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救い出された美少年ハウリィ
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ギュンターが、振り向くより先に。
背後の小柄な美少年は、ギュンターの背の服の裾を握りしめ…。
振り向くと、その可愛い顔が見上げてた。
「あの…………」
声が震えていて、ギュンターはむっつりして言った。
「俺はあいつと違うぞ。
嫌がる相手を、どうこうする気は無い」
が、美少年はまだ何か言いたげに、その大きな淡いブルーの瞳を見開いていた。
「…あの……僕……僕戻って……。
あの…人を追いかけないと」
ギュンターがぼそり。とつぶやく。
「あいつとしたいのか?」
が美少年が辛そうに目を見開き、眉を思い切り寄せたので、ギュンターは言った。
「したくない事を無理にするな」
けど美少年は、泣き出しそうだった。
「だって…だってそうしないと貴方が……貴方が退学に………」
ギュンターは吐息を吐いて、つぶやく。
「そっちは気にするな。
俺が望んでした事だ。
お前のせいにする気は無いから、安心しろ」
「だっ……て………」
とうとうその美少年の瞳からは、大粒の涙がぽろぽろ滴った。
ギュンターはまた吐息を吐くと、後ろポケットからハンケチを引き出し、一度はたいて伸ばしてから、美少年に差し出す。
美少年は差し出された白いハンケチを見、けど背の高いギュンターを見上げ、しゃくり上げた。
ギュンターは一つ吐息を吐くと屈み、そのハンケチで美少年の頬の涙を拭う。
「僕…は、大丈夫です…。
は…じめてじゃ…無いし……」
「あいつと?」
美少年は首を横に振る。
「じゃ誰と?
惚れた男がいるのか?」
が、美少年はやっぱり首を、横に振った。
俯き、項垂れる顔でギュンターは思い当たってつぶやく。
「………犯されるのが?」
美少年は一瞬震え…そしてそれを、飲み込むように抑え、囁いた。
「……ええ」
かっ!と炎に包まれたように熱く感じ…美少年…ハウリィは、顔を上げた。
表情の余り無い美貌のその人が…眉を寄せ、怒りの表情を見せていて…ハウリィは戸惑った。
「…そいつはここにいるのか?」
「?」
ハウリィは首を横に、振った。
「昔…住んでいた領地にいたごろつきはもう…会わないし…。
それに…母の再婚相手の義兄も…。
ここに来たから、もう会っていません………」
ギュンターはまだ、きつい表情をしたが言った。
「つまり…そのごろつきや義兄の代わりにあいつが…つけ込んだんだな?」
ハウリィは思い出して震えた。
痛みと恐怖だけ、だった。
あの行為のもたらすものは。
そして吐き気。
ギュンターはぐい!とか細い美少年の手首を握る。
「…いいか…!奴がまた現れたら直ぐ逃げろ!
逃げて…例えどんな時でもいいから、俺の所に来るか!
どこか安全な所に鍵を掛けて籠もり、大声で助けを呼べ!
出来るか?!」
ハウリィは震えながら頷く。
「助けを呼んだら、三年のギュンターを連れて来て!と叫べ。
解ったか?!」
「…だって…!」
「解ったのか?!」
その顔が、あんまり真剣で、ハウリィは思わず頷いた。
それを見てその美貌の三年、ギュンターは。
すっと屈む背を伸ばし、そっと、ハウリィの手首を放す。
その表情は無表情で、素晴らしい美貌だった。
「名前を、聞いて無かったな?」
顔を傾け尋ねられると、ハウリィはそっと告げた。
「ハウリィ」
「学年は?」
「一年です」
ギュンターは、頷いた。
そしてそっ…と背に手を当て、促す。
まさか…と思ったのに、ギュンターはハウリィと共に歩き、尋ねる。
「どこに行く気だったんだ?」
「あの………第三講義室へ…。
僕…本を忘れて取りに宿舎へ戻って…」
「本は?」
ハウリィは途端、どこに落ちたのか。と、地面をきょろきょろと探した。
建物近くに落ちているのを見つけ、ギュンターが屈んで拾う。
ハウリィに無言で手渡し、そしてまた、背に手を当てる。
ハウリィは横を並んで歩く、長身の三年生を、幾度も見上げた。
けれどギュンターは表情を崩さず…済ましきって。
見事な美貌を前に向けたまま、無言で歩く。
廊下を抜け…そして講義室の、扉をがらっ!と無造作に開け、壇上の講師がびっくりして視線を注いでも、表情を変えずに。
「彼を、送って来た」
そう言うと、講師は頷く。
「自分の席に着いて」
言われて、ギュンターはハウリィの背をそっと押して促し、ハウリィは本を抱え、段を上りながらギュンターに振り向く。
壇上の講師が、戸口に立つギュンターに告げた。
「君は、授業じゃなかったのか?」
「そうだが、サボってた」
「何があったのか、聞いていいのか?」
講師にそう尋ねられて、ハウリィは階段を上る足を一瞬、止めた。
本を胸に抱え、背を屈め。
講義室中の生徒が、ハウリィと壇上の講師。
そして三年、金髪美貌の編入生を、一斉に見つめていた。
ギュンターは足を止めるハウリィをチラ。と見上げ、講師に囁く。
「聞きたかったら俺を呼び出せ」
講師は頷く。
「では放課後、講師館の応接間で。
ギュンター、君は授業に戻れ」
ギュンターは目を丸くした。
「名を、覚えてくれてるのか?」
講師は肩を竦めた。
「君くらい目立つ編入生は、他にいないからな」
どっ!
講義室の、皆が一斉に笑った。
ギュンターが講師を見ると、彼は再び、肩を竦めた。
背後の小柄な美少年は、ギュンターの背の服の裾を握りしめ…。
振り向くと、その可愛い顔が見上げてた。
「あの…………」
声が震えていて、ギュンターはむっつりして言った。
「俺はあいつと違うぞ。
嫌がる相手を、どうこうする気は無い」
が、美少年はまだ何か言いたげに、その大きな淡いブルーの瞳を見開いていた。
「…あの……僕……僕戻って……。
あの…人を追いかけないと」
ギュンターがぼそり。とつぶやく。
「あいつとしたいのか?」
が美少年が辛そうに目を見開き、眉を思い切り寄せたので、ギュンターは言った。
「したくない事を無理にするな」
けど美少年は、泣き出しそうだった。
「だって…だってそうしないと貴方が……貴方が退学に………」
ギュンターは吐息を吐いて、つぶやく。
「そっちは気にするな。
俺が望んでした事だ。
お前のせいにする気は無いから、安心しろ」
「だっ……て………」
とうとうその美少年の瞳からは、大粒の涙がぽろぽろ滴った。
ギュンターはまた吐息を吐くと、後ろポケットからハンケチを引き出し、一度はたいて伸ばしてから、美少年に差し出す。
美少年は差し出された白いハンケチを見、けど背の高いギュンターを見上げ、しゃくり上げた。
ギュンターは一つ吐息を吐くと屈み、そのハンケチで美少年の頬の涙を拭う。
「僕…は、大丈夫です…。
は…じめてじゃ…無いし……」
「あいつと?」
美少年は首を横に振る。
「じゃ誰と?
惚れた男がいるのか?」
が、美少年はやっぱり首を、横に振った。
俯き、項垂れる顔でギュンターは思い当たってつぶやく。
「………犯されるのが?」
美少年は一瞬震え…そしてそれを、飲み込むように抑え、囁いた。
「……ええ」
かっ!と炎に包まれたように熱く感じ…美少年…ハウリィは、顔を上げた。
表情の余り無い美貌のその人が…眉を寄せ、怒りの表情を見せていて…ハウリィは戸惑った。
「…そいつはここにいるのか?」
「?」
ハウリィは首を横に、振った。
「昔…住んでいた領地にいたごろつきはもう…会わないし…。
それに…母の再婚相手の義兄も…。
ここに来たから、もう会っていません………」
ギュンターはまだ、きつい表情をしたが言った。
「つまり…そのごろつきや義兄の代わりにあいつが…つけ込んだんだな?」
ハウリィは思い出して震えた。
痛みと恐怖だけ、だった。
あの行為のもたらすものは。
そして吐き気。
ギュンターはぐい!とか細い美少年の手首を握る。
「…いいか…!奴がまた現れたら直ぐ逃げろ!
逃げて…例えどんな時でもいいから、俺の所に来るか!
どこか安全な所に鍵を掛けて籠もり、大声で助けを呼べ!
出来るか?!」
ハウリィは震えながら頷く。
「助けを呼んだら、三年のギュンターを連れて来て!と叫べ。
解ったか?!」
「…だって…!」
「解ったのか?!」
その顔が、あんまり真剣で、ハウリィは思わず頷いた。
それを見てその美貌の三年、ギュンターは。
すっと屈む背を伸ばし、そっと、ハウリィの手首を放す。
その表情は無表情で、素晴らしい美貌だった。
「名前を、聞いて無かったな?」
顔を傾け尋ねられると、ハウリィはそっと告げた。
「ハウリィ」
「学年は?」
「一年です」
ギュンターは、頷いた。
そしてそっ…と背に手を当て、促す。
まさか…と思ったのに、ギュンターはハウリィと共に歩き、尋ねる。
「どこに行く気だったんだ?」
「あの………第三講義室へ…。
僕…本を忘れて取りに宿舎へ戻って…」
「本は?」
ハウリィは途端、どこに落ちたのか。と、地面をきょろきょろと探した。
建物近くに落ちているのを見つけ、ギュンターが屈んで拾う。
ハウリィに無言で手渡し、そしてまた、背に手を当てる。
ハウリィは横を並んで歩く、長身の三年生を、幾度も見上げた。
けれどギュンターは表情を崩さず…済ましきって。
見事な美貌を前に向けたまま、無言で歩く。
廊下を抜け…そして講義室の、扉をがらっ!と無造作に開け、壇上の講師がびっくりして視線を注いでも、表情を変えずに。
「彼を、送って来た」
そう言うと、講師は頷く。
「自分の席に着いて」
言われて、ギュンターはハウリィの背をそっと押して促し、ハウリィは本を抱え、段を上りながらギュンターに振り向く。
壇上の講師が、戸口に立つギュンターに告げた。
「君は、授業じゃなかったのか?」
「そうだが、サボってた」
「何があったのか、聞いていいのか?」
講師にそう尋ねられて、ハウリィは階段を上る足を一瞬、止めた。
本を胸に抱え、背を屈め。
講義室中の生徒が、ハウリィと壇上の講師。
そして三年、金髪美貌の編入生を、一斉に見つめていた。
ギュンターは足を止めるハウリィをチラ。と見上げ、講師に囁く。
「聞きたかったら俺を呼び出せ」
講師は頷く。
「では放課後、講師館の応接間で。
ギュンター、君は授業に戻れ」
ギュンターは目を丸くした。
「名を、覚えてくれてるのか?」
講師は肩を竦めた。
「君くらい目立つ編入生は、他にいないからな」
どっ!
講義室の、皆が一斉に笑った。
ギュンターが講師を見ると、彼は再び、肩を竦めた。
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