アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

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7 逆転し始める優位

寝返るラデューク

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 ラデュークらが、影の一族の、アジトを知ると言う男の元へと馬を駆けさせ、小汚い酒場へと足を踏み入れる。

直ぐ、酒場の親父を見つけると、ラデュークは詰め寄った。
「銀髪の、影の一族らのアジトを知ってるそうだな?!」

が。そう言った途端。
がたがたがたっ!
と、店内にいた、汚い男達が一斉に立ち上がり。
一人が咄嗟、ラデュークの背に刃物を突きつけ。
一緒に付いて来た部下らを、取り囲む。

ラデュークは、周囲を見回し、問い正す。
「…まさかお前達が…影の一族の、部下なのか?!」
「動くな。
どうしてアジトを知りたい」

カウンターにいた、身なりは汚いが、眼光鋭い男がそう尋ねる。

「…俺はロスフォール大公の部下だ」

ラデュークは身元を明かして、様子見する。
が、男は顔色も変えず、顎をしゃくる。
「だから?」

「…なぜ…命令が実行されていない」
「それが知りたくて、来たのか?」
男はようやく笑って、そう聞く。

そして、ラデュークの真正面に立つと、囁く。
「「左の王家」の血を引く男が。
たかが大公の、ロスフォールに忠誠を誓うのか?」

ラデュークは怒鳴る。
「俺は、孕ませた事も忘れ去った父の事など!
どうでもいい…!!!」

「では、こう言おうか。
俺は「左の王家」、左将軍ディアヴォロスから、連絡を受け取った男だと…!」

ラデュークの、顔が真っ青になった。
「…左将軍が…動いているのか?」
「正式には、俺の方から、お伺いを立てた。
左将軍直々にではない。
が、留守を預かる男にこう、言付かっている。
“同じ「左の王家」の血を持つ男。
ラデュークがもし、ロスフォール大公の元を離れる決心をし、別の主を探すというのなら。
私が面倒をみたい”」

が、ラデュークは鼻で笑った。
「…おかしいじゃないか…!
どうして俺が、影の一族の、アジトを探しに来ると、事前に分かる!」

男は呆れて言った。
「知らないのか?
左将軍ディアヴォロスは身の内に、光竜宿す千里眼。
俺が、お前の処置について、尋ねていく事もお見通しだったから。
伝言を、残したんだ」

ラデュークは、俯いて唇を噛んだ。

「…もし…左将軍に寝返らず、ロスフォール大公に忠誠を示すと告げたら。
俺を、殺すのか?」

男はようやく、ラデュークの前から横にどく。

「いや?
戻って、大公に伝えろ。
襲撃命令はこの先もう、永久に実行には移されないと」

ラデュークは男を、睨めつけた。

「…どこの勢力の男だ?」

男は、笑って言った。
「エルベス大公家に、決まってる。
そしてな。
直、報復も始まる。
お前もロスフォール大公に、仕えていたなら知っているだろう?
エルベス大公家に、あれだけの損害を与えて。
その報復が、どれ程のものかを」

「…つまり左将軍は、エルベス大公家についていると言うのか?!」

その問いに。
男は一瞬躊躇い。
だが、言った。

「…そうだ。
どうする?
ロスフォール大公の元に戻り、大公共々、報復を受けるか?
それとも報復を避け、左将軍の元に仕えるか?」

「(…つまり、ロスフォール大公は終わりと言う事だ…)」
ラデュークは咄嗟、そう感じ…声を絞り出した。

「左将軍の元に、案内して貰おうか」

男は頷き、刃物を突きつけていた男に、首を振って合図を送る。
ラデュークの背後の男が刃物をしまい、ラデュークの目前にいた男が、首を振って促した。

「付いて来い」



 前の馬が近衛官舎の門を潜った時。
ラデュークはどうやら、男の言う事が本当だと。
感じ始めた。

左将軍官邸の門を通され、中で馬を止めて、玄関階段を駆け上がる、男の背に続く。
召使いが扉を開け、一階の応接室に通される。

が、中にいたのは赤毛の大男。
左将軍補佐、オーガスタス。



「…そいつが…ロスフォール大公の?」
オーガスタスがそう聞き、男は帽子を取って、頷く。

どっか!と向かいの椅子にかけ、突っ立つラデュークを見上げる。
ラデュークは仕方なしに、男の横。

赤毛の大男の、向かいに腰を下ろした。

「俺が、誰だか分かるか?」

赤毛の大男に問われ、ラデュークは頷く。
「左将軍補佐、オーガスタス」

オーガスタスは、頷く。
「左将軍は残念ながら、現在不在。
俺が言付けられて、男がロスフォール大公の部下を連れて来たら、対応しろと」

ラデュークを、連れて来た男は頷く。

オーガスタスはラデュークが、かなり年上だと知って、尋ねる。
「あんた、マジでこちらに仕える気が、あるのか?」
「どんな、扱いだ?」

ラデュークに、探るように見つめられ、オーガスタスはラデュークを、見つめ返す。

「俺が、現在左将軍内部隊を仕切ってる。
割と表で動く部隊と、完全に、隠密で動く部隊がある。
だが完全に隠密で動く部隊は、まるで人手不足。
そこの隊長の地位が空いてる。
収まる気が、あるか?」

ラデュークは、動揺に顔を揺らした。

オーガスタスはその反応を見つめ、言葉を続ける。
「ディアヴォロスは同じ「左の王家」の血を受け継ぐ、だが気位が高くなく、砕けてて柔軟な対応の出来る男と、あんたの実力を買っている。
具体的な待遇は、改めて聞かないと分からない。
が、王族の血を引く者として、それに相応しい待遇を約束すると言っている。
信じるかは、あんた次第。
が、俺の経験で言わせて貰えば。
ディアヴォロスが“約束する”と言って、実行されなかった、例(ため)しがない」

ラデュークはとうとう、頭をがっくり、垂れた。
「…千里眼の男…だっけ?」

オーガスタスは、即答した。
「そうだ」

ラデュークは顔を下げたまま、微かに頷き…。
そして次第に、はっきり頷いて、言った。

「いいだろう…。
その役職、貰おう」

オーガスタスはその返答を聞くと、ラデュークを連れて来た男に振り向く。
「レスルにこれからも、仕えるのか?」

ラデュークは“レスル”の名を聞いて、はっ!と顔を上げる。

男は笑うと、オーガスタスに告げる。
「“レスル”は一人じゃ無い」
「つまりあんたも…“レスル”なのか?」
男は、笑いながら頷く。

オーガスタスは、ラデュークに顔を向けると、言い諭す。
「見知っておいて欲しい。
あまり厄介な案件の場合。
ディアヴォロスが金を払い、彼を雇う。
あんたが彼らと、手を組み動く場合も出てくる」

ラデュークは暫く…案内役の男の顔を、じっ…と見た。

「エルベス大公は…“レスル”を雇ったのか?!」

男は頷き、言った。
「俺達が、雇われた時点で。
ロスフォール大公の、負けは決まったも同然」

ラデュークは、それを聞いて顔を下げた。
「…ゼフィスなんぞに伯爵領程度を払うのが、精一杯…。
レスルを雇うべきだと…俺が進言しても
『そんな大金を、払う必要があるのか?』
と…却下された………。
つまりそれだけ…エルベス大公の方が、必死だったと、言う訳だ」

オーガスタスと“レスル”は顔を見合わせる。

ラデュークは、顔を俯けたまま、オーガスタスに問う。
「…いずれ、ディアヴォロスには会えるのか?」
「あんたに王家に相応しい、領地と爵位を与える気でいるみたいだから。
お披露目の舞踏会くらいには、顔を出すと思う」

ラデュークは咄嗟に、顔を上げた。
オーガスタスが、更に言う。
「病気の母親の為に、大金要るんだろう?
直ぐ、自宅に戻って母親を連れ、西の聖地へ向かえと。
神聖騎士団長に、話を通しておくそうだ」

ラデュークが、言い淀むと、オーガスタスは少し、気の毒そうに告げた。

「母親の為に金の欲しい、あんたの足元見て。
ロスフォールは大層、こき使ったんだろう?」

ラデュークが俯き…泣いているように見え…。
けれど、すっ!と立ち上がると、オーガスタスに一言、告げた。

「ディアヴォロスに、礼を」

オーガスタスは、顔を下げた。
「噂はダテじゃない。
頭の中でディアヴォロスに向けて、感謝を送れ。
彼は察する」

ラデュークは目を見開き…。
が、頷いて背を向けた。

その背に、オーガスタスが、ぼそりと言う。
「“千里眼”は、良いことだらけじゃ無いぞ?
彼に直接会ったら。
隠しておきたい秘密も全部、たちどころにバレると。
覚悟しとけ」

ラデュークはオーガスタスに振り向き。
だが、一つ頷くと、部屋から出て行った。

バタン…と扉が閉まると。
“レスル”が言う。

「これが、左将軍のやり方か。
ラデュークは本当に、ロスフォールの元には戻らず、母を連れて西の聖地に行くと、確信してるのか?
…俺なら部下に、後を付けさせるが」

オーガスタスは、頷き倒す。
「慣れが、必要だ。
だが言ったように“千里眼”ってのは、相手の弱点もたちどころに見つける。
ラデュークが本当の孝行息子だと、ディアヴォロスには分かってるから。
ヤツは母親を、西の聖地に連れて行くさ。
そして母親が回復に向かえば。
多分ラデュークは、ディアヴォロスに今後一生、忠誠を誓う」

“レスル”はやれやれと、帽子を被って立ち上がり、言った。
「俺ならディアヴォロスに決して、直接会いたくなんて、無いね」

オーガスタスは、頷いた。
「こちらの思惑通りなら、これからあんたを雇った時。
対応するのはラデュークだ」

“レスル”は戸口に向かいながら、言い放った。

「それは、本当に助かる」

オーガスタスは扉の閉まる音を聞いた後。
頷いて、言った。

「それが、利口だ。
ヘタに泣き所がバレると。
彼(ディアヴォロス)に、笑われるしな」

そして、大きなため息を、吐き出した。
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