アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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5 敵を退けるため、動き出すエルベス大公家

昂揚するゼフィス

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 ゼフィスはいらいらと爪を噛んだ。
ギュンターが惚れ込んでる、北領地[シェンダー・ラーデン]大公子息、ローランデの前に。
今だギュンターは姿を現してはいない様子。

けれど…亡くなってもいず、葬式の気配は無い。

「…ここにいる間に、ギュンターの葬式に出るつもりだったのに!」

つい、腹を立ててそう叫ぶ。
が、大公からの使者は、にっこり笑って庭から見える、待たせてある馬車を指さし囁く。

「お約束の、あなた様の物になった伯爵領に、ご案内いたします」

ゼフィスは自分の気分を持ち上げようとする、ロスフォール大公のその用意に、溜飲を下げた。

「行くわ」

馬車は邸宅より二点鐘程の田舎にあった。
なだらかな丘陵地帯の、果樹園の続く土地。

馬車を降りると、公爵の配下の領地管理人が、ゼフィスににっこり笑って挨拶をした。

「どれくらいの利益があるの?」
つん。と気取って、そう尋ねる。

若き体格の良い栗毛の管理人は、直ぐ横に付くと囁く。

「毎月50ガウロンの売り上げが見込めます。
時季外れは逆に維持費の出費が。
けれどそれでも、せいぜいが月、10ガウロン」

ゼフィスはガウロンなんて単価とは、縁が無かったので、目を見開く。
「あら…そう」

けれど聞いた後、つい頭の中でその金額が響き渡る。

「(…宮廷舞踏会に…出てる貴婦人らが、着飾れる筈だわ…!
領地ってそんなに…お金が入るの?!)」

ゼフィスは昂揚し頬を染めて、莫大な利益をもたらす、領地を眺めた。

陽を浴びた果樹園で、領民達は次々、果実を取り込んでいた。

「管理は、私に任せて頂きます。
ここから上がる収益は全て、あなた様の物。
けれど管理は…大公家が全て仕切ります。
でなければ、売り上げた果実を、売り捌く先など。
公爵のつてがなければ、利益は1/10に、減るでしょう」

ゼフィスはそれを聞いて驚き、若き管理人に振り返る。

「…どれだけ私は管理に口を挟めるの?」
「一切、おできになりません。
ここからの、収益を受け取るのみ」

「帳簿も、管理出来ないの?」
「ええ」

ゼフィスはくるり。と背を向けた。

「(それじゃ本当の利益から、どれだけ公爵に抜かれてるかも…分からないじゃ無い…)」

けれど50ガウロンと言う、途方も無い金額を聞き…頷くしか無い。

領地管理に失敗し、逆に借金を増やした…実父の事を知っていたから。
采配がまずいと、収益どころか借財になる。
と、ゼフィスは思い知っていた。

なぜなら、ロスフォール大公から領地を賜った。
と実父が愛人である母に告げ、もっと良い暮らしをさせてやる。
そう言った数ヶ月後。
引っ越した先は、たった二部屋しかない、小屋のような小さな家だったから。

母に聞くと、ため息交じりに…。
「あの人、騙されて新種の交配で出来た果実に全て植え替えて。
でも全部枯れて、設備費用を借金したの」
「利益は?」
「枯れたのよ?
出る訳無いわ」

あの冬は最悪だった。
食べる物すらロクに買えず、ナマのじゃがいもすら、囓ったから。

父が再び、ロスフォール大公に泣きついて…なんとか、窮状は救われた。
けれどそれすら…賭け事で収益は減り…。

少しはマシな屋敷に移り住めたけど。
贅沢とは程遠かった。

だからその時、誓った。
父では無く、私自身が。
ロスフォール大公に取り入って、上手くやろうと。

「(…素人が領地管理なんて。
出来る筈ないと、公爵も分かってるのね…。
いいわ。
私が詳しくなるまでは。
公爵に任せるしか無い)」

例えあの領地が、お飾りだとしても。
毎月の莫大な収益は私の物。

ゼフィスは帰りの馬車の中で、気分が浮かれ上がるのを、止められなかった。

けれど美しい邸宅に帰ると、ラデュークが待ち構えていて。
いつ、影の一族の頭領の元に戻るのか。
と催促する。

「(冗談でしょ?)
買い物をしなくては。
ドレスが必要なの。
惨めな衣服の女は、魅力が半減するから」

ラデュークは、ぱん!と手を叩く。
すると…。
別室から、ドレスを手にした召使いが、続々と入って来る。

「…注文すれば数ヶ月かかる。
当分はこれを着ていろと。
公爵が手配した。
しばらくは、これを着て舞踏会でも園遊会でも。
出かければいい。
公爵が手配可能な舞踏会の、招待状も。
欲しいなら、手配してもいいと、言う事だ」

「カンファッテは…今現在、開かれているの?」
そう尋ねると。
ラデュークは冷たい目で、ジロリと見る。

「伯爵になって数日のお前が。
入れる筈無いだろう?
開催予定など、聞くだけ無駄だ」

ゼフィスはすげないその返答に、むっとした。

が。
ラデュークに見つめられると…身が凍る。

こちらが思い知るまで。
平気で痛めつける事の出来る男………。

どれだけ色っぽく、容赦を頼んだところで。
鼻で笑われ、更なる痛みで苦しめられる…。

「私の、知り合いの舞踏会に出るわ」

ラデュークは頷いて、言った。
「それが、賢明だ。
気が済んだら一刻でも早く。
頭領の元に戻れ。
エルベス大公家が滅び去るまで。
襲撃し続けなければ、これらはお前から、再び取り上げられることを、忘れるな」

ゼフィスはつん!とラデュークから、顔を背ける。
「私が居ない間、代わりがいるから大丈夫よ」
「信頼出来る者なのか?!」

ラデュークの詰問に、ゼフィスは笑う。
「城下の女や少年達を。
尽く犯すよう、言い含めてあるし、そう調教したから…。
彼、今頃犯しまくってるわ」

「…狡猾だな。
だが出来るだけ、早く戻れ。
連絡先を執事に伝えてある。
何かあれば…。
無くとも。
動向を、常に連絡するように。
怠れば、公爵の不興を買うと。
覚えておけ」

ラデュークはそれだけ言い含めると。
さっさと背を向け、部屋から出て行く。

ゼフィスは閉まった扉に、思いっきりクッションを叩きつけたい衝動を、何とか、こらえた。


ゼフィスは結局、また。
ラデュークが帰った後。
ぷりぷりして怒りまくった。

「褒美を与えると必ず、恐怖もセットで付いて来るって訳ね!」

けれど…公爵の用意した、ドレスの数々の、豪華で美しい事!

「…まあ…いいわ。
ともかく、私が出られそうな舞踏会か。
園遊会を探さなくちゃ」

けれど丁度そのときに、再び使者が着いたと召使いが告げる。

渡されたのは、レナーテ公爵主催の、ブログナの招待状!

「シァル侯爵の口利きで。
ご招待したいとの、ご意向です」

品の良い使者は明らかに、公爵家の者らしく見えた。

「(…紹介者の名前まで出すのね…。
シァル侯爵…好色な、デブ!
でも、まあいいわ…。
ブログナで上手くやれば…カンファッテ出席も、夢じゃ無い!!!)」

ゼフィスは一度低く沈んだ気分が、浮かれまくって宙高く舞うのを、止められなかった。

「お返事を頂けるとありがたいのですが…」

まだ待ってる使者に叫ぶ。
「断る訳、無いじゃ無いの!!!」

使者は一礼し、背を向ける。

ゼフィスは渡された綺麗な飾り文字と装飾で飾られた、招待状を胸に抱き。

歓喜で叫びながら、何度でもぴょんぴょん、部屋中を跳ね回った。
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