若き騎士達の危険な日常

あーす。

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殴るディングレー

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 結局ディングレーが、シェイルを教室まで送る約束をし、ヤッケルとフィンスは一年宿舎に授業の用意で先に戻る。

ディングレーはローフィスの側から離れたがらないシェイルを見た。
が、ローフィスは言う。

「ちゃんと授業出ないと、家に連れて帰る」

シェイルはため息を吐く。
そして立ち上がった。


ディングレーはシェイルと、一年宿舎に入る。
王族のディングレーが来ただけで、入って直ぐの食堂内にいた一年達は、ざわめき渡った。

しかも、シェイルを連れて廊下に入り、一般宿舎へと足を運ぶ…。

廊下を歩いてた生徒は皆、ディングレーの姿に目を見開き、王族の威厳に思わず道を空ける。
シェイルはつい、横のディングレーを見上げた。

見た事無い程、引き締まった表情。
「(…これが、王族してる時の…表情かお?)」

ディングレーはふと気づいて、視線を上げる。
一年でも長身で金髪。
顔は綺麗系だが目付きが悪い奴が前からやって来て、その途端シェイルが目を伏せるのを見、そいつが横を通り過ぎ様、がっ!と突然、腕を掴んだ。

掴まれた少年は長い真っ直ぐの金髪を振って、唐突とうとつに乱暴を働くディングレーに、振り向く。

「…もしかして、ローズベルタか?」

ディングレーに鋭い、狼のような青の瞳で見据えられ、ローズベルタは一瞬気圧され…静かに頷く。

「…グーデンに、伝えとけ。
俺は帰ってきて、当分シェイルの護衛に付くとな!
もう一つ…お前、ここの宿舎でデカいツラしてるそうだな?
…二度と、ヤッケルに絡むな!
勿論、シェイルにもだ!
もししたら…」

ローズベルタはあんまり凄い迫力で睨み付けられ、ごくり…と唾を飲み込む。
「…お前の顔が変わるまで殴ってやるからそう思え。
俺はグーデンと違って、喧嘩は大好きだ」

そして胸ぐらを放し、怒鳴る。
「覚えとけ!
お前らも!
こいつに酷い目に合わされたらいつでも俺に言いに来い!!!
俺が来られなかったら俺の取り巻きが!
こいつを絞める!」

ヤッケルは何事かと、部屋の扉を開けて廊下を伺った時。
ディングレーの咆吼ほうこうに廊下にいた一年らが、雄叫おたけびで応えるのを見て、ぎょっ!とした。

ぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!

ディングレーはそれに応えるように拳を振り上げ、見てるヤッケルに気づき、シェイルに
「あの部屋か?」
と尋ねた。

シェイルは呆けてディングレーを見上げていたけど…聞かれて慌てて、頷く。

が、ローズベルタは捨て台詞をこそっと囁く。

「…正義の味方ヅラしやがって…。
どうせする事は、グーデンと一緒。
シェイルを押し倒して、掘りまくってる癖に」

ガッッッッ!!!

突然ディングレーは拳を振り切り、ローズベルタの顎に綺麗に決まって、ローズベルタはその勢いで壁に吹っ飛ぶ。

ダンっ!!!

廊下の一年らは呆けてそれを見つめ…ローズベルタが口を切って血を垂らすのを見た。

「…口の利き方に気をつけろ!!!
今度シェイルを侮辱しやがったら、こんなもんじゃ済まないからな!!!」

全員が、毛を逆立てて怒鳴る、野生の狼を彷彿ほうふつとさせる程のど・迫力のディングレーを見て、口を閉じる。

シェイルが、ディングレーの衣服の裾をこっそり引いて部屋へと招き入れ…ディングレーが中へ入って扉が閉まると。

全員一斉にしゃべり出す。

「…グーデンの、弟?!
マジで?!」
「王族って、すっげぇ迫力!!!」
「手が出るの、早い…。
変なこと言ったら直ぐ殴られるんだな…」
「あのローズベルタが…まだ、立ち上がれないぜ…」

壁にもたれかかったまま、痛みに耐えていたローズベルタは…自分が虐めまくった奴らに見られ、必死で身を起こし、その場を…足元をフラつかせて、去って行った。

「…爽快!」
あいつローズベルタ、ここじゃフィンスを別にして一番喧嘩強いって、威張ってただけに。
めちゃ、いい気味」
「全く同感」

室内にディングレーが入ると、ヤッケルに目を見開いて見られ…ディングレーは言う。
「だってお前…食べてる時、ローズベルタって金髪の野郎が、シェイルの朝食部屋に持って行く邪魔したって。
ぼやいてたろう?」

シェイルがヤッケルを見ると。
ヤッケルは顔を下げてつぶやく。
「…一緒に食べてた、フィンスに言ったんだけど…」
ディングレーはヤッケルを見て、言葉を返す。
「…何か?
俺がフィンスの活躍シーン、かっさらって不満か?
手間省こうとした、好意なんだが」

ヤッケルが顔を上げて、今度は呆け…シェイルが思わずつぶやく。
「思ってる事、言ったら?」
「…会話が通じないのって、王族だから?
俺、不満だなんて口にしてない…」

シェイルはため息を吐いた。
「…ディングレーだから。
ディングレー、人の気持ち汲み取るの、苦手」
「あっ…そう」
「一見怖そうでも。
言わないよりちゃんと自分の気持ち言うのが、ディングレーにとって親切だって。
ローフィスが言ってた。
でも気持ち、分かる。
王族してるディングレーって、凄く怖い」

「…………………怖い?」

ディングレーに聞かれ、シェイルのみならず、ヤッケルまでもが、頷いた。


その後、教室まで送り届けられてる間、ヤッケルはディングレーに聞かれた。
「…どこが…どの辺が怖い?」

ヤッケルは表情はそのままクールだけど、口調がヨタってて、気にしてるディングレーにため息吐くと囁く。
「…ってか、凄い迫力?
威厳ありすぎて、近寄り難い?」
「…普通それが、王族だし…。
それ出来ないと『王族の出来損ない』と一族の者に馬鹿にされる」

ヤッケルはディングレーの…やっぱ迫力ある男前の顔見て呻いた。
「…そうなんだ………」

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