美醜逆転?おれぶちゃくないけど?

香月ミツほ

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8 〜ペーッ〜

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「こんにちはー!」

詰所の留守番係に声を掛けると、昨日恋人がいるか聞いて来た人、だと思う。ベールを外して顔を見せる。

「昨日の美人!」

あれ?名前言ってなかったっけ?

「ミチルです。」
「お…私はエニスです!仲良くして下さい!」

思わず吹き出してしまったじゃないか。

「あはは、仲良くして下さいね。」

笑われて明らかに失敗した!って顔のエニスは笑いかけると途端に笑顔になった。子供か。

今日の用件を聞かれてお金の事とか色々知りたいので説明上手な人はいませんか?って言ったら経理のチェックは副隊長がやっている上に今日は非番らしいので呼んでもらえる事になった。

「説明なら俺がいくらでも…」
「ジェミルは報酬の事、判ってなさそうだったから…おれもここの人達が普通にいくらもらってるのか知らないしさ。」
「…確かに、欲しい物もないし食事もエルのツケでどうとでもなるし必要な物はエルが支払いしてるし…」
「夫婦じゃないんだから財布の紐は自分で握ろうね?」
「エルと夫婦だなんて考えたくもない!」

そう言う事じゃなくてね…

「お待たせいたしました。」

って、回り込んで跪いて両手を握って。
なにこの対応。むずむずするよー!
ジェミルが手を外そうとしてるけどさすが鍛えているだけあって外れない。

「副隊長さん、これじゃお話も聞けないしお茶も飲めません。手を離して下さい。」
「失礼いたしました。それにしてもミチルさんは容姿だけでなく肌もきれいなんですね。」
「そうですか?」

撫で回した後に離してくれた手を逆に触ってみたら少し硬い気がしたけど、これは鍛えてるから?民族的特徴?ジェミルはどうだろう?

2人の手を引き寄せて揉んだり撫でたりしてみたら皮膚が厚いような気がした。

「おれ、皮膚が薄いんですかね?わひゃっ!?」

皮膚の薄さを見てもらおうと手を差し出したんだけど、2人掛かりで撫でられて変な声が出てしまった。くすぐったいでしょ!!

文句言いながら手を引っ込めたら2人とも謝ってくれたけどてへぺろ感満載。まったくもう。

「それで、なにを説明しましょうか?」
「聞きたいのは一般的な生活に必要な金額、警備隊員の新人の給料、結婚について。」
「結婚!?」

俺が知ってる結婚とここの結婚が同じかどうか判らないから聞きたいんだけど、めっちゃ食いついてきた。

「えー、結婚はですね…」

説明では2人以上の人が契約を交わして生活を支え合う、と言う事らしい。
…2人以上?
婚姻関係にある者同士が同意すれば何人だろうと問題はないし、身体の関係も本人同士が納得ずくなら他に求めてもOK。ただし、一般的には2~3人の婚姻関係が多く、それ以外との性的関係はごく少数だそうだ。3人での婚姻も育児を助け合うのに都合が良いから、らしい。

ワンオペは良くないもんね!

離婚もできる。
とにかく基本は話し合いで、仲裁に入ってくれる相談役もいる。

…ヤンデレとかDVとかはあまりないようだけど、結婚する必要、ある?気持ちの問題?

「じゃぁ、とにかく良い事と嫌な事を話し合ってOKなら結婚もありってことだね。」
「「お願いします!!」」

「え?副隊長さんも?」
「はい!」

と言われても、副隊長さんが気に入ってるの、見た目だけだよね?
ジェミルだって吊り橋効果みたいなものだし、いくら結婚のシステムが軽くてももう少し考えたい。



それから教えてもらった貨幣価値。

通貨はタバルで警備隊員の初任給は月30万タバル。食事がだいたい1食500タバル。
家賃は1Kなら10万タバル、2Kなら15万タバル。集合住宅では薪代は家賃に含まれていて、水は井戸だから無料。ただし室内に井戸があるのか共同かで家賃に2~3万タバルくらい差が出る。バストイレ付きか風呂なしトイレ共同か、って感じで判りやすい。

それならジェミルは週4万タバルもらっていいと思うんだけど…

「ジェミル食費と家賃と必要経費別でいくらもらってる?」
「…週に1万…。」
「少なすぎるだろう!!」

副隊長に怒られた。(笑)

無趣味な人が実家住みでお小遣いもらってるみたい…でも少な過ぎ。

「警備隊に入れば宿舎は月8万タバル、食事は1食400タバルで大盛りも同じ金額。給料日に1ヶ月分を集金する。光熱費は不要だが薪割りは交代制だ。鍛錬と見廻りと取り締まり、それから住民の相談も受ける。どうだ?入らないか?」
「人事の決定権は現場に任されているんですか?」

普通、組織の人事ってもっと上の方だよね。

「見習いの採用は現場が判断する。そして1年の見習い期間を終えたら隊長の推薦状を持って本採用試験を受けに王都へ行ってもらう事になる。」

見習いだから現場判断でOKで、1年かけて様子を見るのか。へー。

「それで、おれにできそうな仕事ってありますか?体力も腕力もないし、料理もできません。掃除は何とかなるかも知れませんが、それしかできないんじゃ、ダメですよね。」

「事務仕事もあるが、一応正規の隊員がする事になっているし、やはり掃除か…。」

仕事なさそう…



分からないことがあったらいつでも来るように言われ、お礼を言って帰る。

「ちゃんとベールを被らないと…」

ジェミルが気を使ってくれるけど、すでに結構、顔晒してるよね。まぁ、それほどの騒ぎにはなってないから、良いか。

夕飯を食べて帰ろうと、食堂兼酒場に行く。ここもエルヴァンのツケが効く店だそうだ。

なるべく目立たない席を選ぶ。

どんなお酒があるのか興味があるので、お勧めを頼んで見た。フルーティで飲みやすい、ジュースみたいなお酒。

「甘いけどさっぱりしてて美味しいね。」

爽やかな酸味が美味しい。
春巻きっぽいのと焼きそばと蒸し鶏?
しかもお箸!

「ミチルはお箸の使い方が上手いな。」
「そうかな?」
「食べ方も上品だし、その容姿の美しさを損なわないなんて…」

焼きそばを上品に…?
春巻きには大口開けてかぶりついてるよ?

変なのー、と思いながら美味しい食事を堪能していると、お約束がやって来た。

「よう、そんな型押し相手にしてないで俺らと飲もうぜ。」
「型押し?」

「…型で押して作ったような特徴のない顔、と言う意味だ。」
「何だ、あんた他所から来たのか?」

面倒くさそうなので顔を隠そうとしたけど、引っぱられてベールが外れた。あーあ。

「お酌をして欲しいなら、頼み方があるんじゃない?」
「あぁっ!?そこまでもったいぶる…」

文句を言いながらゆっくり振り返ると、その人は口を開けたまま絶句した。

「もったいぶる、なに?」

椅子に座ったまま身体を横に向けてテーブルに肘をついて両手を組み、シナを作る。あざとく頬杖に切り替えて見上げると、ナンパ男はぶるぶると震えだした。

「結婚してくれ!!」

合言葉か!!
ここの結婚、やっすぅ。軽ぅ。

「言いたい事はそれだけか?遺言があれば言ってみろ。」

どうしたの!?
ジェミルのキャラが変わってるよ?
立ち上がってテーブル越しに凄むジェミルがカッコいい…じゃなくて。

「あの…ただの酔っ払いでしょ?怒るほどの事じゃないよね。」
「不愉快じゃないか?」
「別にどうでも良いよ。でも顔隠す必要無くなったからそっちに座って良い?」
「無視しないでくれ!!」

「結婚はお断りします。」

はい、返事したよー。

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2タバル=1円です。
適当なので何とな~くで考えて下さい。
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