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戦いの余波
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シェイルとローランデは、大鍛錬場の窓辺でヤッケルが放心状態になって俯いてる姿を見、互いに顔を見合わせ合い、こそっと覗き込む。
「あの…」
ローランデが囁き、シェイルもが
「大丈夫?」
と尋ねる。
けれどヤッケルは頷くものの、口を開かない。
フィンスがやって来て、ヤッケルの横に立つと項垂れて言う。
「…折れた剣で、それでもまだギュンターが襲いかかって来るから。
だからオーガスタス、足蹴りしたんだね…」
ヤッケルが、頷いて口開く。
「…学年無差別剣の練習試合でも、リーラスが前に転びかけて。
確かオーガスタス剣振り入れて、リーラスは反射で剣振り返して。
剣が合わさったお陰で、リーラスは前に転ばずに済んでた…。
オーガスタス流の親切って、ハード…」
シェイルが直ぐ、口挟む。
「けどギュンター、平気そうにオーガスタスと話してた」
ローランデも頷く。
「オーガスタスが乱暴な親切する相手って、乱暴な扱いに慣れて、平気な人だけだよ?
君や私には決してしないと思う」
ヤッケルは言われ、まだ俯いたまま頷く。
「オーガスタス、ちゃんと相手見て態度使い分けるから。
それも、人気の一部だよな」
フィンスはそこでようやく、放心してるヤッケルに気づく。
「…どこが、引っかかってる?」
「…あれは、無いだろう…」
「…絡み合うどころか、牙剥いて激しく戦ったから?」
フィンスに聞かれ、ヤッケルは思いっきり頷く。
そしてようやく顔を上げ、濃い栗毛を胸に肩に流し、誠実そうな青い瞳をした、端正な面立ちの落ち着ききったフィンスを見、ぼやく。
「ギュンターだけが牙剥いても。
あの妄想は健在。
けどさ…」
シェイルとローランデはその言葉を聞いて、顔見合わせた。
フィンスがため息吐いて、後の言葉を言う。
「…本気のオーガスタスって…めちゃくちゃ格好良かったな…」
ヤッケルは、また無言で頷く。
「あんだけ剣振って格好いいと。
えっちなオーガスタスじゃなく。
戦う姿が最高に格好いいオーガスタスしか、もう思い浮かばない」
ローランデもシェイルも、跳ねた長い赤毛を振り、剣を自在に振り回し的確に凄い速さで剣を振り下ろす、長身のオーガスタスのど迫力な姿を思い返す。
確かに身震いするほど、豪快で格好良かった。
「…でもようやく、私の知ってるオーガスタスで…。
本心は、とてもほっとしてる」
ローランデの言葉に、ヤッケルもフィンスも顔を見合わせる。
シェイルはローランデの言葉に微笑んで、心からの言葉を告げた。
「うん…。
これでようやく、ローランデも恥ずかしい思い、しなくて済むね」
けどヤッケルが言い返す。
「…ここ数週間、ずっと思い描いてたから。
そうそう浮かぶ妄想は、止められない」
シェイルが顔上げると、フィンスまで頷いていて。
ローランデはそれを聞いた途端、また恥ずかしげに頬を赤く染めるので。
シェイルはヤッケルを、睨み付けた。
スフォルツァは三人の美少年が足が釘づけられたように、まだその場に立ちすくんでいて。
促したものかどうかを、思案した。
が、寄って来るアイリスがアスランの前に立って、にこにこ笑いながら
「オーガスタスもギュンターも。
凄く、格好良かったね!」
と言うのを耳にする。
アスランは満面の笑顔で
「はい!」
と頷いてた。
横のマレーが
「貴方が、講師に休講を提案して下さったお陰です」
と微笑んで礼を言うのを聞いた時。
スフォルツァは気が回らなかった自分を恥じ、思わず顔を下げた。
が。
アイリスはにこにこ笑って
「みんなが、一斉に立ち上がって拍手したお陰だよ。
提案しただけでは、休講にならなかった」
なんて謙遜するもんだから、スフォルツァは思わず顔を上げ、愛しのアイリスにもっと惚れ込む自分を意識した。
思わず寄って行き、抱きしめたくなった。
が、気づいたようにアイリスは振り向き、まるで制止するようなちょっときつい濃紺の瞳を向けるので、スフォルツァはがっかりして顔を下げた。
ディングレーは取り巻き達が。
心なしか、がっかりしてるような気がして、顔を見回す。
他の皆は、視線を向けても気づきもしない。
が、デルアンダーだけは視線を向けた時、顔を上げて見つめ返す。
思わず顔を背けたのは、ディングレーの方。
が、王族らしからぬと気づき、こほんと咳払ってまたデルアンダーに視線を戻す。
「感想を聞こうか?
ギュンターは怖い物知らずのようだな?」
デルアンダーは頷き
「引く事をしないんでしょうね」
と言うと、横のテスアッソンも俯いてぼそりと言う。
「…負けん気が、あんなに強いなんて」
横の、デルアンダーといい男を競い合うオルスリードも、俯き気味。
「…と言うか…野獣性…?
オーガスタスはもしかして…戦う時の自分と同様だから…ギュンターを気に入ったんでしょうかね?」
モーリアスが、顔を上げる。
「…と、美貌?」
銀髪美形のシャウルスは、やっぱり美形のモーリアスの発言に、頷いて口開く。
「やっぱり美貌は外せませんよね?」
一番飄々としたラッセンスですら
「ギュンターは色事に関して、やりたい放題でたいそう奔放なんでしょう?」
の発言。
ディングレーはもう少しで
『どーしてお前らは、そっち方面ばっか、考えるんだ!』
と、怒鳴りそうになった。
がそこに。
ローフィスがふらりと姿を見せ。
背後から、噂のオーガスタスとギュンターの二人がやって来る。
取り巻きらは一気に恐縮した。
が、ローフィスはディングレーの目前に立つと
「ホントに弁償は、要らないのか?」
と聞く。
ディングレーは目を見開いてローフィスを凝視した後。
こほん。と咳払い
「どーしてもと言うんなら…」
と言うので、ローフィスの背後でギュンターが顔を下げ、ため息を吐き出した。
そして
「俺が払えるのは、体で出来ることだけだが。
前にも言ったが、ケツを貸すのだけは勘弁してくれ」
と言うので、ディングレーはわなわな震ってもう少しで怒鳴りそうだった。
『お前のその発言が、誤解を生むんだ!!!』
けど横のオーガスタスが、くすくす笑って口開く。
「理由を聞くと、笑えるぞ?」
「?
理由が…あるのか?」
ギュンターが殊勝に項垂れて頷き、そしてその美貌の顔を上げて言い放つ。
「…俺が受けに回ると、たいてい途中でひっくり返そうとして…。
あんたもオーガスタスと同じで、俺に犯されたくないだろう?
なんで…どっちが攻めるかで、絶対殴り合いの喧嘩に移行する。
恩返しのつもりで始めて…。
けど結局喧嘩になったら、恩を返すどころか唾吐く結果になって。
…する、意味が無い」
ディングレーはそれを聞いて、ギュンターを凝視したし。
背後の取り巻きらは一瞬でギュンターの凶暴性に、ぞっとして顔を下げた。
ローフィスだけが
「…言いかけてやめたろう?
何言う気だったんだ?」
と聞いて来るので、ディングレーは再び明るい気分が復活し、寄って耳元で、小声で告げた。
「…分かった。
時間作って付き合う」
とローフィスが普通の声で返事し、背後の取り巻きらは
「?」
と聞き耳立てる中。
ギュンターは平気で尋ねた。
「二人でどっか行くのか?」
ローフィスは頷くと
「ここでは口に出せない、特殊な場所だ」
と言うので、オーガスタスだけは察しが付いて、頷いてると。
ギュンターの視線を浴びた。
オーガスタスはギュンターに見つめられ
「ローフィスは顔が広いし、ツテも多いからな」
とお茶を濁す、謎めいた返答で誤魔化す中。
ギュンターは
「つまりズバリ口に出来ない場所か?」
と聞き、オーガスタスは
「ローフィスはそう言ったろう?」
とまたまた、誤魔化した。
ディングレーは顔下げて
「(…単に身分隠して、庶民の酒場へ遊びに行くだけなのに。
王族の体面保つため、これだけ内緒にしないと行けないのって、ホント面倒くさい…)」
と項垂れた。
ローフィスが
「時間が出来たら連絡する」
と言い、オーガスタスも
「その時は俺も付き添う」
と言った後、ウィンク寄越して
「(この場だけの発言だ。
ちゃんとローフィスと二人きりにしてやる)」
と視線で告げられ、ローフィスと二人きりで遊びに行くのが大好きなディングレーは。
オーガスタスの気遣いに、心から嬉しそうに頷いた。
「あの…」
ローランデが囁き、シェイルもが
「大丈夫?」
と尋ねる。
けれどヤッケルは頷くものの、口を開かない。
フィンスがやって来て、ヤッケルの横に立つと項垂れて言う。
「…折れた剣で、それでもまだギュンターが襲いかかって来るから。
だからオーガスタス、足蹴りしたんだね…」
ヤッケルが、頷いて口開く。
「…学年無差別剣の練習試合でも、リーラスが前に転びかけて。
確かオーガスタス剣振り入れて、リーラスは反射で剣振り返して。
剣が合わさったお陰で、リーラスは前に転ばずに済んでた…。
オーガスタス流の親切って、ハード…」
シェイルが直ぐ、口挟む。
「けどギュンター、平気そうにオーガスタスと話してた」
ローランデも頷く。
「オーガスタスが乱暴な親切する相手って、乱暴な扱いに慣れて、平気な人だけだよ?
君や私には決してしないと思う」
ヤッケルは言われ、まだ俯いたまま頷く。
「オーガスタス、ちゃんと相手見て態度使い分けるから。
それも、人気の一部だよな」
フィンスはそこでようやく、放心してるヤッケルに気づく。
「…どこが、引っかかってる?」
「…あれは、無いだろう…」
「…絡み合うどころか、牙剥いて激しく戦ったから?」
フィンスに聞かれ、ヤッケルは思いっきり頷く。
そしてようやく顔を上げ、濃い栗毛を胸に肩に流し、誠実そうな青い瞳をした、端正な面立ちの落ち着ききったフィンスを見、ぼやく。
「ギュンターだけが牙剥いても。
あの妄想は健在。
けどさ…」
シェイルとローランデはその言葉を聞いて、顔見合わせた。
フィンスがため息吐いて、後の言葉を言う。
「…本気のオーガスタスって…めちゃくちゃ格好良かったな…」
ヤッケルは、また無言で頷く。
「あんだけ剣振って格好いいと。
えっちなオーガスタスじゃなく。
戦う姿が最高に格好いいオーガスタスしか、もう思い浮かばない」
ローランデもシェイルも、跳ねた長い赤毛を振り、剣を自在に振り回し的確に凄い速さで剣を振り下ろす、長身のオーガスタスのど迫力な姿を思い返す。
確かに身震いするほど、豪快で格好良かった。
「…でもようやく、私の知ってるオーガスタスで…。
本心は、とてもほっとしてる」
ローランデの言葉に、ヤッケルもフィンスも顔を見合わせる。
シェイルはローランデの言葉に微笑んで、心からの言葉を告げた。
「うん…。
これでようやく、ローランデも恥ずかしい思い、しなくて済むね」
けどヤッケルが言い返す。
「…ここ数週間、ずっと思い描いてたから。
そうそう浮かぶ妄想は、止められない」
シェイルが顔上げると、フィンスまで頷いていて。
ローランデはそれを聞いた途端、また恥ずかしげに頬を赤く染めるので。
シェイルはヤッケルを、睨み付けた。
スフォルツァは三人の美少年が足が釘づけられたように、まだその場に立ちすくんでいて。
促したものかどうかを、思案した。
が、寄って来るアイリスがアスランの前に立って、にこにこ笑いながら
「オーガスタスもギュンターも。
凄く、格好良かったね!」
と言うのを耳にする。
アスランは満面の笑顔で
「はい!」
と頷いてた。
横のマレーが
「貴方が、講師に休講を提案して下さったお陰です」
と微笑んで礼を言うのを聞いた時。
スフォルツァは気が回らなかった自分を恥じ、思わず顔を下げた。
が。
アイリスはにこにこ笑って
「みんなが、一斉に立ち上がって拍手したお陰だよ。
提案しただけでは、休講にならなかった」
なんて謙遜するもんだから、スフォルツァは思わず顔を上げ、愛しのアイリスにもっと惚れ込む自分を意識した。
思わず寄って行き、抱きしめたくなった。
が、気づいたようにアイリスは振り向き、まるで制止するようなちょっときつい濃紺の瞳を向けるので、スフォルツァはがっかりして顔を下げた。
ディングレーは取り巻き達が。
心なしか、がっかりしてるような気がして、顔を見回す。
他の皆は、視線を向けても気づきもしない。
が、デルアンダーだけは視線を向けた時、顔を上げて見つめ返す。
思わず顔を背けたのは、ディングレーの方。
が、王族らしからぬと気づき、こほんと咳払ってまたデルアンダーに視線を戻す。
「感想を聞こうか?
ギュンターは怖い物知らずのようだな?」
デルアンダーは頷き
「引く事をしないんでしょうね」
と言うと、横のテスアッソンも俯いてぼそりと言う。
「…負けん気が、あんなに強いなんて」
横の、デルアンダーといい男を競い合うオルスリードも、俯き気味。
「…と言うか…野獣性…?
オーガスタスはもしかして…戦う時の自分と同様だから…ギュンターを気に入ったんでしょうかね?」
モーリアスが、顔を上げる。
「…と、美貌?」
銀髪美形のシャウルスは、やっぱり美形のモーリアスの発言に、頷いて口開く。
「やっぱり美貌は外せませんよね?」
一番飄々としたラッセンスですら
「ギュンターは色事に関して、やりたい放題でたいそう奔放なんでしょう?」
の発言。
ディングレーはもう少しで
『どーしてお前らは、そっち方面ばっか、考えるんだ!』
と、怒鳴りそうになった。
がそこに。
ローフィスがふらりと姿を見せ。
背後から、噂のオーガスタスとギュンターの二人がやって来る。
取り巻きらは一気に恐縮した。
が、ローフィスはディングレーの目前に立つと
「ホントに弁償は、要らないのか?」
と聞く。
ディングレーは目を見開いてローフィスを凝視した後。
こほん。と咳払い
「どーしてもと言うんなら…」
と言うので、ローフィスの背後でギュンターが顔を下げ、ため息を吐き出した。
そして
「俺が払えるのは、体で出来ることだけだが。
前にも言ったが、ケツを貸すのだけは勘弁してくれ」
と言うので、ディングレーはわなわな震ってもう少しで怒鳴りそうだった。
『お前のその発言が、誤解を生むんだ!!!』
けど横のオーガスタスが、くすくす笑って口開く。
「理由を聞くと、笑えるぞ?」
「?
理由が…あるのか?」
ギュンターが殊勝に項垂れて頷き、そしてその美貌の顔を上げて言い放つ。
「…俺が受けに回ると、たいてい途中でひっくり返そうとして…。
あんたもオーガスタスと同じで、俺に犯されたくないだろう?
なんで…どっちが攻めるかで、絶対殴り合いの喧嘩に移行する。
恩返しのつもりで始めて…。
けど結局喧嘩になったら、恩を返すどころか唾吐く結果になって。
…する、意味が無い」
ディングレーはそれを聞いて、ギュンターを凝視したし。
背後の取り巻きらは一瞬でギュンターの凶暴性に、ぞっとして顔を下げた。
ローフィスだけが
「…言いかけてやめたろう?
何言う気だったんだ?」
と聞いて来るので、ディングレーは再び明るい気分が復活し、寄って耳元で、小声で告げた。
「…分かった。
時間作って付き合う」
とローフィスが普通の声で返事し、背後の取り巻きらは
「?」
と聞き耳立てる中。
ギュンターは平気で尋ねた。
「二人でどっか行くのか?」
ローフィスは頷くと
「ここでは口に出せない、特殊な場所だ」
と言うので、オーガスタスだけは察しが付いて、頷いてると。
ギュンターの視線を浴びた。
オーガスタスはギュンターに見つめられ
「ローフィスは顔が広いし、ツテも多いからな」
とお茶を濁す、謎めいた返答で誤魔化す中。
ギュンターは
「つまりズバリ口に出来ない場所か?」
と聞き、オーガスタスは
「ローフィスはそう言ったろう?」
とまたまた、誤魔化した。
ディングレーは顔下げて
「(…単に身分隠して、庶民の酒場へ遊びに行くだけなのに。
王族の体面保つため、これだけ内緒にしないと行けないのって、ホント面倒くさい…)」
と項垂れた。
ローフィスが
「時間が出来たら連絡する」
と言い、オーガスタスも
「その時は俺も付き添う」
と言った後、ウィンク寄越して
「(この場だけの発言だ。
ちゃんとローフィスと二人きりにしてやる)」
と視線で告げられ、ローフィスと二人きりで遊びに行くのが大好きなディングレーは。
オーガスタスの気遣いに、心から嬉しそうに頷いた。
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