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調教の仕上げに入る面々

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 夕食後もアンガスの調教は続く。

なぜなら、アンガスが必死で
「突いて!早く突いて!」
と叫び始めたから。

「…こいつ、いつくたばるんだ?」
くたびれきったリーラスに聞かれ、ローフィスが皆に聞こえるように告げる。
「夕飯のスープに、今度は今まで盛った薬が、抜ける薬を盛ったから。
それが効き始めたら、落ち着くはずだ」

全員は、やれやれ…と首を横に振りながら、アンガスの口に入れた後、突き出されてしきりに振りまくられる尻に挿入…を、列成して繰り返し続けた。

ギュンターとディングレーも列に並ばされ、二巡してようやく。
アンガスは意識を無くすように、首をがくん。
と落とし、寝息を立て始める。

リーラスが、髪掴んで上げさせ
「…熟睡してるぜ…」
とつぶやいた。

ローフィスは頷くと
「ご苦労さん!
風呂に浸かって、今夜はゆっくり休んでくれ」
と言い渡す。

ギュンターとディングレーは、デカい四年らが音を殺しながら、歓喜にぴょんぴょん、跳びはねるのを見た。

「お前と、これ終わったら口直しに酒場で女抱きに行こうと約束してたけど…」
ぼそりと言う一人に、もう一人が力なく頷く。
「…無理だろう?」
「…後日、全員で繰り出そう」
「…復活したらな」

背の高い男らが、思いっきり背を屈め、まるで半死人のように疲れ切って、ぞろぞろ出て行く。

リーラスは振り向くと、ギュンターに尋ねる。
「お前は?
風呂に浸からないのか?」

が、ディングレーはギュンターの腕を、咄嗟握ると
「こいつは俺の私室の風呂を使う」
と言い切った。
ギュンターは呆けて、腕を掴むディングレーに振り向く。
「…そうなのか?」
ディングレーは頷くと
「遠慮するな」
と返答した。

けれどディングレーはその後、ローフィスに振り向く。
「…幾ら何でも、一人じゃヤバいだろう?」
ローフィスは頷くと、最後に出て行くリーラスの背に叫ぶ。
「オーガスタスを、寄越してくれ!」

けどリーラスは、振り向くと人差し指を唇に当て
「しーっ!しーーーーっ!
ヤツが目を覚まし、また『突いて!』と叫ぶ声を俺はもう、聞きたくないぞ!」
と小声で怒鳴った。

ディングレーとギュンターがまだ縛られたまま、首を下げて寝てるアンガスに振り向く。
ローフィスはリーラスに請け負った。
「ほぼ、寝て無くてずっと興奮状態だったから。
絶対明日まで、起きない。
それより…」

リーラスは背を向け、手だけ振り上げ、言い捨てた。
「…オーガスタスに伝える」

扉が閉まると、ギュンターはディングレーを見た。
ディングレーは気づいて、ギュンターを見る。

「オーガスタスが来るまで、俺もここに残る。
風呂に浸かりたけりゃ、先に俺の部屋に…」
「俺もここでオーガスタスを待つ」
ディングレーはギュンターの返答に、頷いた。

ローフィスがアンガスの手首の縄を解こうと屈むので、ディングレーももう片手の縄に屈み込む。

ギュンターはつい呆けて、ローフィスを率先して手伝う、ディングレーを見た。
二人はアンガスを両脇から抱え、部屋の隅に置かれた毛布の上に、横たえる。
その後ローフィスは、準備室に汲み置きしてあった桶を持ち込み、アンガスの体を拭き始めた。

ディングレーがギュンターの横に来て、丁寧に気絶同然で目も開けない、アンガスの体を拭くローフィスを見物する。
ついギュンターは、チラと横の、整った鼻筋と男らしいラインの顎をした、鋭いブルーの瞳をローフィスに向けてるディングレーの横顔を見る。

ディングレーも気づいてギュンターに振り向く。
一瞬、目が合うが、ギュンターは直ぐそらした。

金の巻き毛。
紫の宝石のような瞳。
相変わらず優美な美貌に見えた。
が、くたびれたかんいなめない。

少し、頬が削げて見えたし、目元も陰って見えた。

その時扉が開く。
オーガスタスが姿を現すと、ローフィスは桶に布を浸し、桶の取っ手を握り、顎をしゃくる。
オーガスタスは直ぐ準備室に取って戻り、ローフィスと、後に続くディングレーとギュンターを待った。

かなり狭く感じたが、窮屈と言う程では無い。
ローフィスが腰を下ろし、それが合図のようにオーガスタスもディングレーも、ギュンターも腰下ろす。

「…明日は、昼前に発つつもりだ。
ギュンターが道案内だから、昼飯は早々に食っておく」

オーガスタスが、頷く。
ローフィスはギュンターに振り向くと、一枚の羊皮紙を目前にぶらさげて言った。
「午前の講義の時、これを講師に渡しとけ。
私用で外出するむねしるしてあるから」

ギュンターはぶらさがった羊皮紙を手に取り、視線を落とす。
「…つまり一限後まるっとサボるから。
必要なんだな?」

ローフィスは頷く。
「流石にそれだけ姿消してると、捜索を検討されるかも」

ギュンターはまた羊皮紙を見つめ、頷いた。
オーガスタスもギュンターに告げる。
「一限終わった後、厩に来い」
ギュンターはまた、頷いた。

「今夜は俺とオーガスタスがここに泊まって見張る」
が、ディングレーがオーガスタスに振り向く。
「俺と交代しないか?」
オーガスタスは目を見開く。
「いいけど、お前の部屋、お前が留守だとマズイだろう?」

ディングレーはギュンターに振り向く。
「代わりに泊まってくれ」

ギュンターはびっくりして、目を見開いた。
『冗談だろう?』
言いかけた。
が、ディングレーの顔はど・シリアス。

条件反射で頷く。
が、ローフィスが腰を浮かす。
「風呂、浸かって来る。
お前も汚れ、落として来い」

ディングレーは頷き、ギュンターを促す。
二人が先に戸を開けて外へと出て行くから、その背を追って外に出ようとしたギュンターは、ふと一人その場に残り、腰を上げないオーガスタスに振り向く。

ギュンターが口開く前に、オーガスタスが告げた。
「ディングレーとローフィスは、相思相愛だからな」

ギュンターは、ぎょっ!として、戸口の外の、既にすっかり暮れた暗がりの中のローフィスとディングレーの背中に、振り向く。
が、顔を室内に戻すとオーガスタスは笑っていて。

ギュンターはぼそり。とつぶやいた。
「…なんだ。嘘か」

ほっとため息吐くギュンターに、オーガスタスがくくくっ。と人の悪い忍び笑いした後、言った。
「どっちが突っ込まれる側か。
お前一瞬、考えたんだろう?」

ギュンターは決まり悪げに俯く。
「…考えるだろう?普通」

ギュンターは暗い外で、振り向いて自分を待ってるディングレーに再度振り向く。
ため息と共に戸を、後ろ手で閉めて自分を待つディングレーの元へと歩き出す。
が閉めてる間にも室内からはオーガスタスの
「くくくくくっ…」
と人の悪い忍び声が聞こえ続け。

ギュンターは年上の悪友にからかわれ、思わず眉間寄せてディングレーの横に並んだ。

三年宿舎のだだっ広い平貴族食堂の、中央に位置する階段を上がる。
正直ギュンターはくたびれきってたけど。
食堂の長テーブルに座る皆の視線が喰い込むようで、ふと見下ろす。
が、さっ!と顔を背けられ、多分理由を知ってるだろうダベンデスタの姿を探すものの…。
階段上の踊り場でディングレーに
『早く来い』
と顎をしゃくられ、仕方無くディングレーの後に続いた。

大貴族食堂ではディングレーが、デルアンダー始め他の面々の視線を感じ、振り向く。
が、目をさっ!とそらされ、ぼそり…とデルアンダーに告げた。

「今夜、ギュンターはここに泊まる。
明日の朝、ギュンターが三人を一年宿舎に送り届けるから…」

ディングレーはてっきり、聞かれると思った。
『貴方が送り届けられない、理由がおありなんですか?』

しかし、目を合わせないままデルアンダー始め、他の面々にも頷かれ、拍子抜けしてギュンターにまた顎をしゃくり、私室の扉を開けてギュンターを先に入れ、そして自分も入り、扉を閉めた。

美少年三人はあてがった部屋にいる様子で、居間に姿は見えない。
召使いが直ぐ姿を見せるから、ディングレーは
「風呂は入れるか?」
と聞く。
「直ぐにでも」
と召使いのドンデが返答するので、ディングレーはギュンターに振り向き
「俺はローフィスの所に戻るから。
先に使う。
お前はゆっくりくつろいで、食事を取って俺の部屋で寝てくれ」
と言い渡す。

ギュンターはやっぱり、目を見開いた。
けれど召使いに直ぐ
「お食事はこちらで?
それとも寝室にお持ちしましようか?」
と尋ねられ、ディングレーの返答を待ってると。
ディングレーがじっ…とギュンターを見る。
それでようやくギュンターは、自分に言われたのだと気づき
「…じゃ、風呂のあと、寝室で」
と答えた。

ディングレーはさっさと浴室へと消えて行くから、ギュンターはその豪華な室内を居心地悪げに見回す。

召使いは部屋の奥の扉を開け
「こちらが寝室でございます」
と開けたままにするので、ギュンターは室内へと足を踏み入れた。

学年無差別剣の練習試合の前夜、アスランを運び込んだ覚えはあるが、改めて見ると凄く豪華。
紺の天蓋付きの布は金刺繍入りだし、寝台の柱も足も、手の込んだ彫刻が掘られ、金箔が貼られ。

鏡の枠も箪笥の枠もが全て、彫刻の施された金色。

そこらかしこに装飾品が飾られ、高価な宝石がはめ込まれ、金ぴか。

『ここで何か無くなったら
俺がったと思われるな…』

と宝石付きの蝋燭立てやら、金の小物入れに視線を投げ、青ざめた。

寝台横のソファで、落ちつかなげに座ってると。
ディングレーが真っ直ぐの黒い艶やかな濡れ髪で、扉を開けて言い放つ。

「明日昼食後、一年三人を一年大貴族宿舎に、送り届けてくれ」

それだけ言うと、ディングレーはさっ!と背を向けて戸を閉めるから。
ギュンターはまた、途方に暮れたように、豪華な金綺羅室内を、見回した。

ディングレーは用心のため、自分が部屋に居ると思わせたくて、こっそり召使い用の階段を使い、外へ出る。

グーデン一味の見張りはいない様子で、それでもなるべく見つからないよう、背を屈めて茂みの間をそろそろと、旧校舎へと歩を進めた。

当然と言えば当然だが。
三年宿舎の平貴族食堂でも、大貴族食堂でも。

堂々とディングレーがギュンターを伴い、自室に招き入れた事で、今夜の二人の情事の妄想が、大輪の花を咲かせた。

ディングレーが準備室の扉を開けた時。
オーガスタスはもう居なくてローフィスだけが、バスケットから夕食を取り出していた。

ローフィスの横に腰を下ろすと、一緒に食事を頬張る。
ローフィスの顔をよく見ると、頬がこけていて、ずっと気を張ってかなり疲れてると感じた。

食後、壁に背をもたせかけて目を閉じるローフィスの横に、ディングレーは並び、毛布をローフィスの肩と自分の肩に引き上げ、ローフィスと共にくるまってささやく。
「…ほとんど、寝てないんじゃないのか?
明日、行けるのか?
…俺が起きてるから、暫く寝てろ」

ローフィスは、目を閉じたまま呻く。
「アンガスが排泄した後の世話なんか、お前出来ないだろう?」

ディングレーは、確かに。
…そうは思った。が言った。
「リーダーがぶっ倒れたら、計画が流れるぞ?
全部の段取りは、あんたがしてるんだろう?」

が、ローフィスは空色の目を微かに開け、横のディングレーをはすに見つめ、つぶやく。
「三日寝なくても平気だった。
今回はたったの、二晩だ」

が、間もなくローフィスが自分の肩に頭をもたせかけ、目を閉じて寝息立ててるのに、ディングレーは気づく。

ずり落ちた毛布をローフィスの肩に引き上げ、ついディングレーはぼやく。
優しい声で。

「あんたの腹の立て方は、間違いなく屈折してる。
俺なら殴って息の根止める寸前で、止めただろうが」

が、ローフィスの寝息は安らかで、ディングレーはくすり。と笑った。
「明日は同行できないし。
久しぶりだから、話がしたかったが…これじゃ無理だな…」

やがてローフィスの温もりに眠くなる。
昼間の疲労で眠る意識すら無く、ディングレーも気を失うように、眠りに落ちた。
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