十字架のソフィア

カズッキオ

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第二章

幻想種

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 あれから数日が過ぎた。
それからも異端審問官の襲撃は止む事はなかった。
しかし変わった事があった。
それはライルとソフィア二人で戦う様になった事だ。

「よし、この辺りだな  」

ライルはもうすぐ森に入る道の途中で荷物を置く。

「どうしたのですかライル?まだ野宿の準備には早い様な気がしますが…… 」

ソフィアの問いにライルはまあ見てろと返し何やら荷物からあまり大きくはない袋を取り出す。
ライルがフーゴの店で手に入れた物だ。

ライルはその袋から数枚の葉っぱを取り出すとその葉っぱに火をつける。

するとなんとも言えない匂いが立ち込める。

「これは…ホロルの葉ですか?  」

「おっ正解、この匂いを嗅いである生物がやって来るんだよ  」

確かにホロルの葉は独特の匂いがするがそれを好む生物などソフィアは知らなかった。

 しばらくライルはホロルの葉を焚いていると遠くから何やら馬の駆ける音が聞こえてくる。

ソフィアは追っ手かと思い身構える。
しかしライルはそれを手で制する。
すると林の中から一匹の真っ白い馬が躍り出る。

その姿がとても異形だ。体毛と同じ色のたてがみと尾が靡き頭部には渦を巻いた一本の角が生えている。

その馬はそのままライル目掛けて突進する。

「ラ、ライル!  」

ソフィアは叫ぶがライルは避けようともしない。
このままではあの鋭い角が突き刺さってしまう。

そして角がライルに当たる瞬間、ライルは半身でそれを躱すと白く靡くたてがみを掴みひょいと馬の上に飛び乗る。
そしてドウドウと馬を宥める。
ソフィアはライルが騎乗する角の生えた馬に近づく。

「ライル、この馬は?  」

『馬とは失礼な、私はユニコーンだ  』

「へ、う、馬が喋った!  」

ソフィアは突如発せられた中性的な声に目を見開き驚く。

「ははは、久しぶりだなユグド  」

『ふん、一年ぶりに顔を見せたと思ったら女連れとは…… 』

「あのライル、この方は?  」

「ああ、こいつはユニコーンのユグド。俺が勇者に選ばれた時から戦場で乗っていた仲間だ  」

ライルはそう言うとユグドから降りる。

「なるほど、私はソフィア・アルグレーと言います。今はライルとエルザーク帝国とイルミア王国の戦争を止めるために旅をしています  」

『ほう戦争を……それは、しかし大丈夫か?ライルに変な事されてはいないか?  」

「……い、いえなにも  」

「おいソフィア、そこは直ぐに答えるところだぞ  」

一瞬の間を置いて答えたソフィアにライル戸惑う。

『はは、なんだ…もう大丈夫そうじゃないか  』

ユグドの言葉にライルは

「まあ…な 」

と答える。

「それでライル、ユグドさんを呼んでどうするのですか?  」

「ああ、まだエルザークまで距離があるからユグドに乗せていって貰おうかと思ってな  」

『ふむ、乗せていくのは構わんがライル、例の物はあるんだろうな  』

「ああ、もちろん  」

『よし、では乗るが良い  』

ユグドの合図でまずライルがユグドに手綱をかけてから乗る。その後にソフィアを引っ張り上げライルの後ろに乗せる。

「じゃあ行くか  」

ライルはそう言うと手綱を引きエルザーク帝国に向けて走り出した——————。




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