アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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6 好転し始める被害状況

アドラフレンとニーシャから警告を受け取るディングレーとローフィス

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 ニーシャが、男装をして近衛隊長宿舎を訪れる。

王族、ディングレーが戸口で出迎え、要件を聞く。



「アイリスの伯母、ニーシャと申しますけど」
そう言うと、ディングレーにじろじろ見られ、呟かれる。

「…美少年にしては色気がありすぎると思ったが。
アイリスの関係者か」

その時遅れて来たアドラフレンが、ニーシャの背後に姿を見せる。



ディングレーは、年上の同族いとこの姿に、途端顔を下げた。

アドラフレンはしかし、戸口に立つニーシャに屈むと、問い正す。
「…どうして、来るかな?
私が連絡すると言ったのに」

ディングレーが顔を上げた時。
ニーシャは返答した。

「ゼフィスが殺したがってる、ギュンターって近衛騎兵を一目、見たくて」
「…君はブログナを見張ってる約束だろう?
ああディングレー。
君の友人が、大層な被害を受けたとか」

ディングレーは俯いたまま…年上のいとこを見ないで囁く。
「…まあ…悪運が強いので…死ぬことは免れてる様子だ」

アドラフレンは一つ頷き、微笑む。
「今、彼女の甥が、影の一族へ潜入してる。
まだ数日はかかる予定だし、ゼフィスはこちらで策を弄して足止めする。
が」

ニーシャが、その後の言葉をひったくった。
「…私が、出向く予定で手筈を整えてたのに。
場所が場所だから!
見張られてて、女だと直ぐ見つかって、入り込めないのよ。
あの女!!!
絶対私に、サスベスを寝取り返させたくなくて、検閲までしてるのよ?!
全く、卑怯よね?!
正々堂々、私にサスベスと過ごさせた上で、サスベスに選ばせるって。
どーーーして出来ないのかしら!!!」

突然怒る男装の美女に、ディングレーが顔を下げきった。
が、ニーシャは気を取り直し、続きを口走る。

「…ゼフィスはギュンターの周囲に、現在密偵を張り付かせて見張ってるわ。
ええと…王立騎士養成学校?
の、ギュンターの本命?とかの方にも」

アドラフレンが、苦笑して言い足す。
「…だからあまり、目立つ事はしないで、出来るだけゼフィスを刺激しない方が良いと。
忠告に来たのだけれど…」

その後の言葉を、またニーシャがひったくる。
「アイリスが。
ギュンターは先輩だから、警告して欲しいって。
伝言寄越す程の、気の使いよう。
で、ギュンターって彼、何をしてゼフィスにそこまで、恨まれたのかしら?」

「……………………………………」
ディングレーが、畳みかける二人の勢いに、押されて答えあぐねていた時。
背後から、声。

「なんで客を中にも入れず、戸口で話し込んでるんだ?」

その声の主を、ディングレーは救世主のように見つめる。
アドラフレンとニーシャはその反応に思わず、顔を見合わせた。

「お入りください。
ご用件を伺います」

ディングレーよりは背が低く見えるが、決して背の低くない、明るい栗毛の爽やかな好青年が、中へと迎え入れてくれる。



が、ディングレーはその彼に
「…一族の中でも飛び抜けて愛想は良いが、腹の内を探らせない食わせ者のアドラフレンと、あの!
アイリスの伯母だぞ?!」
とこっそり耳打ちしていて、アドラフレンとニーシャはまた、顔を見合わせた。

だがソファに迎え入れられ、腰掛けると、栗毛の好青年は笑顔を絶やさない。

ディングレーはその横にかけると、また耳打ちしてる。
「…アイリスが行ってる間、ゼフィスは足止めしとくが、ギュンターの周囲もローランデの方も、密偵使って嗅ぎ回らせてるから、迂闊に刺激するなと」

「…君のとても頼りにしている、この御方を私に、紹介してくれないのかい?」
アドラフレンが言うと。
ディングレーで無く、栗毛の好青年が。

「ああ失礼。
私はローフィスと言い、ディングレーの上官で…隊長を務めております」

そう言うので、アドラフレンはとても感じ良く笑った。
「なる程。
機転が利いて、頭の回転も早い。
隊長の器だね?」

横の、ディングレーは大きく頷く。
が、ローフィスは顔を下げる。
「隊長には身分が足りなく、しょっ中、いとこ殿に助けられてる」

が、そう言われたディングレーは目を見開く。
「…しょっ中助けられてるのは、俺の方だ。
助けてると言うより、恩返しに近い」

アドラフレンは『納得いった』と頷く。
「助け合ってるんだな?
相変わらず、ディアヴォロス(左将軍)の采配は見事だ。
ところで…要件はさっきディングレーが君に告げた事が全てなんだが…。
命を狙われた、近衛騎兵の容態と、そのいきさつが知りたくて来たんだ。
どーして、その彼がゼフィスに命を狙われたんだい?」

ディングレーは俯き、ローフィスが顔を上げる。
「ギュンターと言って…ディングレーと同年の男ですが。
先頃の王宮舞踏会で、「右の王家」のタニア嬢に一目惚れされた程の、色男。
ゼフィスは彼を垂らし込めば…彼を通じてタニア嬢を操れると思い、ギュンターを誘惑しにかかったのですが」

ディングレーが俯いたまま、後を引き継ぐ。
「…あんたと違い、愛想の無い男で。
本人としては丁重に断ったつもりだが、ゼフィスに酷い恥をかかせて恨まれたらしい」

アドラフレンは目を、まん丸に見開く。
「…ああそれ…噂で聞いた…凄い美貌の、金髪の近衛騎兵の事?
…ソノ気で擦り寄って来たゼフィスに
『間に合ってるから他を当たってくれ』
と言った上で、エッツィ侯爵を紹介しようとした…例の彼だよね?」

途端、きゃーっはっはっはっ!!!

と、隣のニーシャが笑いこけ、一同はその強烈な反応に押し黙る。

「やだ!!!それ、最高!!!
その彼、私気に入ったわ!!!」

アドラフレンが、こそっ。と囁く。
「君が気に入るぐらいだから。
ゼフィスに暗殺集団なんて、差し向けられたんだと思うけど?」

アドラフレンが言うと、ディングレーもローフィスも、頷く。

「二度。
奇襲されましたが一度はディンダーデンが一緒で。
二度目は馬上だったので、私が短剣で追っ手を馬から落としました」
ローフィスがそう言うと。
ニーシャはピタ。と笑いを止めて、ローフィスを見る。

「あら顔の割に、貴方も食わせ者ね」

ローフィスが、苦笑する。
アドラフレンが、すかさず突っ込む。
「ディアヴォロス(アドラフレンにとっては同族のいとこ)が、戦闘能力の無い男を隊長に据える訳、無いだろう?
で?
三度目があったのかい?」

「…誘い出された宿の食堂で毒を盛られて。
…現在、寝込んでいますが、命に別状はありません。
ただ、暗殺が継続されれば厄介なので…。
左将軍補佐が彼の偽葬式を出す提案まで、してる所です」

「…アイリスは信用出来るから。
もう少し、大人しくしてれば必ず大丈夫よ」
アイリスの伯母の言葉に、ローフィスとディングレーは顔を見合わせる。

「では、出来るだけ派手に動き出さないよう、抑えておきます」
ローフィスの言葉に、アドラフレンが顔を上げる。
「でも、寝込んでるんだろう?」
ディングレーが呆れる。
「近衛に上がって来る程の男だぞ?
フラついてようが、起きられれば直ぐに動き出す」

アドラフレンが顔を下げた時。

遠くでニーシャの声がする。
「あら凄く、やつれてて寝顔だけど、凄い美男」

三人が声の方向を見ると。
ニーシャが戸口からこっそり、隣室を眺めていた。

…いつの間に…。
全員が思った。
が、ニーシャは振り向くと
「用は済んだわ」
とアドラフレンに言う。

「それは良かった。
君はゼフィスを…頼むから、見張っててくれ」
アドラフレンの言葉に、ニーシャはソファに座る一同の元へ戻って来ると、肩竦めた。

「貴方の部下の、サランフォール公爵がいるじゃない。
それに私の取り巻き三人は、大のゲーム好きで信頼出来るし。
でもギュンターって彼。
あのやつれようじゃ、当分外出は無理よね」

だが。
ローフィスとディングレーは顔を見合わせる。

アドラフレンは二人の様子を見て、肩を竦める。
「瀕死だろうが、動けるのが近衛騎兵。
舐めない方がいい」

ニーシャは肩を竦めた。
「ゼフィスは、任せて。
ただ、時間を頂戴」

ローフィスがしっかり頷き、ディングレーは顔を背けた。
途端、ニーシャが不満げに漏らす。
「…どーして彼は、私を見ないの?」

ローフィスが、苦笑いした。
甥御殿アイリスはアドラフレン様同様の、策士なので。
この男は苦手なんです」

ニーシャは頷く。
「表情と腹の内の一致してる、純朴な男が好きなのね。
でも貴方は彼に、凄く懐かれてるみたいだけど。
表情と腹の内、一致してないわよね?」

ディングレーは怒って、怒鳴った。
「俺に対しては!
常に一致してる!!!」

アドラフレンだけが、肩を竦めた。
「私だって、そうしてるつもりだけど?」

「あんたは!!!
俺を年下のガキ扱いするじゃ無いか!
あからさまじゃなく、品良く遠回しに!!!
あからさまにされたら、真正面から怒れるのに!!!」

「…そんな所で文句言われるとは、思わなかった」
アドラフレンがぼやくと、ニーシャがすかさず言う。
「どうせディングレー
単純で、直ぐ顔に出るから。
面白くて毎度、からかったんでしょう?」

アドラフレンは言い返せず。
ディングレーはその通り。とアドラフレンを睨み付け。
ローフィスは思い切り、肩を竦めた。
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