美醜逆転?おれぶちゃくないけど?

香月ミツほ

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10 〜シップ〜

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わくわくと期待に目を輝かせるエルヴァンにもメイクをする。

とは言え、そんなにレパートリーないんだよなぁ。
昨日と違う風にしようとアイラインを上下に引いてアイシャドウも軽く付けて口紅で厚めの唇に。

…元が良いから何でも似合う。
簡単で良いけど…悔しい。
彫りを浅くするとかの面倒なのはやめた。

「これが私…?」

お約束のセリフを言いつつ鏡を見つめるエルヴァン。気に入ってくれたようでなによりです。

「じゃぁ、行こうか。」

おれとエルヴァンはまたしてもベールで顔を隠し、3人で連れ立って家を出た。

暑いからベール付けるのが面倒くさいなぁ…



カドリさんの宝飾店に着くと、警備の人に話しかけるまでもなく本人が出迎えてくれた。

「ミチル様!ようこそいらっしゃいました!ささ、どうぞこちらへ!」
「ありがとうございます。」

ベール外してなくても分かるのか。
まだ早い時間だからお店にお客さんはいない。

若い男の人が花の香りのハーブティーを淹れてくれた。

「さっそくお出で下さるとは、感激です!
して、こちらは先日共にいらした方ですな。そちらは?」
「失礼いたしました。私、ミチル様のお世話をさせていただいている者でエルヴァンと申します。」

え?いつから???
勝手な設定で話しながらベールを外すエルヴァンを見て息を飲むカドリさん。

「美しい方は美しい方を引き寄せるのでしょうか?」

にっこり微笑むエルヴァンに見惚れてそんなことを言う。
その説は支持できません!(笑)

「それで、今日はカドリさんに教えていただきたい事があって来ました。」
「教えて欲しい事、ですかな?」
「はい。」

おれはメイクパレットを見せて化粧品の説明をしてから化粧を落してすっぴんを見せた。

…また拝まれた。
「見る」って意味の「拝む」じゃないよ。本気で手を合わせて拝まれたんだよ!
気分は生き仏です。(宗教関係者の方、ごめんなさい!)

それからカドリさんにもちょっとだけメイクをしてあげたらこっちも「これが私?」ってやってた。お約束ですなぁ。





それで、宝石を研磨する工房を紹介してもらう事と、墨を練るのに良い素材を相談する薬学博士を紹介してもらう事になった。研磨工房はすぐにも案内できるけど薬学博士は事前に連絡をしておかないと会えないらしい。もちろんOKです!

「お忙しいのではないですか?」
「早い時間に来て下さったおかげで問題ありません。今日は夕刻に商業ギルドの寄り合いがあるだけでしたから。」
「その準備をオレが押し付けられたんだけどね。」

さっきお茶を淹れてくれた人が衝立ての向こうから顔を出した。

「ビルジ!押し付けたとは何だ!そろそろお前も跡取りとしてだな…」
「それは分かってるけど自分はこんな美人侍らせて工房自慢しに行くんだろ?」
「それは…」
「自慢の工房なんですか?」

これだけ立派な宝飾店のお抱え工房ならすっごい原石がごろごろしてるんだろうか?おれ、磨いたやつより原石とか結晶が好きなんだよなぁ。わくわくして思わず親子の会話に口を挟んでしまった。

「自慢の匠達です!設備も整え、彼らが全力を出し切れるように心を砕いておるのです!」
「あら、心を砕いて宝石を砕くのね。」

コラ!
せっかくの職人の心意気を親父ギャグにするな!

「いやいや、宝石は磨くもので砕かれては堪りませんよ。」

でれでれのカドリさんが混ぜっ返す。
親父ギャグは問題なかったようだ。

「オヤジ、工房はオレが案内するからさ、準備はオヤジがやってくれよ。」
「ダメだ!ただ案内するだけじゃないんだからな。」
「へぇ、何をするんだ?…あれ?オヤジの顔、いつもと違う…?」
「それは…」

話していいのかどうかを確認するようにこちらをチラ見するカドリさん。どうしよう?判断がつかなくてエルヴァンを見るとにっこり笑って頷いた。

「たとえ息子さんでも商品化するまでお話しする事は出来ません。ご協力いただく事になれば説明するかも知れませんが、まだその時ではありませんわ。」
「…分かりました。これから信用を勝ち得てお話して頂けるよう誠心誠意努力致します。」

あれ?何となくだけどビルジさん、もしかしてエルヴァンの事気に入った?



ビルジさんが引き下がり、改めて工房へ行く事になった。
4人乗りの馬車で1番奥におれが乗り、向かいにジェミル、その隣にエルヴァン、手前にカドリさん。馬車で30分程度だそうだけどジェミルとエルヴァン、酔わないのかな?

「後ろ向きって酔わない?」
「「「酔う?」」」
「乗り物の揺れで気分悪くなったりしないのかな?って。」
「そういう話は聞いた事がないが…。」

こっちの人、酔わないのか。

「ミチルさまは気分が悪くなるのですか?」
「進行方向へ向いて座っていれば大丈夫です。」
「どうなるのか興味あるんだけど、こっちと代わらない?」
「やだ!!」

お世話してるって設定どっか行っちゃったじゃん!
カドリさんがお友達だったのですか?って。
平民だからね!召使いなんていないよ!!



「…酔ったぁぁぁ…きもちわるいぃぃ…。」
「悪酔いしたみたいに見えるわね。」
「そんなかんじ…地面が揺れてる…」

まっすぐに立っていられなくてジェミルに縋り付く。
こっちへ来てすぐに馬車に乗せてもらった時は平気だったのに、今回酔ったのは…道かな?街道は石畳で舗装されてたけど、こっちはでこぼこが酷いもんね。

「申し訳ありません!こちらで休めますから…
おい!水と果物と…医者を呼べ!!」

そんな大げさな、と思ったけど止める元気がなかった…。





「大丈夫か?」
「ん…しばらく休めば大丈夫。こんな体質でごめんね…。」
「身体が弱いのは仕方がないだろう?」
「そう言ってもらえると気が楽になるよ。」

「はい!いちゃいちゃしてないで!お医者様がいらしたわよ!」

全然いちゃいちゃしてないと思うぅぅぅ…

「あぁ、具合が悪いのはアンタかい?」
「はい…すみません、休めば治るのにお呼びしてしまって…」
「あぁそのままで。少しボタンを外しても?」
「はい…」

自分で外そうとしたけどもたもたしてたらお医者さんが外してくれた。風が肌を撫でて行く感触が気持ちいい。

…ん?

なんか…

触り方が…

「不埒な真似をするな!」
「医者だぞ?」
「触り方がおかしいと言っているんだ。」

やっぱりちょっと変だったよね。
心音聞くとかじゃなくて胸を揉まれたような。

「こんな赤ん坊のような肌だぞ。学術的興味が湧かない訳ないだろう!」
「つまり、病を治すのではなく実験と称して弄ぶと?」
「ぐっ…」

おおぅ…火花を散らしている。
セクハラはダメだけどそこまで怒らなくても良いよー。

「なになに?そんなにお肌きれいなの?」
「ひぁっ!やっ、ちょっ…ぶふっ!!」
「エル!!」
「良いじゃない、減るもんじゃなし。」
「…なけなしの体力が減るよぅ~~~…」

くすぐったくてジタバタしたらまた目が回ってしまった。

ごめん、ちょっと休みます………。

「寝る前に一口で良いから薬を飲め。」

そう言われて爽やかな香りのゼリーを一口、口に入れられた。つるんと滑って喉を通る。こんなに美味しくて飲みやすいのが薬なの?これって、やっぱりこのお医者さんの腕がいいのかも知れない…。
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