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二年大貴族宿舎の変 フィンスとヤッケルの苦労
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少し前。
ローランデが部屋に戻ると、ヤッケルがセシャルとミーシャと共に、居間にいた。
ヤッケルに
「ここの治療師に、フィンスの部屋の病人を診るよう、頼んどいたぞ?」
と告げられ、微笑んで
「ありがとう」
と告げる。
とりあえずセシャルとミーシャを客室へと案内し、落ち着かせ。
召使いに軽食と飲み物を、客室に運ぶよう告げた後、居間に戻ると。
ヤッケルの姿は消えていた。
廊下に出て、フィンスの部屋の扉を開けると、ヤッケルはそこに居て。
ローランデが姿を見せた途端、慌ててやって来て、背に庇う。
「?」
ローランデがヤッケルの背を見つめ、疑問に思ってると。
ヤッケル正面のレナルアンが
「あ、ローランデも体験ある?
ヤッケル、返事くれないけど」
と言うので
「何の体験?」
と尋ねる。
途端、背を向けてたヤッケルが、慌てた表情して振り向く。
レナルアンはすかさず
「縛られて、したい放題される体験」
と言うので、ローランデは俯き
「縛られた事はあるけど…したい放題は、された事無いな…」
と、今までの経験を思い返し、答える。
レナルアンもヤッケルも、呆けてそう言うローランデを見つめた。
「…初心そうに見えて、意外とコアな趣味なんだ…」
レナルアンに言われ、ローランデは首を傾げる。
「…縄抜け…って、コアな趣味かな?
盗賊に捕まった時の、訓練なんだけど」
その言葉を聞いて、ヤッケルは安心しすぎて脱力し、レナルアンは珍しく言葉を失い、黙り込む。
けど直ぐ
「えっちの時は、縛られないんだ…」
と呟くので、ローランデは目をぱちくりさせ
「なんで、縛られるの?
そんな事されたら何も出来ず、相手の女性を喜ばせられない…よね?」
と、素で答えた。
レナルアンは俯くと
「いや…。
つまりあんたが縛られて、相手の女性があんたをしたい放題、するって意味なんだけど…」
とつぶやくので、ヤッケルは思わずローランデを見る。
ローランデは
「そんな事を私にしたい女性なんて、いるのかな???
普通…男の役割としては、私の方が…相手の女性を喜ばせるんだよね?」
と、少し不安混じりに尋ねる。
ヤッケルはその返答をしようと口開くレナルアンの口を、咄嗟駆け寄り手で塞ぎ、背後に立つローランデに振り向き
「寝室にフィンスがいるから。
見て来たら?」
と告げる。
ローランデは頷くと、まだレナルアンの口を手で塞いでるヤッケルと、強制的に黙らされてるレナルアンの横を、不思議そうに通り脱け、扉の開いてるフィンスの客用寝室へと向かった。
ローランデが扉の向こうに姿を消すと、ヤッケルが手を放す。
レナルアンはほっとしてるヤッケル見
「俺そんな不都合、ローランデに言ってる?」
と聞き、ヤッケルは思いっきり、頷いた。
フィンスは入って来るローランデを見る。
召使いの治療師は、主のローランデに振り向くと
「疲労が色濃い様子です。
ともかく、刺激を抑える湿布と、薬酒を処方したので」
と報告し、ローランデはにっこり微笑み
「ありがとう」
と礼を言う。
背後から
「悪いが、階下にも怪我人がいるから、彼を借りて良いか?」
と声がし、フィンスもローランデも振り向くと、そこにはローフィスが立っていた。
二人はローフィスを見、にっこり微笑む。
「階下はすっかり、カタが付きましたか?」
ローランデが問い、フィンスも
「駆けつけて頂き、本当にありがたい」
と礼を言った。
ローフィスは向かって来る治療師と並び、扉に向かいかけて振り向き
「それは、ディングレーとオーガスタスに言ってやれ」
と素っ気無く告げて、治療師を伴い背を向ける。
ローフィスが扉を出たところで、直ぐ横にいたヤッケルが
「あんたいっつも、シブい捨てゼリフ吐くよな」
と感想を述べ、その向こうのレナルアンも腕組みすると
「シェイルの兄貴だろ?
顔ダケ見てると、『教練』じゃ優男風だけど。
気骨あって格好いいよな」
とヤッケルに同調する。
けれどローフィスは治療師と共に出口に向かいながら
「おだてたって、ナニも出ないぞ」
と言い残し、扉の向こうに姿を消す。
途端、レナルアンとヤッケルは、顔を見合わせた。
が、ローフィスはひょい!と扉から顔だけ出すと
「フィンスとローランデに、グーデン配下の実働部隊は当分怪我で動けないから。
保護した者の割り振り決まるまで、ニ・三日面倒見てくれと、伝えといてくれ」
と言い、フィンスとローランデが揃って隣部屋から姿を見せ
「了承しました」(ローランデ)
「大丈夫です」(フィンス)
とそれぞれ答えた。
ローフィスは
「頼んだ」
と言って姿を消す。
フィンスとローランデが居間にやって来るので、ヤッケルは
「ラナーンは?」
と尋ね、フィンスは微笑んで
「寝てる。
かなり、疲れてたらしい」
と言葉を返した。
レナルアンがフィンスを見て突然
「二人とも、えっちで縛られた事、無いって。
あんたは?フィンス」
と聞き出し、フィンスは一瞬、棒立ちになると。
「君、グーデンの所にまた、戻る気ある?」
と逆に聞く。
その時、半開きの扉が開くと、シュルツが入って来て
「俺のとこの客間もたった今、使えるようにしたから。
一人、引き取る!」
と言いながら顔を上げると。
全員が、シン…として見つめるので、見つめ返し
「ナンか…マズかったか?」
と聞き、ローランデとフィンスが誰をシュルツの部屋に送るかの検討を、小声で相談し始め、ヤッケルが
「レナルアンの爆弾質問を、フィンスが華麗にかわしてた所だ」
と報告し、レナルアンに
「そうなの?
グーデンとこは一度出たら、すっげぇ折檻、覚悟しないと戻れないと思うし。
グーデン以外で面倒見てくれる相手が居れば、俺はそっちの方が良い」
と、遅れてフィンスに返答を返した。
フィンスはローランデとの会話から、顔を上げて頷き
「なら私が卒業まで、君の面倒見る」
と言い、レナルアンが満開の笑顔で口開いた途端
「あ、えっちなサービスは一切、抜きでいいし、逆にそれをされると、父から仕送りを止められて面倒が見られなくなる」
ときっぱり答え、レナルアンはしゅん。
と俯き
「なら、なんで。
恩返しすればいいんだ?」
とぼやいた。
シュルツはヤッケルの横に来ると
「やるな。フィンス」
と小声で告げ、ヤッケルは
「一見、おっとりなのに。
なかなか、凄いだろ?」
と頷いた。
ローランデはフィンスに勧められ、セシャルをシュルツに引き取って貰うことにし、シュルツに告げる。
シュルツは感じ良く微笑み
「じゃ、案内してくる。
君の私室に、勝手に入るけど」
と言い、横のヤッケルに
「俺なんて今日、とっくにローランデの部屋、勝手に出入りしまくり」
と言われ、ローランデに視線を送る。
ローランデにも微笑んで頷かれ
「構わない」
の言葉を聞くと、頷きながら扉に歩み寄り、部屋から出て行った。
ローランデはフィンスに振り向くと
「君の所に、病気かもしれないラナーンと。
それにレナルアンの二人は、大変じゃないのか?」
と聞くけど、フィンスは経験豊富なラナーンとレナルアン、二人共が初心なローランデの手に負えないと、分かりきってるので、首を横に振る。
「全然。
それに、ローフィスも、ニ・三日って言ってたし」
フィンスが言うと、ヤッケルも請け負った。
「グーデン配下の四年が動ける頃まで、ローフィスが彼らを、ここに置いたままには、しておかないさ」
ローランデはローフィスの気配りを思い出し
「それもそうだね…」
とつぶやくので、フィンスもヤッケルもほっとし、フィンスが口開く。
「彼らも、あちこち移動すると、落ち着かないだろうし」
ヤッケルも頷き
「残ってるミーシャに、事情とか聞いてきたら?」
と尋ね、ローランデは頷くと
「また、後で顔を出しに来る」
と言って、部屋から出て行った。
扉が閉まると、レナルアンは
「なんだ、つまんない…」
と独り言のように愚痴り、ヤッケルとフィンスは胸をなで下ろす。
ヤッケルが、心からほっとしつつ
「レナルアンをローランデんとこに置いといたら、ローランデが再起不能に陥って、二学年は大変な事になるとこだった」
とフィンスに告げ、フィンスは
「なんだかんだ言って、二年の士気は、ローランデ次第だからね」
と同調しつつ、頷き返した。
ローランデが部屋に戻ると、ヤッケルがセシャルとミーシャと共に、居間にいた。
ヤッケルに
「ここの治療師に、フィンスの部屋の病人を診るよう、頼んどいたぞ?」
と告げられ、微笑んで
「ありがとう」
と告げる。
とりあえずセシャルとミーシャを客室へと案内し、落ち着かせ。
召使いに軽食と飲み物を、客室に運ぶよう告げた後、居間に戻ると。
ヤッケルの姿は消えていた。
廊下に出て、フィンスの部屋の扉を開けると、ヤッケルはそこに居て。
ローランデが姿を見せた途端、慌ててやって来て、背に庇う。
「?」
ローランデがヤッケルの背を見つめ、疑問に思ってると。
ヤッケル正面のレナルアンが
「あ、ローランデも体験ある?
ヤッケル、返事くれないけど」
と言うので
「何の体験?」
と尋ねる。
途端、背を向けてたヤッケルが、慌てた表情して振り向く。
レナルアンはすかさず
「縛られて、したい放題される体験」
と言うので、ローランデは俯き
「縛られた事はあるけど…したい放題は、された事無いな…」
と、今までの経験を思い返し、答える。
レナルアンもヤッケルも、呆けてそう言うローランデを見つめた。
「…初心そうに見えて、意外とコアな趣味なんだ…」
レナルアンに言われ、ローランデは首を傾げる。
「…縄抜け…って、コアな趣味かな?
盗賊に捕まった時の、訓練なんだけど」
その言葉を聞いて、ヤッケルは安心しすぎて脱力し、レナルアンは珍しく言葉を失い、黙り込む。
けど直ぐ
「えっちの時は、縛られないんだ…」
と呟くので、ローランデは目をぱちくりさせ
「なんで、縛られるの?
そんな事されたら何も出来ず、相手の女性を喜ばせられない…よね?」
と、素で答えた。
レナルアンは俯くと
「いや…。
つまりあんたが縛られて、相手の女性があんたをしたい放題、するって意味なんだけど…」
とつぶやくので、ヤッケルは思わずローランデを見る。
ローランデは
「そんな事を私にしたい女性なんて、いるのかな???
普通…男の役割としては、私の方が…相手の女性を喜ばせるんだよね?」
と、少し不安混じりに尋ねる。
ヤッケルはその返答をしようと口開くレナルアンの口を、咄嗟駆け寄り手で塞ぎ、背後に立つローランデに振り向き
「寝室にフィンスがいるから。
見て来たら?」
と告げる。
ローランデは頷くと、まだレナルアンの口を手で塞いでるヤッケルと、強制的に黙らされてるレナルアンの横を、不思議そうに通り脱け、扉の開いてるフィンスの客用寝室へと向かった。
ローランデが扉の向こうに姿を消すと、ヤッケルが手を放す。
レナルアンはほっとしてるヤッケル見
「俺そんな不都合、ローランデに言ってる?」
と聞き、ヤッケルは思いっきり、頷いた。
フィンスは入って来るローランデを見る。
召使いの治療師は、主のローランデに振り向くと
「疲労が色濃い様子です。
ともかく、刺激を抑える湿布と、薬酒を処方したので」
と報告し、ローランデはにっこり微笑み
「ありがとう」
と礼を言う。
背後から
「悪いが、階下にも怪我人がいるから、彼を借りて良いか?」
と声がし、フィンスもローランデも振り向くと、そこにはローフィスが立っていた。
二人はローフィスを見、にっこり微笑む。
「階下はすっかり、カタが付きましたか?」
ローランデが問い、フィンスも
「駆けつけて頂き、本当にありがたい」
と礼を言った。
ローフィスは向かって来る治療師と並び、扉に向かいかけて振り向き
「それは、ディングレーとオーガスタスに言ってやれ」
と素っ気無く告げて、治療師を伴い背を向ける。
ローフィスが扉を出たところで、直ぐ横にいたヤッケルが
「あんたいっつも、シブい捨てゼリフ吐くよな」
と感想を述べ、その向こうのレナルアンも腕組みすると
「シェイルの兄貴だろ?
顔ダケ見てると、『教練』じゃ優男風だけど。
気骨あって格好いいよな」
とヤッケルに同調する。
けれどローフィスは治療師と共に出口に向かいながら
「おだてたって、ナニも出ないぞ」
と言い残し、扉の向こうに姿を消す。
途端、レナルアンとヤッケルは、顔を見合わせた。
が、ローフィスはひょい!と扉から顔だけ出すと
「フィンスとローランデに、グーデン配下の実働部隊は当分怪我で動けないから。
保護した者の割り振り決まるまで、ニ・三日面倒見てくれと、伝えといてくれ」
と言い、フィンスとローランデが揃って隣部屋から姿を見せ
「了承しました」(ローランデ)
「大丈夫です」(フィンス)
とそれぞれ答えた。
ローフィスは
「頼んだ」
と言って姿を消す。
フィンスとローランデが居間にやって来るので、ヤッケルは
「ラナーンは?」
と尋ね、フィンスは微笑んで
「寝てる。
かなり、疲れてたらしい」
と言葉を返した。
レナルアンがフィンスを見て突然
「二人とも、えっちで縛られた事、無いって。
あんたは?フィンス」
と聞き出し、フィンスは一瞬、棒立ちになると。
「君、グーデンの所にまた、戻る気ある?」
と逆に聞く。
その時、半開きの扉が開くと、シュルツが入って来て
「俺のとこの客間もたった今、使えるようにしたから。
一人、引き取る!」
と言いながら顔を上げると。
全員が、シン…として見つめるので、見つめ返し
「ナンか…マズかったか?」
と聞き、ローランデとフィンスが誰をシュルツの部屋に送るかの検討を、小声で相談し始め、ヤッケルが
「レナルアンの爆弾質問を、フィンスが華麗にかわしてた所だ」
と報告し、レナルアンに
「そうなの?
グーデンとこは一度出たら、すっげぇ折檻、覚悟しないと戻れないと思うし。
グーデン以外で面倒見てくれる相手が居れば、俺はそっちの方が良い」
と、遅れてフィンスに返答を返した。
フィンスはローランデとの会話から、顔を上げて頷き
「なら私が卒業まで、君の面倒見る」
と言い、レナルアンが満開の笑顔で口開いた途端
「あ、えっちなサービスは一切、抜きでいいし、逆にそれをされると、父から仕送りを止められて面倒が見られなくなる」
ときっぱり答え、レナルアンはしゅん。
と俯き
「なら、なんで。
恩返しすればいいんだ?」
とぼやいた。
シュルツはヤッケルの横に来ると
「やるな。フィンス」
と小声で告げ、ヤッケルは
「一見、おっとりなのに。
なかなか、凄いだろ?」
と頷いた。
ローランデはフィンスに勧められ、セシャルをシュルツに引き取って貰うことにし、シュルツに告げる。
シュルツは感じ良く微笑み
「じゃ、案内してくる。
君の私室に、勝手に入るけど」
と言い、横のヤッケルに
「俺なんて今日、とっくにローランデの部屋、勝手に出入りしまくり」
と言われ、ローランデに視線を送る。
ローランデにも微笑んで頷かれ
「構わない」
の言葉を聞くと、頷きながら扉に歩み寄り、部屋から出て行った。
ローランデはフィンスに振り向くと
「君の所に、病気かもしれないラナーンと。
それにレナルアンの二人は、大変じゃないのか?」
と聞くけど、フィンスは経験豊富なラナーンとレナルアン、二人共が初心なローランデの手に負えないと、分かりきってるので、首を横に振る。
「全然。
それに、ローフィスも、ニ・三日って言ってたし」
フィンスが言うと、ヤッケルも請け負った。
「グーデン配下の四年が動ける頃まで、ローフィスが彼らを、ここに置いたままには、しておかないさ」
ローランデはローフィスの気配りを思い出し
「それもそうだね…」
とつぶやくので、フィンスもヤッケルもほっとし、フィンスが口開く。
「彼らも、あちこち移動すると、落ち着かないだろうし」
ヤッケルも頷き
「残ってるミーシャに、事情とか聞いてきたら?」
と尋ね、ローランデは頷くと
「また、後で顔を出しに来る」
と言って、部屋から出て行った。
扉が閉まると、レナルアンは
「なんだ、つまんない…」
と独り言のように愚痴り、ヤッケルとフィンスは胸をなで下ろす。
ヤッケルが、心からほっとしつつ
「レナルアンをローランデんとこに置いといたら、ローランデが再起不能に陥って、二学年は大変な事になるとこだった」
とフィンスに告げ、フィンスは
「なんだかんだ言って、二年の士気は、ローランデ次第だからね」
と同調しつつ、頷き返した。
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