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気もそぞろな、二年三年剣の合同授業
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間の悪い事に、昼食後の講義は二・三年合同の剣の講義。
しかも講師はディングレーに指揮を任せ、用があると自習にしたりするから、講師が出て行きディングレーが皆に
「二人ずつ組んで、合図があるまで打ち合え!」
と叫んだ途端。
ヤッケルは直ぐ、デラロッサの前に進み出る。
平貴族でも押し出し満点の長い栗毛をいつも後ろで束ねてる、肩幅の広い男前のデラロッサに剣で打ちかかる、フリをしてヤッケルは素早く尋ねた。
「…昼食時、ギュンターの姿も、オーガスタスの姿も無かったけど?」
デラロッサはツバメのように素早く身を翻す、明るい栗毛の可愛い系な顔立ちだけど性格は生意気なヤッケルを、目を見開いて見、つぶやく。
「…めざといな…」
カンッ!
ヤッケルの剣を迎え打ち、デラロッサは素早く説明する。
「ディングレーと今朝、別れの情事を済ませたギュンターは晴れてオーガスタスに乗り換えたってのが、もっぱらの噂で!」
ひゅっ!
デラロッサはヤッケルが、棒立ちで剣を喉に突きつけられ、目をまん丸に見開く姿を見、剣を軽く揺すって
『打ちかかって来い!』
と合図送ると、ヤッケルは呆然としてたけど慌てて剣を持ち上げ、また軽く打ちかかる。
デラロッサはヤッケルの剣を軽く弾いて、言った。
「姿が見えないのは、ギュンターはオーガスタスと出かけたからだ。
こうも堂々と、二人して出かけるかな。
良く講師は外出許可、出したもんだ」
バ…ッ!
避けると思ってたヤッケルが避けず、やはり棒立ちで。
デラロッサは慌てて、ヤッケルにぶつかる寸前の剣を横に、歯を食い縛ってスライドさせた。
「…おい!」
ヤッケルに怒鳴るが、ヤッケルは
「…悪い。
ってつまり…午後まるまる…してるって事か?
校外で?」
デラロッサはとうとう剣を肩に担ぐと、尋ねる小柄なヤッケルの前に立ち、告げる。
「…二人っきりで出かけたんだ。
他にナニをする?」
ヤッケルは聞くなり、さっ!と身を翻し、背を向けて駆け去って行くから。
デラロッサは呆れた。
やがてデルアンダーは、二年があちこちでひそひそと、ギュンターとオーガスタスが校外でめくるめく時間を過ごしてる。
と噂してるのを耳にする。
見回りのディングレーが通りかかると、さっと話を止め、真剣に打ち込むフリをする。
が、通り過ぎるとまた…。
デルアンダーが顔に手を当て、沈痛な面持ちで俯いてると、テスアッソンとオルスリードが両脇に立ち、つぶやく。
「分かる…」(テスアッソン)
「…奴らその話題に夢中で、真面目に剣振ってるヤツはローランデぐらいだ」(オルスリード)
デルアンダーは顔に手を当てたまま、頷いた。
オルスリードがデルアンダーの肩を、ぽん。と手で軽く叩き、言った。
「ともかく俺達は、これで気を遣う事も頭を悩ませる事も無くなる」
テスアッソンも頷く。
「だな。
ギュンターに対し、どう接すればいいかを悩まなくて済む」
デルアンダーは黙して頷き、けれどぼそり…とつぶやく。
「…だが、ギュンター見るとつい想像しちまう。
ディングレー殿とその…」
それを聞くなり、テスアッソンもオルスリードも同時に俯き、大きなため息を吐くから。
デルアンダーは顔を上げて、両脇の二人を見回した。
「…お前らもか?」
オルスリードは無言で頷き、テスアッソンはぼやいた。
「考えたくないのに…どうして脳裏に浮かぶかな?」
デルアンダーが、ぼそり…と言った。
「そりゃ今までディングレーは、相手が女か。
男の場合だって彼に相応しい…シェイルのような美少年しか相手にしないと。
我々が思い込んできたからじゃ無いのか?」
オルスリードが、言い淀む。
「…けど実際、今まではそうだったろう?
オーガスタスは襲われてる美少年を助けてもその後関係を持たないが、ディングレーは…結構してるって聞いた」
テスアッソンも頷く。
「少女と見まごう美少年とは、俺も似合いだと思ってたし第一…保護してる一年の三人の美少年らの誰かとは…絶対関係が、あると思ってたんだが…」
デルアンダーが、ため息交じりに顔を上げる。
「ともかくもう、ディングレーはギュンターと切れたなら。
その手の話題も、気を遣わず聞ける」
テスアッソンは思いっきり、頷いて言った。
「…だな。
迂闊に聞いて、ギュンターとの付き合いの、相談とかされ始めたら…」
オルスリードが後を引き継いだ。
「逃げ出す訳にも行かず、気まずいどころの騒ぎじゃ無い」
三人はその後、無言で頷き倒した。
「…マジかよ?!
ギュンターってオーガスタスと校外で?!」
ローランデは剣の苦手なサリアスに、振りと握りを直すよう指導していて、その言葉を聞く。
「…?
校外?」
その言葉で、サリアスは顔を上げる。
ローランデより少しだけ背の低い、大人しげなサリアスはよく見ると美少年。
けれどいつも控えめなので、まず目立つ様子を見せなくて…。
顔立ちをちゃんと見て、その時初めて
『整ってる』
と気づく。
多めの栗毛の髪に、色白の小顔を隠すようにいつも俯いていた。
さほど濃くない茶色の瞳も、彼を地味に見せている。
サリアスは控えめな、おどおどした小声で呟く。
「さっきから…あちこちで耳にします。
その…ギュンターがディングレーと終わりにして、オーガスタスと校外でデートしてるって…」
サリアスは気品を漂わせる貴人、ローランデの、綺麗な青の瞳が見開かれるのを見て、ため息吐く。
「…ですよね。
でもギュンターって…結構喧嘩っ早い。
って聞いてたから、びっくりですよね?
…やっぱりあれですか?
オーガスタスだけには喧嘩に勝てなくて…それで…」
ローランデは思わず、俯きながらそうぼそぼそした小声で告げる、サリアスを見た。
鼻先が細く尖ってて、貴婦人のよう。
目は垂れ目で大きめだし、唇は小さい。
よくこの『教練』で、男に襲われなかったなと、感心してしまう。
「その…君は無いんだよね?
つまりその…」
サリアスは直ぐ、顔を上げる。
たっぷりの栗色の癖毛に囲まれた小顔は可愛らしくて綺麗。
サリアスは貴公子ローランデに、やはり小声で告げた。
「…襲われないか?
ですよね…。
私はその…なんて言うか、色気もナイし地味だし…。
同学年に、とびきり綺麗なシェイルとか。
少し落ちても、ラナーンとか。
目立つ美少年がいるから、幸い目を付けられませんでした」
ローランデは“良かったね”とも言えず、思わず顔を下げた。
「でもオーガスタスくらい背が高かったら。
ギュンターぐらい背の高い相手でも、丁度良い感じで…お似合いですよね…。
ディングレーでも似合うけど…やっぱオーガスタスとの方が、見栄えがするって言うか、しっくりくるって言うか…」
ローランデはそう喋るサリアスを、珍しそうに見た。
「君も噂話が好きだって、知らなかった」
サリアスは頷く。
「私…あんまり人と話すの、苦手って言うか…」
ローランデが、つい心配になって尋ねる。
「けど…分かってる?
二人が付き合ってるってコトは…」
言いつつ、ローランデは自分の頬が染まるのを感じた。
頬が熱くなってたから。
「知って…ます。
ナニするかぐらい。
けどその…相手が好きな人だったら。
素敵な事ですよね?」
ローランデは、びっくりした。
「そそそそうかもね…」
サリアスは頷く。
「私の両親は愛し合っていて、良く私の目の前でキスしたりするし…。
一度扉が開いていて。
二人が裸で抱き合ってて、通りかかった私は見てしまって。
両親は私に気づくと『きゃっ!』
って母様は恥ずかしがったけど。
でも直ぐ顔を上げて
『扉、閉めてくれる?
お父様と今、とても大事な時間を過ごしてるの』
って笑って言って。
それってなんか…いいですよね?」
ローランデはそれを聞いて、顔を下げた。
「…うん…。
とても素敵だ…。
私の母は、とても体が弱くて北の土地では暮らせなくて…。
うんと南の、母の療養所へ行くと、父様も私の目の前で母様にキスをする」
サリアスはそう寂しそうに呟く、ローランデを見た。
「シェンダー・ラーデンでは…父君と二人きりなんですか?」
聞かれて、ローランデは頷く。
「けれど父様はシェンダー・ラーデンの大公だから。
ちっても暇なんて無くて、いつもお忙しい」
「じゃあ…あまり両親とのふれ合いは無い?」
ローランデは首を横に振る。
「私は大公子息だから。
次期大公として、いっぱい身につけなきゃいけない事があって…。
ずっと家庭教師や剣の講師と、忙しく学んでるけど、父様はどれだけお忙しくても、一日に一度は必ず様子を見に来てくれるし、領地の見回りには必ず同行させてくれる。
尊敬する優しくて…大好きな父様だ」
サリアスはその時、はにかむように微笑んだ。
ローランデは彼の笑顔を初めて見たように思って、思わず笑い返した。
どったん!
吹っ飛んで転がる同級生にローランデは振り向き、駆けつけようとするから。
サリアスは言った。
小声で。
「もっと、近寄り難い人だと思ってた」
ローランデは振り向く。
そして首を横に振った。
「そんな事、全然無い!」
そして転んだ子の横に屈むと、痛みに顔をしかめるその子の背に手を添え、助け起こした。
しかも講師はディングレーに指揮を任せ、用があると自習にしたりするから、講師が出て行きディングレーが皆に
「二人ずつ組んで、合図があるまで打ち合え!」
と叫んだ途端。
ヤッケルは直ぐ、デラロッサの前に進み出る。
平貴族でも押し出し満点の長い栗毛をいつも後ろで束ねてる、肩幅の広い男前のデラロッサに剣で打ちかかる、フリをしてヤッケルは素早く尋ねた。
「…昼食時、ギュンターの姿も、オーガスタスの姿も無かったけど?」
デラロッサはツバメのように素早く身を翻す、明るい栗毛の可愛い系な顔立ちだけど性格は生意気なヤッケルを、目を見開いて見、つぶやく。
「…めざといな…」
カンッ!
ヤッケルの剣を迎え打ち、デラロッサは素早く説明する。
「ディングレーと今朝、別れの情事を済ませたギュンターは晴れてオーガスタスに乗り換えたってのが、もっぱらの噂で!」
ひゅっ!
デラロッサはヤッケルが、棒立ちで剣を喉に突きつけられ、目をまん丸に見開く姿を見、剣を軽く揺すって
『打ちかかって来い!』
と合図送ると、ヤッケルは呆然としてたけど慌てて剣を持ち上げ、また軽く打ちかかる。
デラロッサはヤッケルの剣を軽く弾いて、言った。
「姿が見えないのは、ギュンターはオーガスタスと出かけたからだ。
こうも堂々と、二人して出かけるかな。
良く講師は外出許可、出したもんだ」
バ…ッ!
避けると思ってたヤッケルが避けず、やはり棒立ちで。
デラロッサは慌てて、ヤッケルにぶつかる寸前の剣を横に、歯を食い縛ってスライドさせた。
「…おい!」
ヤッケルに怒鳴るが、ヤッケルは
「…悪い。
ってつまり…午後まるまる…してるって事か?
校外で?」
デラロッサはとうとう剣を肩に担ぐと、尋ねる小柄なヤッケルの前に立ち、告げる。
「…二人っきりで出かけたんだ。
他にナニをする?」
ヤッケルは聞くなり、さっ!と身を翻し、背を向けて駆け去って行くから。
デラロッサは呆れた。
やがてデルアンダーは、二年があちこちでひそひそと、ギュンターとオーガスタスが校外でめくるめく時間を過ごしてる。
と噂してるのを耳にする。
見回りのディングレーが通りかかると、さっと話を止め、真剣に打ち込むフリをする。
が、通り過ぎるとまた…。
デルアンダーが顔に手を当て、沈痛な面持ちで俯いてると、テスアッソンとオルスリードが両脇に立ち、つぶやく。
「分かる…」(テスアッソン)
「…奴らその話題に夢中で、真面目に剣振ってるヤツはローランデぐらいだ」(オルスリード)
デルアンダーは顔に手を当てたまま、頷いた。
オルスリードがデルアンダーの肩を、ぽん。と手で軽く叩き、言った。
「ともかく俺達は、これで気を遣う事も頭を悩ませる事も無くなる」
テスアッソンも頷く。
「だな。
ギュンターに対し、どう接すればいいかを悩まなくて済む」
デルアンダーは黙して頷き、けれどぼそり…とつぶやく。
「…だが、ギュンター見るとつい想像しちまう。
ディングレー殿とその…」
それを聞くなり、テスアッソンもオルスリードも同時に俯き、大きなため息を吐くから。
デルアンダーは顔を上げて、両脇の二人を見回した。
「…お前らもか?」
オルスリードは無言で頷き、テスアッソンはぼやいた。
「考えたくないのに…どうして脳裏に浮かぶかな?」
デルアンダーが、ぼそり…と言った。
「そりゃ今までディングレーは、相手が女か。
男の場合だって彼に相応しい…シェイルのような美少年しか相手にしないと。
我々が思い込んできたからじゃ無いのか?」
オルスリードが、言い淀む。
「…けど実際、今まではそうだったろう?
オーガスタスは襲われてる美少年を助けてもその後関係を持たないが、ディングレーは…結構してるって聞いた」
テスアッソンも頷く。
「少女と見まごう美少年とは、俺も似合いだと思ってたし第一…保護してる一年の三人の美少年らの誰かとは…絶対関係が、あると思ってたんだが…」
デルアンダーが、ため息交じりに顔を上げる。
「ともかくもう、ディングレーはギュンターと切れたなら。
その手の話題も、気を遣わず聞ける」
テスアッソンは思いっきり、頷いて言った。
「…だな。
迂闊に聞いて、ギュンターとの付き合いの、相談とかされ始めたら…」
オルスリードが後を引き継いだ。
「逃げ出す訳にも行かず、気まずいどころの騒ぎじゃ無い」
三人はその後、無言で頷き倒した。
「…マジかよ?!
ギュンターってオーガスタスと校外で?!」
ローランデは剣の苦手なサリアスに、振りと握りを直すよう指導していて、その言葉を聞く。
「…?
校外?」
その言葉で、サリアスは顔を上げる。
ローランデより少しだけ背の低い、大人しげなサリアスはよく見ると美少年。
けれどいつも控えめなので、まず目立つ様子を見せなくて…。
顔立ちをちゃんと見て、その時初めて
『整ってる』
と気づく。
多めの栗毛の髪に、色白の小顔を隠すようにいつも俯いていた。
さほど濃くない茶色の瞳も、彼を地味に見せている。
サリアスは控えめな、おどおどした小声で呟く。
「さっきから…あちこちで耳にします。
その…ギュンターがディングレーと終わりにして、オーガスタスと校外でデートしてるって…」
サリアスは気品を漂わせる貴人、ローランデの、綺麗な青の瞳が見開かれるのを見て、ため息吐く。
「…ですよね。
でもギュンターって…結構喧嘩っ早い。
って聞いてたから、びっくりですよね?
…やっぱりあれですか?
オーガスタスだけには喧嘩に勝てなくて…それで…」
ローランデは思わず、俯きながらそうぼそぼそした小声で告げる、サリアスを見た。
鼻先が細く尖ってて、貴婦人のよう。
目は垂れ目で大きめだし、唇は小さい。
よくこの『教練』で、男に襲われなかったなと、感心してしまう。
「その…君は無いんだよね?
つまりその…」
サリアスは直ぐ、顔を上げる。
たっぷりの栗色の癖毛に囲まれた小顔は可愛らしくて綺麗。
サリアスは貴公子ローランデに、やはり小声で告げた。
「…襲われないか?
ですよね…。
私はその…なんて言うか、色気もナイし地味だし…。
同学年に、とびきり綺麗なシェイルとか。
少し落ちても、ラナーンとか。
目立つ美少年がいるから、幸い目を付けられませんでした」
ローランデは“良かったね”とも言えず、思わず顔を下げた。
「でもオーガスタスくらい背が高かったら。
ギュンターぐらい背の高い相手でも、丁度良い感じで…お似合いですよね…。
ディングレーでも似合うけど…やっぱオーガスタスとの方が、見栄えがするって言うか、しっくりくるって言うか…」
ローランデはそう喋るサリアスを、珍しそうに見た。
「君も噂話が好きだって、知らなかった」
サリアスは頷く。
「私…あんまり人と話すの、苦手って言うか…」
ローランデが、つい心配になって尋ねる。
「けど…分かってる?
二人が付き合ってるってコトは…」
言いつつ、ローランデは自分の頬が染まるのを感じた。
頬が熱くなってたから。
「知って…ます。
ナニするかぐらい。
けどその…相手が好きな人だったら。
素敵な事ですよね?」
ローランデは、びっくりした。
「そそそそうかもね…」
サリアスは頷く。
「私の両親は愛し合っていて、良く私の目の前でキスしたりするし…。
一度扉が開いていて。
二人が裸で抱き合ってて、通りかかった私は見てしまって。
両親は私に気づくと『きゃっ!』
って母様は恥ずかしがったけど。
でも直ぐ顔を上げて
『扉、閉めてくれる?
お父様と今、とても大事な時間を過ごしてるの』
って笑って言って。
それってなんか…いいですよね?」
ローランデはそれを聞いて、顔を下げた。
「…うん…。
とても素敵だ…。
私の母は、とても体が弱くて北の土地では暮らせなくて…。
うんと南の、母の療養所へ行くと、父様も私の目の前で母様にキスをする」
サリアスはそう寂しそうに呟く、ローランデを見た。
「シェンダー・ラーデンでは…父君と二人きりなんですか?」
聞かれて、ローランデは頷く。
「けれど父様はシェンダー・ラーデンの大公だから。
ちっても暇なんて無くて、いつもお忙しい」
「じゃあ…あまり両親とのふれ合いは無い?」
ローランデは首を横に振る。
「私は大公子息だから。
次期大公として、いっぱい身につけなきゃいけない事があって…。
ずっと家庭教師や剣の講師と、忙しく学んでるけど、父様はどれだけお忙しくても、一日に一度は必ず様子を見に来てくれるし、領地の見回りには必ず同行させてくれる。
尊敬する優しくて…大好きな父様だ」
サリアスはその時、はにかむように微笑んだ。
ローランデは彼の笑顔を初めて見たように思って、思わず笑い返した。
どったん!
吹っ飛んで転がる同級生にローランデは振り向き、駆けつけようとするから。
サリアスは言った。
小声で。
「もっと、近寄り難い人だと思ってた」
ローランデは振り向く。
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