赤い獅子と淑女

あーす。

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始まりの誕生会

始まりの誕生会 2

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 ギュンターがオーガスタスの養父、ゼッデネスの前へ進み、挨拶を述べた時。
ゼッデネスは思わず、ギュンターと横に立つオーガスタスの顔を、目を見開いて交互に見た。

大柄で体格のいい赤毛の、堂としたオーガスタス。
が、ギュンターは金髪に紫の瞳の、滅多な見ない、優美な美貌。
一人だけで見たら、ギュンターは長身な方なんだろう。
が、オーガスタスと並ぶと、顔一つ分は低い。

驚きに目を見開いてるゼッデネスを見、ギュンターは困惑した。
が、オーガスタスがぼそり。と呟く。
「…見かけだけだ。
中身は俺と、大して変わらないほど獰猛(どうもう)」

ゼッデネスは一辺にほっとして、微笑んでギュンターに手を、差し出す。
ギュンターはその手を握りながら、憮然と横のオーガスタスに告げる。
「……………………………。
ローフィスの時も、こんな感じだったのか?」

が、答えたのはゼッデネス。
栗毛の髪を振って、ギュンターに笑いかける。
「ローフィスは一見やさ男に見える。
が、ああ見えて一癖も二癖も、あるだろう?」

「…………俺は、そう見えないのか?」
「その顔で済まし返られると、とてもオーガスタスの友人には見えない」

「………………………」
ギュンターが無言で、その挨拶に落ち込んでいるので。
オーガスタスが肩に腕を回し、連行するようにゼッデネスの前から引き離す。

すっ…とオーガスタスが腕を外し、離れて行った途端…。
再び少女達が寄り来る。

彼女らの向こうの、去って行く長身のオーガスタスを見、改めてギュンターは
“彼の養父のお披露目会だ”
と腹を括り、出来るだけ上品に振る舞おうと務める。

が、ふと気づく。
オーガスタスの視線が…群れる女性達から少し離れ…こちらを微笑んで見つめてる、淑女に注がれている事に。

ギュンターはチラ…と群れる少女らより距離を取って見守る、その楚々とした淑女に目を止める。



明るい栗毛のほつれ毛が、結った髪から風に優しく揺れている。
穏やかな微笑。
目鼻立ちが整った美女だけど…それよりも優しげな印象が勝り…いい家庭で育った、家庭的な雰囲気のある淑女。

「(普段俺達とはあんまり縁の無い、家庭的で身持ちが良くて、慎ましいカンジの美女だな…)」

視線上げてまた、オーガスタスを見る。
が、オーガスタスは彼女を、とても嬉しそうに見ている。

ギュンターはつい、その美女が視線を注ぐ、自分を取り巻いてる少女に、顔を寄せて尋ねた。
「あの淑女…って、君の姉妹か従姉妹?」



彼女は振り向き、少し離れた茂みの前で微笑みを向ける、その淑女を見つめ
「姉のマディアンよ!」
と笑いかける。

ギュンターは再びオーガスタスに視線を送る。
オーガスタスはもう、客の一人に話しかけられ、大柄な体に似合いの、大らかな態度で談笑していた。

ギュンターは改めて周囲を見る。
取り囲む少女ら全てが、恋に恋してるような幼いカンジの子ばかり。

「(…俺の本性知ったら、全員引くな…)」
内心思いつつも、笑顔を披露した。

一人、挑発的に胸の谷間を思い切り見せた、深紅のドレスを着、色気ある赤毛の女が、艶を含み誘うようにこちらを見、近づいて来ようとしていた。



いかにも、男を渡り歩き、手玉に取ってる風で…。
ギュンターは目が合う前に、さっ!と視線を下げる。
「(直ぐ寝られそうだが…面倒事に成りそうな、厄介な女(タイプ)だ…)」

が、その女から目を背けた途端、赤毛の女は憮然と表情を険しくし、つん!と顔を背けて、こちらに来る歩を止めた。
取り巻く少女達はそれを見て、とても嬉しそうに微笑み…。
より一層親しげに、全員が自分に、揃って寄り添い始める。

「(ああ…女には、牽制されるだろうな。
ああ挑発的な色気、丸出しの女って。
リーラスとかなら…大好きだろうが)」

案の定、その挑発的な赤毛の女は、程無くして園遊会ではモテまくる、近衛隊服の濃紺の衣装着た、リーラスの元へと寄って行った。



ギュンターはまた、オーガスタスを見た。
が、オーガスタスは…彼の所の大きな犬、ユージェニーが、夫人らの群れに乱入しているのを、はっ!とした表情で、見つめていた。

貴婦人達は、色とりどりの素晴らしいドレスを汚されては。
と、きゃあきゃあ叫び逃げ回り始め…。
オーガスタスの視線が、険しくなる。

ギュンターは、自分が動こうか。
とも思った。
が。
『あいつが何とかするか』
と出を控え、見守っていると…。

オーガスタスがずっと見つめていた淑女が、その大きな犬に纏わり付かれ始める。
オーガスタスは
「!」
と目を見開き、駆け出しかけ…。

…けれど淑女は、周囲を跳ね回る犬に笑顔を向け…。
笑いながら、じゃれて来る犬の頭をなぜた。

犬は嬉しそうに…。
そして、甘えるように首を傾け、頭をなぜられながら、しきりに尻尾を振っていた。

オーガスタスは、ほっ…とした様子で、犬と優しく美しい淑女の、心暖まる交流の様子を…微笑ましく見つめる、人々の頭の後ろで。

その光景を微笑を浮かべ、見守っていた。

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