美醜逆転?おれぶちゃくないけど?

香月ミツほ

文字の大きさ
3 / 32

3 〜サーム〜

しおりを挟む
横から視線を感じる…

カドリさんがちらちら見てるよー。気になるよー。

「あの…?」
ぐ~~~~きゅるるる~~~~…

果物しか食べてないから、お腹が盛大に鳴った…恥ずかしい…

「これは気が効きませんで申し訳ない!すぐに食べ物を…」
「うぅ…申し訳ないです。あの…ジェミルにも分けて頂けますか?」
「もちろん。おい!馬車を停めろ。」

カドリさんが馬車を停めて、荷台から携帯食料を出してくれた。

「町に着けばちゃんとした食事をご用意できるのですが…」
「充分です!ありがとうございます!」

携帯食料はドライフルーツ入りのショートブレッドと干し肉。…美味しいけど喉渇くなぁ。

ペットボトルを出して水を飲む。
あ、ジェミルにもあげよう。

馬車の前方の小窓を開け、ジェミルに声をかける。

「ジェミル、喉渇くでしょ?水あるよ。」
「でもミチルだって…」
「おれも飲むから分けっこね。1人で全部飲むなよー。」

くすくす笑いながら手渡すとジェミルは苦笑いで受け取った。

2回受け渡しをして食べ終わった。干し肉は硬くてゆっくり噛むのでお腹が膨れる。

「カドリさん、ありがとうございました。」
「その水入れは美しいですな。見せていただいても?」
「ええ、どうぞ。」

もしかしてガラスが貴重な世界?

「なんと軽い!しかも不思議な手触りですな。一体何からできているのでしょう?」
「ええと…分かりません。この容器に飲み物を入れて売られていますが、作るところは見た事がありません。樹脂だと聞いたような気もするのですが…」

あれ?石油だっけ?

「樹脂…全く見当もつきませんな。」
「恩返しもしたいのに、お役に立てず申し訳ない…」
「恩など!こうして貴方を間近で見ていられる事が至福なのです!」
「でもあんまり見られると恥ずかしいです。」

ペットボトルまだ使えそうだからあげられないし、あざとく頬染めて顔を背けて胸元を押さえる。チラ見してたよね?

「そそっそこばかり見てた訳では…」
「ぷふっ…冗談ですよ。肌着になるなんて失礼でしたね。」

肌着が見えないよう、シャツを着てボタンを留めた。

「あぁ…」

がっかりするカドリさんもゲイなの?
いい歳したおじさまが面白すぎる。

「カドリさん?」

腹チラッ

「ぶふぉっ!」

もう一回。

「ふぁぁっ!」

おれなんかの腹でこの反応…こんなかっこいいおじさまなら色仕掛けもあるだろうに…楽しくなってきた。

「町が見えて来ましたよ。」

馭者さんが声をかけたのでカドリさんへのイタズラはお終い。

すぐに町について事情を説明するため警備隊の詰所に行くから、と門のところで馬車を降り、カドリさんと馭者さんにお礼を言って別れた。





「夜盗による被害報告はこちらの部屋で、貴方はこちらで事情をお聴きします。」

「あのう、一緒ではダメなんですか?」
「何か問題が?」
「右も左も分からない場所で知り合いになった希少な友人と離れるのは、その…不安で…」
「犯罪者ではありませんので、お2人とも同じ部屋でも構いません。おい、副隊長を呼んで来い。」

呼ばれた副隊長も顔に紋様が描いてある。
でもごくシンプルな紋様が左の頬に描いてあるだけ。何か意味があるのかな?

副隊長を待つ間にジェミルがトイレに行って顔を洗って紋様を描いて来た。ジェミルの紋様は派手だ。

「その顔の模様…どんな意味があるの?」

「!…本当に遠くから来たんだな。」

顔の模様には血筋を表す紋様が描かれているらしく、両親の模様を組み合わせるのだそうだ。場合によっては祖父母も組み込む事もあるが、そちらは好みらしい。

「個性を出すために描くんだ。」

個性…そう言えばみんな整ってて似たような顔をしてる。いかにも同族って感じ…

「ミチルは化粧なしでいられるから分からないだろう?」

そんな辛そうに言われたら、がっつり化粧してますとか、すっぴんはとても見せられる顔じゃないとか…思わずバラしてしまいそうになるじゃないか。





うん、カミングアウトするなら今かな?

「おれ…化粧してます。これは整形メイクと言って元の顔を別人のように整える化粧なんです。」

誰も信じてないな。

「顔、洗ってきますね。」

どれだけ馬鹿にされるだろう?
騙していた事を責められるかな?
情けないけどこれからを考えると同情されるくらいの方が良いのかな?精神的にはかなり辛いけど…。

クレンジングシートでメイクを落とし、オールインワンジェルで肌を整え、気合を入れる。

ジェミルは優しいから大丈夫!

自分に言い聞かせながら部屋に戻った。

「戻りました。」

「「「!!!」」」

あぁ…、驚かれてるなぁ。
胸が苦しい…

またここでも馬鹿にされるのかなぁ……なんで誰も何も言ってくれないんだろう?

「あの…?」




「「「なんて個性的なんだ!!」」」

全員が同時に叫び、ジェミルに手を握られた。

「こんな顔貌かおかたちは見た事が無い!」
「薄い眉、細い目、小さな鼻、薄い唇、細い顎!目の上のシワも無いじゃないか!!」
「いっそ神々しいと言うべきでは?」

目の上のシワって…一重まぶたと言います。
違う!奥二重!!折り畳まれてるの!
アイライン4mm幅くらい描かないと出て来ないだけなの!
棒人間に顔描いてやったぜ!って感じの手抜き顔とか埴輪顔とか言われてたこの顔が…神々しい?

大仏顔?



「…この顔、酷くないですか?」

ブサイクじゃない、と思いたいけど、ある意味個性的だよね、って言われた事もある。でもそれがこの人達の中では持て囃される?

「結婚してくれ!」
「隊長!?」
「貴方のためならサキになっても良い!頼む!!」
「なら私だって!」
「俺が最初に会ったんだ!」

なんかカオス?
この国、男同士でも結婚するのか…。
でもサキって何だろう?

「すみません、よく知らない人と結婚はできません。あと、その…サキって何ですか?」

水を打った様に静まり返るとはこの事か。
イケメン達の目が点になってる。

「サキを知らない?あ、言い方が違うのか。サキは子供を産む人だよ。」

それは女性で…さっき隊長が『サキになる』って…

落ち着いて説明をしてもらったら、この国(と言うかこの世界)では、生まれた時は全員男で第1次性徴で精通、第2次性徴でサキに、つまり孕めるようになる。

自然にサキになる人と、なろうとしてサキになる人がいる。サキになると背中に赤い花模様が咲くので「サキ」と呼ばれているそうだ。

…異世界にもほどがある。

「サキも知らないほど遠くから来たならしばらく監視が必要だな。」
「どうしてですか?」
「貴方にとって何でもない事でトラブルが起きるかもしれない。私が側にいればそれが回避できる。」
「あんた上手いこと言ってミチルを側に置きたいだけだろう!」

隊長とジェミルが言い合いを始めてしまった。でも一理あるな。

「ジェミルに泊めてもらう気でいたけど、隊長の口利きで部屋借りられるならその方が良いかな?」
「イヤだ!うちに泊まってくれ!」

ジェミルの迫力にお、おう…ってなる。

とにかく先ず事情聴取してもらって、ジェミルとこれからを話し合おう。隊長の申し出も有り難いから選択肢にいれておこう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

処理中です...