感じやすいぼくの話

香月ミツほ

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第3章

母に似たかったぼくの話⑨

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やっぱりみんな、ディーのお嫁さんになりたいよね。ディーは格好いいし、優しいし、まじめだし、次の王様だし。

「王妃様の好き勝手している様子も一役買っていると思いますよ」
「王妃様が?」
「仕事が楽そうだからです」

……そ、そう、かな?
うん、それもあるかも。

ぼくとフーベルトがディーと仲良しなのは周知の事実なので、色々聞かれた。ボニファティウス様も話しかけたり話しかけられたりしてるけど、装飾品について熱く語り合っていたから、注文が入っているかも知れない。

……ディーとお話ししたかったな。
と思う反面、恥ずかしい事を思い出してしまって、慌ててお茶を飲んで気持ちを切り替えた。


*******


「おかえりなさーい!!」
「ルネ、ただいま」
「ルネリウス様、お邪魔いたします」
「あ! フーベルトだ! いらっしゃいませ。ゲームしよ?」
「ええ、やりましょう」

母様が『ちぇす』みたいって言ってた合戦ゲーム。将軍、近衛、騎兵、歩兵が王様を守りながら相手の王様を捕まえるゲーム。

ぼくや母様は全然ダメで、ルネの相手は時々母様の専属護衛のベルがしてくれるだけ。フーベルトは年に1、2度遊びに来てくれて、毎回ルネの相手をしてくれる。しかも、ルネに合わせつつ、手は抜かないのでルネが嬉しそう。

ベルはわざと負けるから、ルネが拗ねちゃう。

フーベルトは持ってきた楽な服に着替えて、お茶を飲みながらゲームをして、夕飯を食べて帰った。ルネはゲームには負けたけど、ご機嫌だった。


それからディーに会えないまま学校が始まり、何事もなく学年が上がり、2年の半ば頃、ナート様が出産した。赤ちゃんて、小さくてふにゃふにゃで、かわいい。

ある日、ぼくは孕体になった。背中の誘孕分ゆうようぶがムズムズして、何かぶつかるとジンとして、おちんちんが立ち上がってお尻がヌルッとする。変な感じ。

保険室の先生に報告して、孕体(ようたい)用の寮・通称『花園』に移ることになった。

「僕は花園に入れませんが、クラスは変わらないのでいつでも相談してください」
「うん」

フーベルトが心配してくれるけど、『花園』って怖いのかな? 赤ちゃんができないように先生たちが厳しく見張ってる、って聞いたけど。

ぼくには関係ないと思う。



少し馴れ馴れしい人もいて困惑したけど、逃げ回っているうちにその人は卒業していった。

ディーにはずっと会えてない。
長期休暇で家に帰ると、何故かヴァルフレムが来る。ご機嫌伺いなんていうけど、ぼくの機嫌なんて……。

ディーに会えない寂しさは、赤ちゃんを抱っこするか、ヴァルフレムがルネと遊んでくれるのを見ていると少しだけ紛れた。ぼく達を街に連れて行ってくれるのも、少し楽しい。

開店前のラニーのお店にも連れて行ってくれて、初めて奥さんに会えた。元気が良くて、きれいでかっこいい人だった。開店時間になったら邪魔にならないよう、お店を出たけど、外にはたくさんの人が並んでいてびっくり。

人気のお店なんだなぁ。



*******



家に帰っても、学校の校内武術競技会でも、お祭りの時も、ディーに会えなくて寂しくて涙が出る。粗相した恥ずかしさより、会えない寂しさが勝り、何もする気にならない。授業に出てぼーっとしながら講義を受けて、フーベルトに言われるがままお昼を食べて、午後の授業を受けて寮に帰る。

心配した寮長さんが、毎日朝食と夕食を部屋に届けてくれた。半分も食べられなくてごめんなさい。

フーベルトにやってもらえないので、髪はかきあげて蝶のクリップで留めるだけ。ディーを思い出しながら、ディーの手を感じながら。

そして3年の年末休みのとき、ようやく少しだけ会うことができた。

「アリョ、ディーがお見舞いに来てくれたけど、会える?」
「え……?」
「アリョ……? 会いたくなければ帰るが、声だけでも聞かせてくれないか?」
「ディ、ディー!! やだ! 帰らないで!」

ふさぎ込み、何故か増えたお茶会の招待もすべて断って、ひたすら部屋に閉じこもっていた。そうやって落ち込むぼくを心配した母様が、ディーを呼んでくれたらしい。

「久しぶりだな」
「……うん! あ、えと……、会えて、嬉しい……」

「……とても、きれいになった」

キ レ イ ニ ナ ッ タ ?

意味が頭に入ってこなくて、キョトンとしてしまう。キレイニナッタ、って、どういう意味だっけ?

キレイに、……、綺麗に?

じわじわと意味を理解し、喜びが湧き上がる。

「アリョーシャ、まだ私に好意を持ってくれているだろうか?」
「コウイ……」
「私をまだ、好きかい?」
「好き!!」
「成人したら、結婚してくれる?」
「結婚……、ディーのお嫁さん?」
「そうだ」
「お嫁さん! なりたい!!」

ディーはにっこり笑って手の甲にキスしてくれた。

「では、正式に婚約の申し込みをする。父母に伝え、父君、母君の了承を得て、婚約披露をしなくてはな。まだ時間はあるし、急がないから、早く元気になるんだよ」
「うん! あっ! ぼく、ねまき……っ!!」

寝間着にガウンを羽織っただけで、ベッドに座るぼく。ベッドサイドに跪き、微笑むディー。もっと着飾ってプロポーズして欲しかった!!

「ふふっ、今日は予約だ。正式な申し込みの際は改めて、しっかり正装をして申し込むからね」
「ディーは何を着てもかっこいいよ。でも、ぼくは……」
「……アリョは、きれいで色っぽくなって、危険な色香が備わってしまったよ」
「色香!?」

思いがけない言葉に、声が裏返る。
色香、ある……?

「噂には聞いていたのだが、やましい気持ちがあってなかなか会いに来られなかった」
「噂?」
「ボニファティウスの茶会の時から蕾が膨らみ始めたのを感じたが、ヴァルフレムが連れ歩くと人だかりができていただろう?」
「人だかり……?」

気づいてなかったのか、ってもしかして、ラニーのお店に並んでたお客さん、ぼくのこと見てたの?

「バズからもさすが麗人の息子だ、早くしないと誰かに取られるぞ、と言われ続けていたのだが、私では歳が離れすぎているから自戒していたんだ。だが……、ダメだな。こうして目の前にくると愛しくてたまらない」

うっとりと呟くディーの熱い眼差しに、顔が熱くなって、頭がガンガンして、くらくらする。

「ディートリント殿下、このままではアリョが熱を出します。その辺にして下さい」
「イク、すまない。日を改めて挨拶に伺うよ」
「母様、本当に? ディーがぼくをお嫁さんにしてくれるって、夢じゃない?」
「ふふふ、夢じゃないよ。父様も最初は反対するかも知れないけど、ぼくが説得するから、安心してね」

ぼくの夢が叶う。
物心ついた時からひたすらに憧れ、見つめ続けてきたディーが、ぼくが愛しくてたまらないと言ってくれる。嬉しくて、でも信じられなくて、ディーに大胆なおねだりをしてしまった。

「ディー、お願いがあります。約束の……、口づけを……、ください」

ディーは少し驚いた後、極上の微笑みを浮かべ、ゆっくりとした唇への口づけをくれた。

そしてその笑顔に当てられ、丸1日熱を出して寝込んだぼくは、婚約に反対した父様が母様に床に座らされて叱られるという、稀有な光景を見逃した。ルネが大喜びで実演してくれたけれど。
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