑顔を作り、ギデオンに向ける。
「いや…!
君の為にもあの店が、潰れないといいなと、言っただけだ」
ソルジェニーが見守るファントレイユは、少し青冷め、俯き加減だった。
が、ギデオンはその言葉を真に受け、意気揚々と笑った。
金のさざ波のような美しい金髪は、月明かりの中青味を帯びて輝き。
小顔の色白な顔立ちは、そのくっきりとした碧緑の瞳と、華奢に見える細く形の良い鼻筋と。
少し下唇が肉厚な、小さく見える唇が、たった今の戦闘で赤く染まり。
美女顔が更に際立ち、素晴らしく美しく見えた。
ギデオンは嬉しそうに叫ぶ。
「そう思うか?
せいぜい店が永遠に潰れないよう、祈っててくれ…!」
心底楽しそうなギデオンの様子を見。
ファントレイユは容姿との凄まじいギャップに、顔を思い切り下げ。
内心
『…どれだけ綺麗に見えようが…。
気を許したが最後…。
あいつらのようになるのを…今まで何度も見てきたはずだ。
やっぱりこいつは、正真正銘の、猛獣だ』
と、心の中で唸りまくり、再確認し。
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