若き騎士達の危険な日常

あーす。

文字の大きさ
162 / 171

眠るライラアン

しおりを挟む
 案内人が、突然皆を瞬間移動させ…。
小さなコテージの庭へと送る。
周囲には、同様のコテージが建ち並び、穏やかで優しい雰囲気がしていた。

花が色とりどりに咲き乱れていて、シェリアンは突然周囲が変わり、驚くシェイルに微笑みかけて、とても綺麗なピンクの薔薇をつむ。

シェイルも…それに習って、横の花をつみあげた。

ローフィスの横に突然ディラフィスが現れ、ローフィスは目だけ見開いて、ディラフィスを見た。
ディラフィスは
「よぅ…」
と愛息に挨拶し、花を持って一緒に室内へと入っていく、シェイルとシェリアンの背を見送り、息子に囁いた。

「親子だけに、してやれ」
ローフィスは頷いて、ディラフィスを見る。
「シェリアンの訓練に、付き合ってるんだって?」
ディラフィスは頷く。
「俺、神聖神殿隊付き連隊から、『影』の瘴気にやられた者を見回る役目、もらってるから。今」

ローフィスはそれを聞いて、目を見開く。
「神聖神殿隊付き連隊騎士に、戻ったの?」
「正規隊員じゃ無い。
補佐要員で、俺の見回り受け持ちは、元神聖神殿隊付き連隊騎士だから。
シェリアンの面倒が見られる」

「補佐なんて役目もあるんだ?」
「そりゃ、色々あるさ。
『影』に対する知識もあるから、退しりぞいてもちょくちょく仕事は貰える」

ローフィスは旅の間、顔の広いディラフィスの口利きで、行く先々で色んな人の屋敷に泊まらせて貰った事を思い出す。

「…シェリアンが目覚めたから。
親父はお役御免だろう?
もうシェイルのお袋さんとは、離婚した?」

ディラフィスは笑う。
「シェイルがもう、戸籍上は義弟で無くなって、寂しいか?」
「それより、あんただ。
戸籍が必要でシェイルのお袋さんと結婚したけど…全然夫婦してなかったのに。
もう、好きな相手と再婚できるんだぜ?」

ディラフィスは腕組んで顔を下げ、ため息を吐く。
「それな…。
結婚って、一人としか出来ないから…今それ言い出すと、困った事になる」

それを聞いて、ローフィスは呆れた。
「なんだよ。三股、四股とか、してんのか?」
「それゃ俺ぐらい大人で。
いい男だと…数人といい関係にはある。
深くは無いが。
そこが…問題かな?
一人に決める…うーーーーん。
どの相手もお互い結婚前提で、付き合って無いしなーーーー」

ローフィスは呆れきって、顔下げた。

が、ディラフィスは愛息に顔傾けて囁く。
「俺より、問題はお前だ。
俺なら、死んでも光竜身に降ろす、「左の王家」の超絶いい男でカリスマなんて、絶対恋敵にしない」

ローフィスはそれを聞いて、がっくり首垂れた。


シェイルはシェリアンと共に、室内に入る。
レースのカーテンで覆われた天蓋の下。

懐かしい母が、目を閉じて横たわってた。

シェイルは目を潤ませて母を見る。
顔色は良く、安らかな寝息を立てていた。

けど不安になって、シェリアンに囁く。
「いつか目、覚める?」

シェリアンは微笑む。
「“癒す者”は精神の疲労が、癒えたら目覚めると。
そう言ってた。
俺達の目では分からないが。
能力者らはライラアンの精神が、もの凄く消耗したまま、少しも回復しなかったと。
精神の疲労が、肉体の怪我のように、目で見えてるらしい。
今やっと。
回復に向かってるそうだ」

シェイルは懐かしい母を見つめた。
髪は明るい栗毛。
閉じているけど確か瞳は、自分と同じ、グリン…。
細くて華奢な鼻の形も、母譲り…。
けれど顔の形は…母はあまり顎の突き出ていない丸顔で、いつも可愛らしくて優しい感じがした。

シェリアンがそっと、枕元に薔薇を置く。
するとライラアンは、目を閉じたまま、微笑んだ。

シェイルはその表情を見て、目を見開く。
自分も…習って枕元に、薔薇を置いた。

その途端、ライラアンは、すうっ…と。
頬に涙を一筋、滴らせた。

そして幸福そうに、微笑む。

シェイルも思わず…頬に涙を伝わせて、横のシェリアンに寄り添う。

「言わなくても…通じた?
僕、もう大丈夫、って」

シェリアンが、シェイルの背に腕を回し、微笑んで頷く。

その時、また空間から人が現れた。
今度こそ、ドレス姿の女性で。
シェイルは彼女を見つめる。

栗毛を結い上げた、ふくよかな中年の女性で、やっぱりとても背が高かった。

「あらごめんなさい。いらしてたのね?
私が、この辺りのコテージの管理を任されてるの。
シュネビィアよ。よろしく。
ライラアンは…起きて動いてても、心ここにあらずで。
もろい少女のようだった。
突然の嵐にすら、怯えるの」

そう言うと、横にシュネビィアと同じ色の栗毛の…子供が姿を現す。
やはり突然、空間から。

「ライラアンの…子供?」
子供はシェイルを見た後、そう、シュネビィアを見上げて尋ねる。

「そうよ」
そう言って、シュネビィアは二人に顔を向けて紹介する。
「私の、息子なの。
一緒にコテージの住人の、世話をしてくれてるの」

息子はシェリアンとシェイルに微笑む。
「一緒に、お菓子だって焼けるんだ!」

シェイルが戸惑ってると、横のシェリアンは子供に微笑みかける。
「ありがとう…。
多分俺も直、ここの住民になる」
子供は、にっこり微笑む。
「じゃもう、『影』の傷は、癒えたんだね?
乗馬、教えてくれる?
ここではほとんど使わないから。
誰に聞いても、直ぐ消える」

「き…消える?」
シェイルが聞くと、子供は笑う。
「大人は、回答できない質問されると、直ぐ消えるんだ」

シェイルは、顔下げて呟く。
「…文字道理、消えるんだ…」
「そう!
瞬間移動出来ない大人は、睨み付ける。
“どっかへ消えろ!”って。
あ、言葉を使わず、頭の中へ怒鳴りつけるんだ」

シュネビィアは笑う。
「外から来た人は、ここの住人が、とても不思議でしょうね?」

シェイルはこっくり、頷いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...