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ローフィスの苦難
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シェイルはフィンスが汲んできてくれた湯桶に布を浸し、ついたてで隠れて体を拭く。
オーガスタスが手渡してくれた、ローフィスのシャツをもらい、着る。
思い出したくなくて、シェイルは極力グーデンに拉致されていた間の事を、脳裏から閉め出した。
ついたてから出ると、オーガスタスに教えて貰った場所からフィンスとヤッケルは簡易ベットを取り出し、開いて置いてた。
布団と枕を投げられ、ヤッケルとフィンスはそれを抱き抱えて、一つしか無い簡易ベットを二人とも、じっ…と見てる。
オーガスタスは大きなソファにどっか!と腰下ろして二人に言う。
「俺はそれ(簡易ベット)足がはみ出すからこっちを使う。
お前ら二人はそこで、シェイルはローフィスの横に潜り込め」
オーガスタスにそう言われたシェイルは、凄く嬉しそうに微笑んだ。
ヤッケルとフィンスは顔を見合わせる。
ヤッケルがこそっと小声でフィンスに耳打ちする。
「…兄貴のローフィスと寝たい。
ってあれ…冗談じゃ無く、凄くマジなんだ」
フィンスも頷く。
「私はいとこですら、無理」
ヤッケルも頷く。
「俺も全然、考えらんない」
けどシェイルはローフィスの横に潜り込み、寝ているローフィスに抱きつく。
ローフィスは目を開けてシェイルを見…そして呻く。
「…薬草…取ってくれる?」
シェイルは心配そうに聞き返す。
「痛み止め?」
ローフィスが頷くので、シェイルは寝台から出ると、煎じた薬草と水の入った瓶を、コップに注いで寝台に持って帰る。
上体起こしたローフィスに、コップと薬草を差し出し、そっと尋ねる。
「…痛む?」
「…少しな…。
貼り薬が良く効いてるから。
かなりいいが…」
そう言って、一気に薬草を口に入れ、水を飲み干す。
「無茶するから…」
シェイルに囁かれ、ローフィスは言葉を返す。
「だってお前、叫んだろう?俺の名前」
「だって来てくれるなんて思ってなかった」
「………………」
心配げに見上げるシェイルは色白の肌の中、唇だけは真っ赤で…。
一瞬顔を傾けて口づけしそうになって、思い直し…。
ローフィスは助けを求めるように、ソファに座るオーガスタスを見た。
オーガスタスはローフィスが目覚めたので、酒の隠し場所を聞こうと振り向き…。
が、ローフィスに困ったように見つめられ、目を見開く。
『ホントか?』
声は出ず、口だけ動かすオーガスタスに、ローフィスも習う。
『だからマズいんだ。こんな状況は!』
ヤッケルとフィンスは、二人の様子に顔を見合わす。
オーガスタスは額に手を当てて、難問の回答を探して沈黙し、ローフィスはずっとオーガスタスを
“助けろ”
と見つめ続ける。
オーガスタスはため息と共に立ち上がると、ローフィスの机の引き出しを開けて一つの薬草の包みを取り出し、寝台に歩み寄ってそれをローフィスに手渡す。
ローフィスはその包みの中の薬草が
“馬でも寝る、超強力睡眠薬”
と知って、オーガスタスにまた、唇だけ動かして告げる。
“これが返事か?!”
オーガスタスは無言で頷き、ローフィスはオーガスタスを睨むと、一気に粉末を口に入れ、水で喉に流し込んだ。
二分後、ローフィスは気絶したみたいに爆睡し…オーガスタスに頷かれてシェイルはまた、ローフィスに抱きついて…凄く安心した表情で、眠りについた。
フィンスとヤッケルは、ソファに戻るオーガスタスに小声で聞く。
「…どうして分かるんです?」(フィンス)
「唇の動きだけで会話ってありえない」(ヤッケル)
オーガスタスは二人に振り向く。
「唇の動きだけで分かる訳無いだろう?
状況を読んでの、推測だ」
そう言った後、うんと声を潜めて囁く。
「正常な男なら、犯されかけた後の色っぽいとびきりの美少年に抱きつかれたら、勃つのが普通だろ?」
「……………それが、マズいの?」
問うヤッケルに、フィンスが囁く。
「マズいでしょう…あばら4カ所ヒビ入ってたら」
(結局医療室での診察で、4カ所と判明)
「…………そうか」
オーガスタスも、頷く。
「怪我してなかったら俺だってローフィスに“腹くくれ”
と言って、シェイルと二人きりにしてやる」
フィンスが頷き、ヤッケルも…頷きかけて、小声で尋ねた。
「…シェイルはグーデンよりローフィスがいいのに…。
グーデンは拉致してでも欲しがり、ローフィスは…何で避けてるの?」
オーガスタスは沈黙した後、言った。
「兄貴として誓ったからだとさ。
“どんなものからもシェイルを守る”
…だがシェイルに惚れてる自分は兄貴してられないから…兄貴出来ない自分からも、シェイルを守るんだと。
…言葉にすると、途方も無く馬鹿馬鹿しいな」
オーガスタスはそう言って、横たわって布団を肩に引き上げる。
「…………………………」
「…ローフィス実は…シェイルに本気なんだ…」
フィンスが愕然としてつぶやく中、ヤッケルが言った。
「馬鹿馬鹿しいことを大真面目で頑張るローフィスって、格好いい」
「……………………………………………………………………………」
フィンスは暫く、そう言って背を向け、眠りに入るヤッケルの背中を、沈黙して見続けた。
オーガスタスが手渡してくれた、ローフィスのシャツをもらい、着る。
思い出したくなくて、シェイルは極力グーデンに拉致されていた間の事を、脳裏から閉め出した。
ついたてから出ると、オーガスタスに教えて貰った場所からフィンスとヤッケルは簡易ベットを取り出し、開いて置いてた。
布団と枕を投げられ、ヤッケルとフィンスはそれを抱き抱えて、一つしか無い簡易ベットを二人とも、じっ…と見てる。
オーガスタスは大きなソファにどっか!と腰下ろして二人に言う。
「俺はそれ(簡易ベット)足がはみ出すからこっちを使う。
お前ら二人はそこで、シェイルはローフィスの横に潜り込め」
オーガスタスにそう言われたシェイルは、凄く嬉しそうに微笑んだ。
ヤッケルとフィンスは顔を見合わせる。
ヤッケルがこそっと小声でフィンスに耳打ちする。
「…兄貴のローフィスと寝たい。
ってあれ…冗談じゃ無く、凄くマジなんだ」
フィンスも頷く。
「私はいとこですら、無理」
ヤッケルも頷く。
「俺も全然、考えらんない」
けどシェイルはローフィスの横に潜り込み、寝ているローフィスに抱きつく。
ローフィスは目を開けてシェイルを見…そして呻く。
「…薬草…取ってくれる?」
シェイルは心配そうに聞き返す。
「痛み止め?」
ローフィスが頷くので、シェイルは寝台から出ると、煎じた薬草と水の入った瓶を、コップに注いで寝台に持って帰る。
上体起こしたローフィスに、コップと薬草を差し出し、そっと尋ねる。
「…痛む?」
「…少しな…。
貼り薬が良く効いてるから。
かなりいいが…」
そう言って、一気に薬草を口に入れ、水を飲み干す。
「無茶するから…」
シェイルに囁かれ、ローフィスは言葉を返す。
「だってお前、叫んだろう?俺の名前」
「だって来てくれるなんて思ってなかった」
「………………」
心配げに見上げるシェイルは色白の肌の中、唇だけは真っ赤で…。
一瞬顔を傾けて口づけしそうになって、思い直し…。
ローフィスは助けを求めるように、ソファに座るオーガスタスを見た。
オーガスタスはローフィスが目覚めたので、酒の隠し場所を聞こうと振り向き…。
が、ローフィスに困ったように見つめられ、目を見開く。
『ホントか?』
声は出ず、口だけ動かすオーガスタスに、ローフィスも習う。
『だからマズいんだ。こんな状況は!』
ヤッケルとフィンスは、二人の様子に顔を見合わす。
オーガスタスは額に手を当てて、難問の回答を探して沈黙し、ローフィスはずっとオーガスタスを
“助けろ”
と見つめ続ける。
オーガスタスはため息と共に立ち上がると、ローフィスの机の引き出しを開けて一つの薬草の包みを取り出し、寝台に歩み寄ってそれをローフィスに手渡す。
ローフィスはその包みの中の薬草が
“馬でも寝る、超強力睡眠薬”
と知って、オーガスタスにまた、唇だけ動かして告げる。
“これが返事か?!”
オーガスタスは無言で頷き、ローフィスはオーガスタスを睨むと、一気に粉末を口に入れ、水で喉に流し込んだ。
二分後、ローフィスは気絶したみたいに爆睡し…オーガスタスに頷かれてシェイルはまた、ローフィスに抱きついて…凄く安心した表情で、眠りについた。
フィンスとヤッケルは、ソファに戻るオーガスタスに小声で聞く。
「…どうして分かるんです?」(フィンス)
「唇の動きだけで会話ってありえない」(ヤッケル)
オーガスタスは二人に振り向く。
「唇の動きだけで分かる訳無いだろう?
状況を読んでの、推測だ」
そう言った後、うんと声を潜めて囁く。
「正常な男なら、犯されかけた後の色っぽいとびきりの美少年に抱きつかれたら、勃つのが普通だろ?」
「……………それが、マズいの?」
問うヤッケルに、フィンスが囁く。
「マズいでしょう…あばら4カ所ヒビ入ってたら」
(結局医療室での診察で、4カ所と判明)
「…………そうか」
オーガスタスも、頷く。
「怪我してなかったら俺だってローフィスに“腹くくれ”
と言って、シェイルと二人きりにしてやる」
フィンスが頷き、ヤッケルも…頷きかけて、小声で尋ねた。
「…シェイルはグーデンよりローフィスがいいのに…。
グーデンは拉致してでも欲しがり、ローフィスは…何で避けてるの?」
オーガスタスは沈黙した後、言った。
「兄貴として誓ったからだとさ。
“どんなものからもシェイルを守る”
…だがシェイルに惚れてる自分は兄貴してられないから…兄貴出来ない自分からも、シェイルを守るんだと。
…言葉にすると、途方も無く馬鹿馬鹿しいな」
オーガスタスはそう言って、横たわって布団を肩に引き上げる。
「…………………………」
「…ローフィス実は…シェイルに本気なんだ…」
フィンスが愕然としてつぶやく中、ヤッケルが言った。
「馬鹿馬鹿しいことを大真面目で頑張るローフィスって、格好いい」
「……………………………………………………………………………」
フィンスは暫く、そう言って背を向け、眠りに入るヤッケルの背中を、沈黙して見続けた。
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