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王族ディングレーの圧倒的存在感
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次の戦いを迎えた時。
案の定、ディングレーと大貴族らはまだ、全員残ってて。
数が奇数だったので、ディングレーが腕を引かれて列から出る。
誰が見てもディングレーの戦い振りは、まだ上級に比べれば小柄だけれど、同級の中では長身で体格良くて、迫力満点。
王族だけあって気品があるけど、戦い出すと余分な剣は一切振らず、相手の揺さぶりなど、ものともせず一撃必殺。
剣を、突きつけて勝ってる。
上級らは口々に喋り会う。
「去年は学年代表として上級のオーガスタスと対戦し、オーガスタスの豪剣受けて剣が保たず、結局剣折られて負けたから。
今年は剣を、庇ってきてるな」
「大したもんだ。
三年の兄貴、グーデンと違い…同級相手に、勝って当たり前だもんな」
「実際アイツが、俺の想定してた「左の王家」の王族」
「グーデンが異例だろう?
剣の使えない王族で『教練』に来るのなんて、アイツぐらい?」
「だな。
毎年この練習試合は欠席だろう?」
「特待扱いなら、特待宿舎で大人しくしてりゃいいのに」
「そりゃ、こっちだと。
可愛い愛玩、狩りまくれるからだろ?」
「ディアヴォロスに隠れて、こそこそやりながらな」
「違いない!」
が、グーデン配下の猛者がそれを聞いて、睨む。
どの学年のはぐれ者も、学年筆頭やディアヴォロスを煙たがって、グーデンに就く。
金払いが良く、好き勝手に威張れて暴れられるから…。
問題を起こしても、グーデンの権力で無しにして貰える。
皆、それでも声を潜めて話し続けてる。
「…あいつら、ディアヴォロスが居りゃ大人しいのに」
「そういや、ディアヴォロスの姿が、まだ無いぜ?」
「王族の葬儀って…延期って聞いたけど?」
「四年が戦い始める前までには、来るよな?ディアヴォロス」
「彼が来なけりゃ、大番狂わせだぜ?」
「ディアヴォロスの他に、誰が強い?四年って」
けれどディアヴォロスは当然ながら、ディングレー同様、同学年では簡単に勝ってたから。
四年では目立つ強者の記憶が無くて、皆が名前を囁き合う。
「カッセは?」
「小技使いだろう?
隙無くて確かに強いけどさ」
「あいつ。
ホラ、毎度思いっきり豪快に剣振り回してる、ディンダーデン」
「…強いけど、勝ち残る気ナイだろう?
剣庇ったとこ、見た事無いぜ?」
「だな。毎度思いっきり剣振って、剣が折れて負けてる」
「…それに例え、学年一になっても…」
「…多分三年で勝ち上がったオーガスタスと、豪剣比べして。
剣庇った方が勝つから、ディンダーデンは多分剣が折れて負ける」
「四年の面目、保とうなんて計算、出来ないタイプだよな」
ひそひそ声が聞こえてきて、みんな上級らの席を見る。
「俺達、もう関係無いけどさ」
ヤッケルがこっそり言うと、フィンスも頷く。
フィンスの向こうの、シュルツが答えた。
「うん。
ローランデはこの後、二年のトップや…そこで勝ち上がれば更にその上の学年トップと。
…戦うんだよな」
三人は、そっ…とシェイルの向こうに座る、落ち着き払ったローランデを盗み見る。
「…俺だったら、二年の試合見てても落ち着かない」
ヤッケルが呟くと、フィンスとシュルツも同意した。
「私も」
「俺も」
そうこうしてる間にもう、ディングレーと戦う相手を決める準決勝で、デルアンダーとテスアッソンが激しく剣を、交えていた。
「二年は番狂わせ、ナイな」
「なんだかんだ言って、デルアンダーの剣の腕は確かだ」
テスアッソンも女顔の軽そうな外観の割に、一本筋の通ってる武人で、油断成らない剣を使う。
が、デルアンダーは、鋭く隙を突くテスアッソンの剣を、気迫で叩っ斬る。
テスアッソンが幾度もデルアンダー相手に、鋭い剣を入れる。
がどの剣もデルアンダーは止め…とうとう気迫を込めた一撃を放つ!
剣を喉元に突きつけられ、テスアッソンは動きを止めた。
ヤッケルがため息交じりに感想を述べる。
「…毎度思うんだけど。
あの迫力で突き入れて。
寸止め出来る技術も、凄いよな」
フィンスとシュルツが顔を見合わせる。
「…確かに」
シュルツがつぶやき、フィンスもため息交じりに囁く。
「あれ見てると戦いって、剣の腕だけで無く。
気迫も凄く、左右するって思う」
デルアンダーは、剣を突きつけた姿勢から、身を起こす。
テスアッソンはデルアンダーを、今だ気迫溢れる鋭い瞳で見た後。
一つ、頷いて二年席へと戻って行く。
場内から、拍手と歓声が沸く。
「良く戦った!」
「凄かったぞ!」
が、拍手しながら三年らが盛り上がる。
「よし!
主従対決だ!」
「ディングレーが勝つだろう?あいつ流石王族で、迫力並じゃない」
「…だろうな」
一年達は目前で見る、滅多に見られない王族、ディングレーが。
迎え撃つようにデルアンダーの前に、ゆっくりと立つ姿を見た。
二年ながら、凄まじい王族の威圧感。
改めて、王族を見慣れていない者らは
『王族の迫力って、こんななんだ』
と、ごくり。と唾を飲み込み、皆一斉に、中央のディングレーを見つめた。
真っ直ぐの黒髪。
デルアンダーの方がほんの僅か、背は高いものの、ふらりと肩を揺するだけで、周囲を圧する迫力を醸し出す、半端ない存在感。
少し濃い色のブルーの瞳は射るようで、その鋭さは野生の狼を彷彿とさせた。
シェイルは王族の威信を背負うディングレーを、初めて見た。
普段剣の相手をしてくれた、まるではぐれ者みたいな私的なディングレーを、つい思い起こして比較する。
あまり喋らない。
けど…ローフィス相手だと、ローフィスに悪口雑言浴びせられ放題で、いつもオタついてて…。
自分相手だと…素っ気無い態度で、けれどローフィスの義弟として、彼なりに気遣ってくれて。
気づくと…かなり大切に扱ってくれていた。
口下手で…不器用。
けど気性が真っ直ぐで…気づくと庇うように、いつも側に立ってくれていた。
一度ごろつきが近寄って来た時。
ディングレーは自分を庇って背に回し、大人であるごろつき達を睨み付けて。
その迫力は凄かったし、手に持った剣を軽く持ち上げて、無言で
『やるか?』
と挑発した時は…凄く、男っぽくて。
…格好良かった。
相手のごろつきは…アースルーリンドには、年が若くても中には凄い使い手もいる事を、知ってたから。
ディングレーの迫力に、引いた。
シェイルはつい、王族の迫力全開のディングレーの、実際よりも大きく見える姿を、目を見開いてじっと見つめた。
案の定、ディングレーと大貴族らはまだ、全員残ってて。
数が奇数だったので、ディングレーが腕を引かれて列から出る。
誰が見てもディングレーの戦い振りは、まだ上級に比べれば小柄だけれど、同級の中では長身で体格良くて、迫力満点。
王族だけあって気品があるけど、戦い出すと余分な剣は一切振らず、相手の揺さぶりなど、ものともせず一撃必殺。
剣を、突きつけて勝ってる。
上級らは口々に喋り会う。
「去年は学年代表として上級のオーガスタスと対戦し、オーガスタスの豪剣受けて剣が保たず、結局剣折られて負けたから。
今年は剣を、庇ってきてるな」
「大したもんだ。
三年の兄貴、グーデンと違い…同級相手に、勝って当たり前だもんな」
「実際アイツが、俺の想定してた「左の王家」の王族」
「グーデンが異例だろう?
剣の使えない王族で『教練』に来るのなんて、アイツぐらい?」
「だな。
毎年この練習試合は欠席だろう?」
「特待扱いなら、特待宿舎で大人しくしてりゃいいのに」
「そりゃ、こっちだと。
可愛い愛玩、狩りまくれるからだろ?」
「ディアヴォロスに隠れて、こそこそやりながらな」
「違いない!」
が、グーデン配下の猛者がそれを聞いて、睨む。
どの学年のはぐれ者も、学年筆頭やディアヴォロスを煙たがって、グーデンに就く。
金払いが良く、好き勝手に威張れて暴れられるから…。
問題を起こしても、グーデンの権力で無しにして貰える。
皆、それでも声を潜めて話し続けてる。
「…あいつら、ディアヴォロスが居りゃ大人しいのに」
「そういや、ディアヴォロスの姿が、まだ無いぜ?」
「王族の葬儀って…延期って聞いたけど?」
「四年が戦い始める前までには、来るよな?ディアヴォロス」
「彼が来なけりゃ、大番狂わせだぜ?」
「ディアヴォロスの他に、誰が強い?四年って」
けれどディアヴォロスは当然ながら、ディングレー同様、同学年では簡単に勝ってたから。
四年では目立つ強者の記憶が無くて、皆が名前を囁き合う。
「カッセは?」
「小技使いだろう?
隙無くて確かに強いけどさ」
「あいつ。
ホラ、毎度思いっきり豪快に剣振り回してる、ディンダーデン」
「…強いけど、勝ち残る気ナイだろう?
剣庇ったとこ、見た事無いぜ?」
「だな。毎度思いっきり剣振って、剣が折れて負けてる」
「…それに例え、学年一になっても…」
「…多分三年で勝ち上がったオーガスタスと、豪剣比べして。
剣庇った方が勝つから、ディンダーデンは多分剣が折れて負ける」
「四年の面目、保とうなんて計算、出来ないタイプだよな」
ひそひそ声が聞こえてきて、みんな上級らの席を見る。
「俺達、もう関係無いけどさ」
ヤッケルがこっそり言うと、フィンスも頷く。
フィンスの向こうの、シュルツが答えた。
「うん。
ローランデはこの後、二年のトップや…そこで勝ち上がれば更にその上の学年トップと。
…戦うんだよな」
三人は、そっ…とシェイルの向こうに座る、落ち着き払ったローランデを盗み見る。
「…俺だったら、二年の試合見てても落ち着かない」
ヤッケルが呟くと、フィンスとシュルツも同意した。
「私も」
「俺も」
そうこうしてる間にもう、ディングレーと戦う相手を決める準決勝で、デルアンダーとテスアッソンが激しく剣を、交えていた。
「二年は番狂わせ、ナイな」
「なんだかんだ言って、デルアンダーの剣の腕は確かだ」
テスアッソンも女顔の軽そうな外観の割に、一本筋の通ってる武人で、油断成らない剣を使う。
が、デルアンダーは、鋭く隙を突くテスアッソンの剣を、気迫で叩っ斬る。
テスアッソンが幾度もデルアンダー相手に、鋭い剣を入れる。
がどの剣もデルアンダーは止め…とうとう気迫を込めた一撃を放つ!
剣を喉元に突きつけられ、テスアッソンは動きを止めた。
ヤッケルがため息交じりに感想を述べる。
「…毎度思うんだけど。
あの迫力で突き入れて。
寸止め出来る技術も、凄いよな」
フィンスとシュルツが顔を見合わせる。
「…確かに」
シュルツがつぶやき、フィンスもため息交じりに囁く。
「あれ見てると戦いって、剣の腕だけで無く。
気迫も凄く、左右するって思う」
デルアンダーは、剣を突きつけた姿勢から、身を起こす。
テスアッソンはデルアンダーを、今だ気迫溢れる鋭い瞳で見た後。
一つ、頷いて二年席へと戻って行く。
場内から、拍手と歓声が沸く。
「良く戦った!」
「凄かったぞ!」
が、拍手しながら三年らが盛り上がる。
「よし!
主従対決だ!」
「ディングレーが勝つだろう?あいつ流石王族で、迫力並じゃない」
「…だろうな」
一年達は目前で見る、滅多に見られない王族、ディングレーが。
迎え撃つようにデルアンダーの前に、ゆっくりと立つ姿を見た。
二年ながら、凄まじい王族の威圧感。
改めて、王族を見慣れていない者らは
『王族の迫力って、こんななんだ』
と、ごくり。と唾を飲み込み、皆一斉に、中央のディングレーを見つめた。
真っ直ぐの黒髪。
デルアンダーの方がほんの僅か、背は高いものの、ふらりと肩を揺するだけで、周囲を圧する迫力を醸し出す、半端ない存在感。
少し濃い色のブルーの瞳は射るようで、その鋭さは野生の狼を彷彿とさせた。
シェイルは王族の威信を背負うディングレーを、初めて見た。
普段剣の相手をしてくれた、まるではぐれ者みたいな私的なディングレーを、つい思い起こして比較する。
あまり喋らない。
けど…ローフィス相手だと、ローフィスに悪口雑言浴びせられ放題で、いつもオタついてて…。
自分相手だと…素っ気無い態度で、けれどローフィスの義弟として、彼なりに気遣ってくれて。
気づくと…かなり大切に扱ってくれていた。
口下手で…不器用。
けど気性が真っ直ぐで…気づくと庇うように、いつも側に立ってくれていた。
一度ごろつきが近寄って来た時。
ディングレーは自分を庇って背に回し、大人であるごろつき達を睨み付けて。
その迫力は凄かったし、手に持った剣を軽く持ち上げて、無言で
『やるか?』
と挑発した時は…凄く、男っぽくて。
…格好良かった。
相手のごろつきは…アースルーリンドには、年が若くても中には凄い使い手もいる事を、知ってたから。
ディングレーの迫力に、引いた。
シェイルはつい、王族の迫力全開のディングレーの、実際よりも大きく見える姿を、目を見開いてじっと見つめた。
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