アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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6 好転し始める被害状況

ローランデを目前に、迫れなくていら立つギュンター

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 が。
ギュンターがローランデの宿舎、大貴族用私室へと足を運ぶと。
部屋にはローランデの親友、大貴族のフィンスのみならず。
一階下の平貴族、ヤッケルとシェイルまでが。
入って来たギュンターを、ジロリ…と睨む。





ローランデは三人に囲まれてソファに座っていて…。
困惑の表情を、浮かべていた。

けど弱っていた筈のギュンターは、ローランデの愛おしい姿を見ると、突然。
つかつかとローランデの方へと、歩み寄る。

「!」

だがギュンターの前へ、ローランデの親友三人は直ぐ気づいて腰を上げ、立ち塞がった。

「どけ!!!」
歯を剥き出して怒る、外見は優美だが内面は野獣の、その美貌の男を。
三人は睨み据えながら、阻み続ける。

「どうしてお前らまで待ち構えてる!!!
大体ローランデが珍しく私室にいるのは、どういう訳だ!
大抵はここの召使いに、校内の居そうな場所を聞くのに!!!」

ローフィスの義弟、小柄な銀髪、妖精のようなシェイルが。
ギュンター背後、まだ戸口に居る、ローフィスを顎でしゃくる。

「ローフィスから“来る”と聞いてるに、決まってる」

ギュンターは背後、ローフィスに振り向き様睨み付けた、後。
ローフィスは二度も助けてくれた、大恩人だと思い出す。

が、怒りは止まらなかった。
「なんで事前通知する!!!」

腹の底から怒鳴られて、ローフィスは顔を下げた。
「…多分、お前また、アイリスを殺したくなるだろうが…。
ゼフィスが銀髪の影の一族の本拠地から、こっち(王都)に戻って来てる。
足止めし、情報遮断に努めるが。
できるだけ、刺激するなとの、伯母を通じた、アイリスからの指令だ」

「あ…の、野郎…!!!」
ギュンターは怒鳴りかけるが、ローフィスは手を上げ言葉を遮り、言い渡す。

「俺もオーガスタスも、アイリスに同意見だ。
ここに来るのも、暗殺されないようディングレーを伴い、ゼフィスの密偵が誰かも分からないから、部屋に彼ら(ローランデの親友達)に居て貰うよう、俺が配慮した」

「…つまり、ローランデに手を出すなと?!
やっと!!!ここまで回復して会えたのに!!!」

ディングレーがローフィスの横で、恩人の筈のローフィスを睨み付けるギュンターを、心から不快そうに睨み返して、口開く。

「起き上がってローランデを抱いた。
なんて回復ぶりがゼフィスに知れたら。
標的が、お前匿ってる俺か。
…多分、一番狙いやすいローフィスに移るだろう?!!!!
その辺のとこ、考えた事有るのか?!
自分で撒いた種だ!
周囲にこれ以上、迷惑かけるな!!!」

ディングレーに吠えられて…怒りの塊、ギュンターは、ぐっ!!!
と喉を詰まらせた。

そして今度は、前に振り向きシェイルに文句言う。
「ここに、密偵?!
誰かも本気で、分からないのか?!!!!」

シェイルは怒鳴られようが、表情を変えなかった。
が、無言。
代わって横のシェイル同様、栗毛の小柄で小粋なヤッケルが、説明する。

「誰がどこで噂流してるのか。
確定は不可能。
だってあんたがここに来ると凄く、目立つし。
今やここを仕切ってるボス、ローランデを抱きに来ると知れ渡ってるから」

二人より長身の落ち着ききった大貴族、濃い栗毛のフィンスが、後を継ぐ。
「学校中の注目の的で、みんな、噂してるから。
密偵がここに足を踏み入れ、ちょっと聞き耳立てただけで。
どんな状況かは直ぐ、バレる」

「……………………………………」

ギュンターがやっと、それを聞いて黙り込み、思い切り顔を下げた。

ローフィスが、小声で告げる。
「ローランデを抱けるぐらい回復したとあっちゃ…。
あっちの暗殺集団も、更にリキ入れて来るぞ。
アイリスが首尾良く頭領を抱き込むまで、極力大人しくし、目立つな。
と言われてるし…」

ディングレーはその後を、引き取った。
「ここに来るのも、本当は、止めたかった。
が、お前全然聞く耳持たない!
俺は殴って気絶させる提案をした。
が。
病み上がりでそれはマズいと。
ローフィスに却下された。
ローランデの顔が拝めただけでも!!!
特別措置なんだ!!!」

シェイルが長身のギュンターを見上げ、睨み付けて言う。
「俺だって
“どうしてそうしない?!
オーガスタスが殴ったら半端なく悪化してほぼ死人に逆戻りするから。
ディングレーかディンダーデン辺りに殴って貰って。
気絶させれば、済む話だろう?!”
って言って、ローフィスを責めた」

ヤッケルもフィンスもが。
同意の頷きをする。

ディングレーがとうとう、怒鳴りつける。
「ローフィスに、怒鳴ったことを謝罪し!
更に感謝しろ!
俺説得して、ここまで連れて来てローランデに会わせて!!!
ローフィスは、優しすぎだろう?!!!!」

ギュンターは暫く顔下げて沈黙した、後。
そっ…と、ローフィスに振り向く。

「…………………………ええと」

「ええと?!!!!」
滅多に怒らない冷静なフィンスが、厳しく声を荒げる。

ギュンターは、項垂れきって掠れた声で囁く。
「………俺が、間違ってた。
あんたには、感謝してもしきれない。
この先あんたに頼まれたことは、どんな事でも断らない」

ディングレーも。
親友達三人もが。
この模範解答に、大きく頷いた。

項垂れたギュンターは、けど視線を感じて、顔を上げる。
まだソファにただ一人、座っていたローランデが。
やつれ切って頬が削げ、顔の鋭くなったギュンターを、心配げに見つめていた。

その顔を、見た、だけでギュンターは。
駆け寄って、彼を腕の中に、思い切り抱きしめたかった。

けど…出来ず。
俯いて…瞳を濡らす。

「…見間違いか?」
ヤッケルの驚愕を秘めた小声の後。
フィンスの冷静な声。
「…ローランデに近寄れない、悔し涙だろう?」
シェイルの声もする。
「ああ、びっくりした!
悔し涙なら、めちゃくちゃ納得。
腹立て過ぎても、ここの誰も、殴れないから」

「…泣くしか、他に発散方法が、無い?」
ヤッケルの言葉に、顔を上げたギュンターは、シェイルとフィンスが同意の頷きをするのを、見た。

思わず頭に来て、怒鳴りつける。
「お前ら!
真剣に惚れたこと、無いのか!!!」

だが三人共が、しらっ。
とギュンターから、顔を背けた。

「…みんな、ありがとう…。
ギュンター、もう…動けるのか?」

ギュンターが、ローランデに声かけられて、感激の表情を浮かべる。
が、ローフィスが説明する。

「まだ本当は、ふらふらだ。
だがどうしても行くと聞かないから。
落馬しないか見張るためにも、付いてきた」

ディングレーが即座に、付け足す。
「…護衛は出来るが。
怪我の手当は、俺じゃ無理だ」

親友三人はディングレーが、剣技は華麗だが、それ以外の事はかなり不器用だと知っていたので。
その言葉に、納得の頷きをした。

ローフィスはそっと、優しげでギュンターの身を心配する、ローランデに苦笑いしてみせる。
「正直、帰った後また寝込まないか、心配だ」
「無用だ…!」

ギュンターの、絞り出すような声。
そして…ローランデに語りかける。
「…どうしても来たかったのは…!
会いたかった事も勿論だが…。
アイリスが、お前が怒ってたと…。
その、ゼフィスが会いに来て」

ディングレーもローフィスも、まだその事にずっと引っかかってた、ギュンターに呆れた。

ローランデは青ざめたギュンターの顔を、喰い入るように見つめ、囁く。
「私は…嫌がらせのように、会うだけで済んだけれど…。
君は二度の襲撃の上、毒を盛られたと…。
君の方こそ、大丈夫なのか?」

ギュンターが、頷く。
「これ以上周囲に迷惑かかるようなら…。
オーガスタスに相談して、偽葬式を出して貰う」

親友三人の、大きなため息が聞こえた。

「大がかりになるから。
最終手段だ」
ディングレーの説明の後、ヤッケルがこっそり、言った。
「女絡みなら…一度で済まないんじゃ、ないのか?」

が。
もうギュンターは、突っかかる気も無いのか。
こっそり、言い足した。

「万が一…葬式が行われた際。
アイリスの囁く言葉は一切、聞くな。
あくまで、偽で。
俺は…死んでないから」

「でも…タチの悪い女をフッて、毒を盛られたんでしょう?」
フィンスの疑問に、シェイルも頷く。
「まだこの先、数えるのも億劫なほど、有りそう」
ヤッケルも頷き倒す。
「毎度葬式出してたら、その内みんな冗談だと分かって。
酒盛って宴会だな」

「葬式で、宴会するな!!!」
ギュンターが怒鳴りつけ、けどその途端、ふらっ…と身を揺らす。

「!」
ローランデが、ギュンターの身を支えようとソファから立ち上がりかけ…。
親友三人に、目で制された。

シェイルはローランデを心配げに見つめ、囁く。
「…ギュンター、今極限状態だから」

フィンスが、付け足す。
「近寄ると貞操が凄く、危険だ」

ヤッケルも、保証した。
「絶対、自制出来ない」

最後にディングレーが、大声で吠えた。
「大恩人の、ローフィスですら、睨み付ける分別の無さだ!!!」

ギュンターはがっくり。と首を落とし、ローランデは俯いて、短いため息を吐いた。
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