41 / 171
殴るディングレー
しおりを挟む結局ディングレーが、シェイルを教室まで送る約束をし、ヤッケルとフィンスは一年宿舎に授業の用意で先に戻る。
ディングレーはローフィスの側から離れたがらないシェイルを見た。
が、ローフィスは言う。
「ちゃんと授業出ないと、家に連れて帰る」
シェイルはため息を吐く。
そして立ち上がった。
ディングレーはシェイルと、一年宿舎に入る。
王族のディングレーが来ただけで、入って直ぐの食堂内にいた一年達は、ざわめき渡った。
しかも、シェイルを連れて廊下に入り、一般宿舎へと足を運ぶ…。
廊下を歩いてた生徒は皆、ディングレーの姿に目を見開き、王族の威厳に思わず道を空ける。
シェイルはつい、横のディングレーを見上げた。
見た事無い程、引き締まった表情。
「(…これが、王族してる時の…表情?)」
ディングレーはふと気づいて、視線を上げる。
一年でも長身で金髪。
顔は綺麗系だが目付きが悪い奴が前からやって来て、その途端シェイルが目を伏せるのを見、そいつが横を通り過ぎ様、がっ!と突然、腕を掴んだ。
掴まれた少年は長い真っ直ぐの金髪を振って、唐突に乱暴を働くディングレーに、振り向く。
「…もしかして、ローズベルタか?」
ディングレーに鋭い、狼のような青の瞳で見据えられ、ローズベルタは一瞬気圧され…静かに頷く。
「…グーデンに、伝えとけ。
俺は帰ってきて、当分シェイルの護衛に付くとな!
もう一つ…お前、ここの宿舎でデカいツラしてるそうだな?
…二度と、ヤッケルに絡むな!
勿論、シェイルにもだ!
もししたら…」
ローズベルタはあんまり凄い迫力で睨み付けられ、ごくり…と唾を飲み込む。
「…お前の顔が変わるまで殴ってやるからそう思え。
俺はグーデンと違って、喧嘩は大好きだ」
そして胸ぐらを放し、怒鳴る。
「覚えとけ!
お前らも!
こいつに酷い目に合わされたらいつでも俺に言いに来い!!!
俺が来られなかったら俺の取り巻きが!
こいつを絞める!」
ヤッケルは何事かと、部屋の扉を開けて廊下を伺った時。
ディングレーの咆吼に廊下にいた一年らが、雄叫びで応えるのを見て、ぎょっ!とした。
ぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!
ディングレーはそれに応えるように拳を振り上げ、見てるヤッケルに気づき、シェイルに
「あの部屋か?」
と尋ねた。
シェイルは呆けてディングレーを見上げていたけど…聞かれて慌てて、頷く。
が、ローズベルタは捨て台詞をこそっと囁く。
「…正義の味方ヅラしやがって…。
どうせする事は、グーデンと一緒。
シェイルを押し倒して、掘りまくってる癖に」
ガッッッッ!!!
突然ディングレーは拳を振り切り、ローズベルタの顎に綺麗に決まって、ローズベルタはその勢いで壁に吹っ飛ぶ。
ダンっ!!!
廊下の一年らは呆けてそれを見つめ…ローズベルタが口を切って血を垂らすのを見た。
「…口の利き方に気をつけろ!!!
今度シェイルを侮辱しやがったら、こんなもんじゃ済まないからな!!!」
全員が、毛を逆立てて怒鳴る、野生の狼を彷彿とさせる程のど・迫力のディングレーを見て、口を閉じる。
シェイルが、ディングレーの衣服の裾をこっそり引いて部屋へと招き入れ…ディングレーが中へ入って扉が閉まると。
全員一斉にしゃべり出す。
「…グーデンの、弟?!
マジで?!」
「王族って、すっげぇ迫力!!!」
「手が出るの、早い…。
変なこと言ったら直ぐ殴られるんだな…」
「あのローズベルタが…まだ、立ち上がれないぜ…」
壁にもたれかかったまま、痛みに耐えていたローズベルタは…自分が虐めまくった奴らに見られ、必死で身を起こし、その場を…足元をフラつかせて、去って行った。
「…爽快!」
「あいつ、ここじゃフィンスを別にして一番喧嘩強いって、威張ってただけに。
めちゃ、いい気味」
「全く同感」
室内にディングレーが入ると、ヤッケルに目を見開いて見られ…ディングレーは言う。
「だってお前…食べてる時、ローズベルタって金髪の野郎が、シェイルの朝食部屋に持って行く邪魔したって。
ぼやいてたろう?」
シェイルがヤッケルを見ると。
ヤッケルは顔を下げてつぶやく。
「…一緒に食べてた、フィンスに言ったんだけど…」
ディングレーはヤッケルを見て、言葉を返す。
「…何か?
俺がフィンスの活躍シーン、かっさらって不満か?
手間省こうとした、好意なんだが」
ヤッケルが顔を上げて、今度は呆け…シェイルが思わずつぶやく。
「思ってる事、言ったら?」
「…会話が通じないのって、王族だから?
俺、不満だなんて口にしてない…」
シェイルはため息を吐いた。
「…ディングレーだから。
ディングレー、人の気持ち汲み取るの、苦手」
「あっ…そう」
「一見怖そうでも。
言わないよりちゃんと自分の気持ち言うのが、ディングレーにとって親切だって。
ローフィスが言ってた。
でも気持ち、分かる。
王族してるディングレーって、凄く怖い」
「…………………怖い?」
ディングレーに聞かれ、シェイルのみならず、ヤッケルまでもが、頷いた。
その後、教室まで送り届けられてる間、ヤッケルはディングレーに聞かれた。
「…どこが…どの辺が怖い?」
ヤッケルは表情はそのままクールだけど、口調がヨタってて、気にしてるディングレーにため息吐くと囁く。
「…ってか、凄い迫力?
威厳ありすぎて、近寄り難い?」
「…普通それが、王族だし…。
それ出来ないと『王族の出来損ない』と一族の者に馬鹿にされる」
ヤッケルはディングレーの…やっぱ迫力ある男前の顔見て呻いた。
「…そうなんだ………」
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
